超闘争   作:四脚好き

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第25話

 

ツクヨミ

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 9月12日、その日はいつもと変わらないように訪れた。ツクヨミのサーバーは既に通常時の倍の近いアクセスが殺到していた。一か月ちょっとでトップにまで上り詰めたかぐやの卒業ライブ。あるユーザーは涙し、あるユーザーは未だ信じられないと言い、あるユーザーは根拠もない憶測を語り続ける。

 そんな大通りから少し離れた路地で俺は安東礼と落ち合っていた。

 

「なんとか間に合って良かったぜ、ほら、ご注文の武器だ」

「ありがとう、助かったよ」

 

 電子音と共にアイテムが送られてくる。送られてきたアイテムの名は『グラインドブレード』ACVから登場したオーバードウェポンの一つであり最も知名度が高いものではないだろうか。6基の巨大チェーンソー型ブレードを円環状に束ね、突撃し敵を轢き殺す武装。コンセプトは『全てを焼き尽くす暴力』。

 ん? なんか見た目……あ、待機状態のときは逆さまの門松に見えるよう偽装がついてるのか。で、展開すると偽装が外れて原作通りの見た目になると……良いじゃん。ツクヨミの世界観に合ってる。

 

「にしても期限がかぐやちゃんの卒業ライブまでとは、お前さんこんな日にそんな武器を持って何をするつもりだ?」

「なぁにかぐや姫を攫って行こうとする月の奴等とドンパチするのさ」

「なんだまた竹取合戦でもするのか?」

 

 俺の言葉に安東礼が怪訝な顔をする。

 

「ライブの余興にしても随分物騒な物を持ち出しやがる。……1分だ」

「ん?」

「1分以上そいつを使っているとスマコンが異常に熱を持ち始める。だからそいつを使うなら1分以内にカタをつけろ」

 

 ……驚いた。

 

「テストしたのか?」

「たりめぇだろうが、こんな複雑な武器を一度も試運転してねぇで依頼主に届けられるわけがないだろ」

「けが人は?」

「ウチの奴等はモノづくりが好きなだけで基本的にはビビりなんでな、少しでも熱くなったらすぐにスマコンぶん投げる勢いで外すから誰も怪我しちゃいねぇよ」

「そうか、それは良かった。……リミッターは?」

「どうせあんたのことだ外すって分かってるから最初からつけてねぇ。だからお前さん、無茶すんじゃねぇぞ」

 

 ふふふ、リミッターなしとは、付き合いが長いだけあってよく俺のことを分かってる。

 

「俺は理解ある職人がいてくれて嬉しいよ。ほら、ふじゅ~と……これを」

「ふじゅ~と……何だこれ?」

 

 俺は報酬のふじゅ~とあるデータを安東礼に送りつける。安東礼は送られたふじゅ~の額を確認した後データを開く。

 

「今まで小出しにしていた武器のデザイン、設定、機能とかまとめた資料だ。後はお前たちが好きな用に作ってくれて構わない」

「おいおい、一体どういうつもりだ……手切れの駄賃ってつもりじゃねぇだろうな?」

「……じゃあな」

 

 俺は安東礼に背を向けて大通りに向かって歩いていく。もうすぐライブだ。俺も準備しないと……。

 

「おい! こいつは次にお前が依頼する時のカタログとして残しておくからな! お前の依頼が来るまで表に出さねぇぞ! だから……次もちゃんとウチに依頼しに来いよ!」

 

 ……相変わらず声がデケェよ。

 

「次があったらな」

 

 

ライブ控室

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 俺は大通りからライブ関係者専用のファストトラベルで控室に飛ぶ。そこには彩葉をはじめとして今回の『KASSEN』に参加するみんなが揃っていた。

 

「おう、渡り鴉! 重役出勤とはいい―――なんだその背中の門松」

 

 控室に現れた俺に帝が絡んできたがすぐに俺の背中にある武器に気が付いたようで目を細める。

 

