僕のヒーローアカデミア ~The Cinder of Rubicon~   作:柴猫

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調子に乗ってまた新しいのを書いてしまいました。本当に完結させるのが下手な人間ですね、反省しろ!


0.プロローグ

 いつか聞いた花火のようだと、そう感じた。

 

 

 

 アーキバスが直してしまったバスキュラープラントを、恒星間入植船であるザイレムが再び元に戻す。火薬庫の役割としては、少し違和感を覚えてしまう。正しく言うなら、火薬庫に火薬庫が突っ込む、だろうか。

 

 出来るならカーラに、チャティにも聞いてほしかった。きっと彼らは笑ってくれただろう。いや、チャティはどうだろうな。

 ああ、どうしてこんな面白いことを、もっと早く口に出せなかったのだろうか。

 

 

 あの子を置いていくように、逃げるようにブースターを吹かして、でもどうしても前に進みたくなくて。

 貴重なENを使ってまで反転して、初めて直視したルビコンという丸い星の全容。

 それが真っ赤に、成層圏すら乗り越えて宇宙を、イチゴミルクをぶちまけたように拡がっていく様に、もう背を向けられそうになかった。

 

 

 

 

 『…621 仕事は終わったようだな』

 

 声が聞こえる。

 

 『お前は自ら選び、俺たちの背負った遺産を清算した』

 

 あの時見捨てた、温もりを残した手触りが。

 

 『すまない そして感謝しよう』

 

 飛び上がるほど嬉しいはずなのに。

 猟犬なら、尻尾を振って喜ぶべき言葉なのに。

 

 『621』

 

 私の瞼は少しも震えなかった。

 

 『お前を縛るものはもう何もない』

 

 違うよ。

 違うんだ、ハンドラー。

 

 『これからのお前の選択が…』

 

 そうじゃないんだ。

 

 

 

 『お前自身の可能性を広げることを祈る』

 

 私が、ほんとうに、ほしかった―――

 

 

 いってほしかった、ことばは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ねぇ、かっちゃん!――

 ――んだ!デク!つかどこまで付いてくんだお前!――

 

 からだが、重い。

 あたまは、もっと鈍い。

 

 ――あ、あそこに…――

 ――はぁ?はっきりしゃべれや!カメムシだってもっとでけぇ声出るぞ!――

 ――かっちゃんカメムシの声聞いたことあるの!?――

 ――なわけねぇだろ!そんな目で見んな!――

 

 指先の感覚がぼやけてる、ように感じる。

 鼓動も、心臓をはるか遠くに置いていったように微かだ。

 

 ――さっきからごちゃごちゃうるせぇんだよ死ね!――

 今死ね!生まれてこなければよかったものを!

 意識が一気に起き上がる。

 何度も反復したように、私の意思など置いてきぼりにして。

 

 ――さ、さっき。ひ、人の足が見えて――

 ――はぁー?さてはお前この秘密基地の場所バラしたんだな!?――

 ――い、いたいよかっひゃん!――

 ――うるせー!だからお前学校でもモテねーんだぞ!――

 ――いいもん!オールマイトの話聞いてくれない子なんて!――

 ――限度があんだろが!つかあんだけ舌滑らせられんなら普段からビシッと言え!もじもじもじもじしやがって!――

 

 距離およそ10メートル、いや8メートルか。

 声の反響から察して傾斜20度ほど下にいる。いや、こちらに上がってきているのか。

 

 ――か、かっちゃんやめようよぉ。幽霊かもしれないよ――

 ――うるせー、なら下にいろよ。お前みたいなトロい奴いても邪魔だろ――

 ――で、でもほんとに人なら、困ってるかもしれないし――

 ――んなとこに人なんて来るかよ。いてもホームレスだ、〝俺の爆破〟でぶっとばしてやる!」

 

 随分と物騒だな、爆殺なんて。

 でももう、体を起こそうとはしなかった。汚くても花火になれるなら、それが彼等へ応報の代わりにでもなるなら、それも悪くない。

 

 

 「おら起きろやクソホームレス!このばくごーさまの秘密基地に土足で上がりこんだこと、後悔させてや……」

 

 予想以上の爆音に、瞼の隙間から外の様子を覗いた。

 

 驚くほど綺麗な木の上に横たわる私。その目の前にいるのは、年端もいかぬ子ども。五才児だろうか、なぜか掌をこちらに向けたまま止まっている。優しい髪の色をしてると、ふとそう思った。

