超闘争   作:四脚好き

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第32話

 そしてかぐやが月に帰ってから約一か月後10月11日。俺達はついにかぐや奪還作戦その日を迎えた。ツクヨミは表向きには大型メンテナンス中ということで一般人のログインを制限し、かぐやの事情を知っている人間だけがログインしていた。俺はかぐやが最後に踊っていた特設ステージに立ち月を見上げていた。

 

「遂にか……。待たせてごめんなかぐや。今、行くからな」

 

 今回月へ向かうのは4人。1人は他3人より先行して月表面に到達、月の都で大暴れして月人の戦力を引き寄せる囮役に徹する。他3人は囮役が月人の戦力を引き寄せている間に月の都、その中心にある宮殿へと潜入し、警備が手薄なうちに月の姫と呼ばれるかぐやの上司的存在にヤチヨが復元したかぐやの仕事の完成形と引継ぎデータを渡しかぐやを解放してもらう。月の姫が認めればかぐやは解放され月人戦力にも停戦命令が下されるため、囮役もそれで戦闘終了。かぐやを引き連れて5人でツクヨミへと帰還する。

 

「俺が何を担当するのかは決まってるな」

 

 正直かぐやに一番にでも会いたいが俺の役割は決まっている。まだ誰がどの役割で月に向かうかは決定していないが他のメンバーもなんとなく俺の役割は察している様だった。

 

「ヤオヨロ~! こんなところに居たんだね九朗。もうすぐ最終ブリーフィング始まるよ! ミーティングルームに急いで!」

「あぁ。……ヤチヨ」

「んー?」

「約束だ。絶対に帰って来る。だからまた、みんなでハッピーエンドを目指そう」

「……うん!」

 

ミーティングルーム

────────────────────────

 

「まず私から。この作戦に協力して下さったツクヨミ運営、烏丸研究所所員たち、ブラックオニキス、火薬庫といった各ライバーの方々、及びフロm―――」

「長いわ貴方。ともかく『かぐやちゃん奪還作戦』に参加、協力してくれたみんなありがとう。ってこと!」

 

 か、母さん……折角父さんがかっこよく決めてたのになんてぶった切り方を……。

 

「ここからが本題よ! 今この場にいる面子の中から4人、実際に月にいってかぐやちゃんを迎えに行ってもらうメンバーを決定していくわ!」

 

 しかも仕切り始めやがった! 見ろ、父さん若干凹んでいるぞ! 

 

「はい。私は絶対に行きます。ヤチヨから腕輪の中にかぐやの引継ぎデータとか入れて貰ったし、何よりかぐやを迎えに行きたいし、行かなきゃだめだと思うから」

「そうね。この中で一番かぐやちゃんと関わりがあったのは彩葉ちゃんだものね。前線に出るメンバーが一人確定したみたいね」

 

 彩葉か。まぁ、納得だし妥当だ。俺もかぐやに会いたいが彩葉だってその気持ちは負けていないはず。それにかぐやだって彩葉に会いたいと思っているだろうしな。

 

「月の多重電子防壁を無効化する手段について話すよ。あれは二枚の電磁シールドからなる今まで一度も月に侵入者を出したことのない鉄壁の守りだよ」

 

 ヤチヨが再び月の防壁について説明してくれる。……しかしかぐやは月から飛び出してきたわけだし、内側からの脱出は通すのか。もしくは通過物体が月由来の物かどうか判別する仕組みでもあるのか……。

 

「一枚目を突破する手段は烏丸研が用意した」

 

 あ、父さんが復活した。父さんはプロジェクターで武器の画像を表示する。

 

「最新兵器『スタンパイルランチャー』これを防壁に叩き込めば、求める結果が得られるはずだ」

「二枚目の方の準備は?」

 

 ヤチヨが火薬庫の幹部連中の方に目を向ければ安東礼がニカっと笑って説明を始める。

 

「バッチり準備できてらぁ。火薬庫謹製『オーバードエーレンベルク』だ。ツクヨミやら外部のサーバーをデータ処理に回して威力は足りる計算だが……問題は命中精度だ」

 

 おお。エーレンベルク! 良いな、テンション上がって来た。

 

「そう言うことなら、俺に任せて。狙撃の腕には自身があるから♡」

 

 乃依が自身たっぷりな表情で手を上げる。

 

「俺も月に行くぜ、チームとして動く以上リーダーが必要だろ?」

「護衛に遠距離要員も一枚欲しい。火薬庫(ウチ)の新兵器で固めた妹ちゃんも出そう」

 

 帝が指を鳴らしながら月行きに志願して、安東礼がリンを推す。え、リン!? 俺が驚愕でリンの方を向くとブラボの大砲とガトリングを両手にもったリンが決意に満ちた目でこちらを見ていた。……ひ、左手武器を両手に持ってやがる……! 確かにツクヨミならできるけど……! 

