超闘争   作:四脚好き

1 / 6
この前、劇場公開ギリギリで初めて原作見たんですよ。あぁ、もっと前から見ておけばよかった。とっても面白かったです。

あ、今回はフロム要素少なめです。


第1話

ツクヨミ

────────────────────────

 

 仮想空間『ツクヨミ』。国内外の登録者が一億人を突破する大規模ネットコミュニティ。『ツクヨミではみんなが表現者!』とツクヨミの管理人も言っている通り、多くの配信者、デザイナーなど多くの人間が集っている。

 そんなツクヨミ内で遊べるのが『KASSEN』ここ数年のゲーム業界を席巻している、戦国時代の合戦をモデルに作られたフルダイブ型アクションゲーム。そんなゲームのフィールド上に俺はいた。

 

 走る、奔る、疾走(はし)る。竹林の中を走り回り獲物(対戦相手)を探す。

 

「見つけた」

 

 そして見つけた。かぎ爪を両手に装備し動きやすさ、というか被弾を最小限にする目的があるであろう薄着のスキンの対戦相手。竹林からの奇襲を想定していないのかフィールドの道を普通に歩いている。右手に持った十文字槍を構えなおし一気に突撃。

 

「いざ!」

「ッ!?」

 

 右手を引き絞り、左手を槍の先端に添えて急接近。竹林のガサガサ音が聞こえて相手もこちらに気が付いたがもう遅い。

 

「牙突き」

「のわッ!?」

 

 相手はかぎ爪を胸の前でクロスしてこちらの攻撃を防ごうとしたようだがそんなものは無意味。防御の上からねじ伏せる。槍が突き刺さった相手の体からは血の代わりに花びらが舞う。

 

「せいッ!」

「おっと」

 

 僅かだがHPが残っていたようで相手は回し蹴りを繰り出してくる。しかしこちらが与えたダメージの影響か動きは遅い。余裕をもって避けられる。両手のかぎ爪に回し蹴り、格闘家ビルドか。しかもこのツクヨミ内でよくある変形機構持ちの武器でもないようだ。つまり正面切っての真剣勝負が相手の土俵。

 

「いいねぇ、好みだ。そういうの。けど残念。そこまでだ」

「キャッ!?」

 

 相手の連撃を槍で弾きながら隙を見て十文字槍の横の刃で足を切りつけながら引っかける。そうして体勢を崩し仰向けに倒れた所に顔面目掛けて槍を突き刺す。するとHPが全損したのか相手の体は一気に花びらへと変わり、俺の勝利を告げるアナウンスが流れる。

 

:相変わらず強えぇ……

:またノーダメ勝利だし

:え、今何戦目?

:寝る前に配信始めたと思ったらまだ続けてて草

:長時間配信に定評のある渡り鴉

:そろそろ休め、渡り鴉

:渡り鴉、寝ろ

:そろそろ配信終わってくれ、俺達の方が持たない

 

 視界の端のコメント欄に困惑とこちらを心配する声が多くなり始める。今日はまだ11時間しかたっていないが?

 

「いや、まだ続ける。誰でも良いお前たちの中に俺と戦ってくれる奴は? もしくはどこかでKASSENの参加型配信してるライバーはいないか?」

 

 『渡り鴉』それがツクヨミでの俺の名前。主にKASSENの配信をしているゲーマーでいくつかの大会のトロフィーも獲得している。長時間と圧倒的なプレイングスキルが売りだ。……自分で言うと少し変だがそういう評価を貰っているんだ、仕方がない。

 

:勘弁してください

:ヒェッ

:殺さないで

:誰が好きで蹂躙されに行くんだよ。

:無理です

:渡り鴉! 今、帝アキラが暇つぶしってSETSUNAやってるよ!

 

「ほう!」

 

 帝アキラ! 良いな、少しは手ごたえのあるやつがいるじゃないか……。

 

:あ、スイッチ入った。

:憐れ帝……

:このスイッチ入るときの渡り鴉の声滅茶苦茶ビビるわ

:ほんっとうに戦うの好きなんだな。恐ろしいわ

:顔見えないけどニッコニコなんやろなぁ

 

「当たり前だ。お前たちならもう理由は知ってるだろう? そう―――

 

:身体は闘争を求める

:身体は闘争を求める

:身体は闘争を求める

:身体は闘争を求める

 

―――身体は闘争を求める。からな」

 

 ウチのチャンネルの視聴者たちも大分分かってきくれているようで嬉しい。さてと、スマコンは少しばかり熱いがまだまだいけるはず。さっそく帝アキラの所に殴り込みを……。

 

「はいはーい、そうはさせないよー」

 

 KASSENのフィールドに浮かんでいた参加者募集中の表示が消えたかと思うと空から大きな玉手箱が落ちてきた。そしてその玉手箱の中からツクヨミの運営にしてナンバーワン配信者、月見ヤチヨが姿を現した。

 

「ヤチヨか」

「うん! ヤッチョだよ! それで渡り鴉、あなたまたスマコンのアラートオフにしてるでしょ。使用者の健康の為に使用を中止してくださーいってアラートさっきからずっとなってるよ?」

「……やかましいからな。あれは切るに限る」

「モー! 切ったらダメでしょ! オヨヨ、神々のみんなに何かあったらヤチヨは悲しいのです。だからここは私の為にもここで配信を終わりにしてほしいのです……」

 

 ヤチヨはそう言いながら袖を目元に持って行き泣く演技をする。

 

「……知らん。何があろうとそれは自己責任だろう」

「なっ!?」

 

:ヤチヨキターーー!

:毎度毎度ウチの渡り鴉がスイマセン

:この戦闘狂止まらないんすよ

:『ヤチヨに迷惑をかけるな渡り鴉』『止まれ渡り鴉』『寝ろ、渡り鴉』

:またトレンド独占してて草

:この子止まらないんです。だからもう、頼れるのはヤチヨしかいなくて……!

