私の名前は、金森環。
今日からこの逢魔河高校に通うピチピチの美少女JKだ。四月の終わりに近づき桜も散り始め高校生活にも少しずつ慣れてきた私は、一つの悩みを抱えていた。
「おぅ、部活動ぅ」
そう、部活動どうしよう問題である。この逢魔河高校は原則全員加入制、部活動必須なのだが、それに伴い運動系、文化系、多種多様な部活動が存在している。全生徒一人一人にあった高校生活を保障していると入学式で校長が、言っていた気がする。
そんな部活に力を入れている高校で部活決めはこの三年間を左右すると言っても過言ではないだろう。
この美少女JKのこの私にふさわしい!そんなキラキラな部活はないものかと期待に胸を膨らませていた。
勧誘期間、仮入部期間が始まりクラスの子達と見て回ったが、運動部では眠っているはずの才能が不発に終わり、一緒に見て回った子達は、是非!うちの部活に!と一週間もたたずに決まってしまった。
「私達もう部活ここにするね!」
「えっ、ちょっ…」
焦る私に追い打ちをかけるように風邪を引いてしまい、全快した頃には、どこの部活も、勧誘時期を終え、勧誘ポスターも無く、大体の輪が出来てしまった。もう仮入部希望と言いにくい空気感がそこにはあった。
担任からも早く決めろと急かされ部活棟に当てもなく向かっている。
私には悩みがある。運動音痴でも馬鹿にされず、かと言って地味ではなく華はあるようなそんな部活は無いものかと。それでいて、今からでも馴染めて、先輩も優しくて、私でも即戦力に、次期エースにとちやほやされる、そんな部活が。
「…ないもんかねぇ」
放課後、様々な部室が並ぶ部活棟の廊下でドア越しに中を覗いていく、楽しそうに談笑していたり、そもそも誰もいなかったり。運動部は諦め文化系を見て回っているがめぼしいものが見当たらない。
「…あの輪には入れない。…誰もいない、論外。…誰か勧誘してろよな、もう終わってるけど」
一人で歩いると、とうとう廊下の端に来てしまった。
「一番端は…オカルト研究部?珍しい部活だ。……新入部員募集、まだポスター剥がしてない」
なになに、来たれオカルト研究部!新入生募集!初心者大歓迎!上下関係のないアットホームな楽しい部活!冷暖房完備!優しい先輩が手取り足取り初歩から教えます!
空いたスペースには河童と宇宙人がピースしている絵が描いてある。
なんて怪しいポスターだ。
それでもドアに貼られたポスターを上から順に読み進めていくと最後の文に目が止まった。
「目標、全国高校霊能選手権大会優勝…?なんだそれ?」
一瞬思考が止まってしまい、同じ行を反復して読み直していると、ポスターが急に動き、中から上級生らしき人物が現れた。
「やぁ!ずっとドアの前で何をしているんだい?…ん?緑の上履き…一年生だね!相談かい?とりあえず中で話をしようじゃないか!一年生ちゃん!」
この学校は学年で上履きのラインの色が違うのだ、一年は緑、二年は青、そして三年は赤、毎年ローテーション色が回るそうだ。この人の色は赤。三年の先輩のようだ。
「いえ、ただ見てただけなので「ハハッ!全然構わないよ中に入るといい!お茶を出そうじゃないか遠慮しなくて大丈夫!」…はい」
かなり強引に中に連れられた。三年の先輩はかなりの美人だ、黒髪ショートで女性にしては高い身長、胸もかなりの物を…正直エロい。がかなり怪しい警戒心をあげて対応しよう。
ちなみに私の見た目はショートボブの茶髪で背こそ低めだが、Dカップ(自称)の超絶美少女(自称)だ!
「一年生は初めて来たよ、もう噂が広まってるのかい?まぁ、そこに座って。お茶を出そう!お茶請けは……あぁ!このミニスナックゴールドをあげよう!美味しいからね食べたら話をしようか!」
「はい」
矢継ぎ早に話しかけられ、気がついたら椅子に座ってお茶とパンを食べていた私は気が付かれないように部室を見渡した。
机にパイプ椅子。小さな冷蔵庫の上に湯沸かしポット、棚いっぱいにオカルト関係の本、壁には御札のような物に、藁人形が釘で打ち込まれていた。それに一際目立つ部屋の隅に置かれている日本人形。目が合ったような気がして目を逸らすと前に座っていた先輩と目が合った。
「気になるかい?あれは呪いの人形でね。かなりの怨念が込められていたみたいで、部での練習にと引き取った物さ」
「…呪いの人形ですか」
「あぁ、それに幽霊や妖怪、UMAに超常現象!いろいろな物を取り扱ってるよ。おっと自己紹介が遅れたね、三年の佐倉千代だ、ここの部長をやってる。よろしく一年生ちゃん」
「あっ、えと、金森環です。一年です。」
「環ちゃんね、それで?どうしたんだい?環ちゃん?」
「いえ、特には」
「悩みがあって来たんじゃ無いのかい?ほら噂が流れてるだろ、金縛りから妖怪退治までなんでも解決って。まぁ妖怪退治は無理だが。ちょっとしたお祓いや失せ物探しくらいなら相談に乗っているんだ。違うかい?」
「えっと、ドアのポスターを見てただけなんです。色々書いてあるなーって」
「勧誘ポスターかい?剥がすのを忘れていたよ、もう期間は終わりだからね。…ところで君は何部なんだい?」
「いえ、まだ悩み中というか…「まだ決めて無いのかい!?」
「はい、そうなんですよ。実はかくかくしかじかで」
私は自分の身の上を全て、事細かく喋り出した。ミニスナックゴールドで上げた警戒心はかなり緩んでいたようだ。
「珍しいこの時期に決まっていないとはね。……もし、よかったらここ、オカ研に入部してみないかい?今年の、新入部員は誰も来てなくてね。私含め三年が二人、二年が二人そのうち一人は幽霊部員。来年には三人以下になってしまう。そうなるとこの五十年の伝統を誇る我がオカ研が廃部の危機に陥ってしまうのだよ。環ちゃんは見たところかなりの素質の持ち主だね。一年生でこれは逸材だ」
「ほんどですか!私にも眠っていた才能が!」
「ああすごいよ、十年に一人の才能だね。この才能を潰すのはもったいない「入ります!入部します!」…ありがとう!環ちゃん」
「それじゃあ、…この入部届けに名前とハンコを押して、明日持ってきてもらえるかな?放課後、今と同じ時間に私たちは、いるから。」
「はい!明日のこの時間ですね!了解です!」
「うん、じゃあね。また明日。」
「ありがとうございます!」
私は部室から出て帰路に向かう。思ってた以上に時間が経っていたようだ。日が少し傾き薄暗くなった道を急ぐ。これからの高校生活を想像して。
「次期エース(言ってない)」
華のあるような部活ではないが優しそうな先輩、即戦力になる十年に一度の天才である自分。願った通りの部活に入れそうだ。私は明日から頑張るぞ!
少し疲れたみたいだ体少し重たい。早く帰って入部届けの準備だ。