 

「お兄、私も行くよ。大丈夫、ちゃんとお父さん、お母さんとも話したから」

「……そうか」

 

 死ぬつもりはないとはいえ、下手したら烏丸家の子供が二人とも死んでしまうし、お家断絶とかになりそうだけど両親が認めているなら何も言うまい。正直AMSのお陰で腕も立つから居てくれると助かるし。

 

「あと決まっていないのはスタンパイルランチャーを誰が当てに行くか……」

 

 はは、何を分かりきったことを言ってるんだ雷は。お前もそう言いながらこっちを見てるし、ミーティングルーム内のみんなだってこっちを見てるじゃないか。

 

「最前線で殴りに行く係なら最初から決まってるじゃない。……九朗! 話は聞いていたでしょう! 月への愉快な遠足の始まりよ!」

「「「「おーーー!」」」」

 

 母さんの掛け声を合図としてみんなが気合を入れて声を上げる。にしても父さん、最後まですっかり母さんに取られちゃってまぁ……。

 作戦開始まで残り一時間。ヤチヨや火薬庫、烏丸研の人たちは時間ギリギリまで異常がないか最終チェックなどの確認作業に入る。彩葉と帝は万が一ってこともあるためお母さんに電話するか二人で話し合ってる。芦花、真実、オタ公、カカは俺たちの無事を祈って声をかけて応援したり、技術者たちに手伝えることがないか聞いて駆けまわっている。

 

「月人ども今そっちに行ってやるからな……。人間の恐ろしさってやつを教えてやるよ」

 

 俺は端の方で武器の手入れをしながらそう呟いた。

 

 

 

────────────────────────

 

「ぬおおおおぉぉぉぉぉ! これ、終わり! こんどこっち! これも、これも、これも終わり! 待っててね彩葉、九朗、みんな! かぐやもう一回、地球行くから!」

 

 私は月での仕事場で猛スピードで自分の仕事を終わらせていた。さっさと仕事を終わらせて引継ぎも終わらせて地球に行かなくちゃ! 

 

 

 

 月に帰ってきて黙々と仕事をこなす日々。変化もなく、終わりもなくただ毎日同じ作業の繰り返しをしていた時、歌が聞こえた。優しくて、愛しい声、どこか聞き覚えがあるメロディー……。

 

「これは……」

 

 その歌は平坦だった私の心に文字通りビビッと来た! それから溢れ出た地球での記憶。パンケーキ、ツクヨミ、ライブ、ヤチヨ、九朗、彩葉! 

 

「彩葉……。――――彩葉ッ!! そんならかぐや……もういっかいっ!!」

 

 そこからかぐやは再び地球へ行くことを決意して今度は月からのお迎えが来ないようにしっかりと自分の仕事を終わらせて引継ぎも作ることにした。そうして今こうしてバリバリ社畜してお仕事してるんだけど……なんか、今日騒がしくない? 

 いつもならリョウサン型の月人が仕事持ってきてそれを終わらせてたらリョウサン型に渡して、またリョウサン型が仕事を持ってきてってそれだけの繰り返しだけなのに今日はかぐやに仕事を持ってくるリョウサン型以外の月人たちが宮殿内をいったり来たり、走り回ってる。

 

「……どうしたんだろう?」

 

 ホントはそんなこと気にせずに仕事を続けていた方が早く彩葉達と会えるんだけどここまで月が騒がしいのも珍しいし……ちょっとだけ、ちょっとだけ何が起きてるのか確かめよう。

 

「え?」

 

 かぐやが仕事部屋の窓を開けて月の都を見渡そうとした瞬間、空から一筋の炎が落ちてきて都の外縁部分の一区画を吹き飛ばした。

 

「……マジ?」

 

 明らかな攻撃。間違いない月は今、どこからか襲撃されているんだ。そして都に攻撃が届いたということは二層の防壁を突破されたという事。一体誰が、どこの勢力が……? 勿論月にも兵隊さんは要るけどそもそも月人達あんまり戦わないし、精鋭って呼ばれる強い人たちはこの間九朗が殆ど全滅させちゃった直後だよ!

