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「っし、着いたぁ……」
「とうちゃーく! わぁ! ツクヨミだ! なんだか懐かしいー!」
「よぅ、帰って来たぜ乃依、雷!」
「ついたよ、お兄!」
「ん」
月からかぐやを連れて全員無事にツクヨミに帰って来た俺達。彩葉は緊張が解けたのかその場に座り込み、かぐやは一か月ぶりとなるツクヨミの景色に目を輝かせていた。帝アキラは帰還を声高々に宣言しているし、リンは俺の腕を揺さぶりながら感動を現してる。
「彩葉っ! かぐやちゃん! 九朗!」
「いろは~! 帝様ー! みんなー!」
「九朗さん! ああ、皆さんご無事で!」
「九朗くん! かぐやちゃん!」
帰還した俺達に芦花、真実、カカ、オタ公が走り寄って来る。……ん? あいつら全然止まる気配ないんだけどッ!?
「ぐへっ!?」
「キャッ!?」
「ヴぇー!」
勢いそのままに抱き着いてきて彩葉、かぐや、リン、俺の4人は地面に押し倒されてもみくちゃにされる。
「良かった! 良かった! 私、九朗がいるから大丈夫って解ってたけどやっぱり不安で! 彩葉も、九朗も、かぐやちゃんも、リンちゃんも、皆花丸あげちゃう!」
「かぐやちゃん久しぶり! またみんなで色々遊ぼうねー!」
「九朗さん、約束守って下さり本当にありがとうございます。かぐやさんも、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「よがっだ、今生にま゛にあ゛っだ! ま、また、ら゛イブ楽しみ゛にじてますっ、からー!」
芦花真美が感情の赴くままにダイブしてきて、カカはしっとりとしな垂れかかって来る。もうオタ公は号泣しすぎてべしょ、べしょだ。
「帝、お帰りー♡」
「乃依」
「……無事で良かったよ、朝日」
「おう」
「で、月の都というのはどんなところだったリーダー?」
「まずそこかよ……雷」
視界の端ではブラックオニキスが拳を軽く当てながら話し込んでいた。余裕そうな表情をしていた乃依だがやっぱり不安はあったのかまさかの帝アキラを本名呼びして甘えてる。対する旅行好きの雷さんは月の都の風景を尋ねてるし……雷ってあれだよな。一見クールだけど大分面白い人だよね。
「九朗もリンもかぐやちゃんも……全員無事! うん、最高のハッピーエンドじゃない?」
「あぁ、全くだな。そうだ安東礼くん、だったね? 君の歳が分からないからこういう聞き方になるんだが……就職先や転職に興味ないかい? うちの研究員の席が空いているんだが」
「そいつぁ……前向きに検討させてもらいますよ」
うちの両親と安東礼はなにか大人の会話をしている……。ん? 顔に誰かの影が……あ。
「ヤチヨ……」
「九朗」
良かった、消えていなかった。つまりこれで完全に輪廻は崩壊した―――
「ごめんね……私、またドジっちゃった」
「なっ!?」
深刻そうな表情でヤチヨが告げる。う、嘘だ! いったい何が失敗だったというんだ! ヤチヨの言葉は俺の他のみんなにも聞こえていたのか先ほどまでの感動の空気が一瞬で消える。唯一状況が理解できず首を傾げているのはかぐやだけだ。
「ど、どうしたのヤチヨ!? なにが失敗したの!?」
「嫌だ、待ってくれ。折角かぐやも取り返したのに……お前が消えたら……ハッピーエンドが……」
彩葉と俺が声を上げる。お願いだ、そんな暗い顔をしないでくれ。俺に出来ることならなんでも協力するから! お願いだ、ヤチヨ。どうすればいい? 俺はどうしたらお前を救えるんだ!
「その……かぐやの……もっと言えばヤチヨの分の正常な『もと光る竹』を月人に要求するのを忘れてました~。オヨヨー、本当にごめーん!」
「……ヴぁ゛ーーー!? そうじゃん、今『もと光る竹』持ってきてないじゃん!」
ヤチヨの言葉にかぐやが絶叫する。なにか、月人にとって大切なものなのか?