「それに初めから月光を抜いている。右手に月光、左手に十文字槍……いつになくやる気だな」

 

 雷も俺の様子を見てそう言い放つ。気がつけば他のみんなもいつの間にか視線をこちらに向けている。

 

「あぁ、悪いが今日の俺は最初っから飛ばしていく。篩になんてかけてる場合じゃないんでな」

「ただいまー☆」

 

 俺がそう言っていると控室にヤチヨ(かぐや)が現れる。すぐ隣にいた彩葉がヤチヨ(かぐや)に話しかける。

 

「お帰り、かぐやはどうだった?」

「喜んでいたよ。燃えるーってさ」

「そっか。ありがとう、ヤチヨ」

「どういたしましての板挟み~~☆」

 

 ……こういう訳の分からんボケの辺りはかぐやとヤチヨは似てるのかもしれないな。

 

「……もし私がヤチヨだったら、かぐやは帰りたくないって言ってくれたのかな?」

 

 彩葉の口からこぼれたのはそんな言葉。本人的にはなんて事の無い疑問だったのだろうが……ヤチヨ=かぐや

と知っている身からするとうーん、どっちもヤチヨ(かぐや)なんだよなぁ、となんとも言えない気分。

 

「あ、ゴメン、わけわかんないよね。忘れて」

「ううん、そんなことないよ。ただ、びっくりしただけ……両想い、だったんだね」

 

 ん? 両想い……だった? つまりかぐやも似たようなことを言っていたということか? しかも過去形? かぐやは自分がヤチヨであることを知らず、ヤチヨはかぐやのことを過去形で知っている? 意識に時間差があるのか? 

 

「まさか……」

「渡り鴉さん!? 大丈夫ですか? 顔色が!?」

「え!? 九朗!?」

「い、いや大丈夫。ちょっと嫌な考えを頭が過っただけ。こんなのは後でいくらでも考えられる。だから今は忘れる」

 

 カカと芦花が俺の顔色に気が付いて心配してくる。他の面子も何事かと視線を向けてくるがそれを手で何ともないと伝え、これ以上混乱が広がらないようにする。

 そう、考えることなんて後でいくらでもできる、だから忘れるんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()なんて仮説は。

 

「――い、おい! 渡り鴉!」

「――っは!? み、帝?」

「そろそろ時間だ。本当に大丈夫か?」

 

 ……そうだ、ヤチヨ(かぐや)のことは後でちゃんと聞けばいい。今はかぐやを迎えに来た月人どもをぶっ飛ばすことだけを考えろ。

 

「あぁ、始めよう(始めましょう)、最後の勝負を」

 

 

 

 

『何という急展開! 突如ツクヨミに現れたフリーダム、超新星かぐやの卒業ライブ! 泣いてる場合じゃないぞ、最後のファンサだ! 目に焼き付けろ!』

 

 頑張ってるなオタ公。元々かぐや推しであり、このライブの裏事情を知りながらもそれらをいっさい漏らすことなくしっかりとツクヨミ公式実況の役割を果たしている。泣くなと言っている本人が涙交じりの怒鳴り声なのは仕方がないと言ったところだろうか。

 旧特設『KASSEN』フィールドはヤチヨプロデュースにより特設ライブステージ兼月人迎撃の場へと変わっていた。ライブ会場に詰め掛けたファンたちの興奮が最高潮になったのを見極めたように幾つものスポットライトが灯され、ライブステージを照らし出す。そこにいるのは勿論、

 

『みんな、ありがとー!』

 

 かぐやだ。

 

『今日でお別れなんだけど、悲しくはしたくないんだ! みんなでお見送りしてハッピーに卒業させて!』

 

 かぐやの言葉にファンたちの歓声は高まっていく。……来たな。

 近頃なんども感じたこの背筋を貫く悪寒。俺のかぐやを攫おうとする月人どものお出ましだ。空にいくつもの華が咲く。花弁が弾け、異形の月人共が現れる。

 月人に立ちはだかるように落下する九つの桃。『KASSEN』のスポーンを模して現れるのは―――

 

