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遂にその日がやって来た。かぐや、彩葉、ヤチヨによるコラボライブの当日、会場はファンたちの歓声と興奮、そして熱狂が渦巻いていた。
「お兄、久しぶり」
「久しぶりって……そんなに経ってないだろう……」
「それでもなの!」
なんとか全員分のチケットを獲得することに成功した俺が席についているとリンがログインして俺の隣にやって来る。今日は8/30、もうすぐ夏休みが開けるということで数日前にリンは俺達のマンションから神奈川の実家に帰った。『久しぶり』なんて言うほど会っていない期間は長くないのだがリン曰くそれでもらしい。
「お待たせしました」
「あ! カカさん」
「そんなに待っていない。ライブまで時間はまだまだある」
次にやって来たのはカカだった。……その『かぐや♡ いろP♡』と書かれたハチマキやうちわには触れないぞ。和服のいつもと違ってたすき掛けしてるし。お前いったい何時からそんな二人のファンになったんだよ。そして俺達の部屋で多くキッチン当番であったためかカカとリンは結構仲が良いい。
「私が帰ってからどうです?」
「ちゃんと毎日三食食べるようにはなりました。ただ、胃袋が小さくなってしまっているのか、食事の量は相変わらず男子平均どころか女子平均も下回ってますね。だから多めにご飯を食べるとこんな風に……」
「お、お兄のこれは……お腹が膨れてて、え? 疑似ボテ腹、うっ……! こ、この画像下さい」
会場の盛り上がりでよく聞き取れないが今も二人で一緒になにかの写真を見て盛り上がっている。上手く出来た料理の話でもしているのだろうか?
「やっほ、九朗」
「お待たせ~九朗くん」
「俺まで招待してくれたこと感謝する。渡り鴉」
「……もう諦めてはいるがお前だけだよ、ネットリテラシーがしっかりしてるのは」
ROKAとまみまみ、そして真実の彼氏の瑛斗……アバターネームはレオがやって来る。というか……。
「お前、いつもの鎧姿の下はリアルと大差ないんだな」
「ブーメランって知ってるか?」
普段のレオは白色の鎧武者の格好をしており、まみまみに近づく不埒な輩をバッタバッタと切り倒しているイメージがあった。今回のライブ会場で鎧姿が邪魔ということで脱いできたのだろうが一瞬すごく驚いた。
「九朗」
「ROKAか……ん?」
芦花が何かを期待するようにこちらに顔を向けてくる。いつも通りの綺麗な顔だが一体何が……あ。
「ピアス、こっちでもつけてくれてるのか」
「ふふ、やっぱり気が付いてくれた。うん、せっかく九朗がプレゼントしてくれてんだもん。こっちでもつけたくて」
「……あぁ、とても似合ってる」
「ありがと、九朗」
芦花の耳にはリアルで俺が送ったのと同じデザインのピアスが付いていた。こっちでもつけてくれるなんて大切にされているようで何よりだ。
「おや! 私が最後でしたか!」
「ん、オタ公」
「はい、貴方のためにわんわんお! 忠犬オタ公です!」
最後にやって来たのは忠犬オタ公。今回はヤチヨが張り切ってイベントを主導しているため、MC席ではなくこうして俺達と一緒にライブを見れるという訳だ。
「ヤチヨ初のコラボライブ! いやー、楽しみですね~」
「……そうだな。うん。あの三人の歌はとても楽しみだ」
「それは、とても良かったです」
『KASSEN』以外でこれだけ楽しみに出来るものが出来るとは思わなかったよ。オタ公ともそれなりに付き合いが長いから俺の考えていることが分かるのだろう。感慨深い顔をしてやがる。
「ほら、始まるぞ」
暗いステージの上で何かがかすかに動くのを目が捕らえる。三人組、おそらくかぐや、彩葉、ヤチヨだろう。そして一気に会場が光に包まれる。
