超闘争   作:四脚好き

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第8話

ライブ会場

────────────────────────

 

 烏丸(リン)。今生の家族で妹。確か……いや、歳は思い出せないな。中学生ではあったはず。一人暮らししている俺とは違ってまだ実家暮らしをしている……と思う。いやここツクヨミだし実家とか関係ないか。

 『KASSEN』の腕前は悲惨の一言に尽きる。下の下にすら数えるのはおこがましい。センスが絶望的にアクションゲームに向いていない。成績は学校内でも結構上の方、みたいな話聞いた気がするしパズルゲームとか推理ゲームの方は適正有りそうな気がする。ま、俺はそっちに対して興味ないし、『KASSEN』も成長の見込みがないし、付き合っても大したうま味もないから相手にするのやめたんだよね。

 

「……んじゃ、さよなら」

「待って!」

 

 ん、だよ……面倒だな。かぐやと彩葉の所に向かおうとしたら引き止められた。お前に割く時間があるならかぐやに少しでも『KASSEN』のこと教えたいんだが?

 

「私と……私と『KASSEN』で勝負して!」

「え、やだ」

 

 なんだ、立ち止まって損した。俺はかぐやと彩葉がいた場所に向かって歩き出す。しかしリンの奴が後ろからついてくる。

 

「なんで!?」

「なんでって……つまんないし」

「ッッ! 私だって沢山勉強して戦って強くなったもん! 絶対にお兄を退屈せないから!」

 

 えぇ、勉強って……。強さってそんな成績みたいに勉強したからって上がるもんでもないと思うんだけどなぁ。いくらステータスの項目が何を意味するのか、どう影響するのかとか勉強しても肝心の操作がおぼつかなかったら折角の黄金比とか理論値のステータスも生かせないと思うんだが。

 

「だから、だから止まって! お願い! もう一回一緒に遊んでよお兄! 私を、見てよ!」

「……」

 

 うわ、泣き出した面倒くせぇ。というかライブ終わりのせいで回りの奴等の視線もうざったい。ただでさえ、今日は『KASSEN』できなくてイラついてるのによりにもよってこんなのと戦うのか……!? 折角乃依とのお出かけや帝の予定表で浮ついていた気分が急降下していく。

 ……くそ、これ以上断り続けても不快度が増すだけだな。

 

「はぁ……。一戦だけだ」

「! う、うん! 待ってね、すぐ対戦申し込むから」

 

 そう言ってメニューを表示して操作をするリン。そして俺の眼前に表示される対戦申し込み画面。対戦を承諾っと。

 俺が承諾を押すと辺りの景色が一瞬で切り替わり『KASSEN』のステージに代わる。

 ステージは橋上か。さっきのライブ会場のように大きな橋の上で障害物もなにもないシンプルなステージ。違うのはこちらは日が出ていて明るいということだろう。障害物を利用することも闇に紛れることもできない完全に実力がものをいうステージだ。橋の反対側にはリンが武器を構えているのが見える。武器は薙刀か。

 

「ん?」 

 

 あの薙刀、見覚えが……いや、あれカカの使っているのと同じ奴じゃん! 

 ……もしかしてだけど、勉強ってそういうことか? だとしたら下らなすぎるだろ。これは期待できないな。……武器を縛るか。そうすればある程度はマシになるかもしれないし。

 俺は装備欄を開いて槍と刀を外す。そしてカウントダウンがゼロになり試合が始まる。こちらに向かって走り出すリン。対して俺はゆったりと歩いて近づいていく。どんどんと縮まっていく俺達の距離。

 

「せいッ!!」

「……」

 

 そして薙刀の間合いに入ると一気に薙刀を振り上げて上段から振り下ろすリン。……いや、折角走ってきてたんだしそのまま突きを繰り出せよ。なんで立ち止まって振り上げんだよ。それなら最初から振り上げた状態で走って来いよ。

 

「オマケに振り下ろしも遅いし」

「止めた!?」

 

 俺は一気に距離を詰めて薙刀の最適距離の内側へと潜り込み、柄の部分を小手で受け止める。さて、長物は懐に入られるとキツぞ? どう対処する?

