気がつけば知らない天井。薬品の独特の香りが鼻につく。
ここは保健室だろうか?私は自分の部屋で寝ていた筈なのに、一体どうゆうことだろうか?
何故か重い身体を起こす。周りはカーテンがされており辺りの様子はわからない。
しかし、あの少年。何処かで見た気がするのだが……
「………起きていたか」
カーテンが開けられ姿を現したのは千冬さん。その表情は何処となく固い。
「……これは?」
私がそう問えば千冬さんはゆっくりと椅子に腰掛けた。そして真剣な表情へと変わる。
「まず最初に行っておくが、お前は2日眠ったままだった」
「えっ?それはどうゆうこと?」
私が2日も眠ったままだった?そんなバカな……
「………杜若が原因だ」
「杜若?」
「そうだ。どういった理由かはわからないが杜若がお前に干渉し、何かを見せていたようだ。」
何で杜若がそんな事………待って、じゃああれは夢じゃなかったの?いや夢にしてはえらく鮮明だなとは思ったけども……
「ISからの干渉は事例が少ない。よって暫くはここに通う事になる。」
「えっと……」
「不便だと思うが、何かあってからは遅いんだ理解してくれ。それと5日後、クラス代表決めを行うがお前にも参加してもらう。」
「………なんで?」
それは聞いていない。なんで私がクラス代表なんてやらなきゃいけないのだろうか?
「伝える事は伝えた。私はまだ忙しいのでなもう行く」
そう言って千冬さんは早々に保健室を出ていった。
………私に権利は無いのだろうか?起きたら知らぬ間に色々決まっていたって……この場合って私が悪いのか?
◇◆◇◇◆◇
さて、過ぎた事を気にしても仕方ないとして、あの何処かで見たことがあると思った陰鬱そうな少年………実を言うとIS学園にいた。しかも同じクラスに。
そりゃあ見たことがあるわけだ。髪はボサボサではなかったけど陰鬱そうな雰囲気は変わってなかった。
授業中は真面目に聞いてたが授業と授業の間の休み時間は机に突っ伏して寝ているようだ。凄く『話しかけんな』感が半端ない。周りの女の子達も一歩引いて見てる感じだ。
まぁ今からソイツに話しをしにいくのだけれど。
「ねぇ………」
そう呟き机を爪先で2回叩く。
すると陰鬱そうな少年は頭を少し動かし私を見た。その表情は恨めしそうだ。
「ちょっと話しをしたい………放課後いい?」
私はそれだけ言うと自分の席に戻った。周りの女子達が騒がしかったが気にしてはいられない。
少年はと言うと相変わらず机に突っ伏していた。
◇◆◇◇◆◇
時間は進んで放課後。
私は陰鬱そうな少年を連れて屋上に来ていた。
「単刀直入に言うけど、私の兄。
そう言った瞬間、面倒くさそうにしてた表情が一気に真剣な表情へと変わる。そして若干の驚きがあるのが見えた。
「………あぁ知ってる。その感じだとあの人は結局、戻って来なかった、みたいだな。」
「………確かに兄さんは戻って来なかった。」
私が兄さんの詳細を伝えると少年は目に見えて落胆していた。
もしかして心の何処かで期待していたのだろうか?
