超闘争   作:四脚好き

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忠犬と鴉 3

ニュースツクヨミ スタジオ

────────────────────────

 

「……すまない、少し待たせたか?」

「いえいえ、時間ピッタリですよ! 今日はよろしくお願いします!」

 

 最初のメッセージが届いてから数日後、ついに忠犬オタ公とのコラボ配信当日を迎えていた。この数日間打ち合わせとして何回かメッセージでやり取りしたけど、本当にテンションの高い人だ。

 

「俺のほうこそよろしく頼む」

「はい! この子が……

 

 オタ公に向かって手を差し出して握手をする。なんか手を握られた後ジッと顔を見られたがなにか思う所でもあったのか?

 

「それじゃあ、もう間もなくなんでスタンバイお願いします!」

「あぁ、了解した」

 

 スタッフさんに誘導され俺はステージ脇に待機する。逆にオタ公はステージの真ん中に立ちカメラの前で待機する。そして準備が全て整い、ついに配信が始まる。

 

「みんなのために、わんわんお! 忠犬オタ公です! 今日も元気に職務果たしちゃいまーす! 今日はなんと! 最近KASSEN界隈を騒がせている謎のプレイヤーにインタビューだ!」

 

:わんわんお!

:わんわんおー!

:(U^ω^)わんわんお!

:KASSENプレイヤーたちの間で話題って……

:あー、あいつか。

:めっちゃ強くて話題になってる奴だ

:誰?

:配信時間のやべーやつ

:切断逃げが推奨されてるとかいう訳の分からん奴。

:ブラックオニキスでさえブランド力の低下恐れて避けてるって噂だもんな

:強すぎてつまらん

 

 

「……っち」

 

 横目で見ていたコメント欄に思わず舌打ちが出る。配信に音乗ってないよな。

 

「もったいぶっても意味はない! さっそく登場してもらいましょう! 今、もっとも最強に近いと言われるKASSENプレイヤー、『渡り鴉』さんです!」

 

 オタ公が俺が待機している舞台袖のほうに手を伸ばす。真横で声を出していないがスタッフもどうぞ! とばかりにステージを指さす。

 

「よしっ」

 

 俺はこの日の為に用意した新装備(本編での渡り鴉の装備)を身に纏いステージ上を歩いていく。そしてオタ公の隣までやってきて挨拶をする。

 

「初見となる。こちら渡り鴉だ」

「お、おぉ? なんか変わった挨拶ですね……」

「……すまん、良い感じの言葉が出なくて好きな革命家の挨拶を真似た」

「か、革命家……?」

 

 うーん、流石にテルミドールの様にはいかないか。

 

:困惑のオタ公

:『好きな革命家』

:まーたキャラが濃いのが来たな……

:これが話題のライバー?

:こいつ、もしかして強いのはKASSENの腕だけか?

:つーか、前戦った時と装備違うじゃん

:『渡り鴉』って名前らしい羽のついた装備だ

 

 

 うーん、まぁ掴みはそれなりか。

 

「まぁ、俺なんてどうでも良いだろう。さっさとSENGOKUとやらを教えてくれ。このままお前とやり合いたい。そういう気分だ……」

 

 ずいっ、とオタ公の方に体を寄せてそう呟く。

 

「う、うえぇ!? ちょ、ちかっ……って! SENGOKUも教えますけど取材なんだからいくつか質問するって打ち合わせでも言いましたよね!?」

 

 

:おいおいおい!

:なんだこいつ

:は? 急にふざけんじゃねぇぞ

:オタ公ちゃん! そんなやつ相手しないで良い!

:いますぐセクハラで通報しろ!

:離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ

:ちょっと話題になったからって調子乗ってんじゃねぇよ底辺ライバー

 

 

 ふふ、いい感じにコメント欄が加速してあったまってるな……。良い傾向だ。

 

「あぁ、そうだったな。だが、止めだ」

「え?」

「ほら、今すぐフィールドに行くぞ。所詮俺はただのKASSENプレイヤーだからな。俺のことを知りたいならKASSENで知る方が一番だろ」

「え、ええええ!?」

 

 俺はオタ公の手を取りSENGOKUの対戦受付をしてオタ公と共にフィールドへファストトラベルする。丁度対戦受付していたチームが居たのかすぐにマッチングして試合準備が始まる。

 

「な、ななな、何やってるんですか、貴方は!?」

「んー? さっき言った通りだ。俺はただのKASSENプレイヤー、俺を知りたければ実際に戦ってるところを見せた方が早いだろう」

 

 混乱しながら怒るという器用なことをやっているオタ公にそう返しながらメニュー画面でを開き色々確認する。ふむ、配信は途切れてないし移動は成功。武器や防具も俺が装備していたものそのままだ。SENGOKU専用の武器やステータスになる、ということは無いみたいだ。で、フィールドは……雪降る城、その城郭みたいな形だな。

 

:な、なんだこいつ……

:え、これニュースツクヨミだよな? 公式番組だよな?