「えっと……すまん。その『もと光る竹』とは?」
「船だよ、船! 月人が地球に来るために使う船で、かぐやの肉体を作ってくれる機能を持ってるの!」
ほーぅ……あ! たしかヤチヨが壊れた船のなんたら、かんたらって言ってたやつか。……え、ってことは。
「今のかぐやはヤチヨと同じ電子の歌姫ってことか?」
「え、じゃ、じゃあ……かぐや、パンケーキももう食べられないし、彩葉と九朗にギュっとすることも出来ない……? い、嫌だーーー! そんなのハッピーエンドじゃないーーー!」
「おぉぅ、久々のジタバタかぐや」
ひ、ひとまずヤチヨが消えたり、かぐやがまた月に連れて行かれるみたいなことじゃなくて良かったが……。 現状を理解したのか、かぐやがまるで駄々を捏ねる幼児の様に地面を転がり回る。おい、ヤチヨ、なに目を逸らしてるんだ。これ、お前だぞ。お前のドジでお前がこうなってんだ。恥ずかしいからって過去の自分から目を逸らすんじゃない。
「そっか……そうなんだ!」
彩葉は彩葉でなにか思いついたらしい。勢いよく立ち上がって何かを決意している。なんだ、なんだ?
「かぐや、ヤチヨ、大丈夫。今はまだ終わろうとしてた物語がまた動き出しただけ」
「彩葉……?」
「私、やりたいことが出来た! 本当のハッピーエンドまで付き合ってよね!」
おぉー?
「うん!」
「よろしくね、彩葉」
かぐやとヤチヨはそういって笑顔で彩葉を見上げた。
「でも、その前に。どうしてヤチヨは『もと光る竹』のこと知ってるの? あとツクヨミに戻って来たし、九朗の眼のこと教えてよ。……その暗月のことも、ね?」
「あっ、はい……」
ダメか、しっかり覚えてた。
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いつまでもフィールドにいるのもどうかということで俺たちは場所をミーテイングルームに移していた。
「えっとじゃあ……かぐやが月に連れられるあたりから説明するか……。まず俺の眼のことからなんだけど。これはアバターを変えたんだ。
「え? 九朗にそんな傷無かったよね?」
俺の言葉にかぐやは首を傾げる。
「ほれ、最近の俺の現実の方の画像」
アバターを調整する時参考にするために取った写真を表示してかぐやに見せる。
「え……な、なにこれ……」
「左眼球破裂、右眼球火傷。今の俺は左目は無いし、右眼も殆ど視力がないんだ」
「嘘、うそだよね! か、かぐやを驚かせようとドッキリ仕掛けてるんでしょ!? い、彩葉! 嘘だよね! 九朗が嘘ついてるんでしょ!? ねぇ、みんな!?」
「……」
狼狽えるかぐやは彩葉の肩を掴んでそう問いかけ、そのあと周りの芦花たちにも声をかける。悲痛な表情のかぐやを彩葉が無言でそっと抱きしめる。そんな彩葉の行動に真実だと悟ったのかかぐやの顔が青くなる。
「なんで……? どうしてそんなことに……」
「俺の自業自得だよ。……卒業ライブの時、俺が見慣れない武器使ってただろう?」
「……うん」
「あれなんだけど物凄い強い武器なんだが、代償が必要だったんだよ。……かぐやはプログラムも出来るし見せた方が早いかな。……良いか?」
「構わねぇよ」
安東礼の許可を得てグラインドブレードのデータを表示してかぐやに見せる。
「……凄い複雑なプログラム。容量も演算もすごいことに……すごい、こと……」
グラインドブレードのデータをジッと見ていたかぐやは小声で何かを喋りながら解析していった。そしてやっと聞き取れた最後の方の言葉のあと俺の顔、というより目に注目する。
「そのすごい計算をスマコン一つにやらせた結果がこれだ」
いや、左目爆破はヤチヨの干渉があったり月人のハッキングとかのせいなんだけどまぁ、そこらへんは面倒だし別にカットで良いだろう。というか、爆破した
「な、ななっ……う、うぅっ……う゛う゛う゛う゛ぅぅぅ! バカ、バカバカバカ! 九朗のバカ! どうしてそんな無茶したの!?」
フルフルと震えながら下を向いていて何かを耐えている様だったかぐやだが、急に立ち上がりずかずかと近寄ってきたこと思うと思いっきり正面から抱き着かれる。
「それは……かぐやを助けたくて……」
「その気持ちは嬉しいけどそれで九朗が……九朗が死んじゃうのヤダー! そんなのハッピーエンドじゃなーいー! ぐすっ、うぅ……。かぐやの為に頑張ってくれてありがとう。でもやっぱりこんなやりかたダメ!」
