「いや、『お前かぁ!』じゃなくて、いきなり包丁取り出すとか何事!?」
俺と月人のやり取りを隣で見させられた彩葉は驚愕で大声を上げる。確かにこのままなのは色々と不味いか。
「おい、一旦そこを退け」
「おや? 敗者が指示出しとはおかしなことですね? そこはせめて『私の負けです。このあと煮るなり焼くなりお好きにしてかまいませんので一度上から退いて下さりませんか?』ぐらい言ったらどうです?」
「あ゛あ゛っ゛?゛」
んだ、こいつ!? そもそも俺たちの勝負の場はツクヨミ内であって現実の方じゃないだろうが! いいか、俺はなぁ! 結局、高校時代から対して身長も体重も変わってねぇんだよ! 多少体力はついたとはいえ、ライブ後とか死ぬかと思ってんだぞこっちは!
「もう、二人とも喧嘩しない! さっさと物騒なものしまって家に入る! そんでさっさと事情説明しなさい!」
「「はい……」」
彩葉がカっとなって一瞬で俺たちを りつける。いや、ほんとこういう時の彩葉の迫力は紅葉さん譲りだよなぁ……。本人に言ったら絶対もっとヤバいことになるから言わないけど。
そうして彩葉に連れられ俺と月人は部屋の中へと戻るのだった。
────────────────────────
「それで? この外人さんは一体どなた? 本人は『激しくヤリあってキズモノにされた関係』って言ってたけど?」
「うわぁ……」
「く、九郎さんのガチ引き顔ッ! ここまでの引き顔は最近見れない! あっ♡ ッッぐ♡!」
うわぁ……。思わず口に出てしまった。リビングに戻った後、俺と月人は床に座らされて周りをネストの面々が囲んでいる。そして彩葉から月人が言い放った言葉を聞かされる。確かに間違ってはいないがそ、その言い方はその、あれだろ……え、えっちな奴と勘違いされるじゃん。
「すごい言い方が悪い。俺とこいつは8年ぐらい前にKASSENしただけだ」
「夜の?」
「普通の!」
そんなボケはしなくて良いんだよ、広美!
「夜のKASSENでも間違いないのでは?」
「は?」
「時間帯! 時間帯は確かに夜だったけど!」
せっかく誤解を解こうとしているのにまた月人が変なことを言い出したせいでかぐやの顔が恐ろしいことになってる! というかかぐやも怒り方が彩葉に似てきたなぁ!
「というか、かぐやとヤチヨは分かれよ!」
「「え?」」
本気で気が付いていないのか!?
「こいつあれだよ! かぐやを連れ戻しに来たときの司令官的な奴! ほら、月で俺が言っただろ『遊びに来い』って。あいつだよ」
俺の言葉に事情を知らない芦花、広美、カヨコは首をかしげる。そしてそのやり取りを見ていた彩葉、リン、かぐやは目を凝らす。そして何かに気が付いたかぐやがを声を上げる。
「あ! □□ちゃん!?」
「はい、お久しぶりです。かぐや様」
「わー、久しぶりー! いやー、九郎に言った通りいつかは来るんだろうなーって思ってたけど予想よりずっと早かったじゃん!」
かぐやはそういいながら笑顔で月人の手をとって上下に振っている。一方の月人のほうも懐かしいものを感じているのか目を細めながらかぐやの手をしっかりと握っている。
そしてそんな二人をじっと見るヤチヨ―――え? ちょ、ヤチヨ!?
「あ、ちょ! ストップ! どうしたヤチヨ!?」
理由は分からないがヤチヨはいきなり月人のほうに駆け出してつかみかかろうとしていた。それを俺が間に入って止める。ッぶな! ヤチヨの勢いがありすぎて止めた衝撃で義眼取れてどっか転がっていったんだが!?
「あ、無理広美援護!」
「は、はい!」
一度止めたはいいけどヤチヨは止まらずジリジリと進むのでたまらず広美に援護を要請する。というか、顔怖ぇよ! こんな歯をむき出して怒ってるヤチヨなんて初めて見たぞ!? ほら、彩葉もみんなもびっくりしすぎて固まってるじゃん!
「ヤチヨ! お前どうし―――「お前が! お前が九郎の目を!!」――……」
あー、確かにそうなるのか……。ヤチヨはがっつり俺の目が吹き飛ぶ瞬間見てるし原因と出会えばこうなるのも仕方がないことか?