 

「ッ、ええい!」

「ふむ」

 

 リンは素早く柄を自分の方に引き寄せて石突部分をこちら目掛けて振り上げようとしてくる。けどまぁ、予想通りで意外性はないな。下から振り上げられる石突を足で踏み抑えて目一杯顔面を殴りつける。

 

「キャッ!?」

 

 ゴロゴロと橋の上を転がるリン。……武器を決して手放さなかったことは感心した。たしか前回は出来なかったはずだからな。

 

「クッ……! 配信ではダメージを喰らってたのに」

「……ほら、次はどうするんだ? 俺はもう退屈し始めてるぞ」

「! まだまだ!」

 

 リンは素早く立ち上がり再びこちらに切りかかって来る。そのどれもが見た事のある動き、戦法、技だ。これらは全部俺がカカとの配信で俺がカカに教えたものだ。つまりこいつは――――。

 

「お前の言ってた勉強ってあれだろ。カカとの配信を見たんだろ?」

「ッ!」

 

 リンの攻撃をひらりひらりと躱しながら聞いてみればリンの動きが一瞬鈍る。図星だな。動き自体は型の演武として見れば綺麗だが動きの鋭さ、技のキレ。全部がカカの足元にも及んでいない。最初の振り上げだって少し前の配信でカカが俺に一撃叩き込んだ時の動きだ。

 

「カカが俺に教えを受けていた時のアーカイヴを見たのか、当時から追っていたのかは知らんが、その配信を見て俺からの指導を受けた気になって動きを真似した自認カカって訳か」

 

 おまけに武器まで揃えちゃってまぁ。たしかにカカの武器は店売りだし揃えられるけどさぁ。同じ武器、同じ攻撃動作をしようとも所詮猿真似、実際の戦闘じゃあちこちボロが見えてる。

 

「そもそも攻撃を繰り出すタイミングが間違ってる。動画だと分かりにくいがカカのやつはしっかりと間合いに入るか入らないかギリギリで動作を始めていたし、最初の突撃もカカは切り上げなのか、振り下ろしなのか、突きなのか、フェイントをチラつかせていた。お前そこらへん全然できてない」

「―――い」

 

 馬鹿正直に綺麗な型みたいな攻撃しやがって。武というより舞だな。つーか、『配信ではダメージを喰らってた』て。俺が何度も同じ手を喰らうかよ、しかも劣化コピーに。

 

「カカは俺が初めて育てた大事な弟子。教え方だって四苦八苦したし、コラボだって初めてで迷惑をかけたこともある。それでも長い時間を一緒に過ごして共に成長したし、人気者になった今でもカカは俺を師匠として慕ってくれる。そんな大事な関係だ。

 お前なんかが動画を何度見ようとも、どれだけ練習を重ねようともお前は、俺にも、カカにも、追いつけない」

「―――さい」

 

 強くなったと言っているからどんなものかと思えばこの程度。粗探ししていたら日が昇りそうだ。

 

「はぁ、少しだけ期待した俺がバカだった」

「うるさい! 私だって! 私だって戦える!! それでまたお兄に笑って―――」

「五月蝿いのはお前だ」 

 

 おまけに頭に血が上りやすい。怒ったリンが怒りに身を任せた結果なのかまた振り下ろしを繰り出そうと俺が真ん前に居るのに薙刀を上段に構えた。そのせいで胴体から顎までガラ空きだ。

 がら空きになった顎に遠慮なく右手で掌底をぶちかます。

 

「あ、え?」

 

 体勢が崩れた所に左鉤突き。体がくの字に曲がり前に出てきた頭に右の正拳、距離が離れる。追撃の為に近づく、迎撃のために振るわれた横薙ぎをしゃがみ避けしつつリンの懐に入り左ひじ撃ち。再び体勢を崩す。

 また前傾姿勢になったリンの後頭部を右手で掴み、そのまま地面に叩きつけ橋板をリンの顔面で叩き割る。

 

「なんで……! 練習した時は難易度最高のCPUにも通用したのに!」

 

 まだ数ミリHPが残っていたのかリンが立ち上がりながらそう呟く。マジかコイツ。え、勉強って本当に練習しかしてないの? 対人経験皆無で俺に挑んできたの? 

