超闘争   作:四脚好き

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第17話

特設スタジアム

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「さて、ここらで良いだろう」

「うん」

 

 俺たちは崩壊した天守閣跡で戦闘準備に入る。……取り合えずいつも通りの武器で様子を見るか。さて、リンの武器は……。

 

「ん? なんだ?」

 

 リンが二つの手にそれぞれ違う武器を持っている変則二刀流。けど、あれだなどっちも俺が作らせた奴。右手にシモンの弓剣に、左手にソードランス……? 一体どういうつもりの構成だ?

 カウントダウンが始まる。

 

『さぁ! ヤチヨカップのエキシビションマッチと化した兄妹対決が間もなく始まります! ツクヨミ最強と名高い渡り鴉の妹、リン! その実力はいかに!』

 

 何をしかけてくるか分からないが仕方がない。元々様子見はするつもりだったんだ。じっくり行こう。

 

「行くよ、お兄」

「あぁ」

 

 カウントダウンがゼロになる。

 

「存分に来るとい――――い? ッッッ!?!?」

 

 リンが目の前にいた。武器を振りかぶって。

 

「くッ!?」

 

 顔面に向かって放たれた横薙ぎを槍を滑り込ませ弾く。なんだ? なにがあった!? 何とか弾けた。相も変わらず技に重みがない。けど速度が尋常じゃない! 攻撃を弾いて一度距離を―――

 

「逃がさない」

「マジか!?」

 

 距離を取ろうとした瞬間、左手のソードランスで巨人狩りの動きで突っ込んでくるリン。何とか顔をのけぞらせて回避したが、戦闘の為に付けていた笠が吹き飛ばされる。

 

「ふふふ、お兄のその驚愕に歪んだ顔。ずっと見たかったの」

「ほざけッ!」

 

 のけぞった状態から無理やり腕を引き絞り牙突きを繰り出すが《避けられる》。今の避けれんのかよ! リンの奴、やっぱなんか普通じゃないぞ! 

 

「ふふ、ふふふ。さぁ、どうするのお兄!」

「チッ!」

 

 ソードランスの一撃を狙った動きと弓剣による連続攻撃が左右から高速で繰り出される。どうにか防御出来てるが……。この動きは……一体どういうことだ?

 


 

  

 

 

「九朗が、押されてる?」

 

 私は観客席であり得ないものを見ていた。あの戦バカが、ツクヨミ最強と言われる九朗が防戦一方だなんて……。横を見れば芦花も真実も驚きの表情を隠せていなかった。一方でお兄ちゃんたちブラックオニキスと黒羽カカさん、そして意外なことにかぐやも真剣な表情で戦いを見つめていた。

 

「ねぇ、帝。あのリンちゃんの動きってさ……」

「お、かぐやちゃんは分かったのか。流石アイツに期待されてるだけあるな」

 

 かぐやが何かに気が付いたらしくお兄ちゃんに向かって口を開く。それに対してお兄ちゃんは笑顔を見せる。なんだ? あの二人は何に気が付いたんだ。

 

「リンさんの動き、左手は私と渡り鴉さんの模倣、右手は帝さんの模倣ですね」

「正解。あいつは今俺とカカちゃんの二人、それも無茶苦茶高速バージョンと戦っている訳」

 

 今度はカカさんが口を開いた。え? 高速って、普通にお兄ちゃんの攻撃も大分早かったけど? それを防ぐだなんてやっぱ九朗の奴可笑しいでしょ。

 

「ただ完全に再現はしきれていない。個別で見れば威力が低かったり一個一個の動作の間に隙がある」

「再現度は70から80%って感じ♡」

「けど、右手の隙は左手がフォローして、左手のフォローは右手がしてる。良くもまぁ左右であれだけ別々の動きが出来るよ」

 

 さ、流石プロゲーマー。雷、乃依と続いて最後にお兄ちゃんが状況を説明してくれた。

 

「九朗は……勝てるよね」

 