:これは酷い

:公式番組でここまで好き勝手するのヤバいだろ……

:あー、もう滅茶苦茶だよ

:止まれ渡り鴉

:放送事故確定

:これアーカイブ残るかなぁ……

 

 

「なぁ、オタ公?」

「なんですか!?」

「相手三人なんだが、こっちは二人しかいないぞ?」

 

 この場合はあれか? 一人で複数人相手しないといけない感じか? 複数ボスはクソだぞ。

 

「そりゃそうでしょうよ! そもそもある程度インタビューしてから私、渡り鴉さん、番組スタッフの三人でSENGOKUについて教えながらプレイするって話だったのに全部貴方が吹っ飛ばしたんじゃないですか!」

 

:忠犬オタ公めっちゃキレてるwww

:これはレアだ!

:おう、渡り鴉それだけは褒めてやる

:いや、これはキレずにはいられないだろ。

 

 

「……あぁ、そんな話だったな。早く戦いたかったから忘れてた。んで? このまま二対三で試合は始まるのか?」

「いえ、こういう場合は……」

 

 

 オタ公の言葉が終わるよりも早く空から玉手箱が降って来た。……なんだ? 俺が興味本位で玉手箱に近づくとガタリ、と揺れた後一気に箱が開いて中から人影が跳び出して来る。

 

「じゃっじゃじゃーん! ヤッチョ登場ー!」

「互いのチームの実力差が同じぐらいになるように調整された『お助けヤチヨ』が人数の少ない方のチームに参加します」

「は?」

 

 俺は自分の機嫌が急降下していくのが分かった。箱から飛び出してきたのは最近俺の配信に唐突に現れて、KASSEN配信を辞めろ、と訳の分からないことを言って来たツクヨミ管理人だった。こいつが茶々入れてこなければあと3、4時間はKASSENを続けられていたはずなのに……!

 

「……なるほどな」

 

 取り合えずオタ公の言葉に納得したように返事をしておく。そしてオタ公からSENGOKUのルールを説明される。……簡単に言えば陣取り合戦か。三つのルートがあり、その上下にある砦をNPCの中ボスを倒すことにより占拠。砦が味方によって占拠されると敵本陣前に大将落としなるものが出現し、それを敵本陣に叩き込めた方が勝ちとなる……。まぁ色々細かいギミックも説明されたが大事なのは味方と連携し砦を落とし、その瞬間に大将落としを決めるのが理想だという事。

 

「……やっぱ単純に目の前の相手を殺せば勝ちのSETSUNAよりややこしいな」

 

 大空洞の地変を引いた時並みに頭が痛い……。

 

「覚えることは沢山だけど一緒に頑張ろうね! えっへへ、久しぶりに九朗と遊べるぅ……!

 

 俺が頭を抱えていると気に入らない管理人様のコピーが笑いながらこちらによって来た。

 

「……俺はお前とよろしくするつもりはない」

「ぇ」

「ちょ、ちょっとぉ!?」

 

 俺はお助けヤチヨに槍を向けて距離を取り、明確な嫌悪感をぶつける。そんな俺の行動にヤチヨは固まり、オタ公は本日何度目かの驚愕の声を上げる。

 

「悪いが俺はお前の大本(ヤチヨ本体)に配信を邪魔されて気が立ってるんだ、さっさと終わらせる。それでお前は大本のところに帰ってこう伝えろ、『次は俺の闘争の邪魔はさせない』とな。……試合が始まる。オタ公、俺と一緒に行くぞ。ヤチヨ、お前は一人で別のレーン抑えろ」

「ぇ、あ、う、うん! ヤッチョりょうか~い!」

「え、えぇ!? そ、それが作戦なんですかぁ!?」

 

 オタ公の手をとって自陣天守閣から降りてトップレーンへ向かう。別れ際にチラリとヤチヨの方を振り返る。随分と悲しそうな表情をしていたが、数合わせのNPCなんだ表情固定でも構わんだろうに。

 ライド、と呼ばれる移動手段に乗り、櫓に向けて駆けだす。ライドにはある程度進むと攻撃を受けて使用不可になる高速型と高速型に比べて速力は劣るが制限なく乗り続けられる中速のものがある。俺とオタ公は共に中速だ。俺は鹿毛の大きな馬に乗り、オタ公は巨大な狼に乗る。

 

「で、一応確認だ。オタ公の武器は……そのマイクか?」

「そうなんです! マイクはあくまで持ち手の装飾で、このケーブル部分が鞭になってるんです!」

 

 そういってオタ公はパシッ、と有線マイクの見た目をしている鞭をふるって見せる。

 

「公式実況者らしい武器だな。似合っている」

「あ、ありがとうございます」

「いつかお前とも一対一で戦いたいものだ」

 

 貴重な鞭使い、どんな戦い方をするのか楽しみだ。

 

「はい! 時間が合えば!」

 

 え? 

