超闘争   作:四脚好き

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はい、という訳で番外編第二弾『忠犬と鴉』最終話です。


忠犬と鴉4

SENGOKUフィールド

────────────────────────

 

 

 

「な、なんだ!?」

「ぎょうぶ、まさたか?」

 

 俺の突然の大声と意味の分からん言葉にオタ公もコメント欄も相手側プレイヤーも混乱し大きな隙を晒した。

 

「そぉうら!」

「ぐわっ!?」

「なにぃ!?」

 

 その隙に馬上からの槍の一撃で一人のプレイヤー仕留め、もう一人を蹴飛ばして牛鬼から引き離す。

 

「オタ公!」

「はい! お任せあれー!」

 

 そしてフリーになった牛鬼にはオタ公が鞭をふるって攻撃を繰り出しヘイトを稼ぐ。

 

「さて、お前の相手は俺だ」

「……行くぞ!」

 

 俺が目の前のプレイヤーにそう声をかけると相手側は刀を構えなおし一気に距離を詰めてくる。

 

「セイッ!」

「っとと」

 

 ん、良い動き。それなりに腕は経つらしい。攻撃、防御、受け流し、動きはどれも基礎的なものだけどその基礎がかなりの高度で極められてる。そのせいで動き自体は初心者みたいだけど無駄がなく隙も少ない。……初手の隙で殺しとくのはこっちだったか、しくじった。

 

「強いな! まだまだ探せばいるもんだなぁ! お前みたいな奴!」

「全て防いでカウンターぶち込んできた癖によく言う……ッ!」

 

 しかし流石に真っすぐが過ぎる。俺の戦い方は基本的に槍の長リーチと手首のスナップを活かした受け流しやカウンター、フェイントや緩急を入れたステップでのスムーズな攻防入れ替えだ。真っすぐすぎる相手の太刀筋は相性が悪い。そう言う事情もあり、俺と相手プレイヤーの戦闘はそう長続きはせず、俺の勝利に終わった。

 

:つ、つぇ……

:隙出来たと思ったら罠でカウンターぶち当てられるのキチぃ

:メッチャ綺麗に槍振るうじゃん

:ちょっとファンになりそう。対戦はしたくないけど

:まぁ一対一になれば普段やってるSETSUNAと変わんないからな

乃依:渡り鴉、今日も強すぎ♡

 

 

「オタ公、そっちは?」

「今! 終わりますッ!」

 

 俺がオタ公の方に視線を向ければ丁度オタ公が鞭を牛鬼の首に巻きつけそのまま力任せに引っ張り牛鬼の首を引きちぎったところだった。

 筋力にいくつ振ったステータスだよ……。

 

「お疲れ様。次は櫓の選挙だったか?」占拠

「はい! あそこにあるのが櫓です! あの下部分の鐘を叩くと占拠扱いになります!」

 

 ……あー、アレか。少し小高い城壁の上に鐘の着いた櫓が確かに見えた。

 

「じゃ、叩きに行くか」

「ええ!」

 

 俺たちはリスポーンした相手側プレイヤーが再びこちらに到達する前に櫓を占拠した。すると何故か俺達の勝利を告げるウィンドウが表示される。

 

「ん? まだ大将落とし? してないのに勝ったぞ?」

 

 俺がオタ公に質問するとオタ公はメニュー画面で何かを確認して口を開く。

 

「これは……あ! ヤチヨもボトムレーンの櫓を占拠していたみたいで一陣営による両櫓占拠によるコールド勝ちですね。SENGOKUは三本先取! 第二試合が始まるので一度自陣天守閣に転送されますよ!」

「そ、そうなのか」

 

 全員天守閣に転送ってことはヤチヨもいるよなぁ。オタ公に言われて謝らなきゃいけないけど……。気まずいなァ。

 

「なぁ、オタ公……」

「……っ。き、気まずいのは分かりますから大丈夫です! 私も後ろについてますから! ですからきっちり謝りましょう! ね! え? あ? は? 顔とか全然見えないのに弱ってるの丸わかりの声なんだが!? え? この子さっきまで滅茶苦茶強気で敵プレイヤー倒してたよね? は、はぁぁ? これ狙ってる? 狙って出してるギャップか? いや、違う! 今回のコラボの為に出来るだけ配信追ってみたけどなんか、こう……『これしかない』と、まるで縋るみたいにただひたすらにKASSENしているような印象の子だったし……こっちが素なのか!? こ、この子ヤバ~~……

「オタ公?」

 

 なんか急に聞こえない声でぶつぶつ言いだしたんだがスタジオに残してきたスタッフと連絡でも取ってるのか? というか現実ではどうか知らないけどアバターの背はオタ公の方が高いから、見上げるとその……胸で全然口元が見えない。

 

:???

:俺、渡り鴉のファンになります。

:これはおねショタ……

:やだ、このショタ凶暴すぎる

:俺、こんど渡り鴉に対戦申し込むわ

:あー、おー、ふーん

:初期から渡り鴉追ってるけどコイツ偶にこうやって俺達を殺しに来るから新規ファンは気をつけろ

:閃いた!

