超闘争   作:四脚好き

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第2話

自室

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「……」

 

 学校が終わりアパートの自室へと戻って来た俺は荷物をおいて一息入れる。思えば随分遠くまでやって来た。

 いつも通り学校へ通い、家に戻りゲームをして眠りにつく。そして目が覚めると転生してました。まったく勘弁してくれ。

 二度目の人生は前世で俺が生まれた年よりも後の時代でスタートした。今世の親も大変優しく、前世の記憶を持ち変に大人びていて不気味だっただろう俺を目一杯愛してくれた。少し失礼なことを言うと前世よりも今世の方が大変裕福だ。……前世も一般的ではあったと思うんだけどな。

 

「だが、辛いことも会った」

 

 俺が今過ごしているこの世界。俺が前世でやり込んでやり込みまくって熱中したゲームが、いやゲーム会社そのものが無かった。『FromSoftware』通称フロム。この会社が世に発表していた所謂『フロムゲー』が何一つこの世界には存在していなかった。『キングズフィールド』も『アーマード・コア』も『ムラクモ』も『メタルウルフカオス』も『デモンズソウル』『ダークソウル』『ブラッドボーン』『エルデンリング』に『ぽかぽかアイルー村』も! 何一つなかった! 辛かった。前世であれだけ遊んだ思い出た血が何一つこの世界には無かったんだ。そのことが発覚した時は発狂ゲージがモリモリ溜まっていく感覚がした。正直当時の事を思い出すだけで―――

 

MADNESS

 

「―――ッッア!!?!」

 

 頭を押さえてもだえ苦しむ。 ……ッ! ふぅ……落ち着いた。やはり当時のことはあまり思い出したくないな。夢の中にでも鍵をかけてしまっておくのが良いかもしれない。悪夢の世界に、盗人のあろうはずがないのだから。

 話を戻せば俺はそれに気が付いてしまった時、深く絶望し悲しんだ。そして思い立ったのだ。『この世界にあの名作たちがいないのなら自分がこの世界に作り出してやる』と。そして二度目の生は年若くしてプログラミングなどを学んだのだが……うん。才能が無かった。努力だけではどうしようない圧倒的な才能の無さ。それにいくら大好きとは言え俺は全てのフラグ、全てのテキスト、全ての名詞を覚えきれていなかった。アーマードコアのパーツとか正式名称殆ど覚えてないぞ。ステータスの数値もおぼろげだし、こんな中途半端な知識で再現など出来るはずも、許せるはずもなく。俺は結局、クリエイターではなくプレイヤーだったのだ。自分でフロムゲーを生み出すことは不可能だと思い知らされたが身体は闘争を求め始めていた。この想いを一体どうやって消化させようか悩んでいるとき、

 

「出会ったのがツクヨミだった」

 

 俺は机の上に置いてあったコンタクトレンズ型デバイス『スマコン』を手に取る。ツクヨミの中でも俺が注目したのは『KASSEN』と呼ばれる対戦ゲーム。これだ! と思った。『ツクヨミではみんなが表現者!』とのうたい文句の通りツクヨミ内では様々な人がスキンや武器をデザイン、製作、販売しており、依頼をすれば望みのデザインをしてくれる奴等もいた。つまり、上手く行けば上級騎士や戦鬼の見た目のスキンで対人戦が出来るのだ。これはもう実質フロムゲーだろう。ということで親にスマコンをねだり俺は直ぐにツクヨミにのめり込んだ。

 

初ログイン

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「設定はこれで良いはずだが……」

 

 目を閉じるとそこに浮かび上がってくるのは大きな鳥居。そこを抜ければ足元はどこまでも続く浅い湖となり、幾つもの灯篭が道を照らしている。

 

「ナイトフォールか」

 

 宇宙港、若しくはアナトリア。幻想的な夕焼けの景色に思わず前世の記憶が漏れる。

 

「―――太陽が沈んで、夜がやってきます」

 

 そんな声と共に日は沈み、完全な夜になる。声のした方向に目を向ければ月をバックに白い髪の和服美女が立っていた。月に美女……まるで―――

 

「――かぐや――「ぇ……」――姫か?」

 

 思わずおとぎ話の様だと思ってしまった。あー、ただあれだなよく見ると所々海洋生物モチーフあるしどちらかと言うと乙姫か? まぁ、どちらでもいいがな。それに確かこいつは……。

 

「ツクヨミ管理人、月見(つきみ)ヤチヨだったか?」

「ッ……か、仮想空間ツクヨミへようこそ! 管理人の月見(るなみ)ヤチヨでーす! このモフモフはFUSHI!」

「ヤチヨが僕とツクヨミを作ったんだ!」

 

 ほー、ツクヨミとその毛虫を……。いや、そこらへんは別にどうでも良い。

 

「さぁ、出かける前に……その恰好じゃつまらない!」

 

