連邦の野望   作:rahotu

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灼熱のオデッサ

オデッサの戦い初戦、所謂連邦軍主力がモスクワへ向かっているとユーラシア連邦軍が誤認していた頃、黒海南岸より突き上げるように侵攻を開始した地球連邦軍に対しユーラシア連邦軍は戦闘を優位に進めていた。

 

クリミア半島セヴァストポリ基地から出撃したユーラシア連邦黒海艦隊からの艦砲射撃の援護により、地球連邦軍は中々前進できずにいたのだ。

 

艦隊の火力は地上軍の比ではなく、特に旧式戦艦ボロシーロフ、キエフの火力は絶大であった。

 

黒海という安全な内海から長距離で放たれる40㎝越えの主砲の威力は、沿岸部近くに連邦軍を全く寄せ付けぬほどであったのだ。

 

無論連邦軍もこれを沈黙させようと空軍を差し向けるも、あくまでも敵を引き付ける助攻ということもあり、彼らに割り振られた航空戦力では分厚いオデッサ防空軍を突破することは難しかった。

 

そして川と海に守られたオデッサ防衛軍は、このまま連邦軍を磨り潰せるかとかに思えたが・・・

 

 

 

 

 

宇宙世紀0079 11月7日未明 この日史上最大の軍による今時大戦における最大にして史上でも最大の作戦が開始された。

 

ビックトレー級バターン号に座乗するレビル将軍の号令により、全軍が一斉会頭した地球連邦軍は手薄なオデッサ北部へ雪崩れ込んだ。

 

これはオデッサ防衛軍にとって突如として後背に敵の大戦力が現れたのと同義であり、その混乱は筆舌に尽くしがたい。

 

記録に残る限り、この時連邦軍本隊が北部より現れたとの報告を受けたオデッサ基地司令は半狂乱し、なんども「ありえない、こんなことはありえない・・・」と亡霊のように呟いたという。

 

兎に角この全く予期せぬ方向からの奇襲により、オデッサ防衛軍の戦線は崩壊。

 

両翼を伸ばしたレビル将軍率いる連邦軍により、オデッサは同日には完全に包囲されたかに見えた。

 

砲撃と罵声が飛び交い、巨大な鉄の巨人が大地を踏みしめ進む。

 

敵の必至の防衛を嘲笑うがごとく、連邦軍が戦線に投入した先行量産型MSこと陸戦型ジムは手に持つ100㎜マシンガンで敵ごと大地を耕す。

 

上空はフライマンタやデブロックなどの爆撃機で埋め尽くされ、それらを護衛するトリアーエズやコアファイターの群れが地上に向け機銃掃射を行う。

 

戦線の遙か後方からはガンキャノン、ガンタンク部隊による猛烈支援砲撃が行われ、それに負けじと通常の砲兵部隊も砲身が赤く溶けるほどの砲撃を行った。

 

だがそれよりも遙かに敵に恐怖を与える存在があった。

 

「砲撃、よーい撃て!!」

 

指揮車両であるビックトレーに先導された陸上戦艦第四打撃部隊と最新鋭の陸上戦艦であるヘビィ・フォーク二隻から三連装主砲三基計九門にも及ぶ苛烈な砲撃が飛ぶ。

 

海上の戦艦程ではないとは言え、それでも破格の威力を誇る砲撃は敵の陣地ごと巨大砲弾で押しつぶした。

 

特にこの戦いに参加したユーラシア連邦将兵の中には、巨大砲弾特有の飛翔音を聞くだけで半狂乱になる者が出るほどその威力は絶大であった。

 

虎の子のMSそして陸上戦艦、なによりもその圧倒的物量の前では地上のいかなる軍隊も対抗できない。

 

もはや連邦軍は単なる軍事行動という枠を超え、自然災害級の人間には防ぎきれぬ暴威と化していた。

 