 私は心配からそんな事を口にしてしまう。多分、九朗は自分を負かすぐらい強い相手が出てきたことに感激するだろう。あの日、初めて見た九朗の泣き顔。かぐやとは違う方向性の綺麗で可愛い顔が悲しみに染まりその目からポロポロと零れる涙。きっとそんな表情をしなくていいようになるのだからその方が良い。

 けど、どうしても、心のどこかで私は九朗に勝ってほしいと私は思ってしまう。九朗を倒すのは私のかぐやであって欲しい。あの二人の約束を見ている身としてはそう思ってしまうのだ。

 

「へえ……」

「な、なに?」

 

 私の質問にお兄ちゃんは意味深な視線を向けてきた。なんか変なこと言った私!?

 

「別に。心配ねぇさ、事実、アイツも対応し始めてる」

 

 お兄ちゃんの言葉に私はステージに視線を向ける。悔しいが私にはまだ九朗が防戦一方にしか見えない。けど、お兄ちゃんが言うのだから本当ではあるんだろう。なら、私に、私が九朗にしてあげられることは……。

 観客席の最前列、その手すりに捕まり目一杯体を乗り出して叫ぶ。

 

「がんばれーー! 九朗ーーー!」

 


 

 

 

『がんばれーー! 九朗ーーー!』

 

 応援……っていうかこの声、彩葉かよ! ガッツリ本名じゃねぇか!! かぐやかと思ったわ! 渡り鴉って呼んでよそこは! ネットリテラシーはどこ行った!?

 

「応援されてる。良かったねお兄」

「まァ……な!」

 

 リンの一撃を弾いて、返す刃で攻撃を仕掛けるが避けられる。互いに間合いから外れたことで静寂が訪れる。

 

「驚いたよ、リン。お前、カカだけじゃなくて俺や帝の真似もできたのか」

「見取り稽古って言うのかな。見て真似することはずっと昔から得意なの。私自身の技じゃないから以前お兄に言われた通り、完璧には追いつけないけどね」

 

 そう言いながらリンは武器を変えた。アレは……爆発金槌に夜騎兵のフレイル?

 

「だから、足りない力は速度と色んな人の技を《継ぐ》ことで補うことにしたの!」

「!」

 

 そう言って再びこちらに向かってくるリン。アブなッ! 

 

「お兄も……丸まっちゃえば良いんだよ!」

「その動き、マル=マリー・真珠か!」

 

 あの頭の可笑しい奴の動きまで真似してんのかよ! くそ、一体何人の配信を見て何人の攻撃を真似してるんだ! というか、良くそんなに左右で違う入力できるよな!?

 

「お兄、吹き飛んで!」

 

 撃鉄を上げた! 叩きつけか!? 爆発範囲からバックステップで避ける。予想通りリンは叩きつけを繰り出してきた。地面に金槌が叩きつけられて、先ほどまでいた場所が爆発に覆われる。

 

「あぶな――、マジ!?」

 

 目の前にリンの足。片手を顔の前に突き出して防御。ダメージの軽減には成功したが吹き飛ばされて地面を転がる。

 

「や、やった……。あぁ、お父さん、お母さん! 見て! 二人のお陰で、遂に私はやったんだよ! 素晴らしいでしょう! これでお兄に、もう一度家族に成れるの! ふふ、ふふふ。やった、私はやったんだあーっ! うふふふふふ」

 

 立ち上がると両手を突き上げて歓声を上げてるリンがいた。しっかし驚いた。今の攻撃はかぐやが俺に喰らわした一撃そのものだった。そんなものまで真似できんのか。というか、だっせぇ……同じ攻撃を喰らっちまった。

 

「リン」

「あ、お兄。どう? 私、お兄に一撃入れられたよ。凄いでしょ!」

 

 ……若干ハイになってるか。

 

