超闘争   作:四脚好き

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第27話

病室

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「ん? どうしたみんな?」

「九朗、説明」

「い、彩葉?」

 

 な、なんかみんなの気配が近くなってきてない? というか、カヨコは頭をよりギュっと抱きしめてるし、広美は足、というかもう左側の腰に抱き着いて来てるし……彩葉の傷を撫でる手にも若干力込め始めてない? 

 

――パァッッン――

 

「な、何の音!?」

「気にしないで、芦花がちょっとドアを閉める時力を籠めすぎちゃっただけだから。いいから、お前はキリキリ吐きなさい」

 

 え、ぇぇ……。

 

「というか、カヨコに頭抱えられてるんだけどこのまま説明するの?」

「我慢しなさい。カヨコさんが最初に部屋で倒れてる九朗を見つけたんだから」

 

 カヨコに頭抱えられたまま説明するのはどうかと思ったが彩葉にそう説明される。まぁ、それなら別に、仕方がないのか?

 

「ほら、俺あの時見慣れない武器使ってただろ?」

「あのおっきいチェーンソーですか?」

「あぁ」

 

 広美の答えに頷く。

 

「まずあれの名前は『グラインドブレード』。月人共が一体どれだけの強さなのか分からなかったから用意した規格外の大型武装。コンセプトは『全てを焼き尽くす暴力』」

「……お兄が好きそうなコンセプト」

「分かるか?」

 

 リンもなかなか分かってくるようになったじゃないか。

 

「一個人が所有する武器としては異常な火力を誇ってる。彩葉、『KASSEN』におけるアバターのHPは?」

「その人のビルドにもよるけど最低1万で最大5万位でしょ?」

「正解。で、グラインドブレードの攻撃力だけどチェーンソー、1本当たり9万」

「は?」

 

 俺の言葉に彩葉の声が素っ頓狂な物になる。きっとさぞ驚いた表情を浮かべていることだろう。

 

「ま、待ってお兄、今、『1本当たり』って言った?」

「おう。だから×6で54万ダメージだな」

「ぶ、ぶっ壊れじゃん……」

 

 芦花の少し引いたような声が聞こえる。

 

「ただ、勿論代償はある。見た目の割に当たり判定は小さいし、何よりあの細かすぎるパーツ一個一個の描画とそれ一つ一つの動作プログラムを使用者のスマコンで処理するから一分以上使用するとスマコンが異常な発熱しちゃって目が焼けるんだよね」

「っ!?」

「成程、右眼の視力がほとんど失われた原因はそれか」

 

 殆どが息をのんでいる中、父さんだけが冷静な声で考えている。そこらへんは研究者してるな。

 

「あぁ、そうだね。グラインドブレードを持ってるのは今のところ俺だけだし、作ってくれた奴等も"もう作りたくない"ってなってるから他の人のスマコンが異常発熱して使用者がこうなるってことはまずないよ、父さん」

「そうみたいだな。取り合えず再現性はほとんどないみたいだし、本社に詳しく報告しないとだからそこらへんの話をあとでもう少し詳しく聞かせてくれ。上の連中、スマコンで初めての大事故でちょっと焦ってるんだ」

 

 ま、それはそうだよな。製品の安全性が問われている訳だし。そう考えるとスマコン関連の研究者の両親二人にはかなり迷惑かけたかもしれない。

 

「うん、ゴメン。二人の仕事に迷惑かけちゃ―――ぐえ゛」

「バカ、迷惑なんていくらでもかけて良いのよ。それよりもそんな無茶したほうを謝りなさいよ!」

 

 母さんの声と同時にふとももの辺りを強く叩かれる。

 

「いった……。ん、まぁ。ゴメン。で、ともかく俺はそんな武器を一分以上使ってたわけだ。そうなれば当然両目は焼けるし、なんなら目の奥の神経まで傷ついて最悪死ぬかもなーって思ってたわけ。だからほら、生きてるし、片眼は視力もうっすら残ってる。ラッキーでしょ?」

 

「なにも、ラッキーじゃない! こ……この戦バカ! ……かぐやが帰っちゃって、家中探しても見つからなくて……、そしたら隣の部屋がバタバタし始めて。もしかしたら帰っちゃうなんて嘘で、九朗達の家の方に隠れただけだと思ってドアを開けたとき、顔が血まみれのアンタが担架で運び出されているのを見た私がどんな気持ちだったか! 

最初に部屋を見たカヨコさんがどれだけの衝撃を受けたか! 

