超闘争   作:四脚好き

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第10話

ツクヨミ

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「すげぇな……」

 

 かぐやいろPチャンネルとして活動を始めた二人だが予想以上のスピードで人気が出ている。正しく快進撃という言葉がぴったりだ。これは俺がファン数で抜かれるのもすぐだろうな。

 彩葉に聞いたがかぐやには地球の常識がない、これが良い方向に作用しているらしい。思いついたことを片っ端からやっていく。後追い、二番煎じ、気負い、照れだとかが一切ない。やりたいこと、面白いと思ったことをやり続ける元気ハツラツ美少女は受けがいいようだ。

 それに芦花や真実も夏休み中にかぐやと遊んでくれているようだ。お願いしたかいがあったな。

 

「うひょ~、芦花の言う通りにメイクしたら自撮り爆盛できちゃった。はい、これもアップ! ついでに盛れなかったNGバージョンもアップ!」

 

 うん、芦花もかぐやも元が可愛いから凄く反響があった。ほら、折角だから芦花とかぐやで並べよ。写真撮るから。はい、チーズ。

 

 

「やった真実おすすめのお店のお取り寄せが届いた! 緊急で動画回しちゃいまーす」

 

 ……美味そう。やっぱ真実の選ぶ店にはずれが無くて最高だ。んぇ? 俺の分も頼んでたの? ありがとう。

 

「あー、そういうのどうでもいい! キッチリ片を付け! 忘れる! 忘れるって人生で一番大切な能力だからね! や、甘い事言って責任取らないやつにはなりたくないし! それがかぐやの優しさ!」

 

 ヤチヨの真似のお悩み相談。中々勢いのある解決策が飛び出てくる。けどまぁ世の中にはかぐやぐらい物事をズバッと言ってくれないと分からない人もいるわけで彼女の言葉は励みになるだろう。

 

 

 

 

 

 ツクヨミの街中を歩きながらここ最近のかぐやの配信を思い返し隣に話しかける。

 

「で、どうだオタ公。良いだろ、かぐやは?」

「はい! とっても可愛くて、歌も上手で! あれなら直ぐに人気ライバーの仲間入り間違いなし!」

 

 オタ公はそう言いながら興奮で両手をブンブン振っている。テンションたけぇー……。

 

「そうか。ならお前に紹介しておいて良かったよ」

 

 ライバーを見る目ではツクヨミ内においてオタ公の右に出る者はいない。彼女に注目されたライバーは必ず人気が出る。

 

「連絡してくれた渡り鴉さんには本当に感謝ですよー。ほら、かぐや・いろPチャンネルファンクラブの会員証! №2ですよ! いやー、流石に渡り鴉さんに№1は譲っちゃいましたけど」

 

 え? №2?

 

「俺はファンクラブに入ってないぞ?」

「え!? そうなんですか? って! いやいや、登録してあげましょうよ!」

「えぇー……」

「『えぇー』じゃないですよ! 親戚の子なんでしょ、応援してあげましょうよ!」

「親……戚……?」

 

 俺とかぐやが? どういうことだ? 俺の困惑を超えから感じ取ったのかオタ公が首を傾げる。

 

「あれ? 少し前のカカさんとゲリラコラボした配信で言っていた『親戚の子』ってかぐやちゃんだと思ったんですけど違いましたか? あの元気いっぱいな姿は確かに面倒見るの大変そうだろうなーって思ってたんですけど?」

 

 あー、確かにそんなこと言ったな俺。確かにあの言葉はかぐやに向けていったものだから間違ってはないか。

 

「ん、いや合ってる。俺がそのことを配信で言ったのを忘れて居ただけだ」

「そうでしたか! というか渡り鴉さんはコラボしたりしないんですか?」

「あぁ、今はまだしない」

「おやおや? 今は、ということは……」

 

 実を言うとかぐやには何度か一緒に配信しようと言われているが断っている。勿論配信の裏方とかでは手伝っている。主にかぐやの買い物の荷物持ちとか、アップはされていないが、かぐや、彩葉、芦花、真実の4人でダンスしている動画のカメラマンとかをしている。

 

「まずは一人でやりたいことをやらせてみて、行けるとこまで行ってみろってことだ。ある程度人気が出てから俺はかぐやと絡むからな」

 

 そう俺が言うとオタ公の眼がジトっとしたものに変わる。

 

「かぐやちゃんも撒き餌にするんですか?」

「ん? あぁ、だが撒き餌じゃ終わらない。かぐや自身極上の獲物になると睨んでいる」

「また炎上しますよ。……ってそれも狙いですか」

 

 ふふふ、流石だオタ公。俺のことをよくわかっている。かぐやには人を惹きつける力がある。それこそ竹取物語のかぐや姫のように。これからもっと人気になる。多くのファンを獲得する。そんなとき俺がフッと現れれば気に食わない連中が必ず出てくる。きっとツクヨミ内で絡んでくる連中もDMで勝負を仕掛けてくる奴も現れるに違いない。

