Sol-Orbitraにおける技術革新と人類文明の変遷 作:Hnz
6-1. TF専用モーションライブラリ(TF-PPM-Lib)の出現
近年,TF Simの世界では機体の動きを予めプログラムしておき,任意のタイミングでパイロットが発火する「Pre-Programmed Motion System : PPM System [1]」が正式に「一定のACS命令数以下」での制限付きで認められ,その使用が拡大している.
PPM Systemのメリットは回避や突撃,あるいは基本的な歩きや飛翔などの汎用性の高い基本機動をマクロのようにボタン一つで呼び出せるところにある.逆にデメリットは,操作が複雑化しやすく,誤作動の危険があるという点があげられる.
現在は有志によってPPM専用ライブラリ(TF-PPM-Lib)[2]が公開されており,誰しもが使うことのできる状況となっている.また,開発ツールキットを用いれば,配布されているPPMを基に自分好みにカスタマイズされたPPMを開発することも可能である.
断っておくが,これはあくまでTF Simの世界の話であり,現実世界で実現しようとすれば機体の急速な動作からくるGに耐えられず,パイロットの肉体は文字通り“潰れてしまう”だろうことは容易に想像がつく.
しかしながら,歩きなどの機体の変動が少なく,かつ失敗時のリスクが少ない動作に関しての自動化はここ数年で検討され始めているようである.
6-2. 核融合炉の更なる小型化
ACSを用いた超高速磁場制御技術の発展により,従来では困難であった高密度プラズマの長時間安定化が可能となったことで,核融合炉は更なる小型化を実現した.
第一世代核融合炉はTFの心臓部に搭載可能なほど小型化されたシステムであったが,TF自体が巨大人型戦術兵器であるため,“小型”と言ってもその大きさは2ドア車程度に達していた.
その後の更なる小型化により,核融合炉はTFや大型発電施設以外への応用も現実的なものとなった.近年では宇宙探査用ポッド,深海探査機,電車,軍用車両などへの搭載も始まっている.
N.O.S. 119年(旧西暦2492年)現在では第四世代核融合システム[3]が発表されており,そのサイズは第一世代と比較して約4分の1,アップライトピアノをやや上回る程度にまで縮小されている.また,第一世代以降の全世代においては,反応炉本体の縮小と燃料利用効率の向上が進められ,安全性を確保しつつも,発電性能は第一世代を僅かに上回る水準を実現している.
なお,第一世代TFおよび第一世代核融合炉は,現在ではColony-01首都Uniarcの世界歴史博物館に保存・展示されている.
6-3. コロニーの完成
第三次世界大戦終結後,デブリ問題を乗り越えた人類は N.O.S. 46年(旧西暦2419年),ついに最初の軌道コロニー建造の悲願を果たす.
旧西暦2340年からデブリの問題に取り組んでいたMPSLは,ACS開発の裏側で着実にその歩みを進めてきた.WORM-Mk.VIの活躍により宇宙空間での行動が容易となったMPSL及びAAA社は,手始めに月に小さな居住区を建造することを目的とし,N.O.S. 2年(旧西暦2375年)「MOON LIGHT(月光)計画」を始動させた[4].この際,MPSLとAAA社のコロニー建造部署がSpace Ecumene社(通称SE社)を結成し,独立した.以降コロニーの建造はSE社が引き継いで続行していく.
SE社は月面調査,測量を年単位で繰り返し,万全の準備を経てN.O.S. 8年(旧西暦2381年)に作業員たちを月面へ輸送,コロニーの建造に着手した.作業員の健康への影響を加味し,三か月~半年ごとに人員を入れ替えつつ作業は継続して行われ,N.O.S. 10年(旧西暦2383年)には人類史上初の地球外居住区を建造することに成功した.居住空間内では炊事や風呂,睡眠などの基本的な生活活動に加え,小規模な植物栽培が可能となっていた.この時の様子はSE社のアーカイブに今でも動画が残っており,閲覧することが可能である[5].
そして,材料・シミュレーション革命を迎え,核融合炉が実現したN.O.S. 16年(旧西暦2389年),SE社は満を持して軌道上コロニー建造計画(The Creation計画)へと着手.しかし,宇宙空間上での人間による作業時間の上限や次々に浮上する諸問題──ここでは長すぎるため割愛する.詳細はSE社開発史を参照されたい[6]──を抱え,N.O.S. 23年(旧西暦2396年)にSE社は一度計画を断念する決断を下す.