「ほら、ヤチヨ」
「九郎ッ、お願い離し―――く、九郎、目が……なくなって―――」
「え? あぁ、これはヤチヨのせいなんだけど(勢いよくぶつかったから外れたという意味)」
「わ、私……私の……あ、あぁ――いや、いやだよ……う、ぅぅぅぅ」
あ、あれ? ヤチヨと額を合わせて話して落ち着かせようとしたんだけどなんか急に顔色が悪くなって泣き出しそうになったんだけど……?
「えぇい! 言い方を考えろ、この戦バカ! その義眼がとれた状態でヤチヨに近づくな! 記憶見た私だからわかるけど、その状態の九郎ヤチヨにとってすごいトラウマなんだからね! ほら、目! さっさとつけて!」
「りょ、了解」
俺は彩葉に義眼を渡されて装着作業に入る。その間彩葉たちがヤチヨをなだめている。
「っと、これで……よし」
俺が義眼を装着しなおして。改めてみんなのほうに視線を向ける。
「ほら、大丈夫だよヤチヨ。別にさっきのはヤチヨが考えいるようなことじゃないって」
「そうですよ。九郎さんは頭KASSENですから言葉選びが壊滅的なだけですよ」
「自分で言うのもアレですけどこれだけ美人が周りにいて7年手を出さない人ですからね。KASSENの腕は一流でも人としては割かし三流ですよ」
「……やはり彼は戦い以外には疎いのですか?」
「そーなんだよ□□ちゃん! かぐやが勇気出してもうまくいかなかったんだから」
「その癖、まるでこっちを煽るような行動を無意識でとるので大変なんですよ」
「まぁまぁ、でもみんなそかん九朗が好きなんでしょ?」
なんか、俺の話題で盛り上がってる……。順に彩葉、カヨコ、リン、月人、かぐや、広美、芦花の言葉だ。
「そうだね……うん。ほんと、九郎は仕方がないなぁ」
「え、結局俺のせいみたいな事で話まとまった感じ?」
みんなの言葉にヤチヨが笑顔を取り戻した。……それはいいことなんだけどなんか俺へのジト目で一致団結するのはやめてほしい。
「しかし……かぐ――いえ、ヤチヨ様」
「ん? どうしたのかな□□ちゃん」
月人のやつがヤチヨの元に自分から近づいて膝をつく。
「今の私には目的があります。ですからこの命を謝罪として差し出すことはできません。しかし気持ちの整理をつける、というためであれば遺恨を残さないためにも私はこの頬を差し出すつもりです」
あー、成程な。確かにあれだけの怒りを抱えていたなら区切りをつけるためにも一発ひっぱたいておくべきかもしれないな。
「というか、それは俺にも言うべきじゃね?」
「あなたにはすでに右腕を差しだしていますよ? というより、あなたに不満があるのですか?」
「いや、まったくない」
こちとらあの時死ぬ覚悟だったんだ。片目ぐらいで済んだのならむしろラッキーだ。これ言うとみんなに怒られるからもう言わないんだけどね。俺と月人のやり取りをみた後ヤチヨはクスリと笑った。
「はぁー、もう……九郎が本人を前にしてそんな調子じゃヤチヨももう怒れないよ。でも、そうだね。区切りのために……ていっ」
ヤチヨは月人に近づいてそのオデコにデコピンを一発くらわした。
「これでよろしいので?」
「うん。もういいよ。さて、□□ちゃん、ようこそ地球へ!」
────────────────────────
「んじゃ、落ち着いたから改めて色々話そうか」
全員がリビングのテーブルの周りやソファに集まって色々話すことになった。
「まずは……お前何しに来た?」
「もう九朗! 『お前』じゃないよ! □□ちゃん!」
かぐやは俺の月人の呼び方が気に入らなかったのか指をさして指摘してくるが……。
「彩葉?」
「ちょっと私も聞き取れないな……。ごめん、かぐや。多分その発音地球人には聞き取れないかも……」
一応みんなに聞き取れたか聞いてみるがやはりかぐやとヤチヨ以外の全員は聞き取れないらしい。
「ふむ、呼び名がないのは不便ですね。では渡り鴉、あなたが私の地球での名前を決めてください」
「へ? なんで俺が?」
「勝者の特権で敗者に命じてるんです。私にふさわしい強くてカッコいい名前を付けてくださいね」
「……」
そういって胸を張る月人。……なんでこいつこんな自身満々なんだ。というか敗者じゃねぇ! こいつ後でツクヨミに入ったらぜったいにボコボコにしてやる。
「名前ねぇ……『
「美月……。ちなみに由来は?」
「え? 月から来た美人ってことで『美月』だけど」
「……成程"これ"ですか」
「「「「「「「これ」」」」」」」
俺が名前の由来を説明するとなぜか美月が彩葉たちのほうに視線を向けて視線を受けた彩葉たちが息ぴったりに返事をする。