救急隊の人が来るまで必死に傷を抑えて両手を血で染めた広美さんがとれだけ青ざめた顔をしたか! 

連絡を受けた芦花、リンちゃん、両親の二人がどれだけ驚いて心配して、恐怖したか! 

なにも……なにもラッキーなんかじゃないのよ……。

もっと自分を大切にしてよ……九朗」

「い、彩葉……泣いてる?」

 

 彩葉の顔に触れたくて声のした方に手を伸ばすが細かい位置が分からないくて手が空を彷徨う。誰かが俺の手を掴んでなにかに当てる。柔らかな感触と流れる水滴……涙かこれ?

 

「彩葉ちゃんだけじゃなくて周りの女の子、みんな泣いてるわよ。ほんっと罪な息子ね」

 

 どうやら俺の手を掴んだのは母さんだったようだ。

 

「お前の考えていたことは分かった。しかしどうしてそこまでしてかぐやちゃんの卒業ライブの演出にこだわったんだ? というか、そのかぐやちゃんも来てないみたいだし、彩葉さんの話だと帰ったって言っていたが、連絡も付かないのか?」

 

 あー、そういえば父さん、もっと言えば母さんは事情を知らないからそうなるよな。あ、ほらなんとなくだけど彩葉たちも固まったのが分かる。

 

「んー、いや、説明しよう彩葉。父さん、母さんは口は堅いし、どうしても頼みたいことがある。事情の説明は避けられない」

「……分かった」

 

 そうして俺たちはかつてブラックオニキスや芦花たちに説明したのと同じようにかぐやの秘密を喋り、そしてあのかぐやの卒業ライブがどういう代物だったのかを説明した。そしてそれを聞いた父さん、母さんは……

 

「月……仮想現実に近い……電子生命体文明……」

「現代の竹取物語! 良いじゃない! 素敵な出会いをしたのね」

 

 おぉ、なんかそれぞれ違いリアクションだけど信じてくれているみたいだ。

 

「信じてくれるんだな」

「そりゃ、子供のことを信じない親なんているもんか。あ、いや、ただ肯定している訳じゃないぞ!」

「大事な息子がこんな怪我してまで守ろうとしたんですもの、信じるわ。ふふふ、本当にかぐやちゃんが好きなのね。わかるわぁ、あの子とっても可愛いもの」

 

 うん、無条件に肯定している訳じゃないのは分かって良かった。流石にそこまで親ばかじゃないか。……というか。

 

「母さん、かぐやのこと知ってるの?」

「ええ、勿論。あれだけ人気なんですもの。気になってみるに決まってるでしょう? それですっかりファンになっちゃって」

「二人でチャンネル登録してるぞ! あ、勿論お前のことも見てるぞ『渡り鴉』!」

「……どうも」

「というか、うちの研究所のみんなは大体『かぐや・いろP』や『渡り鴉』のファンよ」

「自慢の息子だからな! 研究所のみんなに紹介したんだ!」

 

 お、親バレ! くっ、なんだこの微妙な感じ! 恥ずかしい様な、嬉しい様な! そして職場で言いふらしたんかい! あ、ああああ! 何やってんだこの両親は! や、やっぱりバカだ! バーカ!  

 

「それよりもだ。まぁ、俺の事情は話したんだけど彩葉達のほうは? ……少し話に出たから分かるがかぐやは、やっぱり?」

「……うん」

 

 俺の言葉に彩葉の答えが返って来る。そっか、そうか……。やっぱり帰っちゃったんだなかぐや……。なら、やることは一つだけ……。

 

「父さん、母さん、お願いがあるんだ」

「どうした?」

 

 父さんが優しく聞き返してくれる。

 

「俺にもう一度戦う力を、AMSを下さい」

 

 申し訳ないが抱き着いていたり、傷を撫でているカヨコに広美、彩葉をどかしてベッドの上で土下座する。途中ベッドの幅が分からなくてよろけ落ちそうになるがリンが咄嗟に支えてくれた。

 

「九朗……!? まだ戦う気なの!?」

 

 芦花の悲鳴に近い声が聞こえる。両親はなにも言わない。

 

「無論だ。向こうからやって来た記録が残ってるんだ。それをヤチヨや二人の力を借りればこっちから向こうに行く手段も見つかるかもしれない」

「向こうとは……月ですか? 一体何で……」

 

 カヨコの小さな声が聞こえる。

 

「もちろん、かぐやを取り返しに行く」

 

 なにを分かりきったことを。

 

「もうこの目じゃ、スマコンでは上手く戦えない。けど、直接脳波でやりとりするAMSならまだ戦える! それで今度こそ月の奴等をぶっ飛ばす!」

「お兄……」

 

