この世界に神と呼ばれる奴はいない   作:黄泉路

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第2話

 

 俺は今、猛烈に後悔してる。過去の自分を殴ってやりたい気分だ。まぁそんなこと出来たらとっくに過去なんざ変えてるがな。

 今日は体調もだいぶ良くなり久しぶりに外の景色を見にちょっと自分の住んでた所に戻ってみたんだ。

 そしたら────

 

「おい、そこのメイド。聞いてんのか?」

 

 次から次へとやってくる厄介事にちょっと現実逃避してたところ後ろから再び関わると絶対面倒になりそうな男の声がしたので、現実逃避していた頭を現実へと引き戻し振り返る。

 なんと、そこには、それはそれはとっても残念そうなイケメンが立っていた。

 これはアレだ絶対転生者だ。しかもとびっきりの救いようがないクズレベル。

 とか考えつつ俺は念のため格好に合ったそれ相応の態度で返す。何をされるか分からないが無駄な争いは是非とも避けたい。

 

「何でしょう?」

「あ?聞こえてんのならさっさと返事をしろってんだ」

 

 うん?………あーうん。

 

「お前さぁメイドだろ?だから俺様に奉仕しろよ」

 

 言われて俺はポカンとなった。

 いやいやコイツ正気か?白昼堂々、よくもまあ今の時代の女性(見た目だけ)にそんな事を言えるな。頭のネジ外れてんじゃあねぇの?それも数本。

 

「おい。聞こえなかったのか?奉仕しろって言ってんだよ!」

 

 俺が動かないのに業を煮やしたのか俺を無理矢理押さえようとしたのか近づいて手を伸ばしてきた。

 だがそれは俺の体に触れそうな一歩手前で止まる。

 

「あぁ?」

 

 すると目の前のコイツは不思議に思ったのか目をパチパチさせていた。

 まぁこれ事態不思議でも何でもないただ水晶を使って相手の体を固定してるだけだから。

 

「あぁ!くそっ!なんで動かねぇんだよ!!」

 

 ………あんまり目の前で喚かないで欲しい、とっても迷惑だ。体にも障るし。

 

「能力も発動しねえしどうなってんだぁ!!聞いてた事と違うじゃねえか!」

 

 しかし五月蝿いな喚く気力があるならもっと別の事にその気力を使えばいいのに。頭で考えるということを知らないのだろうか?

 

「貴方、バカですか?」

「………あ?」

 

 俺がそう言うと途端に静かになる残念なイケメン。

 

「今のご時世、男性が絶対的に悪くなるというのをご存知ないのですか?」

「知ったことか、力で捩じ伏せりゃいいんだよ」

 

 うは………すげえなやっぱ恵まれた人間は言うことが違うね。自分の力でもないのに。

 

「そうですか………じゃあ……世界の厳しさを手取り足取り教えて差し上げましょう。」

 

 残念なイケメンが訝しげに見てくるのを無視し俺は残念なイケメンの鳩尾に一発拳を入れてやる。

 

「がっ!?……テ、テメェ…!………」

 

 なんかまた喚きそうになったので水晶を一旦解除し膝蹴りを思いっきり腹へいれ浮き上がった所を両手で叩きつける。そしてちゃんと水晶で足を固定するのも忘れない。

 っとそこへ白、黒、茶、赤といった色とりどりなモノが目に入ったため何だろうと思いそっち向いた。

 

 だがこれがいけなかった。

 

 次の瞬間にはパリンという音とけたたましく鳴り響くアラーム音が脳に直接鳴り響いた。

 俺はしまったと思いつつもその場から飛び退く。が、その瞬間左腕に小さな衝撃が走る。

 

「………っ……」

 

 腕を見ると浅いながらも確かに切られていた。それもメイド服の上から。少なくとも銃弾ぐらいは簡単に防げるこの服を、というかシールドバリアーを容易く切り裂いて肌に傷をつけたのだ。

 ………全く、チートっていうのは厄介すぎるな。目を離すだけでこれか……

 改めて転生者の厄介さを嫌に思いながらも俺は転生者をすぐに見据える。

 目の前には右手にナイフを持ち左手で腹を押さえ苦しそうにしている転生者。だが俺が見たことでそのナイフは転生者の手の中から消滅する。

 恐らくはあのナイフが特典かなんかだろう。

 ナイフが突然、消えたため転生者は驚いていたがナイフを出せないと分かると俺を一瞥し逃げていった。

 それを見て俺はようやく安堵のため息をついた。

 

 水晶蘭………エネルギー残量は?