「美月……。私の要望したカッコいい名前ではありませんね」
「悪かったな。そういったセンスはあまりないんだ。気に入らないなら別のをみんなで考えるんだな」
「まぁ、事前情報から渡り鴉にはそういったセンスはあまり期待していませんでした」
おい。なら俺に頼むな。
「ですが気に入りました。美月……私は美月です。皆さん、よろしくお願いします」
そういって美月は俺たちに向かって頭を下げたのだった。
「しっかしあれだな。俺はお前が女だってことに驚いたよ。ライブに来たときと月で戦った時は性別どっちだか分からんかったし」
いや、ほんと。
「あの形態は無性ですのでその認識は間違っていませんよ」
「あ? ならなんで今は女の見た目してるんだ?」
「地球では女性の姿の方が異性、同性から好まれやすく行動に支障が少ないと判断しました。事実あなたの周りも女性ばかりでしょう?」
「……あー……まぁ、うん……」
片腕のない白髪色白外国美人……まあ、下心あるなし関係なく親切してくれる人は多そうな気はするな。ただまぁ、俺の周りが女性ばっかりなのはほら、ちょっと事情が特殊だから……。
「それに目的のためにもこちらの方が都合がいいと判断しました」
「目的……?」
「あ、そうそう! 美月ちゃん……さん? はどうして地球にやってきたの?」
芦花が美月に疑問を投げかける。
「私はちゃんでもさんでも呼び捨てでも構いませんよ、芦花様。私の目的は二つあります。一つ目は渡り鴉、あなたと再び戦いに来ました。とはいっても現状二勝一敗ですでに私が勝ち越しましたが。まぁ、私は月の最強の戦士なので? 渡り鴉がどうしてもというなら? もう一度この完璧で究極の最強美人である美月が相手して差し上げなくもないのですが?」
「てめぇ……さっきの現実のやり取りを戦績にいれてんじゃねぇ……。ツクヨミなら兎も角、現実の俺なんてこの家の中で一番雑魚なんだよ。そんな雑魚な状態の俺に勝手最強を名乗るとか片腹痛いわ」
最近走り回るようになった真実のとこの子供に引っ張られて走り回った時には子供の無限体力の恐ろしさを味わったばかりなんだよ、俺は!
「九郎くん、それそんな自身満々に言うセリフじゃないです」
うちの
「もう一つのほうの目的とは何でしょう?」
俺が聞こえないふりをしているとカヨコが手を挙げて美月に質問する。
「渡り鴉と交尾しに来ました」
「ゴハッ!? ッげ、げほ、ゴホッ!? ガッは?!」
ちょうど話題が別のものになったので喉をうるおそうと飲み物を口にした瞬間とんでもない爆弾をぶち込まれてむせる。他のメンツも美月の発言に固まる。
「な、なんで、ゴホ……そんな?」
「なぜと言われても、こうして傷物にされたのです先人を取っていただこうかと思いまして」
「キズモノて……」
ヒラヒラと中身のない右腕部分の袖を振って見せる美月に何も言えなくなる俺。
「ご安心ください。交尾と言っても私は順番は弁えるつもりですので。子を身ごもるのは皆さんが懐妊して出産を終えてからのつもりです。皆さんが妊娠している間の家事などはこの完璧究極最強美人、美月ちゃんにお任せください」
「□□ちゃ――ううん、美月ちゃん……月に居た頃とだいぶ変わったねぇ……」
「ヤッチョが月にいたのは8000年以上前だから朧気だけど当時の月にこんな性格の人はいなかったということだけは分かるよ……」
かぐやとヤチヨが目を丸くしながら美月を見る。しかも何があれだってこいつ口ではこんな調子乗りまくってるけど表情が一切動いてない。無表情のまま完璧美人……だったか? そんなことを言ってるからなんか声色と表情のギャップがすごい。
「どうでしょう? かぐや様たちは妊娠している間手助けしてくれる人が出来て、渡り鴉は新しい美人の女を手に入れる。そちらにとっても悪い話ではないと思いますが?」
「どうでしょうって言われても……」
美月がまるで誘惑してくるように身を寄せてくる。
「おや? この月の技術が生み出した超完璧究極清楚系高潔色白最強最高の美少女たる美月ちゃんに不満が? 容姿のレベルも高いですし、こちらに来る前に様々な文化、歴史を学んできたのでどんなプレイにも対応可能で夜の生活も満足いただけるかと。ダブルピースも完璧です。ピースピース。こんな私のどこに不満が?」
「いや、表情が動いてねぇし……」
そもそも夜の生活に関してはもういっぱいいっぱいですから勘弁してください。
「もう、美月ちゃんは全然わかってない!」
「かぐや様?」
かぐや? かぐやがなぜかどや顔で立ち上がり美月に分かっていないと指摘をする。……何がわかってないんだ?