 俺は頭を下げたまま力説する。

 

「そうは言うがな九朗。まだAMSを正式に売り出せない原因の一つに『適正』というものがあるんだ」

 

 父さんが頭を下げたままの俺の肩に手を置いて説明を始める。適正……なるほどそれもあるのか。

 

「脳波でやり取りする都合上、どうしても人によってそのやり取りの向き不向きが出来てしまうのよ。適性が低い人だとアバターとの深く繋がれずに逆にコントローラーを使った時以上に動作に時間差が出てしまったり、理性による操作を無視して本能の行動が優先されて入力されてしまい、思うように操作できなかったりと色々な問題があるの」

 

 母さんが続けて説明をしてくれる。けど、そんなことは関係ない。

 

「適正の低さを補う方法なんていくらでもある」

 

 それがAMSであるなら、アマジーグのようにすればいい。こちとらそもそもフロムの無い世界に転生して何年、精神的負荷をかけられてると思ってんだ。

 

「方法って……」

「なぁに多少無茶するだけだ。たとえば―――」

「ダメだよ!」

「――芦花?」

 

 リンの疑問に答えようとした俺の言葉を芦花が止める。そしてつかつかと言う足音が寄って来る。おそらく芦花のものだろう。がしりと土下座していた俺の顔が掴まれ、持ち上げられる。

 

「芦花……か?」

 

 視界にうっすらと見えるシルエットから芦花だと判断する。

 

「こんな、こんなに大きく傷ついて、死んじゃうかも知れなかったんだよ! なのに、どうして……どうしてまだ戦おうって言うの? 確かにかぐやちゃんのことは辛いよ。でも! きっとかぐやちゃんだって九朗にこんなボロボロになってまで戦って欲しいとは思わないよ! 嫌だよ……九朗、今度こそ死んじゃうよ……。私は、九朗に生きてて欲しい!」

 

 遂に抱きしめられてワンワンと泣かれてしまう。

 

「そうですよ、九朗さんはもう無茶しちゃダメです。私が、私たちが一生かけて守りますから……。もうゆっくり休んでください。お願いです」

「カ、カヨコ?」

 

 なぜかいつもより声が……なんというか薄暗い、とでも言えば良いのだろうか。仄暗い気配のするカヨコがスルスルと俺の腕に自分の腕を絡めて耳元で囁いてくる。二人とも、いや、今はなんとも言っていないが広美もリンも彩葉だって同じことを思っているに違いない。

 きっと幸福なのだろう。きっと楽しいのだろう。みんなに面倒を見られつつも努力して点字など覚えてそれなりに生活していくことも。

 けど、そこにかぐやはいないんだよ。だからそれはひっそりとした傷の舐めあいの様で、俺の意識がかぐやの救出に向かわないようにじわじわと縛っていく正に鳥籠のような生活。

 

「それじゃぁ、ダメなんだよ」

「九朗……?」

「……っ」

「ハッピーエンドに連れて行くって約束したんだ。皆が心配してくれてるのは分かった。けどゴメン。俺はどうしてもこのままじゃ終われない。終わらせたくない! だから、もう一度だけ。最後の無茶を俺にさせてくれ!」

 

 鳥籠なんて、俺達(レイヴン)にとっては破るためのもんだろう? ここじゃ、終われない。もう一度あの空へ、もっと高く、高く! 月まで飛んでやらなきゃいけないんだよ!

 

「ダメだ」

「なっ」

 

 父さんがそう告げる。

 

「これ以上息子に()()はさせられない」

「でも!」

「だから――これ以上お前が無茶しないで良いように安全な専用のAMSを作る。だから完成するまではしっかり休みなさい」

「!」

「お嬢さんたちもそれでいいかい?」

 

 父さんがそう言う。

 

「……絶対に死なない?」

「あぁ」

 

 涙声の芦花の背中を安心させるように撫でる。

 

「必ず帰ってきてくれますか?」

「約束する」

 

 カヨコの耳元に口を寄せながらそう告げる。

 

「かぐやちゃんの復活ライブのMCもバッチリ任せてください!」

「頼んだぞオタ公」

 

 広美の方に手を伸ばし、握ってもらう。

 

「AMS使いとしては私の方が先輩だし色々教えて上げるねお兄」

「あぁ、頼むよ先輩」

「ぉ゛っ」

 

 慣れるまではかなり頼りにさせて貰うからなリン。

 

