超闘争   作:四脚好き

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第14話

まみまみのホーム

────────────────────────

 

『みんなのために、わんわんお! ヤチヨカップの公式実況担当、忠犬オタ公です! 

 今日も元気に職務果たしちゃいまーす! 今週もヤチヨカップ特集、暫定4位までは公式を要チェキ! 君の推しはいるか? 

 ではでは、トップスリーの発表だ。3位、癒やし系アイドル湯雲ぬくみ! 2位、ハイスペエルフ、テレリリ・ティートテート! そして、下馬評通り独走状態だ。堂々第1位、ブラックオニキス! もはやこの3人で決定か?

 ちな圏外だけどランキング爆上げ中のチームがいるんだよね。みんな知ってる? ――――』

 

「いやー、黒鬼圧倒的だねー」

「ヤチヨカップって新規ライバーの方が有利なはずなのにあいつ等可笑しいだろ……」

「んー、終盤でこの差はちょっとキツイかなぁ」

「むぅー、どうしたらいいのだー!」

 

 俺、かぐや、芦花、真実は真実のツクヨミ内での姿『まみまみ』のプレイヤーホームに集まってツクヨミ公式ニュースを眺めていた。本当は現実の方で集まる予定だったが彩葉の体調が戻ったばかりなのを考慮してツクヨミ内集合に変えたのだ。かぐやはすでにログインしていて彩葉は少しだけ遅れるらしい。

 俺は芦花と共に三人掛けのソファに座りながらホームを見回す。……やっぱホームにふじゅ~かけてるなぁ。グルメ系インフルエンサーと言うのが関係しているのかは分からないが大きなキッチンがあるし、釣り堀、ちょっとした水耕栽培の畑まである。ツクヨミ内に味覚が実装されていないことを考えるとマジで雰囲気づくり……ロールプレイの一種だ。

 いや、ロールプレイは大事、ソウルゲーでは特に。効率や強さを求めるのも良いが、偶には上級騎士一式とアストラの直剣だけで周回したくなるものだ。……中盤からキツかったけど。

 そんなことを考えていると彩葉がホームに入って来た。

 

「調子はどう?」

「もう大丈夫そう。ありがとね」

 

 芦花が彩葉に声をかける。それに対して彩葉は軽く返事をする。声に違和感とかもないし完全復帰って感じだな。

 

「九朗も。ありがと」

「……ッ、あ、あぁ」

 

 彩葉が隣に座ってきてそう言う。が、正直俺はなにもできなかったと思う。初期に指示をしただけで殆どのことはかぐやがやっていたし、病院に連れて行くこともできなかった。何ともなかったからいいけれどこれで実は重大な病気であのまま、なんて事になったら大変だった。それなのに俺は嫌われるのが怖くて何もできなかった。

 おまけに最後にはあの場に居るのが辛いからと言う理由で彩葉の手を離しちゃったからな。あの時の彩葉は病気で心細かったんだと思う。自分が寂しさを吐露した時は彩葉とかぐやに支えて貰った癖に自分が支える側になったときは怖くなって逃げるとか……。はぁ、最低だ。前までならこんなごちゃごちゃ考えなくて良かったのに……苦しいなぁ……。

 

「ここ、座るね」

「うぇ!? あ、おぅ」

 

 彩葉がするりと俺の隣に座って来た。しょ、正直、ものすごく気まずいから俺の隣じゃなくて奥にあるもう一つのソファに行って欲しかったけど! 芦花、彩葉に挟まれて座る俺。

 真実のホームに一番乗りしたときには広かったソファも今や若干狭い……気がする。三人掛けのソファの真ん中に座ってた俺が悪いのかもしれないけど……だって真実に『ここに座ってて』って案内されたし……。

 

「……ふふっ。いやー、黒鬼強いねー。まぁ、当然か。帝様だもんね~」

 

 そう言いながら家主の真実はご満悦顔で自慢の釣り堀に釣り糸を垂らしていた。そういや、真実は帝のファンだったか。というかおい、一瞬こっち見て笑っただろ。なんだ、こうなるって分かってたのか? 

 

「真実の裏切り者ぉ」

 

 かぐやは一人バスタブに浸かりながら不満げな声を出す。……外にバスタブって。仮想世界してるなぁ。

 

「一応かぐやも二推しで推してるよー」

「やーだー、かぐやだけにしてー! くそー、帝出てこい!勝負しろー!」

 

 おいおい。帝と勝負って。いくらかぐやが才能溢れているとはいえ現段階だと勝てないぞ?

