超闘争   作:四脚好き

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第20話

ツクヨミ

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「テェィッ!」

「ふっ」

 

 突如頭上から振り下ろされた大刀を曲剣で受け止め、流す。頭上からの奇襲が失敗した相手プレイヤーは直ぐに大通りから離脱して路地へ逃げ込んだ。その際に露店の商品を蹴散らして追跡を困難にするのも忘れて居ない。

 

「粘らずにすぐに撤退。良い判断だ」

 

飛んできた商品を剣を持っていない左手の術で燃やす。

 

:珍しく長引いてるな

:いや、相手が奇襲してきては逃げるし遅延行為が凄いんよ。

:それに渡り鴉もゆっくり歩いて本気で追わないから……

:ステージもどこからでも奇襲しやすい奴だし迂闊に追う訳にも行かないし。

:威力の高い大刀で一発を狙うタイプか。

:渡り鴉ー! 歌良かったよー!

:今北産業

:?

:どした?

:嘘だろ……今北産業が通じない?

:はーい、おじいちゃんは帰ろうねー。

:インターネット老人会始まるぞ

 

 

 ……いま、きた、産業……? なにかの会社か? ネットの用語っぽいし……取り合えず後でオタ公に聞くか。

 

「呪符はあと何枚だ?」

 

 ここはツクヨミの中心街を模した、繁華街での遭遇戦などが体験できる『KASSEN』用ステージ。故にどれだけ店内や商品を滅茶苦茶にしても構わない。そんなステージを今日は炎の僧兵一式で練り歩く。右手には僧兵の炎姿刀、左手にはツクヨミにはない祈祷を再現する為の呪符を握っている。にしても炎姿刀……滅茶苦茶マラソンしたよなぁ。あぁ、大変だった。本当に……。

 

「さて、次はどこから出てくる? と、言いたいが。そろそろこちらから行かせてもらうか」

 

 残っている呪符を全て取り出してステージ上の全てに上手く分散するように投げる。呪符は火球となり中心街に降り注ぎ、建物のあらゆる個所から出火する。そしてツクヨミの中心街はあっという間に火の手に包まれる。

 

:うわぁ……

:いくら『KASSEN』用のステージとは言え見慣れたツクヨミの街を全部燃やして回ってやがる。

:まぁ相手は隠れる場所が無くなるから奇襲の心配はなくなるけど……

:地獄を見た。

:うおおお!? 俺の作った個室サウナが燃えてるー!?

:あの狂気のサウナお前のかよ

:よう燃えとる。

:渡り鴉、炎上

:させてる方やないかい!

:全部を真っ黒に焼き尽くしてる……

:あ、敵プレイヤー出てきた。

:火傷ダメージ入ってるwww

 

 炎に包まれた街を眺めながら一番大きな街道を歩いていると体の所々に火が点いている相手プレイヤーが建物の中から出てきてゴロゴロと地面を転がり火を消していた。

 

「よ、これでもう隠れる場所はないぞ? 正面から俺とやり合って負けるか、炎で体力を消費して負けるかだ」

「……行くぞ!」

「良いね、最高だ」

 

 火が消えた後の相手に声をかけると相手は剣を正面に構えて真っすぐにこちらに切りかかって来る。奇襲が出来なくなった為の無茶な特攻じゃない。しっかりと正面戦闘も鍛えてるしっかりとした構えだ。良いね、そう言うのは大好きだ。

 

「だがそう簡単じゃないさ」

「クッ!」

 

 襲ってくる実直な剣戟を曲剣のしなりと手首のスナップを使って流し、逸らし、翻弄する。それでも手を止めることなく常に剣戟を繰り出し続けている相手。

 

:いや、魅入るわこんなん。

:どっちもほとんど足を動かさずにその場で剣だけが交差してる……

:相手側さんも相当強いぞこれ!?

:直線で鋭い一撃の相手さんと円の様でゆったりとした渡り鴉の剣……。

:すげぇ……

:けど渡り鴉は余裕そうだけど相手側随分きつそうだぞ

 

 

「……ッ!」

「惜しかったな」

 

 相手さんも強かったが、長時間配信で慣れている俺とただのプレイヤーでは集中力の持続に大きな差がある。鋭かった剣戟もブレ始め、その一瞬を逃す俺じゃない。剣を握っていた相手の右腕を切り落とし首元に剣を突き付ける。

 

「何か言いたいことは?」

「腕を上げて、またあんたに挑戦する。身体が闘争を求めるからな」

「……! そうか、待ってるぞ」

 

 剣を振り上げて首を落とす。良い敵だった。また戦いたい。本人もまた挑むと言っていたし、気長に待つとしよう。

 歌動画を上げてからだろうか? 俺への挑戦者が増えた。かぐやファンが嫉妬から突っかかってきたことも有ったがそれ以上に純粋に俺に挑戦してくる奴らが増えた。というよりツクヨミ内で『KASSEN』のプレイ人口が増えているらしい。

 

「あぁ……楽しい。とても楽しいな……ふふふ」

 

:はー、美し。

:良い笑顔

:声もしっかり楽しそうだ。

:こっち見てー!