 はしごを登ってきた方の子は、濃い緑色のぼさぼさ頭の子だった。今にも泣きそうな目をしていて、戸惑った。私の知り合いに、そんな大っぴらに感情をひけらかす人はいなかったから。

 

 「え!だ、大丈夫ですか!!」

 

 私を見るなりその子は、あろうことか脇目も振らずに駆け寄ってきた。今にも転びそうなおぼつかない足取りで、でも確かに私に走って向かってきた。「おい馬鹿出久!」優しい髪の子の制止も振り切って、振り切られたその子は理解できないものを見る、見慣れた瞳の色をその子に向けていた。

 

 「あっ」

 

 気の抜けたような声と共に、その子が足をもつれさせた。倒れ込むその先にはちょうど、備え付けられた小さな椅子が。このままだと少年は顔をぶつけるだろう。削りが甘い、椅子の角に。

 

 (ああ、綺麗な瞳が()()()()()()

 

 倒れ伏した己の体、もうボロボロになったパイロットスーツを身に纏うそれを、滑らかに起こす。既に筋細動補助装置など動かないはずなのに、常人が持っている、何の改造もされていない体を動かすような、忘れていたはずの感覚だった。

 

 倒れようとするその子の前に、抱きしめるような形で受け止める。銃を撃つのとは正反対の確かな重さを感じた。

 ガンッと鈍い音が響き、首筋に痛みを感じる。はっとしたようにその子が顔をあげ、自然と私と目が合う。

 

 一瞬、微妙な静寂。

 

 やがて状況を理解したその子が、パクパクと口を開け閉めする。息苦しいのだろうか、気道は確保しているつもりだが、子どものそれは少し違っただろうか。

 

 「お、おいお前!何してやがる!」

 

 さっきの子どもが叫んでくる。また掌をこっちに向けながら、だ。盾のつもりだろうか。

 

 「あ、あの……え、えっとお、お姉さん…?」

 

 腕の中からそう言ってくるその子が腕をどけようとしているのを見て、絡めていた腕を外して立たせた。

 

 「――怪我は?」

 「あう…えっと、そ、その、だいじょう、ぶです」

 「そう」

 

 また泣きそうな顔に戻った少年の横から、あの子がおしのけて来る。

 

 「お前誰だ!俺の秘密基地で何してやがる!答えによってはぶ、ぶっ飛ばすぞ!?」

 

 これはまた、年の割に随分豪気な物言いである。よほど屈強な軍人の子でもあるのだろうか。

 

 「……不時着地?」

 「はぁ~~!?」

 「か、かっちゃん落ち着こうよ。多分だけど、悪い人じゃないと思う」

 

 今更ながら、自分の置かれた状況に違和感を感じている。なんでこんなところにいるのだろう。

 夢、にしてはこの少年の生々しい体温が否定する。かといって天国と決めつけるには、こう、現実感に満ち過ぎている感じがする。そもそも私が天国に行けるわけもなし。

 いや、仮にここが現実だとして、なぜ私の体はこんなに動けている?ある程度動かせるような軽い手術は再教育センターでやらされたとはいえ、普通の人間レベルまでは達していなかったはず。

 

 ルビコンの最後の記憶は、熾した火に吞まれたところで途切れている。そこははっきり覚えている。火傷一つも負っていない私の今の体は――

 

 「てめーの感想は聞いてねぇんだよデク!こいつなんか〝個性〟も気持ち悪いし、ヴィランじゃねーのか!?」

 (〝個性〟……?)

 

 考えに耽っている最中、ツンツンした髪の子の発言に違和感を覚える。個性が気持ち悪い、とはどういう表現だろうか。目の前の子の物言いに少年も頷きがたいようにしているが、疑問には呈していない。

 頭が痒くなって、後頭部を掻く。あれと思い、首筋から先を辿りその正体を手中に乗せる。

 

 「……あ」

 

 光を反射しない、灰色の人工骨格。延髄から枝分かれする様に伸ばされ、脊椎を模したそれは、旧世代型強化人間がACへ接続するための物理デバイスだ。

 

 

 『621。機体との同調はどうだ』

 『接続不良……長期保存による劣化か。少し待て、俺が直そう』

 『痛みや違和感はないか。少しでも異常があれば報告しろ』

 

