超闘争   作:四脚好き

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今回独自設定要素が出てきます。


第3話

西竹屋

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 三連休初日。普段の俺ならツクヨミ漬けで『KASSEN』漬け、そしてある程度したらヤチヨに怒られる。そんなはずだった。

 

「……なぁ」

「なに?」

「昨日よりデカくなってないか?」

「……やっぱそうだよね」

 

 なぁんで俺はクラスメイトの女子と『子育ての味方』がキャッチコピーの店に来てるんだろうな……。にしても……

 

「色々必要なんだな……」

「おむつに子供服、ミルクに哺乳瓶……消毒薬とセット……!?」

 

 必要な物を調べてカゴの中にどんどん入れていく彩葉。しかしその量と値段に彩葉の顔色が目まぐるしく変わっていく。……同じものでも幾つか種類がある。そんな中、自分も苦しいだろうにそれなりに品質が良いモノを選んでいるのはホントなんというかお節介焼きというか、母性というか……。

 自分の生活費と学費を自分で稼いでる苦学生の彩葉に赤ん坊の世話まで追加とは……。この世界の神様は傑物に更なる苦難を与えるのが好きらしい。流石の彩葉でも潰れる予感がしたので俺は昨日の内に世話の手伝いを申し出た。最初は渋っていた彩葉だが、友達が潰れていくのを何も手助けしないほど俺の人間性は終わっていなかった。学校の間どうするかは三連休中に考えるとして、ひとまずこの三連休中は彩葉がバイトしたり、勉強している間は俺が手伝いをすることに同意させた。

 

「合計で1万6千8百円です」

「はい、これで」

「あ、ちょ、九朗!?」

 

 レジを通すとそれなりの値段になった。配信でふじゅ~稼いどいてよかった……。現実の現金にも変えられるふじゅ~万歳。マジで助かった。お買い上げ金額に驚き固まっている彩葉を差し置いてスマホの画面を見せてさっさと支払ってしまう。そして俺がレジからカゴを持ち上げたときになってようやく再起動した彩葉が困惑の声を上げる。

 

「九朗、お金!」

「気にするな、どうせ溜めるだけ溜めて使い道の無かった金だ。こうして友達のために使えるならまだマシな使い方だろう」

「でもッ!?」

「それよりこれ袋入れるの手伝ってくれ。俺いつも買い物の時適当にレジ袋に突っ込んでるからこういうのわからん」

 

 まぁ、食料品じゃなくてベビー用品にそういう入れる順番的なものがあるかは知らんが。

 

「え? ああ、もうホント雑!?」

 

 あ、やっぱり? 俺が適当に突っ込んでいるのを見て彩葉は俺から袋をひったくり丁寧に荷を詰めていく。おぉ……収納術ってやつかな? 俺が袋パンパンだったのになんか彩葉が詰めると袋に余裕が出来てる。

 

「凄いな。よし、俺が持つからさっさと帰るぞ」

「私も持つよ」

「いや、いい。その代わりその子のことしっかり頼む」

 

 ただでさえ赤ん坊を抱えて大変そうなのに荷物なんて持たせられるか。そうしてアパートまで戻ってきた。荷物を置く関係上彩葉の部屋にお邪魔してしまったな。

 

「……さて、少しの間は俺が面倒見ておこう。彩葉は勉強があるんだろう?」

「いいの? 配信とか九朗にも色々予定があったんじゃ……」

「構わん。確かに戦いたい気持ちはあるけどなぁに10年待ったこともあるんだ。3日くらい造作もない。それよりも勉強もだが一度しっかり休め、昨日から色々ありすぎて自分では平気だと思っても疲れがたまっているはずだ。どうしてもお礼がしたいなら落ち着いた時に『KASSEN』で俺の相手をしろ」

 

 彩葉、お前も中々の腕前だからな戦っていて楽しい。そんな相手が疲労で戦う機会が減るてつまらない事この上ないからな。

 

「ほんっと戦バカ。……でもありがとうね」

「ほう、そこで謝罪じゃなくて感謝が出る当たり成長したな」

「るっさい!」

 

 それから二日間、俺と彩葉は協力して赤ん坊の面倒を見た。

 

「ほら、高い高ーい」

「キャっキャっ」

 

 彩葉が勉強しているときには邪魔にならないよう俺の部屋で遊んでやり

 

「ミルクの時間だぞ。ゆっくり飲めよー」

「んぐんぐ」

「九朗、大分手馴れてきたね」

 

 食事の時は彩葉の部屋で交代にミルクをやり

 

「あっははははは!」

「わっ、こんのッ!」

「良い、凄く良いぞイロ!」

 

 赤ん坊が寝た後僅かな時間だが彩葉に『KASSEN』で勝負してもらったり。予定とは違うがそれなりに楽しい三連休を過ごせていると思う。そんなこんなで三連休の最終日の夜。彩葉と赤ん坊はすでに寝ている。俺は自分の部屋に戻り『KASSEN』での配信をしていた。

 

「シィッ!」

 

 槍を振るい、相手プレイヤーの喉元を切り裂く。切断面から花びらが舞って次第にそれは全身へと広がり相手のHPがゼロになったことを教えてくれる。

 

:いや、今夜も絶好調ですね渡り鴉さん

:3連休まったく配信しないのかと思った

:それ、普段の渡り鴉ならぶっ通しで配信対戦してヤチヨに怒られるまでセットだっと思ったのに

:風邪でも引いた?

 

「いや、風邪なんか引いてないさ。ただまぁリアルで色々あってな。……世の中のお父さん、お母さんは凄いなと思っただけだ」

 

:!?

:!?!?

:なに、子供でもできたの?

:一体誰に産ませたのよ!

