UC.0079 9月
アフリカの大地にて辛くも敵の包囲を突破したホワイトベース一行は、ジャブローより派遣されたマチルダ隊より補給を受けていた。
「コンテナの搬入急げよ!」
「被弾しか箇所の応急修理はまだか⁉︎」
「そこ、MSの邪魔になってる。さっさと退け‼︎」
「だからMSの交換パーツとホワイトベースへの補給品を積んだコンテナを一緒にするなと言っただろう」
ホワイトベースのデッキの彼方此方でで喧噪が繰り広げられる中、ブライト達ホワイトベースの幹部等は艦橋に集まりマチルダ・アジャ中尉より今後の指示を受け取っていた。
「以上がジャブロー本部よりの指示になります。何か質問は?」
「ジャブローからの指示は分かりました。しかし解せませんな、我々だけでこれからの支援の当てもなくアフリカから欧州まで向かえとは」
「てっきりこのまま、ジャブローに直接向かえと言われるかと思っていましたから」
「連邦軍は、ジャブローはこの船の現状をちゃんと認識して、ホワイトベースとガンダムの事をどう思っているのでしょうか?」
ブライトはジャブローからの指示に、納得出来ないと率直な不満を漏らした。
そもそも彼等はそのジャブローからの指示で地球に降りて来たと言うのに、この様な扱いを受けるとは思いもよらなかったのだ。
これなら以前の命令のままの方が、まだ心理的に楽ではあった。
しかしマチルダ中尉はブライトやクルー達に向け諭す様に言う。
「さぁ、私はただジャブローからの命令に従ったまでです。詳しい事は分かりませんが、きっと皆さんなら必ずや、やり遂げるとジャブローは信じているのかも知れません」
「現に皆さんはここまで良く戦い続けてきました。私の隊が護衛も無く危険な任務を続けたのも、連邦軍が決して皆さんの事を見捨てていないからだと思いませんか?」
「それはそうですが…」
ブライトはそう言い返されて口籠る。
それを見て「ふっ」と目を細め微笑むマチルダ。
「ではそう言う事で。我々は次の任務に向かわなければなりません、お互い生きていれば次に又会う事もあるでしょう」
そう言って艦橋をさるマチルダは、ふとある少年に目を留めた。
「君が、もしかしてガンダムのパイロット?」
「あ、あのアムロと言いますその…」
アムロは間近で見る大人の女性に動悸が激しくなり、言葉がうまく出なかったがマチルダそんなアムロに優しく微笑み、肩にそっと手を置いた。
「君には期待しているわ。ホワイトベースを宜しく頼むわね」
そして最後に付け加える様に。
「それと、貴方はエスパーかも知れない」
と言った。
「え?僕がエスパー?」
言われたアムロは怪訝な顔を浮かべたが、その時にはアムロの前からマチルダは立ち去った後であった。
マチルダ隊からの補給を得たホワイトベースだが、それは物心両面で戦いの連続で疲れ乾ききったクルーの心を癒すオアシスとでも言うべきものであった。
アムロも又、マチルダの魅力に惹かれ淡い恋心を抱く様になる。
こうして新たな任務に就いたホワイトベースは、気持ちも新たに一路北へと進路を取るのであった。
UC.0079 アフリカ ジオン共和国軍航宙基地
ジオン本国より地球に向けザンジバル級機動巡洋艦を回航したランバ・ラル大尉は、その足で同地の指揮官マ・クベ中将の副官であるウラガン中尉に連れられ基地の中へと入っていく。
アフリカ特有の灼熱の大気とは遮断された、空調の良く効いたオフィスに通されたランバ・ラルはそこでマ・クベ中将より新たな命令を受けてる事になっていた。
「本国からのザンジバルの回航ご苦労。貴官も久しぶりの地球は懐かしいだろう」
マ・クベは勤めて事務的な物言いでそう言った。
一見すると官僚的な冷血漢に見られがちな彼であるが、その実ジオンきっての地球通で知られ、現地での軍政や交渉役として手腕を発揮するなどジオンにとって無くてはならない人材である。
唯、人によっては誤解を受け易い人物なのだ。
そしてランバ・ラルも、その点を十分承知していた。
「は、勿体無いお言葉です。予備役から戻して頂き、再び国家のお役に立てる事にこのランバ・ラル喜びに胸が震える思いであります」
「ふむ、貴官を予備役より戻したのはドズル大将閣下の意向だが。そのドズル閣下より貴官に新たな任務が下された」
そう言うと、マ・クベはランバ・ラルに作戦の詳細をおさめたファイルを手渡した。
その内容に早速目を通したランバ・ラルは、思わず「ほぉ」と呟いた。
「貴官の隊には十分な支援をする様に、とドズル閣下から仰せつかっている。貴官は後顧の憂い無く任務に邁進して欲しい、話は以上だ」
「は、全力を尽くします」
ランバ・ラルは見事な敬礼を返すと、踵を返してオフィスを後にした。
ランバ・ラルが去った後、副官のウラガン中尉がおずおずといった風にマ・クベに懸念を示した。
「宜しかったのです?いくらドズル閣下の無理な願いとは言えキシリア閣下はこれを…」
ウラガンが言わんとする所はマ・クベも十分承知していた。
彼が今の地位にいるのもキシリア・ザビのお蔭と言ってよく、そのキシリアと対立するドズル大将直属の部下であるランバ・ラルは、確かに目障りな事この上なかった。
しかし、だからと言ってマ・クベはランバ・ラルを今すぐどうこうする気は無かった。
「よせ、それは今言うべきことではない。それにあの男も覚悟の事だ」
「は?」
「奴の父親はダイクン派で、その煽りを受けて奴自身も相当苦労したらしい。その男が、ドズル閣下への恩義を返す為に地球へと来たのだ」
「はあ?」
「奴も色々と複雑な立場なのだよ。暫くは黙った見てやっても良いでは無いか」
「はぁ?マ・クベさまがそう仰るのであれば何とも…」
マ・クベにこう言われては、ウラガンとしてもこれ以上の話を続ける訳にはいかなかった。
ジオン内部のザビ家に関わる陰謀や策謀が複雑に絡み合い、それは今後も大きな影を落とす事となる。