「………で?俺をわざわざ呼び出したのはその事を聞きに来たわけじゃないよな?」
落胆してい表情を真剣な表情へと変える少年。陰鬱そうに見えるが根は真面目のようだ。少しばかり彼に対する評価を上げなくていけないかな。
「そう。本題は別………貴方に頼みたい事がある………」
「頼みたい事……」
「……兄さんの未来を見て生きているか確認できない?」
私がそう言うと少年は一瞬驚き、すぐに視線をそらした。
「何処で俺の事を知ったか聞かないがそれは………無理だ。俺も何度も試したが、あの人の未来は真っ暗なままなんだ………」
「………そう…」
「すまん、力になれなくて。」
「…いやいい………」
どうやらそう簡単には行かない事のようだ。それなりの期待があった分落胆は大きいが仕方のないことだ。
「話しはそれだけ。聞いてくれてありがと……」
これ以上ここにいても仕方ないと思い、私はその場を後にしようとする。
「待ってくれ」
がその途中で呼び止められた。
まだ何かあるのかと思いつつも私は振り返る。
「俺は、
真剣な少年、大夢の表情は何処か信用出来そうな気がした。一体、何時もの陰鬱な雰囲気は何処へ行ったのだろうか。
「………
そう言って私は少しだけ笑み浮かべその場を後にした。
◇◆◇◇◆◇
部屋に戻ると、同室の
「あ、お帰りなさい霞さん」
「おう、霞。おじゃましてるぜ」
私に気づいた櫟が笑顔で此方に手を振り。一夏も此方を向いて片手を上げた。
しかし何をしているのだろうか?
そう思って私は2人に近づく。すると机の上に置いてあるデザートの雑誌。
「でざーと?」
そう言うと待ってましたと言わんばかりに櫟が私に近付いてくる。その手に雑誌を持って。
「はいっ!あまーいデザートですよ!それを一夏さんと何を作るか相談してたのですよ!!」
「そ、そう……」
余りに勢いよくこっちに来たので思わず私ば数歩下がった。多分、端から見たら顔がひきつっているだろう。
「霞さんはどんなデザートが好きなんですか?因みに私はシュークリームですっ!」
えらく元気な櫟に苦笑いしつつ、一夏に助けを求める。が一夏は一夏は何か考え込んでいるようだ。
「そう言えば霞はデザートとか食べた所見たことないな」
一夏がそう呟いた瞬間、櫟が首を傾けた。
「ダイエットでもしてるんですか?でも霞さん太ってませんよね?」
そう言いながら私のお腹を触ってくる櫟。それを叩きながら私は櫟の雑誌を取る。
「別にダイエットとかしてない。普段、少食だから必然的にデザートを食べないだけ。………私が好きなのはコーヒーゼリー」
私が雑誌をパラパラと捲りながらそう言うと櫟は何故か一夏と顔を見合わせた。
「甘くないですね」
「甘くないな」
2人して呟いた。
相変わらず息が合ってるなこの2人は……
「別に甘いのがデザートってわけでもないでしょ?」
「まぁ確かにそうですが………」
「しかし、コーヒーゼリーかぁ作ってみようかな?」
釈然としない櫟と自分の世界に入ってる一夏。
一夏にとっては作れるのならば何でもいいのだろうか?
「所で一夏さん」
櫟が一夏を手招きする。疑問に思いつつも近付く一夏。
「どうかしたか櫟?」
「コーヒーゼリー作ったら、後で作り方教えてくださいね」
「ああ。別にいいけど霞に作るのか?」
「何ですか?悪いんですか?」
「い、いや別に悪いとは言ってないだろ……」
2人して内緒話。どうやらまた2人の世界に入ったらしい。仕方ないので私はシャワーでも浴びる事にしよう。
しかしあの2人、料理やお菓子作りになると途端に饒舌になる。そして何かと私にその話題を振ってくる。私は料理とかしないのに………出来ないわけではないけれども、別段上手いってわけでもない。
服を脱ぎ最早見慣れた自分を見る。
病人と思えるほど白い肌。雪のような白い髪。そして緋色の瞳。だが片目は黒い。
これは杜若の影響で本来潰れた筈の右目を杜若が補っている。その補っている目は黒く、一般的な日本人の目の色をしている。
