時系列は最終回、九郎君がわからされてから大体一年後想定です。
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「ん~~……っし、今日はここまで!」
時刻は午後5時を少しだけ過ぎたころ、純地球産技術のみの義体開発を目標に烏丸研から独立した私の研究所で私は研究を切りのいいところまで終わらせてデータを保存した後、帰る準備を始める。すると研究室に置かれているタブレットの画面が点灯する。
『パソコンの電源が切れたからこっちに来たけど、彩葉今からお帰りかな?』
画面に映ったのはヤチヨだ。ボディの方は家にあるはずだし、パソコンの電源が切れたのを確認して意識だけこちらに飛ばしてきたんだろう。
「うん。今から帰るよ。今日の晩御飯はなに?」
『んふふ~、なんとヤチヨ、かぐや合同の白甘鯛の炭火焼でーす!』
へぇ~、炭火焼……炭!?
「ちょ、ちょっとまさか家でやったわけじゃないわよね!?」
『ご安心くださーい、きちんと消防や自治体に連絡して、許可もらって近所の公園で焼き上げたものを家に運んでまーす』
「ほっ」
なら良かった。タワマンの一室で炭をおこすなんて『タワーリングインフェルノ』な未来しか見えて……こな、い……。あれ? なんか前にも似たようなこと……。
「ヤチヨ、白甘鯛の炭火焼って……」
『……彩葉も思い出してくれた? これもずっとやりたかったんだよね』
そう、かぐやが月に帰ってしまう前にも白甘鯛はうちに届いていたはず。その時は炭火焼にはできなくてお寿司になったはず……。
「確か私が夏期講習に行ってる間、かぐやが抜け駆けしようとした日も白甘鯛が出たよね」
『ちょ、ちょっと彩葉!? ヤッチョ的にはそのあとの花火大会のほうを思い出してほしかったんだけど!?』
画面の中でヤチヨがワタワタと慌てる。ふふ、今日も推しが可愛い。
「冗談、ちゃんと花火大会も思い出してるよ。ちょっとからかっただけ」
『ヨヨヨ~、彩葉もすっかり余裕が出来ちゃってヤッチョを揶揄うようになっちゃったー。最初のころは私がかぐや、って分かっててもくっついたりしたら緊張でガチガチになってくれたのに~。もうあの純粋な彩葉は戻ってこないのか~!』
「ちょっと、まるで今は純粋じゃないみたいな言い方やめてくれるー?」
まったく心外極まりない。
『えぇー、純粋だった頃の彩葉なら姉弟プレイなんてしなかっ―――「だぁぁあああああ! 終わり! この話終わりね! ともかく、今から帰るから!」―――りょ~~』
なんで!? あの時家には私と九郎しかいなかったはずのなのにどうして知ってるの!? いや……これか! 今のタブレットと同じように家の中の電子機器にヤチヨがアクセスして覗き見てたんだ! お、推しに変なプレイを見られた……。いや、あれは! いつまでも小柄でまだ高校の制服が入る九郎が悪いのであって、まるで年下になった九郎を犯してるみたいで興が乗ったとかじゃないから!
「……全部あの戦バカが悪い!」
ヤチヨがネストのメンバーに言いふらさないとも限らないんだ急いで帰ろう。
「それじゃ皆、私先帰るから! みんなも残業しないでさっさと帰りなさいよ!」
「はーい」
「お疲れさまでした所長」
「所長もしっかり休んでくださいねー」
所員たちに挨拶しながら研究所を後にする。そして転ばない程度に早歩きで帰路に就く。
「すみません」
「え、はい?」
帰り道、急に誰かから声をかけられる。暗くなり始めた時間帯ということもあり、少しばかり警戒しながら振り返る。するとそこには白い肌に白い髪の綺麗な女性が立っていた。綺麗……なんか初めてかぐやを見た時と同じぐらい衝撃かも。
……広美さんより背高いんじゃない? 190ぐらい……外人さんかな? 背の高さも驚きだが何より目を引くのはその右腕。シンプルな白い長袖シャツとジーパンという格好なのだが、右腕があるはずの部分がヒラヒラと風でたなびいている。……この人、右腕がないんだ。
「どうかしましたか?」
声をかけてきたのが女性、それも外人さんらしく私は警戒度を少しだけ下げる。
「渡り鴉に会いたいのですが案内してもらえませんか。『いろP』様」
「ッ!」
下げた警戒心を一気に最高まで引き上げなおす。なんだこいつ、押しかけ厄介ファンか?
「あなたは……渡り鴉とどういう関係で?」
返答次第では一気に交番に駆け込むつもりだ。晩御飯には遅れてかぐや達を悲しませることになるがみんなの安全には変えられない。駆け込むと同時にツクヨミのアプリでヤチヨに連絡を入れるしかない。さぁ、どう答える!