 ヤチヨが指を鳴らすと目の前にキャラメイク画面が出てくる。勿論素性は素寒貧、持たざる者、生まれるべきではなかった一択……。あ、素性とかはない。そうですか……。純粋に見た目の話か……別にこのままでよくない? まぁこの部屋着のままは世界観が崩れるから適当な着物と……顔隠し用に浪人笠つけて、細かい服飾は戦いながら調整していくってことで。

 

「こんなもんで良いだろ」

「うんこれで準備は整ったね。それじゃあ……」

 

 あ? なぜかヤチヨが俺の手を握ったまま立ち止まる。ラグか? 待ってくれ対人したいのにこのラグはヤバすぎないか? 設定見直すか?

 

「ヤチヨ! ヤチヨ!」

「君は……何をしにこのツクヨミへ?」

 

 なんか急に質問が飛んできた。なんだこれ? チャートリアル案内なんて分身がやるものかと思っていたがもしかしてこれ、本人か? なんとまぁ、運営だけでも大変だろうに真面目というかなんというか。しかし何をしに、か。そんなものは決まっている。

 

「無論、戦いに」

 

 俺の望みはずっとこれだけだ。

 

「変わらないなぁ、九朗は」

「ん?」

「なんでもないよ! さぁ、いってらっしゃーい!」

 

 そう言ってヤチヨは俺を入って来たのとは別の鳥居に向かって放り込んだのだった。

 

自室

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 それから俺は適当な初期武器で『KASSEN』へと挑み、戦って、勝って、負けて。勝つことが多くなって、ふじゅ~を貰い。スキンを依頼したりして整え、配信を始め、人気も出て。今では『ツクヨミ最恐プレイヤー』なんて二つ名も貰った。……転生したての俺に言ってもきっと信じられないだろう。

 今日も今日とて『KASSEN』に向かおうかね。配信は……今日はしなくてもいっか。配信してなければ長時間プレイしててもヤチヨが来ないかも確かめたいし。

 そうして俺はいつものゲームセットを取り出してツクヨミにログインする。今日から三連休、戦って戦って、戦いまくるぞ!

 

 

 

 

「そのつもりだったんだがな……」

 

 

 あれから数時間後、ツクヨミではないリアルの方で玄関の扉がノックされたことでゲームは中断される。……今日何か配達の予定あったっけ? そう思いながら玄関の除き窓を除くと彩葉が経っていた。ん? よく見えないが彩葉は何かを抱えていてかなり焦っているように見える。捨て猫か犬でも拾ったか?

 俺は玄関を開ける。

 

「どうした、こんな時間に……ってお前はバイト帰りか」

「そうなんだけど、えっとひ、拾っちゃった……」

「……なるほど、そうなるか」

 

 混乱気味の彩葉は拾ったと言いながら自身が抱えているものを見せてきた。その腕の中に居たのはすやすやと眠る赤ん坊。赤ん坊か……。

 

「拾ったところに返してきたらどうだ?」

「そんなこと出来る訳ないでしょ! というか、出来なくなったというか……」

 

 ふむ、半分冗談で言ってみたが思った以上に反対された。……驚いた。もう母性が芽生えてるし。しかし拾ったか……。

 

「よし、少し散らかっているが先ずは上がれ。配信する都合上防音には気を使ってるし多少の泣き声は問題ないはずだ。彩葉も座って落ち着け。そして何があったか一から説明してくれ」

「う、うん」

 

 これはもうゲームどころではなくなったな。取り合えず俺の布団に赤ん坊を寝かせ、彩葉を休ませることにする。大分顔に疲労が浮き出ている。

 

「水でいいか?」

「ありがとう。ってなんで瓢箪……」

「で、何があったんだ?」

「スルーかい。いや、いいや。実は――――

 

 それから彩葉の口からバイト帰りに流れ星を見た事からゲーミング電信柱、そして謎の赤ん坊の登場までの話を聞いた。

 

「ゲーミング電信柱ねぇ……。なんか大変だったな、彩葉。お疲れさん」

「信じてくれるの……?」

 

 俺が同情的な視線を向けると彩葉は心底驚いたような表情を浮かべる。

 

「お前が嘘つくような人間じゃないのは知ってるし」

「……ありがと」

 

 俺自身転生者だからまぁ、そういう不可思議なことはある、って理解できるからな。布団脇に座りながら寝転がりながらこちらを見上げてくる赤ん坊の頬を人差し指で撫でてやる。

 

「たい♡」

「おーおー、お前のことでお母さんはお疲れだってのになんと無邪気な」

「誰がお母さんだ!」

 

 さて、どうしたものか……。

  




ヤチヨ、初ログイン時に名前を二回間違えられる。(なお、初回は……)
FUSHI、初ログイン時に毛虫と間違えれる。
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