かぐやはポロポロと涙を流しながら俺に説教を始めた。ダメージこそ入らないが一言一言ごとにポカポカと泣きながら胸を叩いてくるのは少し心にくる。
「まあ、みんなにこっぴどく叱られたよ。だからほら、今回は無茶してないし、怪我もしてないだろ?」
「月に来ること自体無茶してるよ!」
「……そうだな」
そう言えばそうだ。ヤチヨが事前に言っていたけど月でHPがゼロになれば二度と地球には戻れない。地球の方の肉体は死ぬんだったな。でも―――
「それでも諦めたくなかったんだ。かぐやを、ハッピーエンドを。」
「ううっ、ぐずっ……ありがとう九朗」
「どういたしまして」
再び目に涙をためて静かに泣き始めたかぐやの頭を撫でて慰める。
「で、次の話だが……時系列順にはヤチヨのことだな」
「……ヤチヨも月人なの?」
「んー、確かにそれも正解なんだけど、事実はもっと複雑なんだよねー」
ヤチヨの方を向きながら口を開けばヤチヨは浮遊しながらそっと俺の隣にやって来る。隣にやって来たヤチヨに俺に泣きついていたかぐやがなかなか惜しい質問をする。ヤチヨの返答通りそれは間違いじゃないんだけどもっと重要な箇所があるんだよなぁ……。
「ヤチヨは単純に言えば未来からやってきたかぐや、お前自身なんだよ」
「はぇ?」
かぐやの眼が点になる。うん、気持ちは解る。
「今、もっと詳しく説明するなら別の輪廻からやって来た、まったく違う結末を迎えたかぐや、かな?」
「違う、結末……」
「そう。私がかぐやだったとき、九朗は月に迎えに来れなかった。だから私は貴女がしようとしていたことを実行したかぐや」
「……引継ぎを作成してタイムワープで彩葉達の時代に飛ぶ計画を実行した、かぐや……」
俺に抱き着いているかぐやをそっとヤチヨは撫でながら説明を続ける。
「うん、その計画だよ。ただ私はちょっとドジしちゃって。九朗達がいるこの時代から大体8000年前に間違ってタイムワープしちゃったんだ。そこで私が乗ってきていた『もと光る竹』も壊れちゃって。こうして電子の世界の住人になったの。……と言葉で言っても信じられないよね。かぐや、ちょっと失礼するね」
そういってヤチヨは目を瞑ってかぐやのおでこに自身のおでこをくっつける。お? なんだなんだ?
「全部の記憶を見せるとかぐやまで
「……」
そう言うとかぐやも目を閉じて少しの間沈黙が流れる。
「ヤチヨは私だったんだ。……彩葉たちの為に8000年も頑張ってくれてありがとう、かぐや」
「どういたしまして、かぐや」
目を開いたかぐやはヤチヨを見てそう頭を下げた。それにヤチヨも笑って返した。ふむ、同族嫌悪とかそういったことは無いみたいで何よりだ。ただ―――
「ヤチヨ」
「ふぇあ!? く、九朗!?」
俺の隣でふよふよ浮いていたヤチヨの腰に腕を回して抱き寄せる。正面にかぐやが抱き着いてるから正面で向き合う事は無理だけど横に密着させることは出来る。そして横に抱く寄せたヤチヨの耳元で話す。
「一つ、さっき説明の訂正をさせろ。『違う結末を向かえたかぐや』という自己認識は改めろ。言っただろう、"お前も俺がハッピーエンドに連れていくかぐや"の一人だ。どっちかを諦めるなんてことはしない」
「う、うん……分かった。分かったから、ちょ、ちか……」
所々ヤチヨの方はネガティブというか弱々しい部分があるよな……。ま、8000年も最高の一瞬を目指して走り続けたんだ、少しくらい座り込んでも良いだろう。その分今度は俺が抱えて運んでやればいいだけだ。
「あれを素でやるのか……。もう俺がファンサを教え込むまでもないか?」
「いや、やり過ぎないためにも教え続けるべきだろう」
「うんうん。その方が一杯おもし―――ファンも喜んでくれるし♡」
なんか、ブラックオニキスの奴等がこっちを見て小声で話してる……? まぁ、乃依が笑ってるから深刻な出来事じゃないだろう。
「むぅ……九朗はヤチヨの方が好きなの?」
「え?」
かぐやが頬を膨らませながらそんな事を聞いてくる。
「いや、そんなことは無いぞ?」
「オヨヨ~。そんな、ヤチヨとの日々はお遊びだったなんて。ヤッチョは悲しくて涙が溢れちゃうー!」
「うぇ!? あ、いや、べつにヤチヨのことが嫌いな訳じゃ!」
「あー、やっぱりー! かぐやには『暗月は要らない』って言った癖にヤチヨからは受け取ってるじゃん! さっき記憶見せて貰ったんだから!」
