宇宙世紀 0031 コズミック・イラ22 この年世界を驚愕の渦に巻き込んだ、ある重大な事件が発生した。
Evidence01 通称「羽クジラ」とも呼ばれる謎の巨大生物の化石がジョージ・グレンの手で発見された。
持ち帰られた化石は直ちに調査されこれが地球以外の宇宙由来の「生物」の可能性が高いという調査結果が出た。
各宗教界はこれに揺れ、大混乱に陥りある者はこれを受け入れ新たな信仰の対象化を図り、又ある者は頑なに教義を守りこれを受け入れないとする立場を崩さず結果的になんら具体的な見解を示さない宗教界はその権威を失墜しその中で盲目の導師・マルキオ導師は混乱するばかりで「パレスティナ公会議」を開き宗教界の権威者が一堂に会するも何ら解決策を示せない宗教界を捨て自ら独自の道を模索し始めた。
後に彼の理論は長年の思索によりある一定の成果を得る。
SEED理論と呼ばれる彼の考えは混迷を極める宇宙世紀後半において特にコーディネイター、ナチュラル双方において大きく支持されることになる。
同じ頃、連邦支配下のコロニーにおいて地球を神聖視する「エレズム」と呼ばれる信仰が生まれる。
地球に住む人口のおよそ半分が宇宙に住むなか、宇宙の民、スペースノイドと呼ばれる彼らは棄民政策によって二度と戻れぬ地球に郷愁と憐憫の気持ちを抱き地球は美しく清浄で清らかであり決して穢しては成らないという一種のユートピア「理想郷」に思いをはせ、未だ地球にへばり付き地球環境を汚染しているアースノイド達への痛烈な批判にもなりジオン・ズム・ダイクンの提唱するコントリズムと合わさり後にジオニズムとして宇宙世紀に新たな光明を開くことになる。
宇宙世紀に入って三十年が経過しようとする地球圏において人類はそれまでとは違った新たな時代の胎動を薄々と感じ始めていた。
C.E30年 「Evidence01」の発見と宗教界の権威失墜によって自分の子を第二のジョージ・グレンにという親が急増し、それにより世間がコーディネイターにたいして寛容的になり第一次コーディネイターブームが到来。
このとき地球連邦より宇宙開発が遅れていた大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国等で本格的に宇宙ビジネスが活発化し今まで連邦政府が建造していた移民施設としてのコロニーからより商業的、産業色の強いコロニーの建造が各国共同で行われるようになる。
また、オーブでも資源衛星コロニー「ヘリオポリス」、マスドライバー基地「カグヤ」が建造される。
C.E.35年 大西洋連邦の月面軍事基地「プトレマイオス」の建造が発覚し、各国間で軍事競争がはじまる。
連邦政府により宇宙統治法が改正されこれにより連邦軍は従来の地球-コロニー間の配置から月面、地球軌道、各コロニー等に駐留軍を置き新たに独立機動艦隊を編成し各方面軍と暗礁宇宙域、地球-火星間及び木星間の保持、警備等の外周警備艦隊も新たに設立した。
U.C0045 地球連邦サイド4出身のトレノフ・Y・ミノフスキーが、ミノフスキー理論を提唱。最初連邦学会はこれを一笑し、博士を学会から追放した。
博士は連合の学会でもこれを発表しようとしたが選考段階で落選してしまう。
失意の中にあった博士だが、しかしこの理論に目をつけたのが当時サイド3でジオン・ズム・ダイクンの右腕として活躍していたデギン・ソド・ザビは、博士をサイド3に招き新兵器の開発依頼と引き換えに資金と研究施設を提供。以後博士はミノフスキー粒子の発見とそれを使った新兵器の開発に尽力する。
ミノフスキー物理学として大成した研究成果は小型熱核反応炉及びミノフスキー粒子の発見により、後の軍事的、エネルギー生産において大きく新国家群を引き離し後の大戦を有利に進めることにも繋がった。
ジョージ・グレンによる新型の天秤型コロニーの構想が発表され建造が開始される。
L4、L5に建造されたこれ等コロニーはそれぞれコロニー「メンデル」、「プラント」として大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国、等の出資国による「理事国」で運用されることになる。
極秘裏に作られた第一次世代コーディネイターが各方面で活躍するようになると明らかに現在の「ヒト」としての能力の差が顕著になり各宗教勢力で批判的な意見が盛り返す。
また第一世代同士の間に生まれた子も高い能力を有する第二世代コーディネイターとして誕生し新たな物議を醸し出し、コーディネイターとナチュラルという新たな人種の壁が生まれる。
