超闘争   作:四脚好き

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第28話

病室

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 俺が目を覚ましてから数日、前言通り退院するまで両親含めた鳥籠メンバーが俺の傍にずっといた。その間色々な人間が見舞いに来てくれた。真実と瑛斗が来たときは―――

 

「こぉんのクソボケ……。彩葉や芦花が……ついでに私がどれだけ心配したか、あの二人がどれだけ涙を流したか……思い知れぇッ!」

「お、おい……真実、そのあたりにしとけ……」

 

 彩葉や芦花、そして自分にも心配させたという理由で真実から瑛斗も若干引くぐらいの良いパンチを貰った。真美の奴、病院で怪我人を増やす気か?

 そして意外な人たちも来た。

 

「随分無茶したみたいだな……。こんな傷も付けちまって随分男前になったんじゃねぇか?」

しょうほもうばぅうわ(そう思うなら)ほのてほほげおぅ(その手を止めろ)

「いやー、彩葉がやってるのを見てから一度はやりたくてさー」

 

 俺の頬を引っ越しの時の彩葉と同じようにこねくり回すのは帝アキラこと、酒寄朝日。彩葉が連絡したためお見舞いに来てくれたらしい。それもブラックオニキスの面々を引き連れて。

 

「あさひー、そこまでにしな」

「おーう」

 

 やっ、やっと離しやがった……。ったく……なんだ? 酒寄の血筋は俺の頬をこねらなきゃ気が済まないのか? っと……誰かが傷に触れたな。

 

「ん、すまない。驚かせたか?」

「おぉ、雷さんか……。まぁ、傷跡はちょっとビックリする」

「そうか、悪かった。お前にも心配してくれる人がいるんだ。もう無茶はするなよ」

 

 そういって雷さんは傷から手を離す。

 

「今あれでしょ? 九朗用のデバイス作ってるんだよね?」

「あぁ」

「出来たら買い物付き合ってよ。心配させた分いろいろ買ってもらうから。早めにお願いねー」

 

 それはアレか。言外に早く良くなれという乃依なりの励ましなのだろうか。

 

「あぁ、約束する」

「うん、じゃあね~」

「お大事に」

「あばよ、回復したらまた遊ぼうぜ!」

「あぁ、ありがとう」

 

 ブラックオニキスの面々はそうして帰っていった。……真実が聞いたら羨ましがるだろうか?

 

 そして勿論俺用のAMSの開発も進んでいる。父さんがよく謎の機械を持ってきては俺の頭に付けて色々なデータを取って急ピッチで専用AMSを開発しているらしい。

 一方母さんは爆発せず残った俺の片側のスマコンから『地球とはまったく違う言語で構成されたプログラム』の痕跡を発見して、かぐや奪還に生かせるかもしれないと研究所の所員たちと共に解析を試みている。

 ……ウチの両親ヤバくないか? 以前から凄まじいとは思っていたがまさかここまでとは……。

 

  あと、ウチの両親の上司、とどのつまりスマコンを開発、販売している企業の本社の人たちがやって来た。自社の主力商品でこんな重大事故が起きたのは初らしく急いで調査にやって来たらしい。そこでそもそも俺はスマコンの安全警告を切って使用していたため他のユーザーよりもスマコン自体が劣化していたこと、そしてそこに謎のハッキングを受けて今回の事故に繋がったということにしておいた。月人には申し訳ないが全ての責任を被ってもらおう。実際、謎の言語によるハッキングの履歴は残っていたわけで、スマコンも安全警告に従って使用していればまったく問題ないと結論付けた。

 細かいことは両親が話していたが俺にはよく分からん領域の話だ。ただ重要なのは、スマコンやツクヨミは回収、閉鎖という騒ぎにはならず、謎の凄腕ハッカーの仕業ということになった。

 

 

リビング

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「何だかんだ入院生活も終わって久々に戻って来たな。……と、言ってもまったく部屋の様子とか見えないんだけどね」

「その……なんというか……」

「九朗くん……ちょっと流石に、笑えないかなぁ……」

 

 退院してカヨコ、広美と共に過ごした家に戻って来た。とはいえ、口にした通り俺には部屋の中の様子がまったく分からず、二人に手を引かれながらここが部屋だと連れてこられただけで本当にここが部屋なのかは分からないんだけどね。それを笑いながら言ってみたのだがカヨコと広美の反応はイマイチだ。

 

「うーん……彩葉、芦花?」

「私も二人とおんなじかな……」

「そんなんで九朗は私たちが笑えると思ってるのかな~? 違うからね~?」

 

 おー、彩葉がかぐやに『つまり彩葉がこのお爺さんってこと?』って言われた時と同じようなトーンで喋っている。結構怒ってる?