:ヤチヨのお願いを断れる唯一のツクヨミライバー

 

「うんうん、渡り鴉のファンの皆の為にもヤッチョが一肌脱ぎましょう! ほら、渡り鴉。私が満足させてあげるから私に負けたら配信止めるんだよ?」

 

 そう言いながらヤチヨが対戦相手として設定される。ヤチヨはまるで槍の様な長めの番傘を武器として手に持って俺と同じ構えをとる。……いつもこうだ。俺が長時間配信をしているとこうしてヤチヨがやってきてこうして俺の配信を止めに来る。その時ヤチヨは俺の動きを学習しているのか俺と同じ構えをする。しかし相手がAIだからか俺よりも動きが良い。俺の動きを更に精度を高めて、鋭く、早く昇華させている。だから俺は毎回ヤチヨに負けて配信を終える形になる。

 

「……今日こそ俺が勝つ」

「ふふーん、ヤッチョも簡単には負けられないのです」

 

 試合開始の合図と共に俺達な何度も切り結ぶ。俺を止めに来てくれているヤチヨには悪いが俺はこの瞬間がとてつもなく楽しい。まるで師匠との手合わせをしているような感覚。彼女の技を盗み、学び、俺はまだまだ強くなれる、そう確信している。

 ……あぁ、お前と戦いたいがために俺はこうして長時間配信(無茶)をしているのかもしれないな。

 

「……負けた」

「はーい、ヤチヨ大勝利ー! ブイブイ!」

 

:???

:いや、やっべぇよどっちも

:多分ヤチヨの方はお助けヤチヨじゃなくて本体だからこんなに強いんだろうけど……

:なんで生身の人間がチートも使わずにAIの反応速度とタメ張ってるの?

:お前頭おかしいよ。

:流石ツクヨミ最強プレイヤー

:最恐の間違い定期

 

「ほらほら、ヤッチョの勝利だよ。渡り鴉の配信はここでお終い。しっかり休んでまたツクヨミに来てね!」

「……分かったよ。それじゃあ、今日の配信はここまでまたな」

 

 そう言って俺は配信を切り、ツクヨミからログアウトする。

 

「次は勝つ」

「私的にはもうこんな無茶しないで欲しいんだけどな~。――――またね九朗

 

 

 

通学路

────────────────────────

 

「はぁ……」

 

 ヤチヨに敗北したくやしさを胸に玄関を開けて学校へと向かう。どうやったら勝てる? ……いや、確実に勝利に近づいて来てはいる。かつては一本も削れなかったヤチヨの体力ゲージ、今回は半分も削れた。それに今思い返せば要所要所でもう少し削れたかもしれない。

 

「ふふ、次が楽しみだ……」

「ダーメッ! ヤチヨも毎回言ってるでしょ! アンタは長時間配信し過ぎ! 毎回毎回ヤチヨに迷惑かけて! いい加減にしなさいよ!」

 

 アパートの鍵を閉めながらそうほくそ笑んでいるとアパートの二階から叱られる。声の方向に視線を向けるとアパートの二階に住むクラスメイトの一人、酒寄彩葉が階段を下りてきているところだった。才色兼備、文武両道な超人だろうか。確か母親との付き合いが悪いとかなんとかで一人暮らしをしていている苦労人でもある。

 

「……俺の勝手だろう。そもそもなんでアイツも毎回俺に突っかかってくるんだか……」

「アイツじゃなくてヤチヨ!」

 

 入学式の日、念願の一人暮らしということで少しばかり浮かれて玄関を開けた瞬間、目の前に同じ高校の制服を着た彼女がいたときは驚いたものだ。それからはご近所さんということでそれなりの付き合いを続けている。

 

「くま、誤魔化せてないぞ」

「え!? あ、ありがと。……って流されないから!」

「チッ」

 

 彼女の眼の下のくまを指摘して話題を逸らそうとしたが失敗に終わった。この酒寄彩葉、大のヤチヨファンなのだ。だから配信の時のようにヤチヨが現れるとヤチヨと俺が話しているという嫉妬と俺がヤチヨに迷惑をかけているという怒りが混じった感情をこうしてぶつけてくるのだ。

 

「突っかかるって言ってるけど九朗だけだからね!? スマコンのアラート切って長時間配信するなんてことやってるのは!? 他の長時間配信のライバーさんたちもそこまで長時間配信しないし、そもそも負荷が少ない雑談とかだから! 高負荷のKASSENを長々やるの九朗だけだよ! スマコンの長時間使用で目にダメージ行ってるんでしょ? 今はメガネで済んでるけどそのうち失明するよ!?」

 

 近くまで寄ってきて俺のメガネを突っつく彩葉。しかし失明か……。

 

「そうしたら……ヤチヨみたいに電脳の世界で生きたいな」

「は?」

「肉体の枷を外れ、永遠に戦い続けられる喜びを感じられる……」

「……ほんと戦バカ」

 

 そんな軽口を叩きながら俺と彩葉は学校へ歩いていく。これが転生者、烏丸(からすま)九朗(くろう)の日常だ。

 




小説版読んでて驚いたのがスマコンが熱を帯びるという部分。機械である以上仕方がないのかもしれないけど、眼に入れる物が熱を帯びるの……? とはなりました。というわけで主人公くんはスマコンの長時間使用と長時間配信で目にダメージ行ってるのでメガネです。

烏丸(からすま)九朗(くろう)
アバター名 渡り鴉
アバターの見た目 ゴーストオブツシマのブラッドボーンコラボ装備。 顔は見えない。
武器 十文字槍と腰にある刀

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。