:メッチャ顔が良いな、やっば

:最初から顔出ししてくれれば良かったのに。

:なんか最近の渡り鴉って随分雰囲気が柔らかくなったよな? 俺の勘違い?

:ちゃんと笑顔が見えてることと、笠で表情がなにも見えないのじゃ印象の差は出ると思う。ただこれは本当に柔らかくなってると思う。

:長時間配信もそれほどやらなくなったよな。

:それは健康的だから良いんじゃないか?

 

「……」

 

 やはり性格に変化が起きているのだろうか。ずっと俺を見てくれていたファンたちがそう思うのならそうなのかもしれない。

 あ、時間だ。

 

「名残惜しいが時間だ。今日はここまで、明日は……予定があるな。次回の配信は明後日だ。夏休みも終盤、出来る限り『KASSEN』しまくるぞ」

 

:お、今日はここまでか。

:くっそー、対戦の抽選外れた! 次回は絶対お前と対戦するからな!

:やっぱ、配信時間短くなったよな。

:前の長時間も好きだけど、俺は今の方が好き。学生だと知ってしまったからか、無茶な長時間配信は心配が勝ってしまうようになった。

:『KASSEN』も良いが渡り鴉、お前は外に出ろ。

:こら、渡り鴉! 部屋でゲームばっかりしてないで外に出なさい!

:草

:お前なんなんだよwww

:でも、マジで外に出て運動できるならしといたほうが良い30過ぎた瞬間ツケが回って来る

:こわぁ……

:実感篭りすぎや

 

 コメント欄が歳の話題一色に染まっていく。おぉ、思ったより視聴者の年齢層が高い……。しっかし―――

 

「30かぁ……そこまで生きてられるかなぁ?

 

 そのころにはかぐやにも技術を教え終わってかぐやが俺を倒すか、それでも俺がかぐやを打倒するか決着はついてるだろうし。ヤチヨとの決着をつけ終わっているはず。あぁ……あと『鳥籠』とも戦わないとか。きっと30を迎える前にそれらとの決着はつけ終わっているだろうしなぁ。

 決着がついたなら勝ち負け関係なく満足できてるはずだからそうなるとあれなんだよね。マジで生きる意味ないんだよね……。フロムのゲームは再現できなかったけど音楽なら彩葉が復元できるし全部託せることが分かったし。

 彩葉は東大卒業して母親と同じ弁護士かかぐやに引っ張られてプロデューサーとかなってそう。かぐやもきっと人気ライバーのままだ。真実は瑛斗と結婚するだろう。芦花は美容系インフルエンサーが転じて独自ブランドとか作り上げてそう。カカも変わりなく家業を営みながらライバーやってるだろうし、オタ公は……なんか実況続けてそう。リンも両親の後を継いで立派な研究者になるだろう。ヤチヨだって電子の海で依然ツクヨミの人気ナンバーワンライバーとして君臨し続けてる。

 少しだけ寂しいけど俺がいなくても皆、立派になって幸せになりそう。

 

:は?

:ん!?

:なんて

:急に怖いこと言うじゃん

:病気?

:おい、ふざけんなよ

:説明! 説明を要求する!

 

「いや、単純にそう思っただけだが……。よし、今日はここまで。じゃ!」

 

 ただまぁ、すでに十分幸せな俺が少し、本当に少しだけ欲を出しても良いというなら……俺はやっぱり―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤチヨみたいに電子の海の中の存在になって永遠に戦い続けたい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新居

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「ん……、と。よし!」

 

 私、烏丸凛の朝は早い。夏休みとは言え、ダラダラと過ごしていれば今までの生活リズムが崩れてしまう。そんなことをしては夏休み明けの学校でいつまでも休み気分が抜けず、勉強に身が入らなくなってしまう。

 早起きをして身支度を整えた後、私はかぐやさんに連絡を取り二人で六人分の朝食を作る。私とかぐやさん、彩葉さんに黒羽カカこと黒崎佳代子さんと忠犬オタ公こと、太田広美さん。そしてお兄、烏丸九朗の分だ。稀に芦花さんも来るときがあるのでその時は七人分だ。

 

「おはようございます、リンちゃん。何か手伝いますよ」

「おはようございます、カヨコさん。そしたらテーブルの準備ともうちょっとしたら広美さんを起こして貰って良いですか?」

「はい。お任せください」

 

 少ししてカヨコさんが起きてくる。大体私の次に起きてくるのはいつも彼女だ。カヨコさんは社会人でここ東京の呉服屋で働いているらしい。寝る時も寝間着を着ていていつ見ても和服を着ている綺麗な人だ。