 

「……しかしこう見るとデザイナーズ物件って段差多いな。九朗、大丈夫?」

 

 彩葉の声が聞こえる。……あー、なんとなくの記憶だけど確かにリビングにも段差あったっけ……? 

 

「んー、ダメだ。なんとなく彩葉達の場所は気配で分かるけど家具とか段差は全然分からん。多分こうやって無闇に動いたら普通に転ぶな―――」

「ダメですよ。そちらには階段の角がありますから」

「危ないと分かりながら動かないで下さいー」

 

 お、カヨコと広美に動きを止められる。……肩を掴んで止めてるのが広美で、腕を抱きしめているのがカヨコかな? ……最近カヨコはこうやってくっつくことが多くなったよな? なにかあったのかな? 

 

「取り合えず九朗用にリビングの段差には何かスロープを用意するか、室内用の杖を用意するからそれまでは出来るだけ大人しくしてて」

「分かった」

 

 彩葉の言葉に頷いてカヨコの誘導の元、リビングのソファに座る。

 

「リンちゃんと九朗の両親は実家の方に帰っちゃったけど暫くは月二、三ぐらいで様子見に来るって」

 

 まぁ、リンは二学期始まってすぐにこっちに来てくれていたわけだし、これ以上休むわけにはいかないし仕方がない。父さん、母さんもデータ収集は終えたみたいだしひとまず研究で本腰入れて開発、解析に力を入れてくれるらしい。

 

「お義父さん、お義母さんに任されたからにはちゃんと九朗の面倒見るからね! 私も彩葉の方の部屋に住むことになったからなにかあったら直ぐ呼んでね!」

「芦花が?」

 

 俺の知らない間に芦花もこのマンションに引っ越していたらしい。

 

「あの家は私一人だと広すぎるから……」

 

 そう少しだけ寂しそうにつぶやく彩葉。はっ、一体何を言っているんだか。

 

「直ぐにかぐやを連れ戻すからまた騒がしくなるぞ?」

「……そしたら今度は三人で今まで以上に賑やかになるわ」

 

 それから数日、俺以外のみんなはとても忙しく過ごしていた。

 彩葉はかぐやに届ける歌の作曲の為に学校を休み、自室か俺の傍で作曲に力を入れまくり。あ、因みに俺は一応まだ休学扱いになっているらしい。

 芦花は日中は学校に通い、放課後になると俺の面倒や、作曲に夢中になりすぎた彩葉の面倒を見てくれている。

 カヨコは勤務先に事情を話し出勤日数を減らし日中の俺達の面倒を見てくれている。すこし分かったことがあるがカヨコはどうやら俺の傷跡を見るのが苦手らしく傷跡の見えない右側から話しかけたり、右側にいることが多い。

 広美も講義がない日は家にいてカヨコと同じように俺達の面倒を見てくれた。あと、広美は鳥籠メンバーの中で一番体格がよく俺のこともスッと抱えられるぐらいなので介助役にうってつけで本当に助けて貰った。ただまぁ、一緒にお風呂入ってる時とかはなんか堪えてるような声が聞こえたし無理させてしまったかもしれない。

 

 

ツクヨミ

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「えぇ……お兄、マジぃ?」

「あっはは、さっすが九朗って感じ」

「ほんと、『KASSEN』に関しては一級品だ~」

「また、手に負えなくなったな……」

 

 俺はツクヨミにログインしていた。

 

「ですけどこれで……」

「えぇ、渡り鴉、完全復活……。いえ、より強くなって戻ってきましたね!」

「無事に届いたようで何よりだ!」

『配信で見てて強いわーと思っていたけれどこう見ると九朗は本当に上手ね』

「あぁ、ありがとう父さん、母さん」

 