「8年ほど前に渡り鴉と激しくヤリやった仲でキズモノにされた関係です」
「ちょっと詳しく話を聞かせて」
約8年前……九郎の高校時代。この人の目はまっすぐでとても嘘をついてるようには思えない。つまり、高校時代あんなに私たちのアピールが通用しなかったのはこの人がいたせいの可能性が湧き出てきた? はい、別の意味でネストに連絡ね。
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「……もうすぐ晩飯だというのにどうして俺は縛られているんだ」
彩葉が帰ってくるとヤチヨが確認したため日中に焼いていた白甘鯛を温めなおして最後の味付けや、お皿を並べたりとみんなで準備していたはずなのにいつの間にか俺は縛られてソファに転がされていた。
「いえ、彩葉さんから気になる情報提供があったので少~し逃げられないようにさせていただきました」
「もしこれが事実だとすると私たちはすっごく傷ついちゃうんですよね……」
カヨコと広美がハイライトのない目でこちらを見つめてくる。……彩葉、いったい何をした! あれか? この前紅葉さんが来たときに膝の上に座ってお菓子食べさせられてたのがそんなに気に喰わなかったのか!? あの時も言ったがあれは紅葉さんが勝手に俺を抱えだしたんだからな! しかもお菓子食べてる最中に頬触ってくるから食べ辛いのなんのって最悪だったんだからな! かといって反発すればするほどあの人喜ぶから始末に負えねぇよ!
「ねぇ、九郎……」
「か、かぐや?」
「正直に話して。私たち以外に関係を持った女性っている?」
かぐやの目まで怖ぇよ! というかまさかの浮気調査!? え、なんで? マジでなんでこんなことになった?
「いないいない! というか、お前らが一番分かってるだろ! 俺の今までの人生KASSEN一色だっただろうが! というかこれからもそのつもりなんだけどさ!」
「それはそれで許せませんね」
「えぇい、リン! 言葉の綾だ、今は聞き流せ!」
そ、そのお前たちとの夜のKASSENも頑張ってるんだから勘弁してくれ!
「でも実際九郎の生活で私たち以外に関係もてそうな気がしないんだよね……」
「芦花……!」
よかった、芦花は信じてくれるみたいだ。
「まだ乃依くんとシた、っていう方が納得できるもん」
「芦花ァ!?」
もしかしてあれかまた乃依と二人で買い物出かけたことに怒ってるのか!? というか乃依に手を出したら帝に殺されるわ!
「まぁ、たまにそういう同人誌も出回ってるよねー」
「ヤチヨ!? ……いや、なんでヤチヨはそんなこと知ってるんだ?」
「……バイならー」
「おい、あっちも縛り上げろ!」
逃すんじゃねぇ! なんだそのヤバ過ぎる同人誌! 焚書しろ焚書!
そんなこんなでジタバタしていると部屋のすぐ近くに彩葉の気配を感じた。これ隣にいるのは……。
「……ん、そろそろ彩葉が帰ってくるぞ」
「お、位置情報もそうだね。ほんと、九郎の気配レーダーは便利だねぇ。―――九郎、顔色悪いよ、大丈夫?」
「え! 縛り方不味かった!? 九郎待ってて今ほどくから!」
いやまて、間違いないか? この彩葉の隣の気配……。探れ、探れ……! だめだ、間違いない、この気配!なんで今更……! 8年前にも感じた懐かしのこの気配!
「かぐや、ヤチヨ! 逃げろ!」
「え?」
「ちょっと九郎、いきなり大声出してどうしたの?」
「彩葉の隣に"月人"の気配がする!」
「「「「「「!?」」」」」」
一か八かだな! 俺は拘束がほどけたのを確認すると一気にキッチンに向かって駆け出して包丁を手に取る。そしてそのまま玄関に向かう。
「ただいまー、ねぇ九郎いくつか聞きたいことが―――何事!?」
玄関を開けた彩葉の横を通り抜けて月人の気配がする場所に包丁を振り下ろそうとする。
「なッ!?」
しかしそこには"人"がいた。ちゃんとした肉体を持った女がいた。気配、だけじゃない!? 俺は驚いて一瞬、動きを止めてしまう。
一瞬、けれどその一瞬で十分だった。目の前の女は左手だけで俺の手から包丁を取り上げて俺を押し倒した後、首元をトンっと包丁の背でたたく。
「……これで私があなたの首を取ったのは二回目ですね。渡り鴉」
二回目、月人の気配……。
「あ、お前かぁ!」
・白甘鯛の炭火焼
あのとき食べれなかった思い出を上書きしよう!
・姉弟プレイ
末っ子だった彩葉、九郎に『おねぇちゃん』と呼ばれご満悦。
・間違ってはいないが語弊のある言い方の月人ちゃん。
・再び九郎の首を獲れてちょっとどや顔しちゃう月人ちゃん。