今回はいくつかの感想でお話していた本編26話投稿前の没バージョンになります。
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走る、奔る、
「……見つからないな」
気が付いた時、俺はこの暗闇の中に囚われていた。ここに来る直前の記憶を思い返せば浮かんでくるのはかぐやの卒業ライブ。月人のリーダーであろう存在の前で急にアバターが動かなくなったかと思えば首を切られた。そして急いでリスポーンしようとするも何故か、ツクヨミから弾かれて、リアルの俺の部屋に居た。
何が何だか分からなかったがすぐにログインし直そうとしたところで急に顔に激痛が走ってそこで意識が途切れてる。
「いや、絶対あの月人になにかされただろコレ……」
これが俺の精神世界的な奴なのか、月人に囚われた牢獄的な奴なのかは分からないし、現実でどれだけ時間が経過してるか分からないが、今俺に出来ることは一刻も早くこの場から離脱する―――
【一応正解を教えておくと前者。ここは君の精神世界的な何かだよ】
「あ? なんだおま―――……
思わず後ずさる。そこにいたのは紛れもなく
【お前の物語はこれでお終い。俺の人生が唐突に終わったんだ、お前の人生も唐突に終わらせる。俺の幸せ、俺の未来、全部全部、
「ッッ!」
ジリジリと寄って来る■■。恐ろしい、恐ろしくて逃げ出したい。けれど足は全く動いてくれない。
【俺の思いを継いでくれるならまだ、良かった。なのにお前は俺の
「グッ……かはッ!」
■■は俺を押し倒し首を両手で絞めてくる。こ、こいつも俺より力が強いのかよ! くそっ、全然振りほどけない。
【本気でかぐやちゃんを救えると思ってたのか? 今さら、人間のふりなんかし始めやがって! そんな未来、お前に許されるわけないだろうが! この人でなしの最低野郎! まともじゃないお前が他人を助けられるわけないだろ! ここで死ね、『KASSEN』に夢中になりすぎて自滅した狂人としてここで死ね! 俺も、お前もこれでバッドエンドだ!】
「ぅっ……」
意識が……薄くなり始める。 精神世界で意識を失うって……死ぬ、ってことか? なら、それも……。
――『大丈夫、俺がハッピーエンドまで連れて行ってやる』――
……ああ、そんなことも言ったっけ。ゴメン、かぐや、彩葉、みんな。もう、体が……動かない。もうどうしたら……。
―――ようこそ ビジター! このような僻地まで来てくださるとは……感激だ――お前に意味を与えてやる 仕事の時間だ―――こういう時こそ……それでも笑うのさ!―――おや…? カーラのご友人でしたか 素敵だ……
―――火は陰り、王たちに玉座なし――I AM THE ARQUBUS!!―――哀れだよ。炎に向かう蛾のようだ―――太陽あれ!―――為すべきことを為すのです―――ああ、来てくれたんだね、妖精さん。お願いだから、みんなを助けてあげてよ―――素敵だ……―――ご照覧あれい!!―――雑魚が!死にくされ!―――迷えば、破れる―――竜に挑むは、騎士の誉れよな…―――スロー スロー クイック クイック スロー―――誇ってくれ、それが手向けだ―――ゲールマンの狩りを知るが良い―――お前が竜なら、悪くない―――スロー スロー クイック クイック スロー―――宇宙は空にある―――なぜなら私は、アメリカ合衆国大統領だからだ!!!―――そうか…… 621 お前にも… 友人ができた……――全て、長い夜の夢だったよ―――新しいご友人! さあ楽しみましょう―――その力こそ、王の故よ――貴方の夜をお行きなさい―――ヨーム、古い友よ カタリナ騎士ジークバルト、約束を果たしに来たぞ 薪の王に、太陽あれ――ジェネレータの甘美な調べ…ミルクトゥースも喜んでいます―――俺はそうは思わん 闘いこそが人間の可能性なのかもしれん―――人間に、可能性など存在しない。それを証明してみせる―――世に平穏のあらんことを――さあ、行こう永遠なる、私の王――やっぱり俺が最強か〜―――素敵なステップです、ご友人――アンバサ――へえ…調子に乗って殺されに来たのね―――美しい娘よ、泣いているのだろうか?―――ああ、ゴース、あるいはゴスム…我らの祈りが聞こえぬか…―――お前さん… ありが…とうよ……―――