 

『………半分……もってかれました』

 

 まじかよ……一振りで半分ってどんだけだよ………

 

『マスター。ここはすぐにでも戻りましょう』

 

 駄目だここじゃ人目につきすぎる。

 

『ですが………』

 

 渋る水晶蘭に俺はため息をついた。とてもじゃないがこんな所で空に上がったら大変な事になる。だって────

 

「お、おい大丈夫か!?」

 

 霞や一夏達がいるのだから。

 

「………大丈夫。」

 

 俺はそう言って5人の顔を見る。

 一夏に霞、それと(いちい)にちっこいツインテールと赤髪。勢揃いだな。

 

「なぁさっき奴は………」

「遠くからだったけど多分アイツだわ」

「いけ好かないやつ」

 

 順に赤髪、ツインテール、霞と3人が何やら話してた。

 

「血が出てるじゃないですか」

「おわっ!?ホントだ。」

「じっとしててください。ほら一夏」

「おう」

「え?ちょっと………」

 

 こっちはこっちで櫟が布を取り出して一夏はいつの間に持っていたのか水の入ったペットボトルを取り出して布にかけた。そして櫟は濡らした布を少し絞ってから俺の腕に巻いた。

 巻くときに少し痛かった布がヒンヤリとしてて気持ちがいい。………というかなんだこの2人。用意周到すぎるだろ。

 

「さっきの奴にはほとほと困っているんです。」

 

 突然、櫟にそんなこと言われた。

 

「えっと………」

 

 いやどうしろと?

 

「あんたが大事に至らなくてよかったよ」

「そうそう。アイツ行く先々で問題を起こしてるからなぁ」

「最低な奴よ。思い通りにならないなら力で捩じ伏せるなんて思考持ってるし、その上尋常じゃない力を持ってるから余計に質が悪いのよ」

「………ウザイし目障り……」

 

 皆思い思いのことを口にしていた。見ないうちに霞の口が悪くなっている事に問いたくなったが、ある意味自分のせいでもあることを思い出して俺はやめた。しかし、さっきの奴はかなり嫌われてるらしい。

 

「ですので気をつけて」

 

 そう言われて俺は思わず苦笑する。

 

「子供に心配されるほど私は弱くはないよ」

 

 そう言って微笑み櫟の頭に手を置く。

 

「それにそう簡単に死ぬわけには行かないからねやり残したことばっかりだから」

 

 少し自嘲気味言って手を降ろした。そしたら櫟がなんか凄く残念そうな表情してたけど敢えて無視する。

 

「じゃあね。貴方達の方が気を付けなよ」

 

 なんでか呆けてる4人に手を振りこの場を後にする。

 

『マスター?大丈夫ですか?こんなところで意識を失わないでくださいよ?』

 

 そう俺は今、かなり意識が朦朧としている。恐らくだが急激なエネルギー消費により水晶蘭のシステムが追い付いていないのだと思う。だから俺の体も異常をきたしている。

 

 ………不味いな……水晶蘭。すぐに束のところへ……

 

『……は、はい!すぐにいきます!』

 

 

 

 

 

◇◆◇◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「あ、お姉様おかえりなさい。どうでし………お姉様?」

 

 帰りつくとくーちゃんと丁度居合わせた。俺は壁にもたれかかり今にも吹っ飛んでしまいそうな意識を繋ぎ止める。

 

「……束を…呼んでくれ」

「は、はい!」

 

 何時もと様子が違うのを察知してかくーちゃんはすぐ動いてくれた。だが振り返ってすぐにくーちゃんは止まった。なんだと思い顔を上げると、そこに不機嫌そうな束がいた。

 

「そーくん。今、束さんはとっても怒ってるよ」

 

 わかってる。何故束が怒っているのか。

 

「どうして、どうして?」

 

 不機嫌そうな束は俺を睨み付ける。それを見たくーちゃんはどうしたらいいかわからないようだ。

 

「………どうして……だろう…な……?…」

 

 俺はその場に座り込み無機質な天井を眺め譫言(うわごと)のようにぼやく。

 それを見た束が俺に近づいてくる。そして俺をそっと抱き締めた。

 何故だろうか?とても安心する。不思議だ………。

 

「束さんが知らない所で絶対死なないで……」

 

 そう言った束の表情は悲しそうでどこか儚げだった。

 

 

 

 

 





生体同期型はエネルギーが切れれば死ぬ。
というのを調べてて知りましたが
改めてISは凄いなと思いましたね。
そしてそれを作った束さんすげぇわ。
因みにそーくんの体はズタボロです。
体の半分はもうISって言っていいくらいに。
内臓のほとんどをISによって補っているので
エネルギーが少なくなればなるほど
器官の動きがゆっくりになり
最終的に止まり、死に至ります。
これを考えるとそーくんってよく生きてたな
とつくづく思いますね。
自分で作っておいて何ですけど。

ではこれにて。
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