 『KASSEN』ステージ、闘技場。障害物のない円形のシンプルなステージ。俺の前に疲労困憊と言った様子で倒れこむ、リン、ROKA、まみまみ、レオ、カカ、オタ公、父さん。母さんは通信でのみ参加だ。

 そう、遂に俺のAMSが完成し家に郵送されてきたのだ。そして試運転ということで俺対他の面子の1対7という変則マッチを開催した。結果は二分で俺が相手チームを全滅させて勝利した。凄いなAMS、しっかり物が見えるだけじゃなくて指の入力よりも遥かに早く、精密にアバターを動かせる……。

 

「んー、けどもう少し慣れが必要かも。二分もかかるとは思わなかった、もっとうまくやれば一分もかからないと思う」

「うげぇ……」

「それはちょっと盛りすぎじゃない?」

「それほど軽くやられるつもりはありませんよ……」

 

 俺の言葉にまみまみが顔を顰め、リンとカカが悔しそうな顔で反論してくる。

 

「なら、試してみるか? 俺は今とても気分が良い。いくらでも戦えるぞ……。あとそれから父さんは外した方が戦力アップになると思う」

「なにをー! 父さんだって息子と遊びたいんだが!」

「だって……初期アバターに、初期装備じゃん……。しかも名前が『データ検証用烏丸研究所共用アカウント』って。明らかに職場でツクヨミ内のなんらかで活動する用のアバター使ってるじゃん。ちゃんと個人用のアカウントで店売り装備でもいいから揃えてきなよ……」

 

 防具もないし、武器も初期のものだし、初ログインのふじゅ~だけでも、もう少しましな装備が店で買えるって! はっきり言って最初期のリン以下だぞ……。

 

「え? あ、彩葉!? え、わ、分かった!」

 

 ん、芦花の様子がなんか変だ。多分リアルの方で彩葉に何かを言われたのか?

 

「えっと九朗、カカさん、オタ公さん、一度ログアウト! 彩葉が言いたいことがあるみたい!」

「かしこまりました。それではみなさん、一度失礼します」

「わっかりました! それじゃ、失礼します!」

 

 次々にログアウトしていくみんな。俺はリンと父さんの方を向いて手を軽く上げる。

 

「多分、これからまた色々事態が動く気がする。父さん、母さん、間に合わせてくれてありがとう。……色々終わらせたら、今度は……俺の方から会いに行くよ。リン、その時また色々話そう」

「! あぁ、待ってるからな!」

『こっちも月人について色々わかったら連絡するわ』

「うん、私待ってるからね!」

 

 そうして俺もツクヨミからログアウトする。

 そうして現実に戻って来た俺は大きなヘルメット上のAMSを外してベッドから起き上がる。そして手探りで杖を探し手に取る。

 

「よいしょ、と」

 

 杖で足元を確認しながらゆっくりとドアを開けてリビングに向かう。……いつもなら俺が起き上がるとすぐに誰かが部屋に来るんだけど今日は誰も来ないな? 

 

「……彩葉の気配? いや、芦花もいるな」

 

 こちらの家に彩葉と芦花が居てその周りにカヨコと広美もいる。なにかあったか? いや、あったから呼んだんだよな……。

 

「何があった?」

「あ、九朗さん! すいません」

「いや、別にいい」

 

 俺がリビングに出るとすぐにカヨコが寄ってきて手を引いてくれる。別に謝る事じゃないし気にしないでいいのに。カヨコに手を引かれリビングのソファに腰掛ける。すると彩葉が口を開いた。

 

「あのね、九朗。すこし、変なことを言うよ。でもそうとしか私は思えないの、だから今から言う事を信じて欲しい」

「あぁ」

「ついさっきかぐやへ向けた歌が完成したの。それで何度も何度も月に向かって歌ってたの。……そしたら聞こえてきたの、ヤチヨの声が」

 

 お?