「ああ、認めよう。強くなったよ、お前は。……だから教えろ。《何をした》? 複数人の技法を真似できるのは分かる。だが、その異常な入力スピード、普通のコントローラーならお前は絶対にできない。何を使っている?」

 

 俺は槍を構えその切っ先を向けながらリンに問う。

 

「え、えへへへへ。お兄が、お兄が褒めてくれた。認めてくれた。えへへへへ、ふふふふふ。ねえ、これからは一緒に遊んでくれる?」

「……お前に強く当たった俺にその資格があるなら」

「ある! 絶対ある! ううん、兄妹が一緒に遊ぶのに資格なんて必要ないんだよ! 今まで遊べなかった時間の分、一杯遊んでねお兄!」

「おぅ」

 

 こんな兄と遊べるのがそんなに嬉しいのか? まだ試合中だというのに思いっきりこちらに近づいて抱き着いてくるリン。仕方がないので頭を撫でといてやる。……本当に大丈夫なんだよな? 俺の体に思いっきり抱き着いてグリグリと自身の体をこすりつけるようにして時折震えてるけど?

 

「ッはぁ! うん、ひとまずここまで!」

「そうか、じゃあ続けて良いか?」

「うん!」

 

 再び武器を切り替えるリン。今度は黒弓か……。そして俺たちはどちらが口に出したわけでもなく自然と走り出し試合を再開させる。 

 

「シッ!」

 

 天守閣の残骸を足場に飛び跳ねながらこちらに弓を射ってくるリン。今度は乃依の動きか。しかしやっぱり早い。高速で迫る矢をはたき落とす。

 

「このまま説明するよ!」

「構わん」

「お兄はお父さんとお母さんの仕事知ってる?」

 

 え、両親って今生のだよな……。えっと……確か……。

 

「コンピューター系の開発者だっけ?」

「惜しいちゃ、惜しいかな。私たちの両親は『スマコンを開発、販売している企業が抱えてる研究所の内の一つの所長と副所長』!」

 

 ヤバくね? あ、ほら、会場もざわめきが起きてる。

 

「私、どうしてもお兄に勝ちたくてお父さんの研究所で作ってる最新型のデバイスの試作品、一個貰ったの!」

「……甘やかしすぎだろ!」

 

 いや、マジで何やってんだあの両親!?

 

「で、ツクヨミってスマコンがないと利用できないでしょ? お父さんたちの企業、ツクヨミのスポンサーでもあるの。それでヤチヨにお願いして正式に新型デバイスのテストプレイヤーにしてもらったの! 脳波を読み取って仮想空間内での非常に高速かつ精密な動作の実現を目的とした、仮想空間内のアバターとより"リンク"するための次世代型デバイス。それが『AMS』」

「……は?」

 

 AMS……え? え? 聞き間違いじゃない? マジで? あ、

 

「うぎゃ!?」

 

 茫然として矢を弾きそこなった。いてて、中々良いダメージを貰ってしまった。俺が攻撃を受けたことで流れが止まりリンも攻撃を止める。にしても……AMSかぁ。あぁ、普段だったら別に誰と試合しようとも気にしていないヤチヨが試合開始前に『相手は隣の見慣れない子かな?』って態々確認したのはあれだな。あいつ、リンが普通のデバイスじゃないことを知ってたからか。

 

「成程、普通のコントローラーじゃ実現不可能の高速入力も高機動戦闘の情報処理も脳にリンクさせちまえば実現可能か」

「……凄いね、お兄。もう理解できちゃったんだ」

 

 当たり前だ。こちとら何年リンクスやってたと思ってんだ。ACⅥが出るまでずっとACfa、ACV、ACVDをローテしてたんだ。

 

「しかし……その大丈夫なのか? 頭のフィードバックとか?」

「うん。そこらへんの安全対策もバッチリ。ただ今のAMSって大きいんだよね。大き目のヘルメットぐらいあるの。お父さんたちは今後研究して小型化していって最終的にはスマコンにこの機能を追加できるようにしたいみたい」