え? 見せた記憶ってそこも含まれるの!? もっと8000年の旅の始まり部分とかツクヨミを作ったとことかじゃないの!? え、あ、そこも見た……。なるほど。
「かぐやが九朗に暗月贈りたかったのにー!」
悔しがり大声を上げるかぐや。
「さっきからかぐやが言ってる『暗月』ってなんなの? いや、多分九朗が今装備してる青い月光の名前ってことはなんとなく分かるんだけど、なんか意味があるものなの?」
そこに話を聞いていた彩葉が聞いてくる。というかみんなかぐやの悔しがり方がすさまじいから興味津々だな。
「彩葉の予想通りだ。暗月とはもう一振りの月光。緑の刀身を持つ月光に大して暗く、青い刀身をもつのが特徴で―――」
「九朗が大好きな物語の中でお姫様が自分の伴侶に贈ったっていう伝説の武器! それが暗月なの! かぐやが上げようとしたときは作るのに時間がかかるから難しい、って言って断ったのにヤチヨからは直ぐに受け取ってるんだもん!」
「「「「「なッッ!?」」」」」
かぐやの言葉に彩葉達が固まる。あー、そう言えばそうだったな。ヤチヨはあの時の言葉を覚えて居てくれたのか。だから暗月をすぐに持ってこれたのか……。
「九朗! なにかないの!? 他のそう言う逸話をもってる武器だったり、別の月光とか!?」
うぇ? なんか彩葉が食いついてきた。一体なんだ? ……しかし、別の月光か……。
「真っ赤な刀身を持つ赤月光とか、黒い刀身に青いエフェクトの黒月光があるけど……。逸話系で婚姻とかそう言うものはあんまりなかった気がする……」
「かぐや赤ね! 赤い月光送るから! かぐやの衣装赤でピッタリだし!」
「なら私は黒ね……」
かぐやと彩葉がそう早々に宣言する。おぉう……。なんか月光が勝手に集まって来るけどそんな贅沢あって良いのだろうか。
「……なら、私は壊れちゃった普通の月光作ろっかな。オタ公さん、同じ白系の配色多めってことで一緒に作りませんか? 私一人だと製作大変そうですし」
「はい! 是非一緒に!」
芦花はオタ公と一緒にノーマルの月光を作ってくれるらしい。確かに一人で作るのには大変でも複数人で作れば難易度は下がるか。
「……なら、カカ! 一緒に赤月光作ろ!」
「じゃあ、リンちゃんは青繋がりで私と一緒に黒月光、お願いできる?」
「ふふふ、よろしくお願いしますね、かぐやちゃん」
「はい! 任せてください彩葉さん!」
おー、なんかネストのみんなで製作することになってらぁ。みんなからプレゼントかあ……嬉しいけどかぐやにじゃなくて俺で良いのだろうか? というか俺からもなにか―――あ、アレがあったな。
「かぐや、これ」
俺はアイテムボックスに入れていた三日月の髪飾りを取り出してかぐやの髪につけてやる。
「これは……」
「俺からもプレゼントだ。因みにツクヨミ内のアイテムだけじゃなくて、現実の方にも同じデザインのものがあるぞ。本当はかぐやの卒業ライブの後、俺の遺品整理とかしてたら遺書と一緒に見つかるようにしてたんだ。けど俺は死ななかったし、かぐやは帰っちゃったしで渡せなかったんだ。あ、彩葉やリンたちの分も一緒にあるぞ」
芦花との買い物の時に勝ったアクセサリーショップで買ったものだ。芦花だけ二個目だけどみんなには内緒な? と含みを持たせたウインクを芦花に送ろうとしたのだが……。
「……なんか顔怖いぞみんな?」
あ、あれ? なんか場の空気も死んでるし一体何があった?
「かぐや、ちょっとゴメンね」
「うん」
「九朗、今すぐログアウト。遺書の場所教えなさい。今すぐ!」
え、えぇ……。後で良くないかと思ったが問答無用らしく俺はネストのみんなにログアウトさせられたのだった。
・描写していませんが犬DOGEもしっかり帰還できています。
・旅行好きの雷、月の都にも興味心身。
・実は九朗くんとヤチヨがバトッたせいで8000年インストールしていない彩葉さん。その為彩葉も『もと光竹』を認識できておらず今回みんなが忘れる羽目に。
・そして何かを決意する超担当。
・大好きだった九朗くんの顔に傷痕が出来てしまったかぐや、大泣き。以降引っ付き虫に。
・渡り鴉のファンサ監修担当ブラックオニキス
・最終的に両手に月光、ハンガーに月光二本のブレオンになる九朗くん。
・最後にサプライズを用意していた九朗くん。
次回最終回