「私ね、かぐやに歌を届けようと思ってるの」

「彩葉?」

「かぐやに伝えきれなかった思い全部全部を詰め込んで歌にする。それで届けてやる。月だろうが、宇宙だろうが、電子の世界だろうが。思いの全てを詰め込んだ曲を作るの。それが私の今やってること。……私もかぐやのこと諦められないんだよ」

 

 そうか……。いや、そうだよな。俺が諦めきれてないんだ。俺以上にかぐやと一緒にいた彩葉が諦められるわけがない。

 

「行こう、今度こそみんなでハッピーエンドまで!」

 

 彩葉が俺の手を取って握りしめる。俺はその手を強く握り返して頷いた。

 

「それはそれとして、退院するまで私たち入れ替わりで病室来るし、退院しても絶対だれか一人は一緒にいるから。良い?」

「え?」

「問答無用! 自分がどれだけ好かれ―――、心配かけたかその身で味わって反省して!」

 

 

???

────────────────────────

 

 

「ヤチヨ! ヤチヨ!」

「……どうしたの、FUSHI?」

 

 薄暗い部屋の中、黙々とツクヨミの管理業務をこなすヤチヨ。でもその目は虚ろで最近の配信も過去のアーカイヴを流すだけになってしまった。

 

「九朗が目を覚ました」

「本当!」

「あぁ」

 

 僕の一言にヤチヨはこちらを向いて急いで彼の病室の機器に侵入、彼のバイタル情報を表示する。……立派な犯罪だが僕は目を瞑ってあげよう。しかしそこは流石の大病院、プライバシーがしっかりしてるのかカメラの類はないようだ。

 

「ああ……生きてる。九朗が生きてる……良かった。良かった……」

 

 モニターに表示された九朗の脳波と心臓の波形グラフを愛おしそうに抱きしめるヤチヨ。……あんまりこう言いたくはないが波形グラフを愛おしそうに抱きしめるのは中々絵面が危なくないだろうか。

 

「……でも私はもう九朗に会わす顔が無いよ。ごめんFUSHI、管理業務も終わったし私は少し、寝るね……」

「お、おい、ヤチヨ!」

 

 そう言ってヤチヨは僕でも入るのに手間取る領域へと引きこもってしまった。最近はずっとこうだ。ツクヨミの管理に必要な作業だけを行ってあとはずっとこうして引きこもっている。それだけあの時、自分が九朗を殺しかけたということが傷になってしまったんだろう。このままじゃいけない。ずっと会いたかった彩葉や九朗に会えたというのにヤチヨの心が壊れてしまう。

 

「……僕がどうにかしなきゃ!」

 

 九朗のやつは今スマコンも持ってないし、まずは彩葉の方から接触しないとだな! 

 

 

 




・血濡れ九朗くんの第一発見者はカヨコさんでした。あーあー、綺麗な和服が血だらけだ。
・彩葉は原作通りキッチンの下を探したりしてふじゅ~かぐやから受け取って凹んでいるところにバタバタが聞こえてきて玄関明けたら血まみれ九朗くんと対面しました。
・烏丸研究所はかぐや派、いろP派、渡り鴉派の三つに分かれ混沌を極めていた。
・身体はすでにボロボロで酷使できない。なら精神の方でいったれ! と考えていた九朗くん。
・お父さん『息子に無茶させられないから息子に合わせて機械の方を調節すりゃいいじゃん』
・それはそれとして暫くは監視生活です九朗くん
・FUSHI 頑張る! 
・因みに精神的にヤバいかったのは一番から順に
ヤチヨ、カカ、芦花、オタ公、彩葉、リンって感じです。
ヤチヨは言うまでもなくですし、カカさんは血だられの部屋と弾けた左目の欠片と目が合っちゃったので大分ギリギリでした。
 芦花も好きな人が自分の知らないところで死にかけたというのが多きなショックになっています。
 オタ公は自分以上に驚愕しているカカがいたのである程度落ち着いています。それでも救急隊が来るまで九朗くんの左目を圧迫して止血していたので両手血だらけで精神はゴリゴリ削れました。
 彩葉は血濡れた苦労の顔を見ましたが救急隊の手でえぐい状態の傷口を直接見ていないのでこの位置にいます。そしてリンちゃんは両親と一緒に連絡受けたのと、実際に兄の状態を見ていなかったためこの位置です。

番外編何みたい? 九朗くんの歌唱時反応は内定済み

  • 乃依と買い物
  • 帝とぶらりツクヨミ
  • ブラックオニキスコラボライブ
  • オタ公との初『SENGOKU』の話
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