「そうかい」

 

 いつか、皆がこれをつけたらもっと、もっと『KASSEN』は楽しくなるだろうなぁ……。あぁ、とんでもなく楽しみだ。けど、そっか、そうか。普通のコントローラー(ノーマル)次世代機(ネクスト)に挑むのか……。おまけにリンはたくさんの配信者たちの戦法(UNACの戦闘経験)継ぎ合わせた(統合し、作り上げた)戦い方(オペレーション)をしてくる……。

 

「あぁ、涙が出そうだ」

「お兄?」

 

 そして俺は渡り鴉(黒い鳥)。ずっと、ずっと、もう一度味わいたかったシチュエーションが目の前に広がっている。追い求めて追い求めて、それでも届かなかったと諦めた夢の光景をもう一度、味わえる。頬が緩む。笑わずにはいられない。こんな嬉しいことがあるのか……。

 

「少し、厳しい事を言う。お前は強くなった。けど、その次世代機の力を以てしても俺を倒すにはまだまだ未熟。……まぁ、そこらへんは今度からお前にも教えてやるさ」

「お兄!」

「それとは別に俺は今、すごく感動している。凄く、満ち足りてる。ありがとう、リン。こんなダメで戦バカの兄の願いをお前は一つ叶えてくれた」

「お兄、笑って……! あぁ、良かった……。 また笑って、くれた……。良かった、私……ずっと、その顔がまた、見たくて―――。うぅ、ぐスっ。良かった。良かったよぉ……。お兄、もう一回抱き――「あぁ、何度でも。何度でも斬り合おう」―――え?」

 

 槍を投げ捨て、腰の刀に手を伸ばす。本来この刀を使うほどの力ではないが、このシチュエーション。全力で相手をしなければ意味はない。クルリとリアルで握っているコントローラーの《表裏を反転させる》。

 

 


 

「いや、そこは抱きしめてやれよ! お前ら兄妹に何があったのか分からないけどそういう流れだっただろ! 見ろ、リンちゃんの顔!」

 

 うん。あれは九朗が悪いと思う。ここは全面的にお兄ちゃんの意見に賛成。あの戦バカが負けることは無いと宣言して少しほっとしているが、それはそれである。

 

「あ、『頭KASSEN』の悪癖が……」

「あちゃ~……。ま、九朗だし仕方ないか」

 

 真実は頭を押さえながら何故か拳を握りしめているし、芦花は少しだけ笑みを湛えて仕方がない、と愛しいモノを見る目をしているし……。

 

「九朗って本当に『KASSEN』好きなんだね」

「ええ、本当に……。もう少し私たちに興味持ってくれても良いと思うんですけどね……」

 

 かぐやは嬉しそうな表情の九朗を見て笑ってるし、カカさんは若干遠い目をしている。

 

「んー、やっぱ最低♡」

「……手に負えないな」

 

 乃依と雷は半笑いだ。

 

『だぁっから、なぁんで貴方はそこでそうなるんですか!? もう、ちょっと! ちょっとだけでも女心と言うものをですね―――!!』

 

 凄いな。オタ公があんな怒ってるとこ初めて見た。……多分あの人も九朗に大変な思いさせられてるんだろうな……。

 ―――『綺麗だよ、彩葉』『彩葉、今すぐ脱いで』『脱がないなら、無理やり脱がすよ』―――私にあんなことばっかり言った癖にどうしてあの戦バカは次から次へと引っかけてくるんだ。そのくせ、リアルでは細っこくて柔らかくて、私以上に色々危ない。下手すると階段も危ないかもしれないし、引っ越し先の部屋は一階のを使わせよう。あと最近『KASSEN』以外にも興味持ち始めて出歩くようになったし、その時は私かかぐやのどちらかと必ず手を繋ぐようにさせよう。うん、それが良い。

 

「っておい、あれを抜くのか!?」

「マジぃ?」

「……!」

 