―――新しいご友人…贈り物をくれるのですね… 素敵だ……―――
―――認めよう、君の力を今この瞬間から、君はレイヴンだ―――
―――だから、あんた、やっておしまいよ。自分が正しいと思う事を、やればいいさね―――
―――火をつけろ、燃え残った全てに―――
消えそうな意識の中、声が聞こえた。懐かしい声、懐かしい思い出。そうだった、俺が唯一捨てられなかった思い出たちの中で……
「俺が……諦めた事なんか……一度もなかった!!」
【はっ? なにを……?】
気が付いた時には俺の姿はツクヨミ内のアバターのものになっていた。俺は自身の上に跨っている■■を殴り飛ばす。
【ぐへぇ!?】
「約束したんだ……ハッピーエンドに連れて行くって……」
【だから お前みたいなまともじゃない奴に彼女たちを幸せにすることなんか!】
「忘れたのか?」
俺は月光を抜き放ち倒れこむ■■に向ける。
「"まともであることの、なんと下らないことか"」
【へっ?】
「もうお前にビクつくのは止めだ。俺はもう■■じゃない。九朗、烏丸九朗だ。俺が捨ててきた人間性も、思い出も、彼女たちと共に築き上げていく。だから俺はここにはいられない、かぐやを助けに行く。お前はここで消えると良い」
【ま、まっ―――ッ!?!?】
俺は■■が言葉を紡ぐよりも早く■■を切り刻む。
「花はどこだ…手向けなければ……」
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「ぅ……っぅ……?」
ここは? 目が覚める―――これ、本当に冷めてるか? ともかくベッドに寝かされているようなので上体を起こして辺りを見回すが視界がぼやけていて全く見えない。んー、まぁアレか。全盲覚悟してたし、何かうっすら見えるだけ儲けもんか?
「んー……天井は恐らく真っ白……病院か? 病院だろうな」
ふむ。暗闇の次は真っ白か、しかし参った。この視界じゃナースコールもまるで分からない。そんな風に困り果てているとガラリとスライドドアの開く音がする。
「お兄?」
「リンか?」
部屋に入ってきた人物は恐らく俺の方を見て『お兄』と呼んだ。俺をそう呼ぶのはただ一人だし、声的にもリンで間違いないだろう。返事をしてやればバサリと何かを床に落とした音が聞こえる。
「お兄!!」
「うおっと……」
大きな声を上げながらリンがこちらに抱き着いてきた。うぅっ……視界が効かないせいでどのタイミングで抱き着いてくるのかが分からなくて直撃ダメージが……。
「良かった、良かった! 目の奥の神経まで傷ついてて下手したら脳の方にもダメージが届いてるかもって言われて、もう、もうダメかもって……! う、ぅぅぅぅぅ、ぐずッ、うう、ぅぅぅッッ!」
「そう、なのか……。リン、すまないがお願いがあるんだ」
「うぅぅ、ぐずッ……。なに?」
リンの頭を撫でて慰めながらしなければいけないことを口に出す。
「父さん、母さんに連絡して俺の分のAMSもくれないか聞いてくれ」
この視界じゃスマコンを使っても十分に戦えない。けど、脳波で繋がるAMSなら、俺はまだ戦える! ……あれ?
「リン……? 聞こえていたか?」
「……こぉんの……バカお兄!」
「ごへっェ!?」
お、思いっきりビンタされた!? お、オマ、実の兄にビンタを!?