地上を進む61式戦車を阻む者はなく、歩兵が歩む地面には無残な残骸と成りはてた連合軍の主力戦車リニアタンクだったものが転がり、敵がこもる拠点だった場所をMSが容赦なく踏み進める。

 

未明に始まった連邦軍の攻勢によりオデッサ防衛軍は陣地を捨てて逃げるほか無く、圧倒的戦力に劣る彼らは鉱山地帯に逃げ込みそこで絶望的な籠城をするほか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ユーラシア連邦首都モスクワ その大統領執務室にてウラジミール新大統領は集まった参謀達にむけ罵詈雑言を吐いていた

 

それが終わるまで黙って絶えて聞いていた参謀達と、ようやく怒りが納まった頃を見計らって腹心の一人がやっと声をかけた。

 

「大統領閣下、それで如何いたしますか?」

 

「決まっているだろう!今すぐ援軍を送るのだ、オデッサを失陥することは何としても阻止せねばならない」

 

大統領がそう叫ぶが、しかし集まった参謀達の反応は思わしくはない。

 

「ですが大統領閣下、増援を送るには川を渡らねば成らず、しかし先の連邦軍侵攻にそなえ橋は全て落としてしまいました」

 

「他の橋を探すか新しく作れば良いではないか!そんなことも判らないのか貴様らは」

 

大統領は苛立ちを隠さずにそう吐き捨てる。

 

「しかし今から出しても果たして間に合うかどうか・・・」

 

「間に合うかどうかではない!それを何とかするのが貴様らの仕事ではないか、これ以上私を失望させるな」

 

しかし最後には有無を言わさぬ口調で参謀達を追い出すと、大統領は改めて側近達を集めてとある指示を出した。

 

「将軍達は信用成らない。口惜しいが連合軍に援軍を頼むほかない」

 

「しかし一体どこから?どの国も自分たちのことで手一杯かと・・・」

 

「今から間に合うのは宇宙軍しか有るまい。何とかして月の亀共を動かすんだ」

 

同じ頃大西洋連邦でもオデッサの窮状が伝えられていた。

 

これには当初地球連邦軍とユーラシア連邦との共倒れを狙っていた者達も驚き、大統領が緊急の会合を開く始末である。

 

この迅速な情報の伝達と動きの裏には、一族やロゴスの陰がちらついたがこの緊急事態の中でそれらはさほど気にされなかった。

 

「今すぐユーラシアに派兵すると成ると国内に動かせる軍はありませんぞ」

 

「まさかパナマの部隊を動かすわけにはいくまい、とすればここは他の構成国に期待するしか・・・」

 

「暴動が起きかかっている東アジア共和国をあてにするのか!?奴らが出来るのであれば我々がとっくにやっている」

 

壮麗な大会議室に集まった連合軍諸将達だが、その議論はいっこうに進む気配を見せなかった。

 

と言うのも、連合軍のどの国も何とか戦争を継続しているに過ぎずその内情は非常に逼迫していたからだ。

 

そんな中で他国を気にする余裕など、あるはずがなかった。

 

「さよう、しかし送らないという選択肢はない。とすると・・・」

 

「月しか有るまい。現状即応できる軍は宇宙軍しかない」

 

「しかし具体的な方法は?まさか宇宙からそのまま降って来るわけにいくまいて」

 

「くそう、こんな事ならアークエンジェル級を量産すべきであったか」

 

「過ぎたことを言ってもしょうがあるまい。それにここで構成国を見捨てたとあらば連合軍の存続すら危うくなる」

 

辛うじて大国三つが協同することで何とか地球連邦そしてプラントに対抗できていたが、ここで構成国の一つが脱落し連合軍が空中分解してしまえば之までやってきた事の全てが無駄になってしまう。

 

それを防ぐ為にも彼らには選択肢は無かった。

 

しかしここで彼らはあることを見落としていた。

 

自分たちが強大な連邦に対抗するため連合を組んだように、地球連邦にもまた強力な同盟国が存在するということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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