 ブラックオニキスの三人がステージを見て驚いているので私もそちらに意識を戻すと九朗が腰の刀に手を添えていた。

 

「あれって……九朗が本気を出すときに使うって言う?」

「あぁ、多分リンちゃんで抜かせたのは三人目……あ、この場合五人目か?」

「どういうこと?」

 

 3と5じゃ大分違うと思うんだけど。

 

「あの刀を最初に抜かせたはヤチヨだ。そして二回目が俺達ブラックオニキス。三対一で数々の策を練って、ようやく一回だけ刀を抜かせることに成功したんだ」

 

 私の疑問に雷が答えてくれる。なるほど、ブラックオニキスとひとまとめで見るか、個人で見るかで人数が代わるのか。

 

「あの刀ってそんなに凄いの?」

「ええ、とびっきりに。残念ながら私は渡り鴉さんに抜かせたことはありませんが……少し、羨ましいですね」

 

 カカさんが少しだけ寂しそうな表情をする。

 

「渡り鴉に刀を抜かせる。『KASSEN』の上級者にとっての不変の目標だよ♡」

「抜かせる。……倒すんじゃなくて?」

「……まぁねー」

 

 乃依の言葉にかぐやが質問すると乃依は誤魔化す様に一言だけ答えた。あぁ、もう倒せないって思われてるんだ。誰も九朗を倒せると思ってなくて、妥協点として刀を抜かせることを目標にしちゃったんだ。こんな空気をずっと九朗は味わっていたんだ。だから九朗はあんなにもかぐやに期待してるんだ……。私だって毎回勝ちに行ってるのに……少し悔しいな。もし私がかぐやだったら、もしヤチヨだったら九朗は……。

 


 

「……構えろ、リン。本気で行く」

「……良いもん。このあと沢山だきついてやるもん」

 

 刀を握る。最初はこれもフロムの再現をしようと思った。けど、やっぱり洋風の剣はツクヨミでは浮いてしまう。世界観に会わないんだ。この剣はその世界の最強であって欲しい。そんな俺の我儘で本来なら存在しない刀の形でコイツを作り出すことなった。

 何人もの有名クリエイターにデザイン案をリクエストして、出てきた案から気に入ったもの、気に入った要素を取り出し統合。リアルの刀鍛冶の所に行って実際に刀として作った際におかしなところがないかチェックしてもらい、場合によってはデザイン案の修正、提案もしてもらった。

 製作アイテムも強化素材も厳選に厳選を重ねた。その過程でどれだけの失敗作が生まれ、どれだけのふじゅ~が消し飛んだか。でも完成したその刀を見たときやって良かったと心から思えた。

 

「ここに、最強の一振りを……」

 

 フロムのある武器たちをモデルにしながら俺がツクヨミ用に作り上げたオリジナルの一振り。

 

 鞘から抜き放たれた刀身は淡い緑の光を秘めている。

 

 伝統にして、伝説。

 

 それは最強の証。

 

これが俺の(その名は)――――

 

 

月光

 

 

―――さぁ、覚悟しろ。黒い鳥がいざ参る」

 

 


 

 

 

「綺麗……」

 

 そう声を漏らしたのは芦花だろうか。綺麗だった。柔らかい緑の光が九朗が刀を振る度に舞い散る。先ほどまでとは違い、九朗が攻めに転じてリンちゃんがそれを防いでいた。一体どうやって脳波で行動を入力するデバイスに追いついているかは分からないけど、元々AIのヤチヨと勝負してきた男だ。深く考えるだけ無駄に違いない。苛烈に、反撃の隙さえ与えず、しかし決して騒がしくはない流れる様な攻撃でリンちゃんを追い詰めていく九朗。しかし二人とも凄く笑顔だった。笑顔で、何度も激しく切り結ぶ二人。二人だけの異常空間が出来上がっていた。

