この世界に神と呼ばれる奴はいない   作:黄泉路

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第二章 禍福は糾える縄の如し
第1話


 

 

 

 

 

『前を向かなければいけない』

 

「何故?」

 

『事実から目を反らしてはいけない』

 

「どうして?」

 

『思い出せ』

 

「何を?」

 

『お前の過去を……』

 

「過去?」

 

『血に染まった記憶を……』

 

「…………」

 

『人間を兵器化による、唯一の生き残り。』

 

 

 

 

 

 

『兵器No.───』

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◇◆◇

 

 

 

 

 

 ……夢、か………………それにしても何か大事な事を言われた感じがするのだがなんだっただろうか?

 さっきの事を思い出そうとするがなかなか思い出せず。そこでハッとする。

 …………俺、生きてたのか。

 そこで漸く気づき目を開ける。

 まずは知らない天井、っというか俺は今何処にいるんだ?えっと確かどっかの研究所から………どうしたんだっけ?

 記憶が曖昧な事に疑問に思いつつ俺は体を起こし辺りを見渡す。辺りには工具やらが散らばっているから研究室が妥当なところだろう。

 さて、この一室には誰もいないようだが、ちょっと歩いてみるか。

 そう思って俺が寝ていた寝台から降りる。

 

「ぅ……」

 

 突然体の力が抜けその場に膝をついてしまう。それと同時に目眩もしてきた。というか頭も痛い。

 

「あー!!ちょっとダメだよー!」

 

 そんな声が聞こえたと思ったら突然浮遊感に晒され気づいた時には寝台の上で寝かされていた。

 

「もっしもーし?聞こえてるー?」

 

 俺は首だけを動かし声の方を見る。

 そこにいたのは稀代の天災様、篠ノ之束(しのののたばね)が何時になく不安そうな表情で俺を見ていた。

 

「……束か…」

 

 そう言った瞬間束の表情が花が咲いたように明るくなった。

 

「そうだよー何時も元気でプリティーな束さんだよー。記憶の方は大丈夫かな?」

 

 束にそう言われて思い出す。自分は九雨叢雲(ここのめそうふ)。性別は男。転生者でチート転生者の調教を頼まれた筈だ。

 

「多分、大丈夫だ」

 

 重要な事だけを思い出し再び束を見る。

 

「オッケー。因みに今、自分がどうゆう状態かわかる?」

 

 そう言われて俺は首を傾ける。質問の意図が分からないが、俺の体に何かが起きた事は間違いないだろう。

 

「その様子だと分かってないみたいだね」

 

 そう言って取り出された鏡を見て、自分の目を疑った。

 その鏡に映っていたのは(かすみ)によく似た呆けている女性の姿だった。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 母さんが作りだした技術は男を女へと変える性転換技術。だが母さんはその技術をすぐに抹消し研究員と共に姿を消した。その後、どこで何をしていたかは束でも分からなかったそうだ。

 何故性転換技術は抹消されたのか。今となっては知るよしもない。

 因みに束が調べたところによると、母さんを含め研究員全てがすでにこの世にはいなかったそうだ。

 

『うん、歩行には問題ないね。んじゃ、次はPICを使った浮遊行動をしようか』

 

 俺は適当に束の言葉を聞きながら歩くの止め、PIC を起動させる。そしてゆっくりとその場から浮き、程よく飛んだところでその場に停止する。

 

『うんうん。初めてでここまで出来れば上出来だよー。『水晶蘭』との相性もバッチしだね!』

 

 嬉しそうにはしゃぐ声を聞きながら俺はその場で意味もなく回転してみる。体がとても軽く重力などないように空中で行動することが出来る。自分が自分じゃないみたいだ。

 

『よし、じゃあ戻ってきていいよー』

 

 俺はその声を聞いてその場に降り立つ。

 この機体。名を『水晶蘭(すいしょうらん)』という。束が俺を生かすために使ってなかったISコアを生体同期型として運用したところコアが勝手に起動し俺に寄生してしまったらしい。当時の束は慌てたらしい。まぁ今では何の問題もなく動いているから大丈夫だろう。ただ起動したら(常に起動状態だが)普通ISについている装甲が一切ついてなかった。これには二人して目が点になった。

 その変わりと言わんばかりに初期装備に水晶(ナノマシン配合のガラス)が大量に装備されていた。これを見て再び二人して目が点になったのは記憶に新しい。

 

