この世界に神と呼ばれる奴はいない   作:黄泉路

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幸か不幸か

 それは唐突だった。

 私がラボに帰ってくると、そーくんは別人になっていた。いや、正確には別人ではなく、人として変わったという感じだった。

 

「これから雨玻璃白雪(あめはりしらゆき)とお呼びください」

 

 こんなことを言い出したのだ。天才と言われた私でも流石に理解が追い付かなかった。何がどうしてそうなったのか。

 私はただ偽物の情報を渡しわざとそーくんを戦闘させ、ちーちゃんにそーくんの存在を認識させ後日会い驚く姿を見ようと思っていたのに、一体何があったというのか、そーくんは名前を変え、より女らしくなってしまった。ちーちゃんに会いに行く前にこのような事が起きるとは完全に予想外だった。

 

九雨叢雲(ここのめそうふ)という男は死にました。今の私は白雪です。………束様。私は貴女に恩がありますゆえ何でも言ってください。」

 

 本当に誰だ?と思った私は悪くないはずだ。そーくんだったらこんなことは言わない………いや、言わないだけで本当は思っているのかも。実は素直になったみたいな感じなのかな?………そう考えると何故だか少し嬉しかった。

 

「じゃ、じゃあ頭撫でて!」

「わかりました。」

 

 何でもと言ったのでそーくんにしてもらった一番嬉しかった事をやってもらうことにした。実はあの時の感触が忘れられない。壊れ物を扱うように優しく、それでいて暖かいあの手が今でも思い出すことができる。

 人が変わった様な感じだが、そっと撫でられる。だけどそこにはちゃんと(ぬく)もりも感じられて、それがそーくんだと実感できた。

 

 

 ………ただ、前よりも『生』を感じられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 それは本当に唐突だった。

 あの束が自分から連絡をしてきて尚且つ会おうなどと……流石に自分の耳を疑った。明日は空から蛙でも降るのではないかと我ながら阿呆な事を思ってしまった。

 昔はよく会っていたのに、と感じた、こうして電話をかけてくることが年をおうごとに減り2人でじゃれあうことも減っていった。それがなんだか少し寂しく感じる。

 

「少し早すぎたか」

 

 約束の時間よりも少し早く目的地についてしまい思わずそんな言葉が出てきた。やはり心の隅では私は束といたいのだろうか………だがそんな思いと裏腹に気になる点もある。

 

 何故今になって束は会いたいなどと言ってきた?

 

 不思議な点は他にもある、昨日送られてきた偽物の破壊予告のメールだ。……本文には施設を破壊すると書かれていた。だが、いざ行ってみればその場所には何もなく、所属不明のISに乗る2人だけがその場に居合わせたのだ。

 全身装甲のISと白髪にメイド服を着た女。

 ……全身装甲のISの方は戦闘をしたが白髪の女の方は戦闘をせず直ぐにその場から逃げたした。ただその時に出したガラスの様な膜に少々疑問が湧いた。

 その後、帰還した楯無に聞いたが、白髪の女は目撃情報が少なからずあったのだ。

 

 ………そう言えば一夏もメイド服を着た不思議な女性に会ったと聞いたないつ、だったか…

 

「ちーちゃぁぁぁん!!」

 

 それは無駄にテンションが高い声によって中断された。

 気づけば束が凄い勢いで私の方へ飛んできていた。どうせ、昔の様に抱きつこうとするのだろうと思い私は飛んでくる束を避けた。

 避けたことにより束の体が重力に引かれ地面に落ちる。

 

「な、なんで避けるさ!?」

 

 だが直ぐ様立ち上がり文句を言ってきた。

 

「飛んできたら普通は避けるだろう」

 

 と言いながら私はやれやれと言ったようにため息をつく。

 

「酷いよちーちゃん!束さんとの愛はそんなものだったの!?」

「元よりそんなものはないのだが……」

 

 私がそう言うと束は一気に悲しそうな表情になりその場に蹲ってしまった。

 

「束様。久しぶりの再開ですからきっと戸惑っているのてすよ」

 

 そう言って束の隣に出てきたのは白髪のメイド服を着た女。昨日モニター越しに見た女と同人物だった。

 その光景に思わず目を疑った。流石に束と一緒にいるとは予想出来なかった。

 

 ……ということは昨日の出来事は全部束の仕業か?

 

「そっか!!そうだね!!じゃあそういうことで久しぶりに束さんと愛し合おうよちーちゃん!!」

 

 そんな事言いながら再び飛んでくる束の頭に私は拳を落とした。

 

「ぐへ!」

 

 思ったよりも強かったのか束は急降下し地面に伸びてしまった。

 その様子を苦笑しながら見ている白髪の女。

 

「貴様、何者だ?」

 

 そう威圧を込めて問うてみれば白髪の女は全く動じず、綺麗に私に向かって礼をしたのだ。

 

 

 

 

 

「これは申し遅れました。私は雨玻璃白雪と申します─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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