「ダブルピースをするのは私たちじゃないよ! 九朗のほう!」
「かぐや!?」
「そうそう、基本的にヤッチョたちの方が攻めに回るからねぇ~」
「ヤチヨ!?」
「でも、九朗にダブルピースさせるのって大分難しいよね……」
「彩葉!?」
「九郎ってば未だに恥ずかしがるから」
「芦花!?」
「ピースさせるにはある程度蕩かして意識を朦朧とさせる必要がありますよね!」
「広美!?」
「でもその頃になるともう九朗さんの体力が切れてしまって息を荒げながらこちらを熱のこもった目で見つめるだけになってしまうんですよね」
「カヨコ!?」
「でも手を重ねるとキュッって握り返してくれるからたまらないんですよ!」
「リン!!」
なぜ、なんでこんな流れになった!? 『分かるわぁ』なんて言いながらみんなほっこりしてるけど話してる内容大分エグいからな!
「なるほど、攻められる方がお好きと」
「結果的にそうなってるだけだ!」
うぅ、なぜこんな辱めを受けなければいけないんだ……。俺が頭を抱えているとかぐやがパンっと手を叩く。
「ま、美月ちゃんとまだまだ話すことはあるけど。それよりもいい時間になっちゃってるし、みんなごはん食べよ! 美月ちゃんは地球に来てから最初の食事だよね?」
「えぇ」
「そっかー、じゃ、たくさん期待しててねー。今日はかぐやとヤチヨが手をかけて作った白甘鯛の炭火焼だよー! ぜっーたいおいしいから!」
「はい、とても楽しみです」
その日は新たな仲間を迎え、いつもよりも賑やかな食事になったのだった。
その晩俺は新たなメンバーを迎えた新生ネストに襲われたのだった。し、死ぬかと思った……。
・リンちゃんは何年たっても変わらない。
・月人改め、美月ちゃん。身長190以上、色白白髪、そして内心では思っていてもあまり口に出さない九郎が口に出すほどの美人。しかし無表情、そしてめっちゃ調子に乗る性格。
・美月ちゃんは云わば生まれた時から軍人。という存在で長い間、月の軍勢を率いていた存在。元々は無感情、無性な存在だったが、かぐやの影響でジョジョに女性よりになっていた。そんな折、月で最強だった自分を打ち負かした男が現れた。
・かぐや奪還作戦後、片腕を失ったこともあり軍人を引退。引継ぎを済ませ折角遊びに誘われたので地球を目指すことに、その時事前に文化などを調べておこうということで『日本のインターネット』にどっぷりつかった結果、完全に女性化してこうなった。要は日本のオタク文化を日本の常識だと思い込んだオタク外国人というわけである。
・食事後の女子会の厳正な審査の結果ネストへの参加が許可された美月ちゃん。
・九郎は喰われた。
・しっかりとスマコンも入手して九郎との再戦の約束も果たしている。
・渡り鴉は見慣れない色白の美人ライバーといるところが拡散されまた炎上した。
はい、というわけで月人来訪編も終わりです。これで本編最終回のあとがきに書いていた番外編たちもすべて書き終わったということでこの『超闘争』も一区切りつけます。今後まったく更新がないわけではありませんが次作品を書き始めているので主力はそちらに移ります。
では改めまして本作を読んでくださって本当にありがとうございました。
https://syosetu.org/novel/422019/
↑これからの主力作品はこちらになります。良かったらこちらも読んでやってください。