「さぁ、盛り上げていこうぜ!」

「……勝つだけだ」

「けっこー面白そうじゃん」

 

 帝率いるブラックオニキス。

 

「かぐやちゃーん、いぇーい!」

「かぐや~見て見て~!」

 

 美容系インフルエンサーROKAとグルメインフルエンサーまみまみの二人。

 

「かぐや、私たちは私たちで精いっぱいやるから。勝って皆で全部のせパンケーキ作ろ」

 

 かぐやの相方、いろPこと酒寄彩葉。

 

「……参ります」

「全部、ぶっ飛ばしてやるんだから!」

 

 黒羽カカとリンが己が武器を構え鋭く月人を睨みつける。そして最後の9つ目の桃が落ちる。

 

「かぐや。悪いけど俺はお前を返したくはない。ずっとずっと俺達の傍にいてくれ」

 

 中から出てくるのは当然俺。

 

『鬼あちー! かつて鎬を削った黒鬼が、相方のいろPが、親友のROKAとまみまみが! 師匠である渡り鴉と、その同門たちがかぐやのラストライブに駆けつけたぞ!』

 

 あ、リンとカカはそう言う扱いになるのか。

 

『そっか……そっか……みんな自由だ!』

 

 かぐやのまるでひまわりの様なその笑顔と声が開始の合図となった。

 

「全部、ぶっ潰してやる!」

 

 俺は開戦の合図と共に敵へ突っ込む。目の前から跳んでくるバカげた射程の光線を月光で弾き、回避して戦場を駆け抜けて敵の先陣と衝突する。数だけは膨大な灯篭ども一気に薙ぎ払う。さぁ、もっと来い、俺のところへもっと来い! お前たちの脅威はここに居るぞ! 

 

「さぁ……滾って来たわ!」

 

 俺の役割は囮。少しでも敵の戦力を俺に集中させてその間に孤立している奴から他の面子が削っていく作戦。少しして後方から乃依とカカの援護射撃が加わる。―――っと!

 

「良い腕だ……けど!」

 

 ザコの灯篭に紛れて武器を持った変わったフォルムの月人(コンゴウタイプB)が振り下ろし攻撃を仕掛けてきた。それを十文字槍で弾き体制を崩して月光で首を断ち切る。

 

「動きが教科書(チュートリアル)通りではなァ!」

 

 視界端のマップを確認すれば乃依とカカが少し後方で射撃で敵を削っており、彩葉と帝がまるで競い合うように敵を撃破していき、芦花と真実が息のあったコンビネーションで確実に一体一体仕留めていく。そして高速で動き回り敵を翻弄、撃破していくリンとそのフォローで僅かなリンの隙を消していく雷と確実に戦況は有利に進んでいった。

 

「お前らもここで終わらせてやる。俺が倒してきたヤツらと同じくな!」

 

 まるで白波の様に多くの月人が押し寄せる。

 

 顔だけの奴(ホテイ型)は頭から串刺しにした。琵琶を持った奴(テンニョ型タイプA)は光線を避けて四肢をバラバラにしてやった。金魚と犬が合体したような奴(ズイジュウ型)は口の中に何かいたので引っ張り出してそのまま三枚おろしにしてやった。

 

「こいつら……。ふふふふ、最高だ、貴様らァァァアアアア!」

 

 一つ気が付いたことがある。こいつら元がかぐやと同じ月人だからか"学習能力"が高い。最初は素人同然の動きだったのが今では上も上レベルの腕前になってやがる! あぁ、楽しい! とても楽しい! 最後の『KASSEN』がこんなにも楽しいものになるなんて! あぁ、かぐや。本当にありがとう。これもお前が俺の前に現れてくれなかったら味わえなかっただろう。

 だからさ、お礼しないとな。一杯撫でてやるから、一杯遊んでやるから、だから、絶対帰るんじゃねぇぞ!