『ヤオヨロ~☆ みんな生きるのはどうですか? 良い事あった? それとも泣いちゃいそう?よしよし、全部大丈夫。どんな孤独な道のりでも、楽しかったなーって記憶が足元を照らすよ。この時間も忘れられない思い出にしたいから……どうか一緒に踊ってくれる?』
生きること……良い事、泣いたこと、孤独な道のり……刺さるなぁ。
―――「世界で一番おひめさま。 そういう扱い 心得て……よね!」―――
あ、『ワールドイズマイン』だ。カカが歌っているのも聞いたことがあるがそれぞれ別の魅力があるな。というか、ライブ独特の展開がなかなか面白い。ヤチヨが彩葉の隣に寄って行き、推しが至近距離にいることで彩葉が昇天しかけた。それをみたかぐやが嫉妬してヤチヨから彩葉を遠ざけようとするも失敗、かぐやはステージ状で寝ころんだ状態でサビを歌うことになった。が、ヤチヨの演出もあり、まるで初めから寝ころんでいる姿が一枚の絵のようになっていた。こういう咄嗟の演出もライブならではだろう。
「かぐやちゃん、ふふふ」
「あのサングラスどっから持って来たんですか。あっはは」
カカとリンはかぐやがサングラスをかけて踊っている謎のダンスが凄く気に入った様で二人ともよく笑っている。
―――「ヘイベイビー」―――
「い、いろPがファンサしたーーー!」
「うほーー! 彩葉もやるねえ……」
「彩葉ったら演奏も上手いうえに可愛すぎー」
彩葉がステージ上で放ったその一言に会場の空気が変わった気がする。なるほど、これが『落ちる』ってやつか。彩葉みたいに美人からのファンサなんて応援してきた人たちからすれば滅茶苦茶嬉しいだろうな……。ヘイベイビー……か。刀や槍向けながら言ってみたら映えるか? ……今度やってみよう。
オタ公は勿論、真実や芦花も興奮してるしこれはきっといいファンサに違いない。
―――「今は昔 誰もが知る物語 かの有名なかぐや姫はこう言った。そんな結末ちっとも望んでないし 運命だからってキミそれで頷くの?」―――
次に流れ出したのはこのライブで初公開の新曲、『Ex-Otogibanashi』。かぐや姫、という単語が入っていたりかぐやとのコラボライブにぴったりな曲だ。カカもリンも芦花もオタ公も真実も瑛斗もみんな大盛り上がりだ。
だが、俺はどうしてもこの歌詞に引っかかり、とでも言うのだろうかなにかおかしなものを感じてならない。
まず大前提としてこれは俺だけが気が付いている事実だが、ヤチヨはかぐやだ。つまり今の彩葉は『両手に花』ならぬ『両手にかぐや』な状態だ。どうやって二人が分裂しているのか、どうして分裂しているのか、狙いや方法は全く分からない。
その上で『キミと今見てるこの景色 何億回思い出したろう』や『知らないなんて言わせない名前呼んで 私は誰?』などと歌っているヤチヨを見ると疑問が湧いてくる。なぜ、そんな悲しそうな顔をする? なんで、そんなにも懐かしいモノを感じている表情をする? お前はかぐやなんだろう? そんな表情をうかべるなんてお前に一体何があったんだ。
かぐやでありながら、かぐやが絶対に浮かべないだろう表情を浮かべる月見ヤチヨ。……お前は一体なんなんだ。
俺の疑問を置いてけぼりにしてライブはあっという間に終わりを迎えた。周りを見れば今だライブの熱が収まらないのか興奮した様子のファンたち。
「――――ッッッ!?」
そんな周りの熱から一歩引いた所に思考が在ったからだろうか。ゾワリと背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「何……あれ?」
リンがステージを指さしながらそう呟いた。
「月?」
ステージ状にあるライブ映像を映し出す巨大なモニター、そこに映っていたライブの映像は消え、変わりに満月の画像が映し出されていた。
発狂
あぁ、不味い。なにが不味いのかと言われたら説明できないがもの凄くマズイということだけは分かる!
