Sol-Orbitraにおける技術革新と人類文明の変遷   作:Hnz

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第1章 N.O.S. 0年以前の太陽系

1.1 第3次世界大戦の開始と終焉

 旧西暦2278年9月26日,中国-インド間において軍事衝突が発生.翌月5日にはロシア連邦とNATO間での交戦が確認され,翌2279年2月には中東地域における大規模内紛が勃発した.さらに中南米,アフリカ諸国,各地における武力衝突及びアメリカによる軍事介入等が連鎖的に発生し,世界規模での戦争状態へと発展した.後にこれら一連の武力衝突は「第三次世界大戦」と総称されることとなる.

 その後の詳細な戦史及び各地域における軍事行動については,多国籍連合軍旧西暦戦史記録アーカイブを参照されたし[1].

 そしてこの戦争は,人類史上最悪の結末を迎えることとなった.

 2319年3月4日,ロシア連邦より発射された核弾頭搭載大陸間弾道ミサイルが,米ペンシルベニア州へ着弾.当初ワシントンD.C.へ向け発射された当該弾頭は,米軍による誘導制御系への侵入工作により,着弾軌道を僅かに変更されていた.

 しかし,この一撃は世界秩序に決定的な崩壊を齎した.

 この出来事を皮切りに核攻撃は事実上“解禁”され,各国による報復核攻撃が連鎖的に発生.ロシア連邦は国土の約6割を居住不能区域として喪失した.また,アフリカ内紛及び中東紛争の余波はヨーロッパ諸国へ波及し,NATO及び西側勢力の軍事介入を誘発.南アフリカ,シリアをはじめとする複数国家は,国家機能そのものを消失した.

 第三次世界大戦による人的被害は約1億人.加えて核汚染,経済圏崩壊,大規模食糧危機等により,人類文明は存続そのものを脅かされる段階へ至った.残された人類は新たに共同体を結成.それまで東側と言われた国々は地球連邦(通称“連邦”)を,西側勢力は多国籍連合(通称“連合”)を結成.

 そして,人類に残された道は宇宙への進出のみであった.

 

 

1.2 Meta Physics Systems Laboratory

 旧西暦2100年代に発生した小型人工衛星の“打ち上げ競争”は,地球周辺軌道に大量のスペースデブリを残存させる結果となった.これらは第三次世界大戦後,人類が宇宙進出を再開する上で深刻な障壁となっていた.

 これを受け,Atlas Ad Astra社(通称AAA社,3A社)及び複数国の研究者らによる共同研究機関設立計画が始動.後のMeta Physics Systems Laboratory(以下MPSL)が設立されることとなる.

 MPSLは旧西暦2338年10月10日に設立され,当初はスペースデブリ除去,軌道上及び地球外居住施設の設計,並びに宇宙作業機械の研究開発等,宇宙工業分野を中心とした研究機関として機能していた[2].

 2340年2月にはデブリ除去用無人機”WORM”の試作機が完成し,AAA社のロケットとともに打ち上げられ,約2か月間の試験運用を経て,同年4月に太平洋上にて回収された.この際,WORMとは別にデブリの詳細なマッピングのための小型衛星が2機打ち上げられている[3].

 3年後の2343年,軌道上デブリの広域マップが完成.翌年2344年,およそ100機のWORM-Mk.IIIはAAA社の宇宙用大規模積載艦へと搭載され,宇宙へと旅立った.

 しかしながら,人類の宇宙活動に支障をきたさない程度にまでデブリを減少させるのは困難を極めた.

 WORMシリーズは,文字通り芋虫を参考として設計された細長い機体構造を持つ無人機である.デブリへの衝突を回避しやすいように採用された細い機体の先には粉砕用のドリルが備え付けられていた.問題は機体後部の推進用エンジン部にあった.WORMが粉砕したデブリの“粉末”がエンジン部へ吸い込まれることによるエンジン不調が多発したのである.

 MPSLは当初,推進器周辺への防塵機構追加による対応を試みたが,微細デブリ粒子による損耗速度は予測を遥かに上回っていた.

 さらに深刻であったのは,WORMシリーズによるデブリ粉砕そのものが,新たな微粒子デブリ群を発生させていた点である.これらは既存の軌道観測網では追跡困難であり,結果として低軌道環境をより危険なものへ変化させつつあった.

 これらは当然の帰結として考えられた問題点であったが,しかし現実問題として粉砕することを優先させた理由がある.

 MPSLの観測で明らかとなったのは,問題となっていたデブリの多くが,旧時代の大型通信衛星,放棄された宇宙ステーション残骸,並びに推進モジュール等で構成されており,当時の技術による軌道変更及び回収が非現実的だということだった.このためMPSL及び国連は,大型デブリを細分化し,大気圏再突入を促進する方式を採用せざるを得なかった[4].

 しかしながら前述した問題を受け,MPSL内部では従来の宇宙機工学に代わる新たな理論研究の機運が高まり,後に“Meta Physics”理論群[5]と総称される研究を生み出すこととなる.MP理論群が後の宇宙開発技術の基礎となったことは言うまでもない.

 

 

References

[1] Multinational Allied Forces Old Era Archive, CE2245-WAR-3.

[2] K. George, “The History of Meta Physics Systems Laboratory”, Orbitra Academic Press, Colony-03, Ludverg, 2452.

[3] U. Aoki et al., “WORM-Mk.I Atmospheric Recovery Test”, AAA-Archive, AAA-TR-2340-011.

[4] United Nations, “Policy for Large-Scale Orbital Debris Reduction”, UNORC-44A, 2343.

[5] M. Elhart et al., “Foundational Concepts of Meta Physics”, MPSL Archive 1, 120-194 (2348).

 

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