所謂アルビノと言われる私は基本目の色は赤なので黒というのは違和感がある。その為右目は髪を伸ばして隠している。だが面白い事に右目は髪で隠している筈なのにちゃんと見えている。
本当にISが規格外だと実感させられる。
そこでため息をつき、シャワーを浴びようとお湯を出す。
………もし、あの時見た兄さんと大夢の会話が本当なら、兄さんはその対策をしないなんてあり得ない。それを考えるなら兄さんは何処かで生きている筈。だけどその確証は、ない。
そこでシャワーを止めため息をつく。
「わからない事だらけね………」
そう小さく呟き浴室の扉を開ける。
目に入るのは私の服を持っている櫟、と顔を真っ赤にしてる一夏。
「………いちい?」
そう呟いた瞬間、櫟の身体がビクッと反応した。そしてゆっくりと顔を此方に向かせた。
「あ、あの霞さん?」
私は櫟の持っている私の服を見て、そして櫟を再び見る。
「ああああ、あのあの、こここれはですね!!??」
「なにを。しているの?」
櫟は慌てながら持っていた服を後ろへ隠す。だがもう遅い。
「そ、そうですこれは一夏さんが悪いんです!」
「へっ!?お、おい櫟、お前なに言ってんだ!!」
そう言って慌て出す2人。
「ちょっと2人共………一旦出ようか。」
「「は、はいぃっ!!」」
慌て出ていく2人を見ながら私はため息をつく。
本当に騒がしいな。でも変なところで息ぴったりだ。あの2人は………
◇◆◇◇◆◇
「っで?言うことは?」
私は髪をタオルで拭きながら床に正座している櫟と一夏を見る。
「え、えっと。と、とてもいい香りが───」
櫟が言い終わる前にその意識を刈り取る。
全く……櫟は本当に油断も隙もない。しかしこの貧相な身体の何処がいいんだろうか?胸も大きくないし、身長は……まぁ高いほうか。
「え、えっと霞?」
私が体を触っていると、不思議に思ったのか一夏が声をかけてきた。
「なに?」
「あ、いや………まだ怒ってるのか?」
そう言う一夏は不安顔。何だろう、私がキレたらそんなに怖いのだろうか?
「………髪」
「へっ?」
「髪、乾かして。」
「あ、お、おう」
私は髪を拭いていたタオルを一夏に差し出す。それを見た一夏がホッとしたような顔で近づいてきた。
「ねぇ一夏………」
「どうした?」
しばらくして私は一夏に声をかけた。拭きながら一夏は返事をする。
「……兄さん生きてると思う?」
私がそう言った瞬間一夏の手が止まった。
「……正直わかんねぇ。でもよ…………」
そこで切り再び私の髪を拭き始めた。
「まだ、死んだって決まったわけじゃないんだ。信じて待つってもの家族の役目、じゃないか?」
「………」
「あの
そこで頭からタオルが離れる。そして一夏が前にくる。
「それに、俺や千冬姉だって霞の家族なんだからさ。1人でそんなに抱え込むなよ?」
そう言って一夏は爽やかに笑った。
その笑顔は嬉しかったが、なんだかちょっとだけイラって来たので一夏を蹴って置く。
「イテっ!?何すんだよ!」
「うるさい。一夏の癖に生意気。」
「な、何だよそれ。」
一夏が抗議の声を上げるが私は無理やり部屋から追い出す。
一夏が何か言っているが無視し扉を閉め扉を背にその場に座り込む。
「家族………ね…」
ふと顔を上げると櫟がニヤニヤした顔で此方を見ていた。
「あーあ。霞さんの好感度、一夏さんに取られちゃいましたね。」
私はその言葉を無視しベッドに潜り込む。
「しかし、一夏さん。ほんとナチュラルに口説きますよね。あれで鈍感なんだから、余計に質が悪い。さすが、鈍感王と呼ばれるだけはあります。」
「うるさい櫟。」
「ふふ、さすがに霞さんでもあのセリフにはやられちゃいましたか?」
「だからうるさい。」
「あれ?もしかして照れてます?」
櫟がその言葉を言った瞬間ベッドから起き上がり再び櫟の意識を刈り取りにかかる。
私は照れてない。あんな事では絶対照れない。照れてないって言ったら照れてない!