連邦の野望   作:rahotu

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もう一つの戦場

クリミア半島オデッサ、ここは宇宙世紀に入る前から天然資源や天然ガス、鉱物の宝庫でありユーラシア連邦にとってもシベリア地下資源に次ぐ重要な地方であった。

 

特にここはシベリアにはない火力発電プラントがあり、NJによって原子力発電が使用不可能になった今の地球圏にとってエネルギー問題は切実であり、オデッサだけで欧州全土のエネルギー需要を賄っていた事実を含めるとある意味その価値は首都と同等かそれ以上にも及んだ。

 

当然ここを守るべくユーラシア連邦軍は開戦以来相当な戦力を守備においていたが、しかし現在その戦力はある理由により大幅に減少していた。

 

オデッサ鉱山基地にて、この日オデッサを預かる基地司令はとある人物と極秘裏に合っていた。

 

「では黒海や中央アジアに出現している連邦軍のMSは陽動と?」

 

疑り深い視線が目の前の男に注がれる。

 

「少々・・・将軍は我々の事を過小評価なされている。我々が行うのならば少数ではなくもっと大胆にそして大規模に行うでしょうな・・・例えばインドマドラスの部隊を動かすとか」

 

確かに男の言うとおり連邦軍にしては動かす部隊が少なすぎた、あれでは戦局にさほど影響を与えることは出来ないだろう。

 

「しかし現にあれのお陰で北へ送る兵力の移動に少なからず問題が起きている。我々を拘束している間に南を包囲するつもりじゃないのかね」

 

「ええですからそれも含めての陽動なのですよ」

 

基地司令は男の意図を掴みかねた。

 

「実は政府高官の中には連合軍と講和したがっている者も多い、が同時に余りレビル将軍に功績を建ててもらってもこまるんですよ」

 

つまり男の言うことはこうである。

 

連邦政府の中には連合軍と講和したい勢力が一定数存在しており、戦争継続を訴えるレビル将軍はその邪魔であると。

 

故にここでレビル将軍に痛い目を見てもらい、その後講和なりなんなりを結ぶ。

 

この話はすでにユーラシア連邦政府の中にも流れており、つまりは壮大な茶番劇が行われようとしている、と言うことである。

 

「なるほどな」

 

と基地司令は全ての話を信じる訳ではなかったが、しかしこの時すでに彼の下にも連邦軍が北方への攻勢を強めているとの情報が入っており目の前の男の話とも矛盾しなかった。

 

「判った、しかし此方も守りを疎かにするわけにはいかん。何も敵は連邦軍だけではないからな」

 

「ではモスクワを見捨てるので?」

 

「それを決めるのは私ではない、しかいまあ敵が”北方"から攻めでもしてこない限り、現有戦力で十分だとはおもうがな」

 

男は基地司令の意図を読み取り、「ではその通りにお伝えします」とだけ応えた。

 

「ああ、エルラン将軍に宜しくと伝えておいてくれ」

 

基地司令は鉱山基地から飛び立つドラゴンフライを見送った後、彼は直ちにモスクワへと連絡を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「では予定通りオデッサの部隊は動かないのだな?」

 

「はい閣下、ユーラシア連邦軍は我々の話を完全に信用した様子でした」

 

基地司令と話していた男、ジュダックは上官であるエルランに先ほどのことを報告していた。

 

予定通り行くのならばまず間違いなくレビル将軍は手薄な”北側”からオデッサを攻撃するだろう。

 

そうつまりは全てはエルランが仕掛けた謀略である。

 

彼はゆっくりと少しずつユーラシア連邦軍や連合軍に情報を流すことで信頼できる相手だと思わせ、それをもっとも有効に活用出来るタイミングを狙っていたのだ。

 

無論信用を得るために之まで彼が流してきた情報は本物である、たしかに連邦の中には連合軍との早期講和を望む一派が存在するし同時にレビル将軍を排斥したいと思う勢力も存在した。

 

が、同時にエルランは連邦軍人として連邦内での軍人の影響力拡大も願っていた。

 

そしてエルランは政府と軍部内の勢力を匠に泳ぎ、レビル将軍にさえ悟られずにここまでの情報網を構築することに成功していた。

 

無論今回の謀略が成功してしまえば、かれがこれまで築き上げた信頼は一挙に崩壊するだろう。

 

だがそれと同時に、連合軍も崩壊することは明らかであった。

 

そもそも重要なエネルギーと資源の供給国であるユーラシア連邦が陥落すれば、いかに残る二国が戦争を継続しようとも物資の不足によりそれも早晩崩壊する。

 

そうなれば地上に連邦に対抗できる勢力は無くなり、晴れて建国以来の悲願であった地球の統一が達成されるのだ。

 

それを成した功績に比べれば、多少の情報漏洩や裏切り行為など容認される。

 

そして行く行くはレビル将軍を・・・

 

エルランはそこまでの事を妄想し、その中である気がかりがあった。

 

「宜しい、が少し気になることがあるな。例の部隊のことだが・・・」

 

「はい、しかしレビル将軍肝いりでして中々情報が・・・しかしあんな少数では戦線の突破は難しいでしょう」

 

「だと良いのだがな・・・」

 

ジュダックとの通信を終えたエルランは、この時ふといやな予感におそわれていた。

 

そしてそれは正しかった事が後に証明される。

 

なぜならジュダックが乗ったドラゴンフライがユーラシア連邦軍の鉱山基地から飛び立つところを、例の部隊ことホワイトベース隊のガンダムとそのパイロットに目撃されていたからだ。

 

これが後にエルランにとって致命的になるのだが、この時の彼はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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