 

「あ、それいいんじゃない。かぐやVS帝でゲーム対決ってのは?」

「さっすが芦花、それだ!」

「無理に決まってるでしょ、受けてくれるわけないじゃん。向こうはトッププロゲーマーだよ? 格が違うって」

 

 芦花の提案にかぐやが勢いよく食いつくが彩葉が待ったをかける。……向こうはプロ。仕事だからなぁ……。いや、ゲーム好きなのは間違いないんだけど、そう言う所しっかりしてる連中だし。おまけに今のブラックオニキスは完全独走状態、周りのライバーとコラボするメリットも薄いだろう。

 

「だってえ~! ヤチヨカップ終わっちゃうよ? 迎えが来るかもしれないしー!」

「来るなら早く来てくれー、連れて帰ってくれ~」

 

 二人のやり取りにハッとなる。そうだ、迎え。俺はいつの間にかかぐやがこれからもずっと一緒にいるものだと思っていたけど、迎えが来る可能性があるのか! がくり、と足元が揺らぐような感覚がした。かぐやが、いなく、なる? 待て、待ってくれ、まだ全然戦えてない。まだ全然満足できてない。かぐやは俺を一人にしないって言ってたのに……。

 

「―――う? くろう? 九朗!?」

「――ん?」

「九朗、大丈夫!?」

 

 うお、芦花、ちか。声に反応した目の前に芦花の顔があった。

 

「ごめん、考えごとしてた」

「そ、そう? 九朗も体調崩してたりしない? 顔色悪かったよ」

 

 芦花はそう言って俺の頬に手を添える。

 

「笠、外す様になったんだね」

「あぁ、どうせもう顔バレしたんだ。隠す必要もない。戦闘時には付けるけどな」

 

 現在の俺のアバターはいつも装備とは違って笠を外しているため顔が露出している。元々アバターとは言え配信で顔出すはどうかと思ったり、フロムの装備って顔隠れてる方がかっこよくない? という思いで被っていた笠だ。顔バレした以上もう隠す必要もない。

 

「おかげで顔色にもすぐ気が付けたし、九朗の顔も見えるから私はこっちの方が好きだな」

「そうか? まぁ、なら暫くはこれで行くか」

 

「わっ! びっくりした!」

「ん?」

「かぐやちゃんにメールが来たみたいだね」

 

 急にかぐやの大声が聞こえてきてなにごとかと思ったがどうやらメールが届いただけらしい。

 

「これって……」

 

 かぐやがメールを見て再び驚愕の声を上げる。なんだ? 

 

「彩葉……言ったよね。プロゲーマーは格が違うって……」

「だから何よ?」

 

 え……もしかしたのか? ソファから立ち上がりかぐやの見ているメールを見させてもらう。

 

「じゃーあ、断れないよね! 格上プロゲーマーからの挑戦は! 大物釣れたぁ! よっしゃー!」

「かぐやちゃん! 魚が逃げるから!」

 

 大興奮のかぐやはバスタブに浸かっていた恰好のまま釣り堀に飛び込んだ。 集まっていた魚がかぐやの飛び込みで散り散りになり真実が悲壮な声を上げている。

 

「マジか……」

「終わった……」

 

 そんなかぐやと真実を放置して俺と彩葉はかぐやに届いたメールを見て驚愕していた。

 

『Black OnyX 帝アキラさんからのメッセージ

初めましてかぐやちゃん!

俺はBlack onyXブラックオニキスの帝アキラ

ファン数百万人おめでとう! 

ここからは提案なんだけど……

KASSENで帝vsかぐやの竹取合戦ってのはどう?

かぐやちゃんが負けたら……やっぱ俺と結婚、かな?

こっちが負けたら、なんでもお願い聞くよ

俺らでツクヨミ盛り上げようぜ!』

 

 ほーん? 俺からの『KASSEN』は断る癖にかぐやを『KASSEN』に誘うのか……へぇー。

 その時俺の方にもメールが届いた。差出人は帝アキラ。このタイミングで? まぁ読んでみるか。

 

 

『Black OnyX 帝アキラさんからのメッセージ

よっす、帝アキラだ。もしかしたら一緒に読んでいるかもしれないが

今、かぐや・いろPチャンネルにコラボ依頼してるんだ。

それでちょっと気になったことがあってな

ツラかせよ、渡り鴉』

 

茶屋

────────────────────────

 