 買われて始めての頃。ルビコン突入の前夜だったか。突貫の作戦であったにも関わらず、あの時の手つきは妙に遅く、そして心地よかった。むしろ私の方がいつも早かったから。

 

 

 「――お姉さん!」

 「?なに」

 

 思い出に耽っていた時、少年の声に意識が現実に戻る。

 ケンカでもしていたのか、その子は涙を流しながら私に聞いて来た。もう一人の方は、とても不満そうだ。

 

 「名前!」

 「……なまえ?」

 「うん!お姉さんの名前!あだ名でも、呼ばれてる名前でも、なんでもいいから教えて!」

 

 後ろの子が「言う訳ねーよ。ヴィランが身バレなんてするかよ」と呟いていたのが聞こえた。

 名前。名前、か。どう言えばいいのだろう。こんな子どもたちに。

 

 普通なら、もっと考えてから口を開くべきなのに。脳が寝ぼけているのか、口をついてしまった。

 

 「レイヴン」

 「れい、ぶん?」

 

 赤子のように反芻するその子の後ろから、馬鹿にしたような声がかかる。

 

 「そりゃワタリガラスのべつめーだろ。本名言えっつってんだよほ・ん・みょ・う!」

 「……たしか、アリア」

 

 英語……?という響きが聞こえた。おかしいな、世界統一言語が作られたのは、惑星開拓より幾分前のはず。英語なんて、もうまともな話者はいないはずだが。

 

 「お姉さん、大丈夫、なの?服、ボロボロで……っ!」

 「問題ないよ。どうせ消耗品だし」

 

 なぜか顔を背けたその子。その様子に呆れる隣の子。心なしか私から視線を逸らしているように感じる。

 

 「もういいよ。ババァかケーサツに言って、いやヒーローにでも来てもらえば――」

 

 警察?もしかするとここは地球政府の管轄なのだろうか。封鎖機構の本拠地だとしたら、私の悪行も知っているはずだろう。

 

 (まぁ、もういいや)

 

 やるべきことは、託された使命は確かに果たしたのだ。多くの犠牲を払い、友達を皆殺しして。

 不思議な気分だ。アーキバスの再教育センターに入った時は焼き切れそうなほどに頭と体を使って脱出しようともがいたのに、今はこれっぽっちもそんな気分にならない。

 いっそ清々しい気分だ。何もかもが透明で、自分自身さえ透き通るような、そんな感覚でもある。このまま溶けてしまいそうな、初めてなのに懐かしい感覚に襲われている。

 

 ……もし。

 

 今、私がこの子に手をかければ。

 

 その時こそ、本当に終われるかもしれない。

 

 殺すことしか出来ない犬が、人の子どもに殺される。

 ああ。それはとても素敵な物語に見えて―――

 

 

 

 

 

 

 

 「もうだいじょうぶ!!」

 

 緑色の少年が、私の前に居た。来ていた小さなTシャツを、私に預けて。

 泣きそうな眼は変わらないのに。私を怖がっているのは、見て取れるのに。

 

 「ぼくがきた!!」

 

 その子は笑って、こんな私に、また温もりをくれた。

 

 『お前に意味を与えてやる』

 

 もう来ないと思って居たのに。

 あんないい人が、まだ、こんな残酷な世界にいるだなんて。

 そんな人に、子に、また会えるなんて。

 

 「……っ!」

 

 私は、ほんとうに。

 

 

 分不相応なくらいな幸せ者だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――

 

 「ん……」

 

 瞼を開き、目覚める。懐かしい夢を見ていた、そんな気分に浸っていた。

 

 高層ビルの窓の外には、都市の光が不細工な万華鏡のように乱反射して、獣を追い払おうと必死に抵抗しているように見えた。あそこでライトアップされたヒーローは、いやでも目立って仕方ないだろう。

 

 

 「ヒーローショーを見るには、ここは特等席だと思わない?あの子も連れてきたかったなぁ」

 

 返す言葉などないと分かっているのに、そう口に出してしまう。難儀な癖だ、手術後のウォルターを驚かせてしまうくらい、私はおしゃべりだったのだ。

 人と喋るのに、どうにもクセというか。戦いに身を置くものとしては悪癖だが、味方の定まらない独立傭兵だからこそ、こうして口が軽いのかもしれない。最期の言葉をわざわざ届けさせるより、相手にでも刻んだ方が可能性は高いから。

 

 「不思議なものだよね」

 

 私の口はまだ閉じたがらない。

 