 あぁ、あれだけ騒がしかった観客たちも息をのんでいるのが分かる。はぁ、これはまた厄介なファンが九朗に増えそうだ。

 ほどなくして試合は九朗の勝利に終わった。はは、本当に勝っちゃったよ。けどあの笑顔、とっても嬉しそう。欲を言えばかぐやか私がその表情にさせてあげたかったけどしょうがない。その思いはリンちゃんだって同じはずだったのだから。

 オタ公が九朗に寄っていく。

 

『勝利おめでとうございます! 観客席のみなさんに一言お願いします!』

『観客に……ぁ! お、応援ありがとう! チュッ」

 

 は? なんだあの戦バカ。今、投げキッスした? ウインク付きで? しかもウインク失敗したよね。目、パチパチしちゃってるじゃん。は? 可愛いかよ。

 

「……」

「ろ、芦花ァ!? い、彩葉、芦花が倒れた!!」

 

 いや真実、あれは仕方がないよ。芦花は暫く寝かせておいてあげて。

 

「あ、あわわわわわわわわ」

「ぷふー! 彩葉見たみた? 九朗、ウインク全然できてなかったー! メッチャプルプルしてたー、あっはは。かわいーー」

 

 カカさんはなんかバグって震えてるし、かぐやは笑いすぎ。

 

「あっはははは! やべぇ、アイツ本気でやりやがった! はははは!」

「帝、イケないんだ~♡」

「お前が教えたのか」

 

 お兄ちゃんが腹を抱えて大爆笑している。え、お兄ちゃんが教えたの? マジで?

 

『あ、貴方はまた何やってるんですか!? 誰? 誰ですか!? そんな凶悪なファンサ誰に習ったんですか!?  というかもう一回やってください、スクショしますから!』

『誰ってえっと帝にだけど……? 凶悪? 不味かった?』

 

 オタ公の質問に九朗はお兄ちゃんを指さしながら答える。一斉にカカさんやオタ公、私、真実、リンちゃん、かぐやの視線か集中する。

 

「あ、やっべ」

 

 雰囲気を悟ったのかお兄ちゃんが逃げ出した。

 

「待て! 逃がすな!」

 

 私たちは武器を手に走り出した帝の背を追いかける。私の戦バカになに余計なものを吹き込んでるんだこのお兄ちゃんは!! 

 こうして竹取合戦から始まった一連の騒動は最後にみんなで帝を追いかけるゴタゴタで終わりを迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リンちゃんに九朗が勝った……? 可笑しい、やっぱりどこかで輪廻がズレてる? でも、どこで……」

 




・妹ちゃんの才能は見て、真似すること。しかしゲームプレイの才能がなく、頭では操作が出来ていても指が追い付かなかった。結果戦闘速度を落とすことに。しかし脳波で操作ができるなら関係ないよね! 
・しかも分割思考で右手、左手別の人間の真似をしてくるという実質二対一状態を作り出すことが可能。
・ヨヨヨ、ヤッチョもスポンサー様の試作デバイスのテストと言う名目は断れないのです~。おまけに上手く行けばツクヨミに五感を実装できるかもしれない技術だし。
・九朗くん、ずっと遊びたかったゲームと似たようなシチュエーションでテンション爆上がり。妹ちゃんの好感度もバリバリ上昇。しかし身体は闘争を求める。
・ナチュラルに引っ越しに九朗を連れて行く気の彩葉さん。もはや児童扱いである。
・九朗君のもつ最強の武器。それはかつての世界、いつも共に居てくれた伝説の剣。その名を受け継しツクヨミの世界に誕生させた『月光』
・ファンサ炸裂。投げキッスとへたくそウインク付き。
・妹ちゃんは至近距離スクショに成功してしまった。もうヘヴン状態。

因みにこの作品内だと誰好き?

  • 彩葉
  • かぐや
  • ヤチヨ
  • 芦花
  • 真実
  • 九朗(渡り鴉)
  • カカ
  • オタ公
  • リン(妹ちゃん)
  • 乃依
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