 ただ私と広美さんは知っている。そんな彼女がこの間黒いベビードールを買うか迷った末、結局買えずに取り合えず通販のお気に入り欄に登録だけしておいたのを。

 カヨコさんも最初は朝ごはんを作るのに参加すると言っていたが夏休みの間だけは私に譲ってもらった。夏休みでもカヨコさんは外国人観光客相手に浴衣のレンタルなどの仕事があるし、広美さんは大学のゼミがある。であればちゃんと夏休みの私とその……まさかの中卒だったかぐやさんが準備するべきだろう。

 かぐやさんは頭が良いし何か事情があって高校に通えなかったのだろう。理由を聞いた時かぐやさん本人も彩葉さんもお兄も目を逸らしてはぐらかされたが。だがなんであれかぐやさんは信頼できるいい人というのには変わりない。

 因みに、彩葉さんとお兄は朝食を作るメンバーとして論外が言い放たれている。いや、彩葉さんはちゃんと料理できるのだが、その……節約思考が抜けていないのか偶に本当に栄養しか、腹が膨れることしか考えていないみたいな料理をすることがある。節約が悪いとは言わないが、しすぎるのもダメだと思う。

 お兄は完全に論外。彩葉さん以上になにも考えていない。以前、茹でエビと称して茹でザリガニが振舞われたことがあり、お兄は料理番から永久追放された。

 

「ほぁ……。いい匂いですね~」

「ほら、広美さん。ちゃんと顔洗って。それともシャワー浴びちゃう?」

「んー、軽く浴びちゃいます」

 

 カヨコさんに起こされて二階から降りてきたのは太田広美さん、大学生だ。夜遅くまでゼミで研究していたり、ツクヨミ内のイベントの実況やMCをしたり、お兄のコスプレ撮影に付き合ったり、はたまた推し活したりと、もしかしたら私たちの中で一番忙しいかもしれない人だ。

 けど私とカヨコさんは知っている。この間ツクヨミのゲーム内アイテムを再現したものを実際に家に届けてくれるサービスでお兄に着てくれと頼まれたコスプレ衣装を届けて貰っていることを。

 

「そろそろかな」

 

 かぐやさんから連絡がきた。彩葉さんも起きてこちらにやって来るそうだ。私たちは予定があったりしてどうしてもというときを除けばこの部屋にかぐやさんと彩葉さんを招いてみんなで食事をとるようにしている。広いリビングだしそれくらいは簡単だ。

 因みに同じ間取りだがかぐやさん、彩葉さんの部屋はかぐやさんが買った謎の置物などがありすぎて狭いためこちらの部屋に集まることになっている。さらに言うとお兄の隣はみんなで順番で回っている。芦花さんがいる時は絶対に彼女を隣にしてあげている。

 私は一度料理の火を止めてリビングで寝ているお兄の元へ向かう。

 

「お兄、起きて」

「……」

「朝だよー」

「……んぅ」

 

 寝返りをうっただけで起きる気配もない。

 

「ね、寝てるんだよね……」

 

 お兄はまだ寝ていて、広美さんは洗面台。カヨコさんは丁度やって来たかぐやさんたちの相手をしている。いま、近くに誰もいない! な、なら……。

 

「お、おに……。く、九朗さん……。起きてくださーい、九朗さん……」

 

 よ、呼んじゃった! 呼んじゃった! 家族としての呼び方じゃない、この人(異性として)の名前呼び……! わ、わぁぁぁ。

 

「ん……んぐっ」

 

 私が感激で打ち震えているとうっすらと九朗さんの眼が開かれる。まだ寝ぼけているがここまでにしておいた方が良いだろう。

 

「お、おはよう、くろ……お兄。かぐやさんたちも来てるから顔洗ってきてご飯にしよう!」

「……おぅ」

 

 目を擦りながらのっそりと起き上がるお兄。途中みんなから挨拶されながら洗面台へと入っていった。ん? なにか忘れて……。

 

「おわわぁああああああ!?!? 九朗くん!? 九朗くんなんで!? ちょ、今、裸だからこっち見ないでくださいーー!」

「あ、おはよう広美」

 

 しまった! 確か広美さんがシャワー浴びてたんだ! 広美さんの絶叫が響き渡る騒がしい朝になったのだった。

 




・プレイ人口が増えた『KASSEN』。それに引っ張られ挑戦者も増えた。
・自分の欲望にちょっぴり素直になれるようになった九朗くん。
・妹ちゃんが二人の秘密を知るとき二人も妹ちゃんの秘密を知っているのだ。
・こっそり名前呼び妹ちゃん。

・黒崎佳代子
 成人済み、都内呉服屋勤務。和服美人であり私のイメージでは髪の白い部分も黒くなったブルアカの正月カヨコ。

・太田広美
 大学生。太田→おおた→オタ。 広美→広→コウと読む→公。ジナコと風倉モエを足して割ったようなイメージを想像しながら書いてます。

番外編何みたい? 九朗くんの歌唱時反応は内定済み

  • 乃依と買い物
  • 帝とぶらりツクヨミ
  • ブラックオニキスコラボライブ
  • オタ公との初『SENGOKU』の話
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