連邦の野望   作:rahotu

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ベルファスト、血に染めて

「ベルファスト、血に染めて」

 

オデッサでの戦いを終え、漸く連邦軍本隊と合流できたWB一行は連邦軍の欧州拠点であるベルファストでこれまでの戦いの傷を癒していた。

 

これまで孤独に戦い続けてきたWBとそのクルーにとって暫し安全な場所での休息を得た事によってゆとりが出来、各々その進退を選ぶ時間が与えられたのだ。

 

WBをこれまでアムロ達と共に守ってきたガンキャノンのパイロット、カイ・シデンはWBを降りる事を決めた。

 

カイは漸く戦争を離れ、自由の身となったつもりでいるその影でWBを狙う影が海の中から薄っすらと現れようとしていた…。

 

 

 

 

 

イベリア半島の付け根にあるザフトの地上侵攻用の拠点ジブラルタル基地。

 

そこに所属するボズゴロフ級潜水空母は、潜望鏡を上げベルファストのドックに係留されているWBの様子を探っていた。

 

「連邦軍の次の一手を探る為偵察任務を請け負ったは良いが、まさか木馬に出くわすとわな」

 

潜水艦の艦長、アーミー・ハレルソンは潜望鏡を戻しながら一人そう零した。

 

アーミーと言う名前なのに潜水艦乗りと言う事で良く初対面の人物に奇妙がられるこの男だが、元は旅客機のパイロットであり戦争が始まってからは宇宙戦艦乗りから潜水艦乗りと本人でもつくづく丘には縁のない男だと良くボヤいていた。

 

「ハレルソン艦長、今こそ木馬を仕留める絶好の好機です!直ちに攻撃しましょう」

 

副官がそう進言し、発令所にいるクルーもこの大物を目の前にしてヤル気に満ち溢れていた。

 

「そうだな」

 

とハレルソンは言いながらも、彼は自分に与えられた役目の事を考えていた。

 

あくまでもジブラルタル基地の命令は偵察であり、現場の独断専行を良しとするザフトであれそうおいそれと手を出して良いものか。

 

艦長が悩んでいるが、実を言うと以前からジブラルタルのザフトは連邦軍の動きをある程度察知しながらも敢えて見逃して来たのだ。

 

と言うのも、アフリカやカオシュンのアジア戦線とは違いジブラルタル・イベリア半島のザフトはそこまで連邦軍とぶつかる事は無かった。

 

寧ろ彼等の主敵は連合軍であり、敵の敵は味方と言う理論でもって連邦軍の戦力集中を邪魔する事なく二虎競食の計でもって欧州で泥沼の戦いを期待していたのだ。

 

しかしその目論見は完全に外れ、欧州どころかユーラシア連邦が殆どトドメを刺されてしまった結果、ジブラルタルは今や敵の圧力を真正面から受ける形となっていた。

 

結果みすみす敵の動きを見過ごしたとして、アフリカや本国からジブラルタル基地は追及を受けているのだが…。

 

最もジブラルタル基地は来るべきパナマ攻略の重要な拠点であり、ザフト潜水艦隊の母港でもある。

 

それ故ここで連邦軍を刺激し、いたずらに戦力を消耗したくはない。

 

しかしここで何かしらの行動を連邦軍に対して取らなかった場合、今のジブラルタル基地司令は苦しい立場に置かれる。

 

その為一応の言い訳と行動をとったと言う結果ぎ欲しいと言う消極的な理由により、今回の偵察任務が決まったのだ。

 

さて、そんな上の政治的な事で命令されたとはつゆ知らず、艦長は考えあぐねていた。

 

「確か、工作員があの街にいたな」

 

「は、現地で雇った者ですが木馬に潜入させるのですか?」

 

「現有戦力ではベルファストの守備隊を相手にしてられない。しかし陽動をかけ工作員を潜入させる。木馬の動きを探れば連邦軍の次の一手が見つかるやも知れない」

 

艦長は自分に与えられた命令は威力偵察も偵察のうちと拡大解釈し、血気に流行る部下達をそれとなく誘導しつつ必要最低限の戦力で事を済ませようとした。

 

「陽動ですからあまり戦力は裂けません、でしたらここは一つ例のアレを使ってみては如何でしょう?」

 

「アレか?使い物になるのか」

 

副官の言うアレとは、現在ジブラルタルで開発が進められている物の事である。

 

来るべきパナマ攻略と対MS戦を意識して開発が進められているそれの試作機が、この船には載せられていた。

 

「パイロットの訓練は完璧です。それに木馬とやりあうのなら生半可なMSではダメです」

 

と副官の強い要望もあり、艦長は新型の試作機の出撃を許可した。

 

そしてこの後すぐ、彼はこの判断を後悔する事となる。

 

 

 

 

 

「こ、このゾノが水中で破れるのか⁉︎」

 

水中で絞られたガンダムのビームサーベルにモノアイを突かれながら、ゾノ試作機のパイロットは最期の断末魔をあげる。

 

「敵の新型、凄いパワーだった」

 

ガンダムのコックピットの中で、アムロはそう言いながらも彼は冷や汗ひとつかいていなかった。

 

度重なる戦闘で戦士として覚醒を遂げつつあるアムロにとって、最早生半可なMSやパイロットでは相手にならなくなっていたのだ。

 

アムロはガンダムを上昇させ、海中から出るとベルファストの被害状況を確認した。

 

所々建物が黒煙を上げ、消火作業が行われているがしかし既に戦闘は終わった後様子であり、連邦軍は警戒しつつも瓦礫の撤去などに追われている。

 

ドックにて修理中で身動きが取れないWBを狙い突如としてザフト水中MSが襲撃を仕掛けてきたものの、ガンダムやほかのMSの活躍もあり敵を撃退した。

 

戦闘中に一度退艦した筈のカイ・シデンもWBに戻ってくるなどという嬉しい事もあり、また主力が出払っているとはいえ腐っても欧州連邦軍の拠点。

 

すぐさま敵の母艦を見つけようと付近の基地から駆潜艇やドン・エスカルゴが押し寄せ、今も海上では必死の捜索が行われている。

 

アムロは後は味方に任せれば良いと、WBに戻っていった。

 

だがこの時既に、戦闘の混乱に紛れて一人のスパイがWBに潜入していた事をただ一人を除いてWBクルーは知らないでいた。

 

そしてその一人こそ、何を隠そうカイ・シデンその人なのである。

 

「ミハルの奴、上手くやれてるかな?」

 

「ま、俺が気にしたところでしょうがないか」

 

奇しくも奇妙な運命のいたずらによって絡まった二人の糸は、戦いの中でどのような結果を生むのであろうか?

 

 





今回のザフトのポカ

「あ、敵同士が争ってる、しめしめそのままお互い殺しあってくれよ〜」

結果

「うげ、一方が大勝して相手を吸収して手がつけられなくなった⁉︎」

と言う良くあるお話。

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