 

「守り切って見せる!」

 

 

 

 

 

 

 一体どれだけ武器をふるっただろうか、一体どれだけの月人どもを薙ぎ払っただろうか。単純な周回はともかく、流石にこのレベルの連戦が続くのは……なかなか辛いな。初めてだ、『KASSEN』していてこんなに疲れるのは……。

 

「ははは、ここに来て巨大兵器枠か……」

 

 俺の前に先ほどまで後方で待機していた巨大な月人(ボサツ型)が目の前にステージ上の構造物を薙ぎ払いながらやって来る。

 

「……いいぞ、それでいい。やってやる!」

 

 お前みたいな奴をぶっ飛ばす為に態々用意したんだ。全部焼き払ってやるから、覚悟しろ。

 俺はグラインドブレードの起動スイッチを入れた。瞬間、視界にノイズが走る。

 

―――不明なデータが接続されました―――

 

 視界の端に映る危険表記とイヤホンから聞こえる砂嵐交じりの警告音声。あぁ、懐かしい、この感じ。惜しむべくは『データ』ってところか。流石に『ユニット』にはならなかったか……。

 

―――システムに深刻な障害が発生しています、ただちに使用を停止してください―――

 

 規格外の奴等には規格外の力で対抗するしかないよなあ……! 月光と槍を手放し、切り札を切る。

 

 

ツクヨミ 管理人室

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「アレは……」

 

 私は管理人室でかぐやの卒業ライブの演出指示などを出しながら『KASSEN』ステージで九朗が使いだした武器を見る。6個のチェーンソーが個別に回転し、更にそれを円柱状に束ねて回転させるというもうどうしてそうなった、と言いたい武器が物凄い変形をしながら展開される。……名前は『グラインドブレード』

 

「やっぱりどこかで輪廻が壊れてる?」

 

 私がかぐやだった頃の卒業ライブでも九朗は何か変わった武器を使っていた。たしかあの時は……巨大な柱にブースターが付いたかつての私が使っていたハンマーに似た感じの武器だったはず。

 

「でも、やっぱりこうなるのが運命なのかな……」

 

 私は全体の戦況を見ながらそう呟く。

 

『くっ……』

 

 まず雷がやられた。月人の物量による反則レベルの集中攻撃を受けて地形ごと削り取られる。

 

『雷さん!? ってキャ!?』

 

 雷のフォローを失い僅かな隙を晒したリンちゃんはもはや九朗と同レベルになった月人たちの猛攻をさばき切れず落ちる。

 

『キリないね』

『あぁっ! ごめんなさい!』

 

 乃依とカカは懸命に狙撃を続けるが月人の大軍が押し寄せ接近戦への移行もさせて貰えないまま飲み込まれた。

雷と乃依は直ぐにリスポーンするが二人とも残機はもうゼロ。カカとリンの残機はすでになくこれまでだ。

 

『彩葉、九朗……ッ!』

『二人とも、ごめんね……』

 

 そして芦花と真実も落ちた。二人ももう残機はない。

 

『雷、乃依! 使うぞ!』

『御意』

『はーい』

 

 帝アキラがそう言うとブラックオニキスの三人からエネルギーが吹き出す。

 

「これは……チート?」

『チートモードだぁ! たった今、ブラックオニキスの帝アキラ、雷、乃依の三人にチートモードの使用が確認されました!』

 

 オタ公ちゃんの言葉に会場にどよめきが走る。そっか、私は気が付けなかったけど、三人ともここまでして(かぐや)のこと守ろうとしてくれてたんだ。その思いに胸が熱くなりチートの自動BANをOFFにしてブラックオニキスの所属する事務所に『演出としてヤチヨがお願いした行為』として連絡と謝罪を入れておく。こうすればあの三人が怒られることは無いだろう。事前に連絡くらいしてくれと言われるかもしれないが、勘弁してもらうしかない。

 

『ヤャャァァァアアアア!!』

「凄い……! けど、やっぱり……」

 

 そして戦場の中央では九朗がグラインドブレードを構え、月人たちに向かって突撃してボサツ型やリョウサン型を薙ぎ払っていく。 まさか、あのボサツ型まで倒すなんて……。戦場はグラインドブレードの突撃痕に残った火がメラメラと燃え広がっていく。 会場はその姿に歓声を上げるが私はそれどころじゃない。やっぱり、九朗が強すぎる! 私がかぐやだったころよりも遥かに! 