 

「……戦ってくれるのか?」

「よ、予定に問題無ければですけど……?」

「途中で諦めて切断したりしないか?」

「しませんよ! せっかくライバーさんと遊んでいるのにそんな失礼な事出来る訳ないじゃないですか!」

 

 ……。

 

「私はツクヨミが好きで、そこで活動しているライバーさんもクリエイターさんたちも、その活動を見に来ているユーザーの人たちもみんな、みんな大好きなんです! だから私の好きをもっと多くの人たちに知ってもらいたくて活動して公式番組のMCになったんです! 

 

:さっすが俺たちのオタ公!

:おれも大好きだぜー!

:ええ話や……

:俺もお前らの事……嫌いじゃないぜ

:↑お前……。

:なんか始まってるwww

:ホントオタ公は俺達の鑑

:私もツクヨミ大好き!

:ヤチヨへの態度忘れてねぇからな渡り鴉

 

 

「あ! そうだった! ですから私はこのツクヨミを作り出してくれたヤチヨのことも大好きなんです! だからさっきの態度はいただけませんねー。自分の配信邪魔されたって言ってましたけど、あれはスマコンのアラート切ってた貴方の健康の為にヤチヨ本人が態々行ってあげたんですからね! 言うべきなのはお礼であって文句じゃありませんよ!」

 

:こいつの配信にヤチヨが出てたの!?

:しかも本人って それはもうゲリラコラボじゃん!

:あれ本人だったのか……

:気になって渡り鴉のチャンネル見てきたけど配信時間11時間とかあって笑った

:それはヤチヨも止めに来る

:というかアラート切ってるって地味にヤバくね

:派手にヤバいぞ

:最悪失明だぞ

:ヒェッ

:こいつ頭おかしいよ……

 

 

「あとで謝ること! 良いですね!」

「……了解した」

以外に素直……

 

 やはり上位ライバーともなればこういう風に人格もできている人間が多いのだろう。それに今回のコラボに当たり俺のことをかなり調べたらしい。それにも関わらず笑顔で対戦を引き受けてくれた。

 ……うん、オタ公は良い人だ。今度から彼女には出来るだけ協力しておこう。その分対戦もお願いするけど。

 

「ほら、櫓が見えてきましたよ!」

「ん」

 

  オタ公が前を指さすとそこには敵チームのプレイヤー二人が刀を振るってデカい蟹と戦っていた。

 

「蟹……」

「はい、牛鬼です! あれを倒すと櫓を占拠できるようになります」

「俺があいつらの相手をする。オタ公は牛鬼行けるか?」

「やってやりますよ!」

「よし。じゃぁ、俺が席に突っ込む。……前からやってみたかったことがあるんだ」

「?」

 

 この雪が降っている城に鹿毛の馬……ならばやるこは一つ! 俺は思いっきり息を吸い込んで馬を走らせる。

 

 

「マイネェェェェェェム! イズ! ギョブマサタカァ! オニワァアア!!」

 

「なにやってるんですか貴方はァ!?」

:うるさ

:鼓膜ナイなった

:なんて?

:本名?

:すっげぇカタコト英語

:武将の名乗りっぽいけど何故英語でwww

:圧が凄い、圧が

 

 

 





・公式番組でも戦い衝動が抑えられない九朗くん、無茶苦茶する。
・お助けヤチヨ(九朗くんはそう思ってる)に辛辣な九朗くん。このときはまだヤチヨのありがたさに気が付けてないからね。仕方がない。
・オタ公は鞭使い
・オタ公「な、なんだこの子……なんか全部滅茶苦茶やってくんですけど! わ、私がどうにかしないと……あ、でも戦いを餌にすると割と素直か?」
・ヤチヨセラピーが効く前はアニマルセラピーに大分助けられた九朗くん。自分には全然勝てないけどそれでも誘って予定が合えば必ず付き合ってくれるオタ公にかなり好意的。

 ちょっといつも小説書いてるときの思考が上手く出来てない。(7/9 投稿直後)

 ごめんなさい! ちょっと削って後半部分書き直します!(7/9 13:08)







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