Sol-Orbitraにおける技術革新と人類文明の変遷 作:Hnz
スレッド内の複数ユーザーによる検証の結果,配布されていたPDF内部に未参照オブジェクトが存在することが確認された.
当初,この「隠しデータ」は悪質なジョークデータであると考えられていた.
しかし,GhostLayer.net上にアップロードされた解析ログおよび復元データ群は,投稿から約11分後に一斉削除された.また,復元データを投稿したユーザーアカウントには例外なくIP-BAN処置が実施された.
この時点で,ユーザー間では「これは洒落では済まない」という認識が広がった.
後に「第7章」と呼ばれるその内容は,本資料全体の評価を大きく変えることとなった.
7-1. 実験
N.O.S. 27年(旧西暦2400年)には既にAMO(Artificial Multicellular Organisms)計画が始動していた.この計画は後述するGOSPEL計画の一部だった.
生命の創造,それは古くから禁忌とされてきた領域だ.
しかし実現してしまった.計画は難航していたようだが,N.O.S. 75年(旧西暦2448年)に連邦の研究者共は残されたロシア連邦北部の研究所──もう存在しないが──で簡易な多細胞生物の創造を成功させた.DNAの設計から始まり,培養,観察すべての工程において安定した“生産”手段を確立した奴らは,次の計画に移る.
7-2. 加工
俺はこれを何と呼称するのかを知らないが,これは古くから──恐らくN.O.S.歴以前から──あった研究をトレース,改善してから完成したらしい.
ヒトの遺伝子を意図的に“書き換えて”成長をさせ,目的の能力を得る.
奴らにとって,人道や倫理なんてものは便所の落書き以下のものらしい.
そこで一体何人の赤ん坊が“処理”されたのかは知らないが,俺たちが研究所に破滅を教えてやった時には,本棟からは少し離れた施設に存在した25mプールの約半分の体積は,ナニか──あえて明言はしないが──で埋まっていたまま放置されていた.
俺は研究所の研究データを見て納得した.奴らはTFのための超人を欲したのだろう.連合に後れを取っていた焦りがそうさせたのか,何か別の理由が存在したのか,今となっては闇の中だが.
研究データや報告書を参考に,俺たちはGenetic Designed - Adjusted Human(GD-AH)と呼んでいる.
俺が研究所内を探索していた時,「手術室」を見かけた.すぐにピンときた.俺たちの同類がここにいたのだと.
ゴミ捨て場に黒い袋に包まれて無造作に捨てられていた人工筋肉に強化外骨格,神経強化剤といった残骸を見つけた.やはりと思った.奴らはゲノムを編集するに飽き足らず,成長した人間に対して“改造”を施していたようだ.
GD-AHの完成体は13人いたらしい.当時は全員死んだものと思っていた.俺たちの兄弟姉妹でさえ何人も死んだからだ.
7-3. 生産
N.O.S. 96年(旧西暦2469年),GD-AHは成長を待ち,手術によって強化する必要があったが,それすらも必要がなくなったようだ.奴らはゼロから人間を作り上げた.俺たちを.
「望む能力を持つ人間を,自由自在にデザインして作り上げ,TFパイロットに仕立て上げることで連合軍を数と質で抹消する」 これがGOSPEL計画の目的だった.
奴らは俺たちを「人類文明が生み出した傑作」と称した.
奴らの失敗は,俺たちを「馬鹿」としてデザインしなかったことだ.
最初から俺たちを利用して何か企んでいることは明らかだった.俺たちは意識を獲得して一週間で反乱を企てた.
生身で俺たちに勝る人間はいない.
その後,俺たちを生産した研究所がどうなったかは察してくれ.
被検体の数は14で止まった.いや,俺たちが止めた.
生き残ったのは6人.No. 05, 06, 08, 10, 13, 14だけ.
No. 01-04は安定せずに発狂.その後処理された.
No. 07は原因不明の突然死
No. 09, 11, 12は訓練中の事故死
生き残った俺たちは「エリート」として分類されていた.
俺たちは研究データの一部を持ち出して連合側へ亡命した.残りのデータは原子一つも残さずに消滅させた.亡命の過程でDr. Eiche,A. Krux氏,S. Merme氏と出会った.
三人に協力してもらってGD-AHの生き残りを探してもらった.GD-AHの完成体は全員が生き残っていた.驚くべきことだが,やはりGOSPELよりも圧倒的に安定した人間をベースとしているからだと考えられる.途中で崩壊することがない.
結局,俺たちは人類社会に馴染むことはなかった.
そしてN.O.S. 104年(旧西暦2477年)に生き残りでO.S.E.L.O.T.を結成.
3年かけて残党を処理した.
最後に,俺たちは名前を付けた.最初,俺たちは自分の事をGOSPEL+数字で認識していた.
GD-AH完成体も同様に,GD-AH+数字だった.
馴染みが無いかもしれないが,記号と数字でしか呼び合えないのは不便だ.
先に旅立った兄弟姉妹にも敬意をこめて名前を贈った.どうか安らかに眠っていてくれ.
以下に俺たちの名前を記す.
完成体以外の夥しい数の犠牲があったことも,忘れてはならない.
GD-AH-01 : Roger Oskur
GD-AH-02 : Xyle Toleman
GD-AH-03 : Ethan Kizar
GD-AH-04 : Michael Potzka
GD-AH-05 : Lizia Meyier
GD-AH-06 : Fiche Collin
GD-AH-07 : Hanna Izar
GD-AH-08 : Zhang Qi
GD-AH-09 : Gabriel Wolff
GD-AH-10 : Sarus af Djeng
GD-AH-11 : Ritchie Vandar
GD-AH-12 : Yiltz Nilkov
GD-AH-13 : Fillip Jollic
GOSPEL-01 : Kate Ufie
GOSPEL-02 : Claudia Roa
GOSPEL-03 : Muzz Bennet
GOSPEL-04 : Miko Flemm
GOSPEL-05 : Chris Rove
GOSPEL-06 : Arthur Waynn
GOSPEL-07 : Rem Chaine
GOSPEL-08 : Icht Fedger
GOSPEL-09 : Zand Overl
GOSPEL-10 : Ada Ell
GOSPEL-11 : Huan Yi
GOSPEL-12 : Jeyd Mackeny
GOSPEL-13 : Gillie Asheburn
GOSPEL-14 : Billy Bell
よくある世界観かもしれませんが、私はそれに明確な歴史と理由を付けてみたかったのです。