 

「もしかして……勝てる?」

 

 九朗はグラインドブレードを構えたままかぐやのいる方に向かって駆けだす。かぐやのすぐそばに現れた月人の大軍と月人のリーダー的存在である小型のボサツ型を仕留める為だろう。ボサツ型の元に行かせんとコンゴウ型やズイジュウ型の強化形態が立ちふさがるがそれらをグラインドブレードでなぎ倒していく九朗。

 

「勝てる……勝てちゃうの……?」

 

 本当は喜ばしい事であるはずなのに私はどうしてもそれが喜べなかった。もし、ここで本当に勝ててしまったら、輪廻は確実に壊れる。……その時(ヤチヨとなったかぐや)はどうなるの? 消える? 嫌だ、そんなのは嫌だ! 折角、九朗に彩葉に会えたのに消えるなんて……! 

 

「怖い……怖いよ、九朗、彩葉!」

 

 私はとたんに自分が知らない未来が訪れようとしていることに恐怖して自分の肩を掻き抱いて管理人室で丸くなる。

 

――ビィー! ビィー!―――

 

「この音……」

 

 そんなの時、九朗と彩葉のスマコンにこっそり仕込んでおいた監視装置から警告音が聞こえる。何事かと思いモニターに情報を表示する。

 

「なに……これ……?」

 

 私は画面に表示されたスマコンのデータを見て驚愕した。九朗のスマコンが異常な発熱をしていたからだ。なんで!? 何が起きてるの!? 

 

「げ、原因は……! ―――あの武器!」

 

 いや、一個人がもつ武器にしてはデータ量重すぎでしょ! それを全部スマコンで処理したらそりゃ熱くもなるよ! 

 

「どうしたら―――」

 

 私はどうしたら良い? 九朗を止めないとこのままじゃ九朗の眼が焼けちゃう、でもそれをするということはこの勝てそうな戦いを私自身が干渉して敗北に導くという事、そんなことをしたらもしかしたら彩葉にも九朗にも嫌われるかもしれない。

 このいつまでも続いた輪廻を終わらせられるかもしれない、けどそうしたら私はどうなるの? どうしたら、私はどうしたら―――! 

 

 九朗を助けたい。

 二人に嫌われたくない。

 輪廻を終わらせたい。

 消えたくない。

 

『ア゛ア゛ア゛アアア! 邪魔だァ!』

 

 私が迷っている間も時間は止まってくれない。ブラックオニキスの三人が倒れた、彩葉も倒された。残るは九朗だけだ。目を焼く熱さと白く濁っていく視界に耐えながら九朗は止まらない。そして九朗はついに月人の最後の攻撃部隊を消し飛ばし、かぐやとリーダー格のボサツ型の元までたどり着いて見せた。

 

『九朗……!』

『■■■■■■』

『俺のかぐや姫を攫わせねぇよ……!』

 

 天守閣にまで到達して見せた九朗の姿にかぐやは驚き、感情の薄い月人ですら恐れて後ずさった。

 今、天守閣にいるのは五人。かぐやと九朗とボサツ型の月人、そしてその供回りのリョウサン型二体だ。私がかぐやの時は確か月人の残存勢力は2割以下といった感じだったが、今回は1割以下だ。

 九朗の視界はほぼゼロ。けど気配で月人の場所が分かる九朗ならあの三体の月人を倒すことなんて造作もないだろう。

 

「いま、決めないと」

 

 もう時間はない、かぐやを月に返すのか、返さないのか……。九朗がグラインドブレードを構え、ボサツ型が剣を抜く。二人のリョウサン型はかぐやが巻き込まれないように二人から遠ざけている。