「しかしこの服はどうにかならないのか?」

 

 俺はため息をつきながら束を見るが本人はどこふく風で空間ディスプレイとにらめっこしていた。再び俺は自分の服を見てまたため息をついた。

 にしてもISの起動状態or待機状態がメイド服なんて………俺をとことん惨めにさせたいようだ神という奴は。

 

「いいじゃないですかお姉様。似合ってるし。」

 

 そんな声と共に現れたのは束の娘、名をくーちゃん(クロエ・クロニクル)。因みに生体同期型の先輩で、『何でも聞いてください!』って意気揚々と言われたのを覚えてる。その姿がいかにも子供らしいなと少し癒されたのはナイショだ。

 

「むぅ………そのお姉様ってのも違和感があるなぁ。どうにかならんものか……」

 

 先程くーちゃんが言ったように俺は完全に女へとシフトチェンジしていた。正直未だに信じられない。が実際に起きているのだから割りきって今を生きるしかない。とはいえ、元々男だったからか、女物の服を着るのは女装する感じがして凄く違和感を感じている。やはり慣れない。

 

「お姉様はお姉様ですよ。それ以上でなければそれ以下でもありません。」

 

 ビシィッという効果音が聞こえそうなくらい凛とした表情で俺にそう言ってきた。

 うん……そう言われると清々しい気分になるけどそもそも前提が間違ってるんだよなぁ。

 くーちゃんの姿を見ながら内心ため息をついているとピピッと音がして目の前に突然空間ディスプレイが現れる。なんだなんだと思いそれを見ると。

 

『ニコッ♪』

 

 ………お前もか─────

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 俺という存在はとことん神様というモノに嫌われているらしい。

 俺は至極平凡に過ごしたいというのに…………いや束に関わっている時点で平凡とかけ離れているけども、それでも、やっぱ厄介事とは無縁で生きていたいのですよ。

 そんなふうに現実逃避をしてると再び空間ディスプレイが俺の目の前に現れる。

 

『やっと一緒になれましたね。』

 

 …………俺は今、夢を見ているのだろうか?

 俺は一旦頭をクリアにする。そして束とくーちゃんを見る。

 

「アハハー。まてまてー」

 

 泡が大量についた束とくーちゃんが何故か走り回っていた。

 ………なんだこれ?俺、まだ寝てるのかな?

 再び現実から逃避してるとまた目の前に空間ディスプレイが現れる。

 

『無視をしないでマスター?私、寂しいです………』

 

 頭がエンストを起こしそうだ………只でさえ今日起きたばかりだというのに次から次へと……

 

「おい束……」

 

 俺が呟いた瞬間束の体がビクッと跳ねる。そして恐る恐るこちらに顔を向けてきた。対する俺は無言で束とくーちゃんが来た方に指を指す。そこはこれでもかというほど水浸しになった床。

 

「掃除、するんだよな?」

「い、イエッサー!!」

 

 凄い勢いで束は敬礼を決めくーちゃんを抱えて風呂場へ戻っていった。

 全く。俺がいなかったら誰が掃除すんだよこれ………。くーちゃんがしそうだな。

 くーちゃんが掃除してる姿を浮かべながら俺は雑巾を取りだし濡れた床に横一列に置き雑巾の上に水晶蘭の初期装備の水晶をセットさせ準備完了。そのまま真っ直ぐに水晶を移動させる。するとどうだろうか雑巾が一斉に拭いていくではないか。

 俺のIS、水晶蘭は装甲が一切ない代わりにナノマシン配合のガラス、水晶が全ての役割を担っている。この水晶、操縦者のイメージによっていろんな形でその場に出すことが出来るらしく、攻撃、防御、移動手段だって操縦者のイメージ次第ということらしい。どう考えても初心者向けの機体ではないことは確かだ

 

『やだマスター。そんなに誉めないで(ハート)』

 

 俺が自分のISについて考えているとまた目の前に空間ディスプレイが現れる。

 ………こいつ、本当にコアの人格なのだろうか?第一誉めてないし。あえてハートの部分を文字にしているのがなんか腹立つのは俺だけだろうか?

 

『てへっ♪』

 

 ……………

 

 

 もうやだこのIS………

 

 

 

 

 

 

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