:渡り鴉が子持ち鴉に!?

黒羽カカ:そんな! 私とは遊びだったんですか!?

:カカちゃん!?

:カカちゃんいて草

:弟子来てるじゃん

:あー、いけませんいけません、カカちゃんの様な美少女がこんな野蛮な戦バカとつるむなんて

:小鴉たちにまた燃やされそう

 

「別に子供が出来た訳じゃない。あれだ、親戚の子がこの三連休中に俺のところに来てな……。うん、楽しかったところもあるが疲れた。というよりカカ。お前とは元々そういう関係でもなんでもないだろうに」

 

 黒羽カカ。濃紺の長髪に赤い着物、黒い天狗の羽をもつツクヨミでも上から数えた方が早い大人気女性ライバーだ。ウィスパーボイスが魅力的な正統派黒髪美少女であり真夜中にのみ配信をしている。主な配信は歌ってみたや朗読にASMR。時たまゲーム配信などと言った感じだ。因みに『小鴉』とは彼女のリスナーたちの総称だ。

 そんな彼女と俺の関係は『KASSEN』での教師と教え子の関係だ。俺がツクヨミ最恐のプレイヤーとして有名になりつつあった頃、俺に『KASSEN』での戦い方を教えて欲しいとコラボ依頼を出してきたのがまだライバーとして駆け出しだった頃の彼女だ。彼女の武器はスナイパーライフルと薙刀が合わさったような武器で槍使いの俺と戦い方が似ている部分もあり教えられることも、教えて新たに気が付くことも多かった。そういえば彼女が有名になる切っ掛けの一つに被ダメージの時のボイスが色っぽいっというのもあったな……。切り抜きの再生数凄かった気がする。

 今では彼女の方が多くのファンを抱える人気者だというのにこうして今でも絡んできてくれるのは嬉しいが、絡み方を考えて欲しい。カカにはそれなりにガチ恋勢と呼ばれるファンたちがいて俺とカカが絡むと頻繁にガチ恋勢の小鴉がコメントに現れて騒がしくなるのだ。中には『SETSUNA』で勝負を仕掛けてくる小鴉もいてそれは大変うれしいのだがコメントで騒ぐだけの小鴉は本当に厄介だ。

 

:……?

:おっふ

:は、何今の声

:渡り鴉とは思えないメッチャ優しい声じゃん

:ばぶぅ

:俺は渡り鴉の子供だったかもしれない

:渡り鴉ゥ! 顔見せろ! 今絶対父親の顔してるって絶対!

:声だけで分かるメッチャ慈愛の表情してるって!

黒羽カカ:やっぱり渡り鴉さんもASMR配信しましょう! 絶対素質ありますよ!

:寝かしつけ希望

 

「騒がしい。ASMRとか需要ないだ……いや、コメント欄的にはあるのか。いやいや、やらんよ。それよりカカ、お前配信してなくて時間が空いているなら来い。今日は手ごたえのあるやつが少なくてつまらん、俺の相手しろ」

 

:ツクヨミの人気女性ライバーに『相手しろ』って言える男性ライバーってどれだけいるんやろ?

:まぁーたそんなこと言ってるよ。これだから小鴉に燃やされるんだよ

:↑黒鬼の三人に渡り鴉くらいじゃない?

:コイツの場合、女性ライバーと絡んでも『どうせ戦いたいだけ』って分かり切ってるの強い

:しかも嫉妬したガチ恋勢たちとも戦えるというオマケつき

黒羽カカ:お呼ばれしちゃったらしょうがないですね、直ぐに行きます!

:おお

:ゲリラコラボだ!

 

「お待たせしましたー」

「いや、そうでもない。では始めるか」

「え! 挨拶とかちょっとした世間話もなしですか!?」

 

 少し待てばカカがログインして俺の前に姿を現す。俺は直ぐに『SETSUNA』の準備をするのだがカカはどうやら不満らしい。

 

「……挨拶なら勝手にやって置け。俺達の間にそんなものは不要だろ?」

「はぁ……本当、戦いにしか興味のない人ですね。あ、どうも皆さん、良い夜カ? 楽しんでるカ? 黒羽カカです。突然の師弟コラボですけどよろしくお願いします」

 

 そうしてカカの挨拶が終わった後、俺たちは『SETSUNA』でのバトルを開始する。ふふふ、俺直々に鍛えただけあってカカも良い動きをする。ヤチヨに彩葉、帝アキラには及ばないが楽しめる。

 

「ん?」

「どうかしました渡り鴉さん?」

「いや、リアルの方で……」

 

 何戦か繰り返し戦ってカカに疲労が見え始めたときにリアルの携帯にメールが届く。送り主は……彩葉? 『緊急。できれば急いで私の部屋まで来て欲しい』 ほう。なるほど俺が配信気が付いていないな。まぁいい、行ってやるか。

 

「カカ、すまない。リアルで呼び出しがあった。今日はこれで終わりにする。久々に戦えて嬉しかった」

「あ、あはは、それは良かったです。私も久々に思いっきり『SETSUNA』やれて楽しかったです。それではまた」

 

 そう言ってカカがログアウトして俺も配信を閉じる。そしてスマコンを外して彩葉の部屋に向かう。そして部屋のなかに入った俺が目にしたのは彩葉と彩葉の物であろうシャツを身に付けている見慣れぬ少女だった。

 

「ねぇ彩葉、この人はだぁれ?」

 

 それはこちらの台詞だが?

 




『黒羽カカ』
超かぐや姫にチラッとだけ出てくる方ですね。公式ガイドブックで詳しい設定とか見れるんですけどびっくり。滅茶苦茶可愛いんですよね。ただ今作ではオリジナル設定モリモリで出させていただきました。

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