「先に言うべきは『医者を呼んでくれ』とか『父さん、母さんは?』とかでしょ! この戦バカ!」
むぅ……正論。
そして俺はリンの連絡ですっ飛んできた医者や看護師に連れられて色々な検査を受ける羽目になった。そして諸々が終わり俺が病室に戻ってきたのは夕方過ぎだった。いや、起きたときは真っ白だった病室がオレンジ色になっていたから夕方って判断したんだけど実際は何時に起きてどれくらい検査を受けてたかなんて分からないんだけどさ。くそ、さっき医者に聞いておくべきだったか。ああいう人たちの『なにか質問はありますか』ってどうして『なんにもありません』って答えちゃうんだろうな……。
「九朗!」
「怪我の具合は! 検査はどうだった!? どこも痛くないか!?」
「……父さん、母さん」
病室に戻った俺を待っていたのは今世の両親の二人とリンだった。因みに母さんが『九朗』と一言の方で次から次干支質問しているほうが父さんだ。
「検査の結果は脳の方に異常はなし。視力はまぁ殆ど消失。というか左目こんな吹き飛んでたんだな。びっくりした」
左目部分は左頬までの大きな傷跡となってもはや、治療も移植も不可能だと。芦花と一緒に傷隠しのメイクでも研究するか? いや、メイクの効果俺は見えないんだけどな、ははは。
「というか、二人とも仕事大丈夫? 今日……多分、平日……だよな?」
「息子が大怪我したって言うんだからそんなもの知らないわよ!」
「我が子の為なら研究の2つや3つ、ほっぽりだして来るに決まってるだろうが!」
「えぇ……」
リンとの仲直りの『KASSEN』のあと、気になって調べたけど二人とも界隈で結構名の有るお方でしたよね……。俺を包み込むように左右から抱きしめてくれる両親に感謝しつつそんなことを考える。
「大丈夫、九朗。これからは私たちがしっかりサポートするから」
「辛い道のりになるかもしれんが安心してくれ。ほら、盲学校のパンフレットも沢山取り寄せた。どれに行きたいか好きに選んでいいぞ! って見えないのか……すまない。ほら、そしたらな、父さんが読んで説明してやるから!」
「あ、ちょ、ちょ待て、待って!」
そうだな、そうだよな。こんな視力で生きていくんだから点字の勉強とか必要だよな。それは分かる、けど本当にちょっと待て! 一瞬なんとなくだが、パンフレット凄い量無かったか? いくら視界がぼやけていてもその分厚い辞書みたいな紙の束はなんとなく分かるぞ!?
「どれだけ、準備したんだよ……」
「無論、全国のよ!」
「全国って……」
「あぁ、家なら引っ越すから問題ないぞ」
「いやいや、研究所はどうするのさ」
「研究所も引っ越せばいいに決まってるだろう?」
「……」
バーカ、バーカ! ばぁぁぁぁか! なんだこの天才成金研究者どもは? 価値観が違いすぎる……。
「いや、確かに将来的には必要だが……ひとまず今の状況を整理させて欲しい。俺が倒れてから、何日たって、何があったのか」
「ん! 確かにそうだったな。そこらへんは父さんも母さんも把握しきれていないからリン、頼んだ」
「ほら、それより九朗はベッドに横になって」
そう言って俺は母さんに手を引かれてベッドに横になる。そして話を振られたリンだが、恐らくスマホを見ている。
「ごめんね、お兄。もうちょっとで"みんな"来ると思うから話はそれからね」
「みんな……っていうと……」
「お兄が想像している通りだと思うよ」
そうか、なら少しだけ待つか。……というかあれだな。父さん、母さんも"みんな"について知ってるようだし、まぁ、あの面子なんだろうなぁ。
そうして本当に少し……おそらく15分程度待っているとバタバタと廊下を走る音と、怒る看護師の声が聞こえる。……なんという王道やり取り……。そしてスライドドアがもの凄い音を立てて開けられる。いや本当にすごい音だいったいどれだけの勢いだったかこり目で確かめたかった。
「九朗、無事!?」
「九朗くん、大丈夫ですか!」
「九朗さんが起きたと聞いて!」
「九朗!」
おぉー、やっぱり。声的に芦花、広美、カヨコ、彩葉だな。……そしてやっぱりかぐやの声は聞こえない、か。
「や、みんな。その……目は上手く見えなくなっちゃったけど、取り合えず生きてる」
病院のドアの方に手を軽く上げておく。
「ゔわ゛゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!! よ゛がっ゛だぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
「うおっ」
広美が大泣きしながら足元の方に抱き着いてくる。
「良かった、良かった、起きてくれて……」
入り口近くで立ち尽くして顔を伏せながら泣いてるのが芦花だろうか?
「本当に、本当に……ご無事で……」
カヨコがアレの頭を胸に抱え込むようにして泣き出す。無事と言えるか分からないがまぁ、ここでそれを指摘するほどじゃない。
「九朗……。本当に良かった……。かぐやが居なくなって九朗までいなくなってたら……私、私……!」
彩葉らしき影がに近づいてきて俺の左目の傷跡をゆっくり撫でながらそう言って泣いているらしい。……みんなが俺を心配してくれていたようで、なんだか申し訳ない気持ちと感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。
「いゃ、まぁ全盲かもとか思ってたから片目だけで済んで本当にラッキーだったよ」
「「「「「「「は?」」」」」」」
え、急にみんなの声が怖くなったんだけど。
没になった理由? くどいかなって。あいつが悪いよ、あいつが。
?「ご友人! サプライズをさせてくれないのですか?」