コーディネイターに対して不寛容なブルーコスモスや過激な宗教は地下で結託し反コーディネイター運動を起こし地下武装組織を使ったコーディネイターの抹殺など過激な行動を行い市民もまたコーディネイターによって引き起こされた犯罪や事件などが後押しをする形で徐々にだが反コーディネイター感情が高まっていった。
そういった状況で宇宙に上がってコロニーに新たな居場所を求めるコーディネイターたちが次々と「プラント」に移住。プラントで作業に従事するのはコーディネイターという図式が完成。以後これが長らく定着して後の大戦への引き金にもなる。
U.C. 0050 全人口110億人の内70億の人間が宇宙に住むことになるが依然として40億もの人類が地球に住み続け、「理事国」を中心とした各国は新たな土地開発を進め地球環境は悪化の一途を辿りこのままでは後四十年もしない中に地球は人間の住める環境ではなくなるとされた。
この事実を受け地球連邦政府は、各国に地球環境保護とコロニーへの移民を提言したが各国はこれを無視。あまつさえ自国民の地球連邦政府コロニーへの移民を禁止し、又新たな土地開発を続け、連邦政府との関係が悪化した。
各コロニーはこれに激怒。スペースノイド達の怒りの矛先はいつしから自分達を搾取し重い空気税をかける地球連邦政府から、未だ地球にしがみつく各国のアースノイド達へと向かっていった。
U.C. 0051 地球連邦政府は構成国の内地球上の軍及び政府のスタッフとその家族及び地球上でしか出来ない生産活動に従事する者以外のこれ以上の宇宙への移民は地球上での安全を損なうものであり事実、近年「理事国」を中心とした国家群での軍事的脅威は日に日に増していた。
これを受け連邦政府は「新規コロニー開発計画」の一時凍結とこのままでは遅かれ早かれ地球は滅亡し人類の種としての存続のため火星のテラフォーミング化、及び木星圏での人類の生存圏の確立及び外宇宙探査を目的とした「地球外惑星移民探査計画」を発表。
一部では「地球放棄計画」とも揶揄された計画だがコロニーで閉塞するスペースノイド達に新たな希望を与える結果になり後に地球連邦が宇宙開発において各国を大きくリードすることになる。
U.C. 0058 かねてからコントリズムを提唱していたジオン・ズム・ダイクンがサイド3で独立宣言をしジオン共和国を樹立。国防隊を発足した。
ジオンの独立宣言に対して地球連邦政府は緩やかに経済的圧力を加え、又コロニー建造及び火星植民、木星開発により拡大した地球圏の治安維持を目的として60年代軍備増強計画を発動したがこれはジオン共和国に対する圧力と言うよりも軍拡著しい「理事国」に対して牽制する意味を多く持っていた。
この一年後に C.E.50 プラントで後に議長となるシーゲル・クライン、パトリック・ザラによる黄道同盟が結成され以後プラントで自治権、関税自主権を求める運動が活発化し「理事国」はこれを弾圧。これ以降「理事国」とプラントとの間で対立が明らかとなる。
プラントに住むコーディネイターの中に地球からの独立を求める声が日増しに高まって来たのもこの時からである。
「理事国」も宇宙開発において連邦の後塵を拝する形になりそれを埋める上でもプラントは必要不可欠な存在であった。
彼らは恐れていたのだ。再構築戦争以来連邦政府にとって彼らは今でも裏切り者である事には変わらず、人類史上最大の軍事力と経済力を誇る連邦がいつ自分達に復讐戦を挑んでくるか。
その時圧倒的に劣勢である自分達が生き残るためには倫理観を捨てコーディネイターを作り出し宇宙開発に隷属させることによって国力を養い来たるべき戦争に向けて何とか生き残りを図ろうとしていた。
U.C. 0060 地球連邦軍は今まで各駐留艦隊独自の指揮系統を纏める為コロニー建設資源小惑星ユノーを軍事基地化。そこに宇宙艦隊総司令部を置き逐次艦隊の再編成と装備の更新に当たることになった。
U.C. 0062 ジオン共和国で地球連邦に対する脅威論が巻き起こりデギン・ソド・ザビを中心とするタカ派が国防隊を正式に国防軍へ昇格。ザビ家を中心とする軍の統制が徐々にだが始まる。
C.E.53年 ジョージ・グレンがナチュラルの少年の手によって暗殺される。
地球連邦政府は彼の死に哀悼の意を示し、また彼によって築かれた数多くの功績を称え名誉連邦市民勲章を特別に授与した。
この事件は当時いかにコーディネイターと、ナチュラルとの対立が激しいかを物語り、後の悲劇的局面にも繋がることにもなる。