 俺は帝アキラからの呼び出しを受けてツクヨミ内にある茶屋の一つに訪れていた。ま、茶屋とは言うがツクヨミに味覚はないから実質的にはツクヨミの美しい景色を見ながら会話できる談話室みたいな感じだが。

 

「……」

「どうかしたか?」

「いや、相変わらずの人気だな、と」

 

 仮想空間の談話室の利点として周りの客の会話が聞こえないというのがある。席一つ一つが個別のチャットルームになっているという訳だ。ただそれでも視界は通る訳で。

 

「ほら、またファンが手を振ってるぞ」

 

 茶屋の二階、大通りを見下ろせる位置の席についてしまえば逆に大通りからも見られるという訳だ。眼下には多くの帝ファンがこちらを見上げていた。それに帝アキラが手を振ってみせれば声は聞こえないが黄色い悲鳴が上がっているのが視界から理解できる。ファンの民度自体は良いのか一度ファンサをすればすぐにファンは流れていく。それでも次から次へとファンがやってきてきりがない。

 

「アレは俺へじゃねぇよ。渡り鴉、お前に手を振っているんだ」

「オレぇ?」

「あの子が手に持ってるのお前の笠と同じデザインだろ?」

 

 そう言われて目を凝らせば確かに俺と同じデザインの笠を持っていた。……軽く手を振っておいてやる。ファンサってこういうもので良いのだろうか。

 

「これで良いか?」

「そう言えばお前はそういう対応するタイプじゃ無かったもんな。良いんじゃねぇの? ……! そうだ、女の子のファンが来たら投げキッスでもしてやれば良いぞ。きっと大喜びに違いない」

「そうなのか」

 

 人気者になりたい訳ではないが、応援してくれている訳だしそれくらいはしてやっても良いのかもしれない。

 

「さてと、それじゃあ本題に入るか。単刀直入に聞くぜ、かぐやちゃんといろPとは、どういう関係だ?」

 

 なにか、ピリついてる? 少しばかり帝らしくもない。

 

「どういう関係と言われてもなぁ……。かぐやが配信で口を滑らした通りだ」

「へえー? 流石にそれではい、そうですか、とはなれねぇな」

「随分突っかかって来るな帝アキラ。らしくない」

 

 互いに笑っているが語気は強く雰囲気も険悪だ。なんだ? なにが帝アキラをここまでらしくなくさせている?

 

「正直に話すつもりはないと?」

「そもそもかぐや達と無関係な人間のお前に何故二人のことを話さなきゃいけない?」

「言わないつもりなら潰してやろうか?」

 

 お!?

 

「『KASSEN』か!? それなら雷と乃依も連れてくると良い! 三対一! それで対等だ!」

「……」

 

 楽しみだ。とてもとても楽しみだ! 最近の俺の弱くなった心をたたき直すには持ってこいの相手だ! わくわくして武器を手に取り立ち上がる。

 

「さあ、やろう! 早くやろう! 武器をとれ! 二人を呼べ! ステージはお前たちが選んでいいぞ! 存分に策を練り、死力を尽くしてくると良い! その悉くすべてをねじ伏せよう!」

「……はぁ、冗談だよ冗談。誰がお前相手に『KASSEN』で脅すんだよ。お前に挑むならもっと入念に準備してくるに決まってるだろ」

「……」

 

 なんだそれ、つまらん。俺は両手を上げて降参のポーズをとる帝アキラを見下ろす。

 

「ま、これなら大丈夫か」

「なにが大丈夫なんだよ」

 

 俺はどかりと席に座り直す。

 

「改めて、帝アキラこと酒寄朝日だ。彩葉の兄だ」

「うぇ?」

 

 彩葉の兄……? あ、ああーー! なんか彩葉から聞いたことある! 名前も一緒だ! 

 

「はぇー……驚いた。あ、お、驚きました」

「敬語なんて止してくれ。さっきまでと同じように喋ってくれて構わない」

 

 ……本人がそう言うなら別に良いか。

 

「んじゃ、そうさせてもらう。烏丸九朗。妹さんとは仲良くさせて貰ってる」

「へぇ、よろしく九朗くん」

「止めろ」

 

 お前にそんな風に呼ばれると鳥肌が立つ。

 

「意外に世界って狭いなぁ……」

「は、確かに。で、 彩葉はどうよ? 元気か?」

「この前ちょっと体調崩したけどもう直って健康そのものだよ」

「マジか」

「看病したのはかぐやなんで何かの機会でお礼言ってあげればいい。というか正体晒す気ある?」

 

 帝がいろPを彩葉だと認識してるのは分かったが、彩葉は帝アキラが兄ってしってるのか?