 「超常黎明期、人間だったものたちが個性に振り回される中で、アメリカを発端にヒーローが生まれ、世界に秩序をもたらしたなんて。まさか現実にヒーローが出てきちゃうなんてね、しかも絵に描いたようなそれが、さ。英雄なんて言葉、一生形容詞としてしか使うことはないと思ってたけど。知ってる?私の故郷、ヒーローもいなければ個性も無いんだよ?毎日色んな個性の人に会うから、これが結構新鮮で楽しいんだよね。

 あ、私にヒーローのこと教えてくれた子たちがいるんだけどね。その子たちがこの前ニュースに出てたんだよ?凄いよね!まだヒーローを目指してるのかな、いやきっと目指してるよ。すごいという言葉じゃ説明つかないくらいヒーローが好きなんだ。私もすっかりヒーローオタクに染められちゃったもんだよー」

 

 

 「ああ、でも。貴方たちにとってはウンザリしてたまらないんだってね」

 

 振り向いた室内には、おぞましいほどの血痕と死体が朝の港に並べられたマグロのように転がっていた。

 

 焦げた胸の穴から血を出し切った男。脳天を撃ちぬかれ厚化粧を無様な死に顔と赤い水滴で厚塗りした女。全身をプロテクターに包みながら首から上がない死体。

 

 「個性権益独占禁止団体、だっけ。個性による利益は全ての人類が平等に受けるべきとは、まぁ。複雑なお題目掲げているのに世渡りが上手だよ。ヒーローとヴィラン両方にコネがあるなんて。私そういうの苦手だから、素直に尊敬しちゃうなぁ。無個性だからって自分らを大きく見せようとしなくていいのに」

 

 死体の山に向かって、まるで偶然スーパーで出会ったご近所さんと話すように、割れたビルから身を投げ出し別れた。

 

 纏っていた装甲から火が噴き出し、空を駆けるように羽ばたいていく。ゴツゴツとした兵器に乗っているのは、白髪を風にたなびかせた、紅い瞳の女性だった。

 

 

 

 

 世界総人口の約8割が、〝個性〟という超能力を保持した、超人社会。

 近年その影、裏社会で活躍する存在がいた。

 

 高い報酬金を要求しながら、未知の兵器技術と圧倒的な戦闘力でどんな依頼も完遂する謎の傭兵。

 どこにも所属せず、ただ自分の基準でのみ依頼を選定する変わり者。

 

 彼女の名乗りとそれを証明するような強さに、知る者はこう呼ぶ。

 

 

 独立傭兵 レイヴン、と。

 

 「久しぶりに会いたくなっちゃったな。出久も、かっちゃんにも」

 

 

 これは、彼女が、主を失った猟犬の、描かれるはずのない物語(EXストーリー)

 

 灼けた空の遥か彼方で、彼女がもう一度羽ばたく、そんな後日譚だ。

 

 

 

 

 




後書き劇場;ル⤴ビコンに来なさい
*フィリピン訛りに変換してから読むことをお勧めします。

Q、無個性でいじめられてます。
おおル⤴ビコンに来なさい。ルビコニアンはあんま強化人間いないしやってる奴とやらない奴とで差別も無いよでもたまにえぐい才能持ってる奴がいるから戦場で会ったら爆散しないよう尻尾巻いてトンズラーしなよ余燼にされるよ。
Q、くっついてくる幼馴染がウザイ。
おおル⤴ビコンに来なさい。ルビコンはクソ田舎だし星外からの観光客とか全然おらんよ一人で過ごすのピタリよ食い物はほぼ虫だけだからそこだけ注意しなよあと散歩してるとたまにドーザーに身ぐるみ剝がされたり封鎖機構のクソデカヘリにどでかい風穴開けられるねせいぜい注意するよ。
Q、憧れの人に会いたいです!
おおル⤴ビコンに来なさい。こないだルビコンに木星戦争の英雄やてきたよ。めちゃ凄い人だし割と人望厚いよ運良ければサインくれるよでも隊の雰囲気柄悪いし三番手に詐欺られるあと片方の方にもアイランド・フォーの戦闘狂いるよ戦いたいならそっちかちこむといいよ負けたら頭ばらされて人体改造されるけど。

封鎖されてるし年中雪まみれだしなんかたまに地図が書き換わるし野生のパンジャンドラムとかいるけどそれでもル⤴ビコンに来なさい!

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