オデッサ陥落、その報は瞬く間に全地球圏を駆け巡った!
連邦軍の圧倒的物量とトドメのジオン軍による軌道降下作戦により、オデッサ守備隊は僅か3日で降伏。
オデッサ陥落により、ユーラシア連邦は資源地帯及び重要なエネルギー拠点を失い今次大戦における継戦能力を喪失し、地球におけるパワーバランスは大きく地球連邦・ジオン共和国に傾いたと言える。
最早ユーラシア連邦の脱落は秒読み間近と言う段階であり、連合軍はその前に起死回生の一手に出る必要があった…。
アラスカ基地地下通称グランド・ホロウと呼ばれる連合軍最高司令部にて、現在参加できる限りの連合軍上層部メンバーが一堂に会していた。
議題は勿論オデッサ陥落についてだがそれだけではない…
「オデッサ陥落によりユーラシアは急速に干あがりつつある。連合軍内での物資提供だけではユーラシアは維持出来ないぞ」
何度も述べるがNJにより地球圏で深刻なエネルギー危機が生じている今、オデッサ周辺の資源と火力発電プラントは正に生命線であった。
そこを連邦軍に奪われたことにより、ユーラシア連邦は深刻な飢餓が訪れようとしていたのだ。
「しかしこちらとても資源が無限にある訳ではない、今少しユーラシアには耐えてもらう他あるまい」
「温暖化の影響で北半球は年々冬の時期がずれ込んでいるとは言え、流石に12月になれば雪と氷で大地が閉ざされるぞ!物資も燃料もない今のユーラシアが耐えらる訳がない!!」
シベリアの永久凍土が溶ける程の温暖化とは言え、それに比例するように冬の厳しさは増す一方である。
特にエネルギーが届かなくなったウラル山脈以東の地域は、極寒の大地に沈む事になるだろう。
「さよう、仮に冬を越えられたとして果たしてユーラシアに戦える力が残っているかどうか…いやそもそも国があるのかさえ分からん」
「兎に角、細々とは言え支援は継続する他あるまい。ここでユーラシアが脱落してはパワーバランスが崩れる所の話ではない」
連合軍が結成された背景には、加盟国単独では決して地球連邦に対抗できないと言う現実があり、特にユーラシアの陸軍力は地球各地の戦線を支える上で不可欠な存在であった。
「一層の事、この機に連邦と和平しては…」
「馬鹿か貴様⁉︎今ここで我々が弱気な態度を見せれば空のバケモノ共に付け入る隙を晒すだけだ。それにそんな事をすれば今まで抑えてきた各地の不満が爆発しかねん」
と一人の将官が人目も憚らず荒々しく机を拳で叩いた。
彼が言うように、プラントとの戦争を継続する上で連合軍は自国や各地にかなりの無茶をさせてきた。
本来ならNJの被害によって受けた各地を救済する為の物資さえ、軍事用に流用している始末である。
それと言うのもプラント無くして成り立っていた経済が、そのプラントが独立してしまえば成り立たなくなってしまうかもしれない。
そもそも危険なコーディネイターを野放しに出来ないと言う国民感情もあり、連合軍は文字通り命を削ってでもこの戦争に勝たねばならなかった。
「どちらにしろ、崩れたパワーバランスを戻す必要がある。」
「しかし一体どこに余剰戦力がある。アフリカもアジアも陽動だったとは言え、その陽動にさえ手を焼いているのが現状だぞ」
連邦軍が欧州上陸前に仕掛けた地球全土での大規模陽動作戦により、アフリカ・アジア方面の連合軍は足止めされ一部地域では突破や浸透を許していた。
「こう言っては何だが、今の我々では現状を支えるだけで精一杯だ。よしんば戦力があったとしても一体何処にぶつけるのだ?まさかオデッサを取り戻そうと言う訳ではあるまい」
敵に占領された拠点をいち早く取り戻すのは当たり前と言っては当たり前だが、その占領された拠点オデッサには地球連邦軍の地上における主力が集まっていた。
しかもそれを率いるのはあのレビル大将であり、到底真っ正面から戦って取り戻せる確率は低い。
「戦力の一部はパナマから転用する。位置的にも丁度いいしな」
その提案に今度こそ会議室が騒めく、皆パナマの重要性は十分過ぎるくらい認識しているのだ。
オデッサの陥落により明日にでもザフトが攻勢をかけて来るやも知れない今、パナマまで陥落してしまうような事態になったらどうなるのか。
並み居る将官達は声を一同にして反対した。
「馬鹿な事を言うな!パナマの重要性が分かっていないのか?いや仮に分かっていたとしてその戦力を何処に向けようと言うのだ」
「そうだ、今更アジア・アフリカ地域に援軍に出したとしてそれでは所詮場当たり的な対応でしかない。そなんな事に貴重な戦力をすり減らされてたまるものか⁉︎」
だがそれも、次の一言でシーンと静まり返る。
「目標は、ジャブローだ」
会議室はその瞬間、水を打ったように静まり返った。