 

「あぁ、きっと楽しくなるぞ……」

「その考え方とか改めれば渡り鴉さんはもっと人気出ると思うんですけどね……」

「ムリダナ。あ、オタ公この後時間あるか?」

「え゛!? も、もしかして"また"……ですか?」

 

 おいおいそんなに嫌そうな顔しないでくれよ。

 

「頼む! 前に着てもらった隠者の別バージョン『暗闇』がこの間完成したんだよ! あとグウィネヴィアの衣装も!」

「えぇ……どっちも良く分からないんですけど……」

「お願い! オタ公にしか頼めないんだよ……」

 

 オタ公の手をとって片膝をついて頭を下げる。ふ、ふじゅ~も上げるし、なにかアイテムが必要なら買ってくるし、インタビューにも協力するから頼むよォ! 

 

「わ、私だけ……。んもう、しょうがないですね……」

「! ってことは!」

「その代わり、私以外にこんなこと頼んじゃダメですよ。嫌われちゃうかもしれませんから」

「やったー! ありがとう、オタ公!」

 

 よし、ヨシ、良し! またまた俺のフロム再現アルバムが厚くなるぜ! 

 

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 オタ公の撮影会を終えた俺はほくほく顔で海に来ていた。

 

「まだまだ足りない! どうすればいいのだー!」

 

 かぐやは夏休み中盤に入り、その順位を280位まで上げていた。まったくの無名からのスタートで、ツクヨミ内のライバー人数を考えれば大健闘なのだが、優勝目指す我らかがかぐや姫は現状に不満の様だった。砂浜の上に広げたレジャーシートの上で、ゴロゴロと転がり不満を表している。

 

「ゆ゛う゛じょう゛じだい゛い゛ーーー!」

「ほらほら、暴れるなかぐや。折角可愛くしてもらったのが台無しになるぞ」

「ヴッ、う゛う゛う゛でも゛ぉ゛……」

 

 現在俺、かぐや、彩葉、芦花、真実、瑛斗の6人で海に来ていた。最初は女子会的なノリで彩葉たちだけで向かうつもりだったらしいのだが、流石に女子だけでは……となり俺と真実の彼氏の瑛斗くんにナンパ除けとしてお声がかかったわけだ。

 かぐやの水着はいつの間にか芦花と買っていたらしくてかぐやの活発的なイメージと合わさって輝いて見える。……よくこの暑い太陽の中あんな元気だな。

 

「こないだの歌配信めっちゃ良かったけどねー」

「ね、かぐやちゃんゲームも歌も上手いよね」

 

 芦花が女子たちの髪の毛をセットして上げながらそんな会話を始める。その間、俺はレジャーシートから少しだけ離れた位置に立って静かに海を眺めている瑛斗に近づいて声をかける。

 

「よ、瑛斗くん。早速だが、『KASSEN』しない?」

「しない。というかお前は海にも持ってきているのか?」

「え、逆に持ってこないの?」

 

 うっそマジか瑛斗……。相手が持ってきていないんじゃ、真実にどうちょっかいかけても無理じゃん……。というか最悪リアルのほうでパンチが飛んできかねない。……俺のあしらい方が手馴れてきたな瑛斗!

 

「今の俺たちは彼女たちと海を愉しみに来たんだ。お前も偶には仮想じゃなくて現実の彼女たちを見たらどうだ?  真実に見惚れて居たら容赦はしないがな」

 

 目が怖ぇよ。まぁないならしょうがないか。俺はスマコンをカバンの中に戻す。にしても、現実の彼女たちねぇ……。

 

「彩葉、可愛いうえに天才すぎ~」

「オリジナル曲最高だったよー」

「あれは昔に作った奴だから……」

 

 芦花と真実に褒められて照れているのか彩葉が顔を二人から逸らした。あ、目が合った。

 

「俺も彩葉の曲好きだ」

「ど、どうもッ!」

 

 あ、こっちからも目を逸らして太陽の方向いちゃった。実際いい曲なんだしそんな恥ずかしがる必要ないのに。

 

「意外だな」

「んぇ?」

 

 瑛斗の声に顔を向ければ彼が少し驚いた顔で俺を見ていた。

 

「お前『KASSEN』以外でそんな幸せそうな顔するんだな」

「マジ? そんな顔してた?」

「あぁ。……彩葉のことすきなのか?」

 

 瑛斗がこっそりとそう言ってくる。彩葉ぁ? うーん、『KASSEN』の相手としては滅茶苦茶好きだけどそう言う意味じゃないんだろ? ……んー。

 

「仮想ではなく現実を見ろ、と言った俺がこう聞くのは変だが。お前の周りには彩葉、芦花、かぐや、カカ、オタ公、ヤチヨと普通の男性ライバーじゃあり得ないくらい女性との絡みがあるだろ。どうなんだ? 誰が好みなんだ」

「なんでちょっとテンション高いのお前」

「野郎同士のコイバナなんてこんなもんだ」

 