 

「それで色々な物が繋がっていったの。なぜヤチヨの曲に私はあんなに魅せられたのか。ヤチヨの曲はなぜ、ここまで私の心に沁み込んだのか。ヤチヨはどうして私とお父さんの遺作のメロディを歌っていたのか。なんでいつも未来を知っているかのように、静かに笑ってたのか」

「「かぐや(とは)ヤチヨだったの(である)! ―――え?」

 

 やっぱり彩葉もそこに到達したんだ。

 

「九朗、知ってたの?」

「あぁ、大分前から。二人の『KASSEN』での動きが殆ど一緒でそこから確証は持ってた。ただどういう理由で分裂してるかが分からなくてさ……」

 

 そう言えば、卒業ライブ前に考えてたこと、『ヤチヨは月に帰ってしまった後のかぐやが何等かの方法で再び地球にやって来た姿である』っていう考察、色々あってすっかり忘れてた。

 ……ん?

 

「そっか……そうなんだ……九朗はずっと知っていたと……」

「あー……彩葉? 何か怒ってないか?」

「正座」

「うぇ?」

「九朗、正座ァ!」

「は、はい」

 

 え、えっと……正座……はい。

 

「そういう重要なことはさっさと相談して! 分かった!?」

「はい……」

「九朗くんもそう言うってことは本当にヤチヨがかぐやちゃんなんですね……」

「分身ってことはヤチヨがかぐやちゃんの、コピー元? 若しくは逆ってこと?」

「いえ、あの月人の技術、ヤチヨのデビュー年、そして未来を知っている様な笑顔から考えるに……」

 

 広美が感嘆の声を上げて、芦花がどちらが元なのかを考えて、カヨコがそれを否定した。

 

「ヤチヨはかぐやが月に帰った後タイムリープして戻って来た姿、なんだと思う」

 

 そして最後に彩葉がそう纏めた。

 

「そういうこ――――は?」

 

 俺が口を開こうとした瞬間この部屋の中に突如として異質な気配を感じる。月人ども……にしては気配が小さい? なんだ、この気配は?

 

「FUSHI!? どうしてあんただけで!」

「え、FUSHI?」

 

 彩葉が驚きの声を上げる。え、この気配FUSHIのなの? というか、彩葉達にはFUSHIの姿と声が聞こえているらしい。俺は見えないのはまぁ当たり前だとして、聞こえないんだが?

 

「そこにFUSHIがいるのか? というか、みんなは声聞こえるのか?」

「あ、そっか、九朗はいまスマコンしてないから……」

「九朗さん、イヤホンだけでも」

 

 カヨコがそう言って自身のスマコンのイヤホンの片方を俺の耳に付けたらしい。

 

『やぁ、九朗』

 

 FUSHIの声が聞こえる。どうやら本当にここに居るらしい。

 

『まずは君が生きていてくれて本当に良かった。君に"一大事"があったらヤチヨの心は本当に壊れていただろう。君たちの推察通り、ヤチヨはかぐやだ。そのあたりは本人とあって話すと良い。だけど、その前にお願いがあるんだ』

「なんだ?」

『ヤチヨを……助けて欲しい』

 

 FUSHIの声は本当に悲痛に満ちていた。どうやら事態はかなりひっ迫しているらしい。ヤチヨ(かぐや)が苦しんでいるのか? 泣いているのか? なら、俺の答えは決まっている。

 

「任せろ。どこに行けばいい、何をすればいい?」

 

 俺のかぐや姫を助けに行こう。今度こそ、彼女の笑顔を守るために。

 

 




・真実パンチは男子も引くぐらいの威力が出る時がある。
・『酒寄の血筋は俺の頬をこねらなきゃ気が済まないのか?』まだ一人大物が残ってますねぇ……。
・雷さんは乃依と似ている小柄で女子の様な顔つきの九朗を第二の弟の様に思っていたりする。
・乃依も何故か九朗を弟扱いする。
・すべての罪は月人に被ってもらいました。ゴメンね! まぁ、間違ってもないし……
・芦花、引っ越し!
・極上の獲物を前にしても『ヨシ!』がないため我慢したオタ公の忠犬っぷりを讃えよ。
・だから時折体洗っている九朗くんを眺めながらくぐもった声を出し手も許してあげなさい。いいね?
・渡り鴉、再起動
・次回、8000歳児を叩き起こす。

番外編何みたい? 九朗くんの歌唱時反応は内定済み

  • 乃依と買い物
  • 帝とぶらりツクヨミ
  • ブラックオニキスコラボライブ
  • オタ公との初『SENGOKU』の話
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