この年プラントの運営を各市代表による「プラント評議会」へと移行。これはジョージ・グレン暗殺によって「反理事国」感情が高まったプラントに対する一種のアメでありまた表向きは「評議会」が運営するがその実「理事国」の息のかかった者や、理事国から派遣された「特別政治顧問」が常に議会を監視報告し少しでも意にそぐわない事があれば「評議会」の承認なしに以後議会の運営を取り仕切るなど有名無実化していた。
がしかし、「プラント」に住む者が政治的権利を得たことには変わりは無く、以後「プラント評議会」は密かに「黄道同盟」を支援し、また独立への準備を着々と進めていた。
C.E.54年 S型インフルエンザが変異し従来のワクチンが効かないS2型インフルエンザが大西洋連邦を中心に大流行し、「パンデミックス」を引き起こす。
これにより地球上のナチュラルの三人に一人の確率で発症しワクチンが出来るまで実に数百万人以上もの感染者を出し死者は百万を超えるとされた。
このインフルエンザは抵抗力の強い者には感染が弱まるとされ、実際コーディネイター達の多くは感染せず又感染しても何時もより熱がひどい程度で普通の風邪と変わらない症状しか発症しなかった。
そしてそんな中、ナチュラルの間でこのインフルエンザは実はコーディネイターがジョージ・グレン暗殺の報復措置として地球上のナチュラル全てを皆殺しにするために作ったものだと実しやかに囁かれ、コーディネイターに対する市民感情は悪化した。この裏にブルーコスモスの陰も囁かれたが真相は未だ明らかになっていない。
C.E.55年 「プラント」でワクチンの開発が成功し地球への供給が開始されたが時は既に遅かった。各国は「トリノ議定書」を採択し今後地球上での遺伝子改変は禁止され、同年各国支配下のコロニーにも感染が拡大し、各地で暴動が起きコロニー「メンデル」ではブルーコスモスを名乗る武装組織による襲撃まで起きた。
インフルエンザによる社会不安、ブルーコスモスの暗躍、明確に現れたコーディネイターとの差、今までの鬱憤とが混ざり合いナチュラルの反コーディネイター感情は最悪になり各地でコーディネイターに対する迫害が行われ多くのコーディネイター達が「プラント」へとその難を逃れることになる。
後に宇宙世紀最大の民族浄化、ホロコーストとまで呼ばれる事態まで発展し後の大戦の原因の一つとなる。
U.C. 0065年 この年地球連邦政府はある重大な発表をした。
地球連邦による「火星圏の領有宣言」が発表された。
宇宙世紀初期から構想されていた地球外惑星への移民計画。それが実を結んだ瞬間であった。
地球と火星は嘗てジョージ・グレンが設計した「ツォルコフスキー」を元に開発された全長二キロにわたる資源採掘探査船「ジュピトリス級」を完成させ数隻が建造された。其の内の二隻が地球火星間航路で半年間をかけて行き来していた。
それによって火星表面にドーム型の基地が数多く作られ又地球からの移民を受け入れるための軌道ステーションやコロニーも建造されていた。
各国は此れを非難。地球外惑星の開発は国家の枠組みを超えて一陣営が独断で行うものではなく国際社会共同で行うものだと「国連」で発言した。
他国にとって宇宙開発の遅れは益々宇宙での利権が連邦の独壇場になることを意味していたからだ。
各国も長らく他惑星への移民は計画していたがそれには莫大な資金と時間が懸かり、一国だけでは当然支えきれるものではなかった。
それを解決するため各国共同でD.S.S.Dを創設しその資金と人員の目途が立った所にこれだ。
各国は焦った。特に「理事国」は「プラント」完成後着々とその力を蓄えたがその実、構成国同士が地理的、歴史的に絶えず緊張関係にあり又プラントの運営に関しても大西洋連邦とユーラシア連邦、東アジア共和国が対立し内輪揉めを起こしていた。
その為折角得た利益も互いの軍事力に浪費するばかりで新航路発見など夢のまた夢であった。
さらに連邦は木星圏にも資源採掘用のコロニーを建造し数基が実稼動にあると発表。
このままでは遅かれ早かれ木星も連邦の勢力圏に組み込まれ、地球にいる自分達は外宇宙への道を閉ざされ地球上で逼塞する事になりかねない。
そうならない為にも彼らは今まで以上にプラントに対して重いノルマを課すようになった。
翌年の C.E. 57年 大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国の三大国の宇宙軍が合同でプラントに駐留を開始した。
後の連合軍の前身となるこの駐留軍はプラントに対する監視と有事の際三国共同で連邦に対抗するための意思表示でもあった。
同年プラント評議会に黄道同盟の創始者シーゲル・クラインとパトリック・ザラが当選。
シーゲルは理事国との交渉をパトリックは自衛戦力の充実に努め、来るべき理事国との独立戦争への道を歩んだ。