 そ、そのテンションの高さを『KASSEN』に向けてくれませんかね! しかし好みか……。目の前で水着を着てじじゃれてる彼女たちを見て考える。確かに皆綺麗だし、可愛いとは思うけど、恋愛とかそういう方面で考えると特に誰が好みとか思い浮かばないなぁ。これが前世であれば答えは出ていただろうし、もしかしたら欲深い回答をしていたかもしれない。けど、今はそんな感情がまるで湧いて出てこない。……ふふ、俺の人間性も限界と見える。

 

「特にいないかなぁ……」

「……それでお前は彼女たちにあんな対応してるのか?」

「たい……おう?」

「お前いつか刺されるぞ」

「それ帝アキラにも言われた」

 

 俺の返事に瑛斗は頭を抱えた。対応って俺なんかへんなことしたか? 大切な友達ならアレくらいは普通だろう。

 

「はいはーい! 私有るよ、ナイスアイディア。やはりここは彩葉が着ぐるみを脱いで新たな需要を―――」

「はい、却下」

「あーっ! 嘘! 今の噓だからー!」

 

 あ、なんか真実が彩葉に焼きそば没収されて食べられてら。

 

「真実、いったいどうしたんだ……」

「うぅ、かぐやちゃんのファンを更なる増やす案を提案したらこんなことに……」

 

 そう言えば稀にかぐやの配信に出現する彩葉はいつも狐の着ぐるみを着ていたな。確かに彩葉も可愛いから着ぐるみを脱げば新たな需要、ファン獲得に繋がりそうだが……。

 

「いやなのか?」

「嫌」

「せっかく可愛いのに」

「はぁ!? い、いやいや、絶対嫌だからね!」

 

 そんなに嫌なら仕方がないか。

 

「そういう所だ……。はぁ、真実。新しいの買って来るか?」

「瑛斗~、お願ーい」

「あぁ、待っていろ」

 

 そう言って瑛斗は新たな焼きそばを買いに屋台の方に行った。あー、俺もなんかお願いすれば良かった。

 

「やっぱ歌! オタクもみんな喜んでたし!」

「オタクいうな」

 

 そう言えばかぐやはカカの『小鴉』や黒鬼の『子ウサギ』みたいに自分のファンたちに名前を付けていないな。だからこそのオタク呼びなんだろうが……。うーん、パッと思いつく良い呼び名はないな……。

 

「ねえー彩葉ー。新曲作ってよー演奏もしてー」

「これ以上勉強もバイトも減らせません」

 

 ……ん? もしかして彩葉ってかぐやからふじゅ~受け取っていないのか? かぐやの人気ぶりだそれなりの額はあるだろうし家賃として少しは徴収しても良い気がするんだが……。いや、しないか。もしそれが出来るようなら彩葉と母親の確執もあんなに深いモノじゃないだろうし。かぐやがもう少し、彩葉の心に踏み込めたら、分からんけどな。

 

「でも海来てんじゃん!」 

「フッ マジなエリートは遊びも疎かにしないはず。睡眠時間削ってでも遊ぶ」 

「それはどうなんだ?」

「倒錯してるよねぇ……」

 

 俺と真実が可笑しなこと言ってる彩葉を指摘する。……いや、目のくまはないから実際に睡眠時間を削ったりはしていないんだろうが、なかなか恐ろしい事を言ってくれる。

 

「このままじゃ、優勝できない……。かぐやのこと助けて……彩葉にね、伴奏してほしい……」

 

 あ、ダメそう。彩葉の頬がやっちゃ引き攣ってる。

 

「ま、まぁ時間が空いてたら……ね」

「ぶふっ」

「笑うなァ! 戦バカァ!」

 

 あっはははは。予想通りだ。かぐやのおねだりに彩葉は耐え切れず承諾の言葉を口にしていた。あー、面白。

 

「このっ、このッ!」

「痛っ、ちょ、叩くな! 叩くな!」

 

 恥ずかしさを誤魔化す為かこちらをポカポカと叩いてくる彩葉。バイト先のカフェで培われた力か!? 思ったより威力あるぞ!?

 

「ちょろはだねぇ……」

いいなぁ……

「よっしゃーっ! もっともっと配信するぞー!」

「ちょ、お前ら!? 誰でも良い、助けッ、――ろ!」

 

 ちょ、マジで力強ッ!?

 

「は、ははは! どーしたのかな、九朗くーん? ツクヨミではあんなに強いのにリアルでは女の子に負けちゃうのかなー!?」

 

 彩葉!? 彩葉さん!? やっぱり睡眠時間削ってたか!? テンションおかしくない!?

 

 




・獅子堂瑛斗 多分もう登場しない。真実の彼氏という原作キャラに名前と出番を上げたかったんだ。 九朗の数少ない友人。獅子で瑛斗(8)、モデルはお分りですね?

・九朗君、食事も睡眠も削って『KASSEN』しているため、体育10でバイト先で体動かしまくっている彩葉に比べると力が弱い。
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