「全員、武器を!」
「え!?」
「お兄!?」
「どうしたんで―――またモニターがッ!?」
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会場全体がざわめきに包まる。どう見ても普通じゃない。なにが起きてる、何が起きようとしている? その予兆を見逃さないように目を凝らしていると視界の端を白い何かが通り抜ける。
「星界からの使者? いや、失敗作たちか?」
白い胴体に灯篭をくっつけたような異形の存在達。それが浮遊しながらステージに近づく。浮遊、それはツクヨミの管理人であるヤチヨのみができるはずの行為、つまりあれらはヤチヨの演出かハッカーのようなものだと思われる。
「かぐや!?」
……は? 相手の正体を探ろうとしている間に灯篭頭の一人がかぐやに触れた。その瞬間、かぐやがまるで電源を落とされたかのように脱力し虚ろな目で倒れこむ。
「―――なにを……」
なおもかぐやに触れようと近づく灯篭野郎たち。おい、ふざけるな。そいつは……かぐやは……俺の……。俺の!! 遠慮は無しにいきなり月光を抜き放ちステージへ。今だかぐやに群がる灯篭頭共の四肢を切り落とす。
「それ以上、俺のかぐや姫に近づくな」
「九朗!」
四肢を失った灯篭どもに刀を突きつけてそう宣言する。後ろではかぐやを抱えた彩葉が驚きの声で俺の名前を呼ぶ。
「いろは、一応確認しておく。これは演出の一部だったか?」
「ううん、こんなの聞いてない」
「そうか、ならこれは敵だな」
「それも思いっきり悪趣味なヤツね。それ前見えてる?」
「問題ない」
彩葉も武器を手に持ってかぐやを守るように前に出てくる。随分趣味の悪い敵だ。灯篭を切った時に全身に浴びた黒い血液を拭いながら彩葉の問いに答える。完全にツクヨミのルールに乗っ取っていない外からの敵。だが切れるなら、殺せるはずだ。
俺と彩葉がかぐやを守るためさらにどこからか集まって来た灯篭どもを片付けようと構えた瞬間。ヤチヨがどこからともなく現れた。
「おいたはだめだよ~」
そう僅かに怒りを感じる声で指先をふるいポンポンと灯篭どもを転がすヤチヨ。
『モウシワケゴザイマセン』
「な!?」
ヤチヨに吹き飛ばされた後灯篭どもはそう日本語でしゃべって消滅していった。
『今のは一体……!? どうなってしまうんだっ!? 続報を待てっ!』
これ以上の混乱を避ける為だろう、ヤチヨはこの事態を演出として終わらす積もりらしい。なら、俺はここにいない方が良いだろう。
「彩葉、なにか分かったらあとで聞かせてくれ」
「うん」
そう言って俺はログアウト処理をして会場を後にする。リンたちにはあとで謝罪のメールを送っておくか。リアルに戻ってきた俺は座っていた椅子から立ち上がり窓の外に目を向ける。そこには爛々と輝く満月があった。
「……満月、かぐや姫、ツクヨミのルールの外、星界からの使者……」
あの時モニターに映った景色、自分が感じた感想、それらを全て口に出して整理していく。そして理解してしまった。
「……あれが"迎え"なのか……」
かぐやと過ごせる時間はもうそんなにないのかもしれない。
・妹ちゃんの覚醒は止まらない。
・獅子堂瑛斗くん、
・帝だけでなく彩葉からもファンサを学ぶ九朗くん
・"それ以上、俺のかぐや姫に近づくな" 「!?!?」←この昏睡時こんなことを言われているとは知らなかった8000歳児、圧倒的驚愕。
・そしてまた一人結論に至る九朗くん。
番外編何みたい? 九朗くんの歌唱時反応は内定済み
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乃依と買い物
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帝とぶらりツクヨミ
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オタ公との初『SENGOKU』の話