 

「ど、どうしよう……」

 

 九朗が教えてくれた戦い方は覚えてるしかぐやも戦う? いや、でも月の防壁を突破できるような相手だし敵わないかも……。もし死んじゃったりしたらせっかく彩葉が歌を送ってきてくれたのに会えなくなっちゃうし……。

 

「よ、よし、いざとなったら戦うってことでそれまでは隠れて―――え?」

 

 かぐやは逃げることを選択して隠れ場所を探そうとした時、ここでは絶対に感じるはずの無い気配を感じた。それはかぐやが地球にいたときなんども感じたもの。闘気、殺気、害意と呼ばれるもの。それも月人たちに恐怖という感情を呼び起こさせる濃密な物。

 都を見下ろせば月人たちは初めて感じる恐怖という感情に振り回されエラーを起こし動けなくなる者、感情を無理やり消そうと自傷に走る者、周りを傷付け始める者、恐怖を恐怖として味わい意識を飛ばす者など阿鼻叫喚の光景が広がっていた。

 でもかぐやが感じたものは別だった。驚いてはいる。けどそれ以上に懐かしくて、嬉しくて、興奮して、愛しかった。かぐやは何度も味わったこの殺気を。かぐやは知っているこの殺気を放てる人を。強くて弱い人、カッコいいのに可愛い人、優しいけど怖い人。

 

「……いらっしゃい、ようこそ月の世界へ」

 

 あぁ月人たちよ、お前たちの恐怖がやって来た。奪われたものを取り返さんと星の海を渡って、黒い鳥が月までやって来た。 

 

月の都 外縁

────────────────────────

 

「しゃァオラぁッ! どうしたどうした!? ツクヨミにきた奴等の方が根性あったぞ!!」

 

 暴れろ、暴れろ、ただ暴れろ! 月の観光も、環境も、人も! 何一つ配慮する必要はない! 全てを壊し、全てを殺し、全て燃やせ! 彩葉達は事前にヤチヨから渡された都の地図を使って宮殿へ向かっているはず。俺はここで大暴れして時間を稼げばそれでいい。

 右手で暗月をふるい、左手で槍をふるう。それだけで木の葉のように灯篭どもは吹き飛び、ライブの時に現れた顔だけの奴(ホテイ型)琵琶を持った奴(テンニョ型タイプA)金魚と犬が合体したような奴(ズイジュウ型)などもいたがどいつもこいつも張り合いがない! ライブに来ていた奴らが特別だったか?

 

「――ッ!!」

 

 突如猛烈に嫌な予感がしてその場から飛びのくと月人の一体が上から飛んできて先ほどまで俺がいた場所に剣を突き立てていた。

 

「……あぁ、分かるぞ。お前……あの時の奴だな(九朗の首を切ったボサツ型)!」

『■■■■■■』

 

 相変わらず何言ってるか分からないが、奴は剣を真っすぐに構えて俺へと向けてきた。

 

「今回は横槍を入れてくる奴はいねぇからな! 覚悟しろ!」

 

 そう言って槍をしまい暗月一本で切り結ぶ。……やっぱライブに来ていただけあって強い! 俺が押してはいるがそもそもAMS使った俺にある程度対応できてる時点で上澄みも上澄みだろ! 

 左からの横薙ぎを弾きあげて突きを繰り出すが身を回転することで回避される。その回転を利用して今度は右から回転切りが仕掛けられる。それをジャンプして回避し、頭を踏みつける。そうしてよろめいたところに上段からり一撃を叩き込む。

 

「っと少し浅かったか」

 

 バックステップで距離を取られてしまう。ただあのダメージは響くだろう。互いに武器を構えなおし仕切り直す。

 

「そらそらそら! やっぱダメージが大きかったかぁ!? 動きがのろくなってきてるぞ!」

 

 おまけに力も落ちてきているのか俺の攻撃をガードするとよろめくようになってきた。

 

「それなりに楽しめたがもう終わりだな」

 

 しっかりと暗月を持って体と手首を回し暗月を背面で半回転させて、遠心力の乗った一撃をぶち込む。ただでさせ力負けされているところに遠心力も乗っけた一撃だ。ヤツは大きく体勢を崩し隙だらけになる。その隙にヤツの剣をもった右腕を切り飛ばし、首に暗月を突き付ける。

 

「言い残すことは?」

『■■■■』

「……」

 

 いや、言ったはいいけどこいつが何言ってるか分かんねぇわ。さっさと終わらせるか。俺は暗月を上段に構えて意趣返しも込めて首を落とす様に振り下ろ―――

 

「すとっーーーぷ! 九朗も『□□』も!」

「そこまでだよ、九朗!」

「お兄! もう月人の人たちとは話が付いたよ!」

「おー、おー、随分派手にやったな」

 