 ……呆れた。

 

「今度からはCPUじゃなくて対人経験も積んでから挑んでくるんだな」

 

 そう言って俺はリンに止めを刺して『KASSEN』に勝利した。『KASSEN』が終わりもとのライブ会場へと戻ってきたがリンはすでにログアウトしたのか、どこか別の場所へファストトラベルしたのか辺りに姿は無い。

 ふむ、じゃあもう残る理由もないか。俺もログアウトしよーっと。なんか忘れてる気がするけど……ま、いっか。

 

 

実家、九朗の部屋

────────────────────────

 

「ッッ!!」

 

 お兄から逃げるようにツクヨミからログアウトした私は持っていたコントローラーを床に叩きつけようとして、それの値段を思い出して止める。スマコンとコントローラーをゆっくりと机の上に置いた後、思いっきりベッドにダイブした。 

「―――――!!」

 

 枕に顔を埋めて悔しさから思いっきり大声を出して足をバタバタとさせる。両親が出かけていて良かった。でなければこんな騒がしくは出来ない。あんなに自信満々に挑んだくせにあの大敗。

 悔しい、お兄に武器の一つさえ使わせることが出来なかった。

 悔しい、お兄に1ダメージも与えられなかった。

 妬ましい、お兄から直接教えて貰えた黒羽カカとかいう女が。

 妬ましい、私じゃない誰かがお兄にあんな優しい声をかけられているなんて。

 羨ましい、お兄に笑顔で語り掛けて貰える奴らが。

 羨ましい、その笑顔も声も私に向けられていたものなのに。

 

「配信のお兄はいつも笑ってた。あんな冷たい声と表情は私だけ……」

 

 現実で最後にあった時の冷たいお兄の目線を思い出し、ゾクゾクとしたものが背筋を駆け巡る。あ、ぁぁぁ! 憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎―――。憎くて仕方がないのになぜか同時にふわふわとした感覚が頭を離れない。

 

「なんで、家族の私じゃなくて本当の名前も顔も知らない奴等にそんな優しいの!? 絶対、ぜっーーーたい、私を見せてやる! 私に釘付けにするっ!!  あの冷たい表情をぐちゃぐちゃにしてやる! 私を見上げさせてやる!」

 

 大声を上げたせいか息が苦しい。思いっきり深呼吸しようとして部屋の空気を吸ったせいで余計に息が荒くなり、内股を擦り合わせてしまう。

 

「あ、あんなクソォ! クソクソクソぉ!! そんな、そんな顔でェ! 私を―――見るなぁ! 見るなぁぁあ!! ふぎ……ッッ! ぐう゛う゛ぅぅ! お兄! お兄ッ!」

 

 布団を頭からかぶり、昂りに身を任せて服を脱いでいく。あの憎い顔を絶対に滅茶苦茶にしてやるんだ! 私は枕を思いっきり噛み締める。

 本当に両親が出かけていて良かった。

 

 




九朗「え、きも」
山猫、いまだ覚醒せず。

渡り鴉の武器紹介。

メイン武器:刀 銘:?
 黒い鞘に薄緑の装飾、金糸が巻かれた柄を持つ刀。渡り鴉が戦って強者だと認めた相手にのみ抜き放つ武器。フロムにモデルがあるともないとも言える。この一振りの製作の為に渡り鴉は現実の刀匠や塗師などの元に訪れデザインの依頼をした。渡り鴉が一番金をかけて作った最高の一振り。

サブ武器:十文字槍 銘:FUSHI斬り
 片方の鎌刃が短くなっている異形の十文字槍。モデルは勿論剣聖一心が振るう槍。渡り鴉は贅沢にもこれをふるいとして使用する。これを持った渡り鴉のHPゲージを一本削るか最初からよほどの強者として『魅せる』ことが出来れば上記の刀を抜いてもらえる。名前はただのユーモアである。


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