 

「わ、私―――」

 

 ジリジリと詰まっていく二人の距離

 

「私は―――」

 

 ボサツ型が剣を振り上げ、九朗が突っ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、なさい―――」

 

 

 私は管理者権限を使い一瞬九朗のアバターの動きを強制停止した。私は自分の知らない未来が訪れるのが、輪廻が壊れてしまうのが恐ろしく、九朗達の努力を無駄にする最低の選択をしてしまった。

 

『なッ!?』

 

 一瞬、けれどその一瞬で十分だった。ボサツ型の剣は九朗の首を切り落とし、九朗のアバターは花びらと消える。九朗の残機はまだ二つある。しかし初期リスポーン地点からかぐやのいる天守閣までは遠い、これでかぐやは今までの輪廻通り月に帰ることにな―――。

 

「九朗がリスポーンしない?」

『九朗も負けちゃった。これでお終いだね。はるばる地球へようこそ』

 

 かぐやは気が付いておらずボサツ型と言葉を交わしライブを終えようとしている。

 何故、何故九朗はリスポーンしない? 何が起きている? 

 

――ビィー! ビィー!―――

 

 再び警報が鳴る。私は直ぐにモニターを見て九朗の状態を確かめる。

 

「これ、九朗のスマコンがハッキングされて――!?」

 

 私は大急ぎで管理人室を後にして九朗の部屋の中のパソコンに侵入する。

 

「そんな、こんな、こんな事!」

 

 九朗は強かった。()()()()()()、本来感情なんてものが無いに等しい月人に『恐怖』を植え付けるくらいに。だからあのボサツ型は九朗が復活できないように()()()()()()()し始めたんだ。最後の一撃になにかのウイルスが仕込まれていたに違いない! 

 

「私のせいだ……。私のせいで九朗がッ!」

 

 急げ急げ急げ! もうすぐッ! 私は九朗の部屋のパソコンに侵入してすぐにカメラを起動する。ネット上で監視していたのがバレるけどそれはこの際どうでも良い! まずは九朗を助けないと!

 

「九朗! ――――へ?」

 

 私がカメラとマイクを起動して目に飛び込んできた光景は月明かりに照らされた部屋の中で九朗のスマコンがハッキングによってオーバーロードされて爆発する瞬間だった。

 ポンッと気の抜ける様な音と共に九朗の左目が吹き飛び、九朗がガタリと床に倒れこむ。血が飛び散って部屋を赤く染める。

 

「あ、ああぁぁぁ……」

 

 私の中の思い出が、月明かりに照らされた綺麗な九朗の顔が……。月明かりに照らされて血だまりに沈む顔へと置き換えられていく。

 

「いや、ぃやだよ、九朗……」

 

 私が、私が、私のせいで……。私があの時九朗の邪魔をしたから―――。私のせいだ。私が九朗を――

 

 

私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。

 

「嫌ァァァァァァァアア!!!」

 

 




・どこまでが安全なのかしっかりテストしてくれる職人の鑑、安東礼
・門松カバー付きグラインドブレード。尚展開時にははじけ飛ぶため原作通り
・本当に真相ギリギリに届いた九朗くん。
・いつの間にか自分ど同レベルまで成長している月人たちに大興奮の九朗くん。
・しかしそのせいで原作と違い帝や彩葉までも残機ゼロになってしまう。残機ゼロになった人が待機するクリスタルの中で壁をバンバン叩きながらかぐやの元に行こうとするいろPの姿を想像すると笑顔になりますね?
・ヤチヨ、輪廻の崩壊前に戸惑い。
・九朗くん、月人に感情を覚えさせる。
・月人「こいつ、ヤバ……もう復活できないようにしたろ」
・ヤチヨ、大切な思い出が上書きされる。

番外編何みたい? 九朗くんの歌唱時反応は内定済み

  • 乃依と買い物
  • 帝とぶらりツクヨミ
  • ブラックオニキスコラボライブ
  • オタ公との初『SENGOKU』の話
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