 ピタリと剣を止める。声がした方に顔を向ければ何人かの灯篭頭達に囲まれながら帝アキラ、リン、彩葉、そしてかぐやがこちらに向かってきていた。

 

「かぐや!」

 

 俺は暗月をしまいかぐや達の方に向かって走り寄る瞬間灯篭たちがサっと道を開ける。かぐやもこちらに向かって走り出して抱き着いてくる。そんな彼女を受け止めながら強く抱き返す。

 

「九朗……九朗! またあえて嬉しい!」

「あぁ、俺もだかぐや。元気みたいで良かった……」

「えへへ、彩葉の歌のお陰。かぐやね、とっても嬉しくてお仕事たっくさん頑張ったん……だ、よ?」

 

 抱き合って互いにおでこをくっつけて会話していたがかぐやが急に言葉につまりはじめる。

 

「どうしたかぐや?」

「九朗、この顔……アバター変えたの?」

 

 あ。 一瞬かぐやの後ろにいる面々に目を向ける。全員がまるで『自分で説明しろ』と言わんばかりに厳しい目で見てくる。

 

「……それは、地球に帰ったら説明するよ」

「ふぅーん……なら良いけど。あともう一個聞いていい?」

「ん?」

 

 かぐやは俺の腰についてる暗月をガシリと握る。

 

「この青色の月光……まえ九朗が教えてくれた『暗月』ってやつだよね。誰から貰ったの?」

 

 まぁ、ある意味お前なんだけど。そこらへんの説明もされて無さそう……。

 

「それもちょっと複雑な経緯があるからツクヨミに帰ってから話そう」

「いいよ、九朗。今は納得してあげる。けど、絶対説明してね! ヤチヨが引き継ぎ資料もってたりとか色々聞きたいことが沢山あるんだから!」

 

 あ、やっぱりそこらへんも説明されてないんだ……。これ、帰ったら帰ったで大変だなぁ……。

 

『■■■■■■■■■?』

「んぇ?」

 

 今まで膝? を付いていたヤツが立ち上がってこちらに話しかけてきた。……いや、なんて言ってるか全然分からない。するとかぐやが俺とコイツの間に割って入った。

 

「『□□』ちゃんもそんなこと言わなくていいの! ほら、姫様から許可証も貰ったしこの人たちの目的はかぐやだからもう戦わなくていいの!」

 

 かぐやはなんていってるか理解できてるみたいだ。というかかぐやは日本語喋ってるけど通じるんだ。

 

「因みに俺に話しかけてきてたみたいだけどなんて言ってたんだ?」

「え、あー。『止めを刺さないのか?』って」

 

 あ、そういう感じ。でもまぁ、かぐやも帰ってきたことだし、

 

「実質俺の勝ちだったし、まぁ、満足したから別に良いかな……。まぁ、あれだ、お前は戦って楽しかったし、その腕直してまた戦いに来いよ。かぐやを連れてかないなら歓迎してやる」

『■■■■■……』

 

 俺がそういうとヤツは頭を下げて宮殿の方へと移動していった。

 

「ちょ、九朗なに勝手な約束してんの!」

「いいじゃねぇーか、彩葉。かぐやちゃんを連れてかねぇってなら俺だってもう一回戦いてぇもん」

 

 俺の言葉に彩葉が突っ込みを入れてくるが帝アキラが直ぐに待ったをかける。ふふふ、だろうと思ったよ。ゲーマーとしては負けっぱなしとはいかないもんな。

 

「『考えておきます』だって。あの娘、真面目なとこあるし、いつか本当に地球に来るかもしれないよ?」

「その時はしっかり歓迎してやるさ。さ、帰ろう。みんなかぐやを待ってるんだ」

「うん!」

 

 そうして俺たちはたくさんの灯篭頭に見送られながら地球へと戻ったのだった。

 




・再びいつかみた記憶が蘇りブリーフィング中テンション上がりっぱの九朗くん
・スタンパイルランチャー。 パイルが遠距離から飛んでくるとかいうフロム民発狂もの。
・月人たちが発狂している中、一人だけ舞い上がっちゃうかぐやちゃん。大分毒されてますね。
・月の戦力のほとんどは誰かさんのせいで壊滅状態。そこに悪夢再び。
・九朗くん、自分の首落とした相手にしっかり復讐完了。
・十年ほど後、隻腕の色白美人が九朗くんを訪ねてきて一波乱が起きるのは別のお話。
・次回地球に帰ってきてから。
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