:↑通報した

:早すぎるが、まあ仕方ない

  

 

 オタ公がなにかブツブツ言っている間に天守閣に転送され俺の眼の前には今だ呟き続けるオタ公と勝利したのになぜか沈んだ表情のヤチヨの二人がいた。

 

「……あー、えっと……」

「……どうかしたかな? 渡り鴉」

 

 第二試合開始前の僅かな作戦会議時間。俺はヤチヨに声をかけようとするがどう話したものかとしどろもどろになる。

 

「お、オタ公……」

 

 支援、足りないぞ!! 約束が違うじゃないか!! 俺はオタ公の服の袖を引っ張って意識をこちらに向けさせるむ。

 

「ッ」

 

 おい待て、どうしてヤチヨがまた悲しそうな表情をする。オタ公の服の袖を引っ張る動作のどこにそんな悲しい要素があった。わ、分からん、本当に分からん。

 おい、オタ公! オタ公!! ちゃんと、援護しろよォ!

 

「ん? あ! ……ほーら、ヤチヨは優しい人だから大丈夫ですよ」

 

 オタ公がこちらに気が付いて肩に手を置いて俺にそう言ってくる。……ツクヨミに触覚や体温を感じる機能はないはずだがなんか、あったかい気がする。……よ、よし!

 

「その、さっきはきつく当たって悪かった」

「え」

「次の試合もよろしく頼む……」

「―――うん! 一緒にがんばろ、渡り鴉! ――「ただ」―――およ?」

「俺はこれからも俺の思うままに闘争を続けるし、次、俺の配信に来たときは絶対に負けない。そう本体に伝えて置け。これは変わらない」

「……りょ~~!」

 

 俺の言葉にお助けヤチヨは笑顔で頷く。

 

「……って良い話風に纏めようとしてますけどまた無茶するって宣言してるだけじゃないですか!」

「当たり前だろオタ公。俺がKASSENを辞められるわけないだろう?」

「いや、失明の危険があるんだし制限とかはつけましょうよ! 一体どうしてそこまでKASSENをプレイするんですか!?」

 

 オタ公が半ギレしながらそう聞いてくる。

 

「なんでってそりゃあ……『身体は闘争を求める』からな」

 

 そうやって作戦会議時間は終了して次の試合が始まる。一試合目と違い今度は俺が一人でボトムレーンを進行する。相手側は先ほどヤチヨと対戦していたプレイヤー。今回も一人でミドルレーンを進行してきている。

 ヤチヨ曰く『動きが単純だから楽だった』と言っていたが一体どんなプレイヤーなのだろう? あ、見えてき―――

 

「扱い辛い武器とかって話だが、最新型が負ける訳ねぇだろ! 行くぞおおぉぉぉ!!」

 

 あ、確かに楽だなこれ。

 

 

 

 そうして二試合目も順当に勝利して俺の初のSENGOKUは勝利に終わった。

 試合後、俺とオタ公と共にスタジオに戻り、本来試合前にやるはずだったインタビューでいくつかの質問に答え、配信を終えた。

 

「あの、渡り鴉さん!」

「ん?」

 

 配信を終えてログアウトしようとしていたところ、オタ公に話しかけられる。

 

「今日はありがとうございました! 私も久々に思いっきりKASSENできて楽しかったです!」

「そりゃ良かっ―――「ただ!」――ん」

 

 オタ公は人差し指を立ててこちらにビシッと向けてくる。

 

「今度からああいうアドリブは勘弁してくださいね! そういう演出ってことで事前に連絡してください! 良いですね!」

「あぁ、善処する」

 

 色々迷惑かけたしな。今度からはオタ公の言う通りにしよ……う……。

 

「次があるのか?」

「勿論です! あ、メッセージの宛先は知ってますけどフレンド登録しちゃいましょう! ……っとはい! 申請したんで承認しといてくださいね! KASSENしたくなった時とか、KASSENしていて面白いライバーに出会った時とか連絡下さいね!」

「了解した」

 

 オタ公から送られてきたフレンド申請を承認しながらそう返す。

 

「……オタ公」

「はい?」

「今日は色々ありがとう」

「どういたしまして!」

 

 オタ公の笑顔を見ながら俺はログアウトした。

 そして今回の配信はよくも悪くも話題になり俺の知名度を大きく上げた。そして俺の狙い通り何人かのオタ公たちのファンたちは俺への嫉妬からKASSENを挑んでくるようになり俺のKASSENライフも安定してきた。この撒き餌戦略……ありだぞ。

 

「なら、あとは現実の方か。……高校から一人暮らしでもするかぁ?」

 

 そう言いながら関東県内の物件を適当にスマホで表示しまくる俺。正直KASSENできればどこでも良いのだがあまり離れすぎると今生の両親が反対するだろうし……。

 

「ん?」

 

 一瞬スマホの画面にノイズが走ったが気のせいか……? 取り合えずウェブページをリロードしてみる。

 

「なんだここ……東京なのに異常に安くね? 事故物件でもなさそうだけど……立川か」

 