計画失敗の最大の問題点として,「コロニーは想像以上に人間にとって大きすぎる建造物だった」という点があげられる.地球上とは全く勝手の異なる,大地が無い空間において居住区を文字通りゼロから作り上げるというのは,あまりにも難易度が高く,上述した諸問題の解決もままならなかった.
SE社はその後,主に月面コロニーの拡張をこなしながら宇宙空間での作業ノウハウを蓄積していった.
しかし19年後のN.O.S. 42年(旧西暦2415年),突如として発表されたTFにより計画に一筋の光が差した.第5章 第1節で述べた通り,TFは宇宙空間での運用が想定された,しかも“人型”の巨大な機械だった.TFは最大の問題点であったその巨大性への打開策となる可能性を大いに秘めていた.
SE社員たちは色めきだった.すぐさまThe Creation計画を再始動させたSE社はまさに怒涛という勢いで計画を前進させていく.TFを宇宙空間での土木作業用として“魔改造”した通称“SE-Custom”と呼ばれた機体を駆使し,TF一機でおおよそ人間100人程度の作業量をこなしていった.月面居住区建造で培われたノウハウもここで存分に活かされた.
半年後にはフレームが,そのさらに半年後には外殻が出来上がり,そして上述の通りN.O.S. 46年には人類史上初の軌道上コロニー“Colony-01”が完成した.
現在ではColony-05まで建造が完了し,人類は着実に宇宙へと居住区を伸ばし続けている.
6-4. ACS-ICの進歩とNeural Link-TACOS(NL-TACOS)構想
他章では明記をしていなかったが,実はACS-ICも進歩を続けている.ただし,Gen3までは大幅な命令系統やアーキテクチャの変更などは行われておらず,主にコアやキャッシュの最適化が進み,消費電力の改善,発熱特性の改善が進んでいた.ACS-IC Gen3はN.O.S. 31年(旧西暦2404年)に発表され[7],第一世代TF(Izanami,TFA-012)に搭載された.
N.O.S. 77年(旧西暦2450年)にはGen4が発表され[8],ここでは一部アーキテクチャの変更がアナウンスされた.主に外部デバイスとの連携を強化するためのマルチプルなI/Oへの対応が目的のアップデートであったが,とある関係筋によるとこの時点で既に人間の神経系とTACOSの連携を視野に入れたNeural Link-TACOS(NL-TACOS)構想[9]は実現へ向けて着実に進行していたという.
NL-TACOSは先述の通り,人間の神経系とTACOSを連携させることでTFにより生身の人間のような操作性を与えることを目的としている.これは戦闘用途のみならず,コロニー建造にも投入されていたTFの更なる操作性向上を目的とした計画であった.一方で,分裂・肥大化を続ける地球連邦への軍事的備えとして推進されていた側面も存在したとされる.
References
[1] “TF-PPM-Lib Surpasses 10 Million Registered Motion Patterns”, XYZ News, April 17th, 2488.
[2] TF-PPM-Lib Archive Mirror, mirror://tf_ppmlib.archive/lib/
[3] “Fourth Generation Compact Fusion Systems Enter Civilian Infrastructure”, XYZ Science News, September 3rd, 2491.
[4] Space Ecumene Corporation, “MOON LIGHT Project Overview”, SE Archive 1, 2375.
[5] Space Ecumene Corporation, “The Creation Project : Orbital Habitat Construction Initiative”, SE Archive 12, 2419.
[6] C. Kress, “History of The Creation Project”, Space Ecumene Historical Publications, Colony-03, Ludverg, 2480.
[7] “FFE Announces ACS-IC Gen3 with Passive Thermal Architecture”, XYZ Science News, July 14th, 2404.
[8] “Q1tech Reveals ACS-IC Gen4 Multiplexed Interface Design”, XYZ Science News, November 9th, 2450.
[9] Multinational Allied Forces, “Retrospective Analysis of Neural Link Tactical Operating Systems”, MAF Historical Review Archive, 2486.