 

「おっけー、分かった。正体に関しては彩葉のことだ絶対俺には気付いてるぜ」

「つまりあれか。今の彩葉的には自分の兄が自分の友人に求婚してきたって感じか」

「あっははは、そうかもな! 彩葉どんな顔してた?」

 

 帝からのメールをみた直後の彩葉の顔……。

 

「fxで有り金全部溶かした人の顔」

「あっはははははは!」

 

 いや、笑いすぎだろう、この兄。

 

「でさ、どっちかと言うと聞きたかったのこっち何だけどさ」

「ん?」

「彩葉と付き合ってんの?」

「ないぞ」

 

 急にどうした?

 

「と言うかお前誰が本命なわけ?」

「……?」

「え、マジで誰とも付き合ってないの?」

「ああ」

 

 彼女たちは大事な撒き餌で、戦って楽しい奴等で、大切な友人だが?

 

「もし……恋仲になるとしたら……」

「おう」

「俺みたいなバカよりも真っ当でちゃんと今を生きてる人間と幸せになって欲しいと思っている」

「……お前さ」

「なんだ」

 

 興味心身でこちらに身を乗り出して聞いて来ていた帝が俺の言葉を聞いた瞬間、スンっとした顔で話しかけてきた。

 

「マジで刺されるなよ。というかそれをお前の周りの女に言うんじゃねぇぞ。とくに二人っきりのときとか」

「……? わかった」

 

 よく分からんが、人気者で人間付き合いに関しては俺より上の帝が言うことだ。聞いておいて問題はないだろう。

 

「これは彩葉も苦労するだろうなぁ……。ともかく、彩葉のこと、今は友人として支えてやってくれ」

「それはもちろんだ」

 

 なるほど。配信で見つけた妹の近くに知り合いの男がいたから、妹が心配になって連絡をよこしてきたという訳か。帝は随分シスコンらしい。

 

「あとさ、これも確認したかったんだけど渡り鴉ってさ妹いる?」

 

 リン? アイツの話題が何故帝から?

 

「いるが」

「水色髪で猫耳が生えてて、その……胸がでっかい感じの子であってるか?」

「合ってる。アイツがどうかしたのか?」

「いや、少し前にさ『弟子にしてください』って話しかけられたんだよ」

「マジぃ?」

 

 あ、アイツは何をやっている? い、いや、独学の努力を辞めて誰かに教わりに行ったのは成長だ。それは良い。なぜ! なぜブラックオニキス(プロゲーマー)に行った!? 言い方は相変わらずきつくなるが、無理だろ、それは。実力差がありすぎて何も得られないだろうが……。も、もっとこう……中堅レベルの実力者からステップアップしてブラックオニキスなら分かるが初手! 初手ブラックオニキス!?

 

「そ、それは、妹が迷惑を……」

「いや、別に迷惑なんてかけられてねぇよ。ただ弟子を取ったりはしてないから一戦だけして軽くアドバイスするぐらいならってやったんだよ」

「あぁ……それは……」

 

 アドバイスを送れるような時間、アイツは戦えたか? というか、アドバイス活かせそうか、アイツ?

 

「やっぱお前の妹だわ。切れとか重みは感じなかったけど狙いは正確だし、滅茶苦茶攻撃スピードとか速くて驚いたわ!」

「……なに?」

 

 




・策士真実、九朗をソファの真ん中に誘導する。
・顔を隠さなくなった九朗
・帝アキラは冗談でファンサの提案をした。尚帝氏は『本当にするとは思わなかった』と供述しており―――
・おや、リンちゃんの様子が……

九朗くんについて。四脚好き→四 友人→友

友「そういやさ、前妹ちゃんの話した時に九朗も設定がないって言ってたけど、どうなん?」
四「自分の中ではこういう見た目って決めてるんだけど、あえてそれを設定として出すことは無いかな。読者さん一人ひとりがイメージする九朗くんがあるだろうし、活躍の関係上ツクヨミ内の装備と武器だけ統一できれば良いかなって」
友「因みにお前のなかだとどんな見た目なの」
四「……ウマ娘のドリームジャーニーを男性化させた奴」
友「え、牡馬の美少女化させた姿をさらに男性化させるの?」
四「Tw〇tterかピクシブか、何で見たか忘れたけど男性化ドリジャ×ウオッカのイラストが癖に刺さって抜けないんだ。あの時何故は画面をスクロールさせてしまったんだ……」
友「……大変だな」
四「大変なんだよ」

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