 すると今までなかった物件がトップに表示されていた。さっきのノイズはこの物件が追加されてウェブページが古いものになったからだったか? しかし、立川か……この世界にフロムは無かったがブキヤはあったし……あ、本店も変わらず立川にある……。

 

「ここにするかぁ?」

 

 俺の意識は新しく表示されたアパートに集中していたのだった。

 

数年後(本編最終話前半後)

────────────────────────

 

 

「ふふ……」

「おや? 九朗くん何見てるんですか?」

 

 ある休日のお昼過ぎ、ネストの皆でお昼ご飯を食べ終わったあと、リビングでソファに座りスマホを見て笑っていると後ろから広美が声をかけてきた。

 

「えー、九朗が携帯見て笑ってるの珍しいー! かぐやにも見せてー!」

「あ、ちょ、かぐや洗い物途中でしょ!」

「おやおや~? 確かにヤッチョも気になるー」

 

 すぐにかぐやとヤチヨが反応して左右から引っ付いてくる。そんな二人と広美にも見えるようにスマホの画面を見せる。それとかぐや今日はお前と彩葉、それからリンが洗い物担当だろう。ほっぽり出して来るんじゃない。 え? みたらすぐ戻る? ……なら良いか。

 

「これは……コラボ依頼のメール?」

「しかも送り主は『忠犬オタ公』 広美はちゃんとしてるねぇ……直接会える距離にいるのにちゃんとメールで依頼するなんて……」

「え? 私、ここに来てからは九朗くんに直接話してメールなんてしてないですよ……?」

 

 画面を覗いたかぐやとヤチヨの言葉に広美が首を傾げる。

 

「あぁ、これはオタ公が最初に送って来た依頼メールだよ」

「最初!? 一体何年前のメールを取っといているんですか!?」

 

 俺の言葉に広美が驚く。

 

「流石にメール全部取っといてる訳じゃないさ。でもこのメールは思い出のものだから取っといてるんだ……。この依頼がなかったら多分、俺はここに居なかっただろうし」

「それって……」

「……色々ね」

 

 俺の言葉に芦花が恐る恐る聞いてきた質問を笑顔ではぐらかす。

 

「だから本当に感謝してるんだ広美。このとき俺をコラボに誘ってくれてありがとう。……当時の俺は気が付かなかったけど、多分あの時から俺はお前のことが大好きだったよ『忠犬オタ公』」

 

 ソファの後ろ部分に肘を乗っけて後ろから顔を覗かせていた広美の首もとに頭をこすりつける。

 

「……えいっ」

「のわぁっ!? ちょ、広美!? いきなりなに!?」

 

 いきなり広美が俺の両脇の下に手を突っ込み持ち上げる。なんだ? なんなんだ!?

 

「あちゃー」(かぐや)

「今のはおいたが過ぎたね~」(ヤチヨ)

「そう言う所相変わらずだよねー」(芦花)

「今のは九朗が悪い」(彩葉)

「九朗さんは……もぅ」(カヨコ)

「昔から九朗さんはそうですから……」(リン)

「寝室に行きます」

 

 え? は?

 

「ま、待って今、なんで? どこでスイッチ入った!? ちょ、広美、止まって止まれ!」

 

 広美の拘束から抜け出そうとするが全然敵わない! このっ、なんでウチの女性陣はみんな力強いんだ! 

 

「んひぃッッ!?♡」

 

 か、片手で抑えられッ!? んッ♡ もう片方の手、服のなかッッッ!?♡ 弄って♡!?

 

「……ッ! や、ヤダ♡! ま、まっだ昼ッ♡ だよ! ベッドやだ♡ やーだ♡!」

「ダメです。九朗くんが悪いんです。もう止まりません」

「う、ぅぅぅぅ♡♡」 

 

 俺は周りのかぐや達に助けを纏めて手を伸ばすが誰も止めてくれず、ただ水のペットボトルを渡されたのだった。

 

 




・実は九朗くんのバトルシーンはフロムの他にある作品をイメージして書いてます。細かい説明はフロム外要素なので透明文字にしておきます。↓
九朗君の戦闘スタイル、スターウォーズのライトセーバーの型をイメージして書いています。超かぐや姫を見に行った時マンダロリアンの映画もやって影響を受けてしまって……。いやマンダロリアンにライトセーバーバトルはないですけど。基本的に九朗くんが使うのはフォームⅡ『マカシ』です。そして興が乗って来た時、月侵攻時にボサツ型に使っていたのはフォームⅤ『ドジェム・ソ』になります。ボサツ型への最後の一撃はアナキンの特徴的な背面回転切りを描写したかった……。

・この時点で既に渡り鴉より背の高いオタ公
・そして多少心を開いたオタ公にギャップ攻撃を喰らわす九朗くん。ここから本編開始まで、そして開始後もオタ公にこういう攻撃をし続けた九朗くん。
・目の前で他の女の手(袖)を掴まれるヤッチョ。
・武器は最新型であれば良いというものではない。
・急に現れた格安物件……一体何故なんだ……。
・そして本編時空でわんわんおそれてしまった九朗くん。この時期になるとすっかり分からされてしまった後なので軽く触れるだけでへにゃへにゃになってしまう。



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