この世界に神と呼ばれる奴はいない   作:黄泉路

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幸せを感じるのは当人次第

 

 

 

 

大夢(ひろむ)さんは向こうに参加しないのですか?」

 

 そんな事を俺に問い掛けてきたのは石蕗櫟 (つわぶきいちい)。俺は一旦食事を止め、騒がしい一夏(いちか)達を見る。何やらボイスレコーダーを持った女子生徒が一夏に迫っていた。取材か何かだろうが俺にはどうでもいいことだ。

 

「いいんだよ、俺は。」

 

 俺がそう言ってみれば櫟は肩を竦めた。そんな櫟も見て俺は再び食事を開始する。

 今、一夏達はクラス代表祝をやってるらしい。因みに俺は晩飯を食いに来ただけ。特に関わってない俺は参加しても仕方ないから此方で飯を食っている。1組の何人かの女子が参加してほしそうに此方を見てたりするが殆ど無視である。しかし晩飯が重なるとは思わなかったが。

 

「一応1組でしょうに……そんなにボッチがいいんですか?」

「今回俺は関わってないからな。それとボッチ言うな、友人ぐらいいる。」

 

 櫟の呆れた様子に俺はため息をつき反論する。

 俺は決してボッチではない。友人もちゃんといる。ただ1人でいる方が何かと楽なのだ。

 

「それは1組以外での友人でしょうに」

「………」

 

 櫟のその言葉に俺は食事をしていた手を止め櫟を睨む。

 確かに俺は1組の友人はいない。だけどそれは仕方ない事じゃないか?なんせ凄く近くに爽やかイケメンがいるのだ。自分と比較するまでもなく俺は敗北を感じている。俺という存在は見た目が悪いせいで誰も近寄ってこないし。それに運動神経があまり良くないせいか割りと色んな所で躓く。いやこれは関係ないか。

 

「……言うな」

 

 力強く言えば櫟は俺から目を逸らした。どうやら俺の気持ちは伝わったらしい。

 正直な話し別にこのまま1組の友人が出来なくても別に問題ないし気にしない。………うん、気にしない。

 

「そういや、九雨(ここのめ)さんは来てないのか?」

 

 そういえばと俺は思い出しあの人が来てない事に気づけば、櫟は微妙な表情をしたまま一夏達の方を見た。

 

(かすみ)さんは人が多い所を嫌いますから、多分自室だと思いますよ。本当は参加して欲しいのですが………」

 

 あぁまぁそうだろうな、あの人って割りと1人で行動する事多いし、余り喋らないし。だけど一夏が行くならあの人も参加するかと思ったが、違ったようだ。しかしまあ彼女に関しては俺がどうこう言える程の仲じゃないから俺としては反応に困る。その為、俺が曖昧な笑みを返すと何故か櫟からため息をつかれた……何故だ……。

 

「霞さんは今、実の兄を失って心の拠り所を失ってます……。だからこそ彼女には友人を作って欲しいんですよ。」

 

 ふむ、確かに実の兄を失えばそうなるかもしれないな。でもそれだけじゃない様な気がするんだが……。というか心の拠り所って……。

 

「その言い様だとまるで実の兄に依存してた感じだな……」

「………実際そうなんですよ。」

 

 依存ってのは早々なるもんじゃないんだがな……それも転生者が他人に。それこそ色んな要員が重なればなるかもしれないが珍しいにこしたことはない。

 

「だからこそ彼女はあの人が生きている事が限りなく低いというのに、受け入れていませんから………」

「……それは、受け入れない方が都合がいいだろうな。」

 

 俯き暗い表情をしている櫟に俺はテーブルに頬杖をつきため息をついてから答える。櫟も思う所はあるのか俺の言葉を聞いて苦い表情をしだした。

 櫟としては前を向いて欲しいと考えているんだろうがそれは難しい。依存者ってのは依存対象が消えれば、新たな依存対象を見つけるか自棄になるか心が壊れるかのどれかだ。尤も今の九雨さんは自棄に近い状態になっているが……。

 

「それに俺らとしても都合がいいだろう……。彼女が今のまま下手に出歩かない方が俺らはその分動きやすい。」

「ですが……それは…………。」

「九雨兄妹の特殊な目は力を持つ転生者にとって天敵だ。それは俺らにも適応される事を忘れた訳じゃないだろうな?」

 

 俺が強めに喋れば櫟は黙ってしまう。何かを言おうとしているのか度々口を開けたりしているがすぐに閉じて俯いてしまう。

 言いたい事はわかる。助けてあげたいのに助けれない。下手に今の彼女に踏み込めば依存対象になる事を理解しているからだろう。それに依存してしまえば彼女は成長しない………。

 転生者の中では特殊な立ち位置にいる櫟だが、彼女は今の所此方側だ。今、霞さん側につくということはあの人との約束を破るということになる……。だからこそ動きたくても動けない状態になっている。

 思えば櫟もあの人に依存しているのではないか?

 そんな事が頭が過るがすぐに考え直した。どちらかと言えば依存していたに近い状態だろう。……多分。

 

「………今はまだいいさ、だけど覚悟は決めとけよ。」

「えぇわかってます。」

 

 櫟は複雑な表情で手の甲を額に当てため息をついた。そして彼女は立ち上がる。

 

「私はこれで失礼します。それと大夢さん、食べ過ぎてお腹壊してもしりませんよ。」

「いらない心配だな。」

 

 呆れた表情でまたため息をついて櫟に言われた事に思わず俺は苦笑いを返す。それを見て櫟は漸くその場から去っていく。ただ去り際に────

 

「らしくないですね。私も貴方も……。」

 

 そんな言葉を残して。

 俺は去る櫟の背中を見ながら思わずため息をついてしまう。わかっている、そんなことぐらい。

 

「ため息ばかりね。陰鬱に根暗が追加されるわよ。」

 

 そんな事を言いながら櫟と入れ替わるように俺の向かい側へと座り食事を開始する青髪の女。因みにメニューは蕎麦だった。

 俺が結構気にしてる事を言う女に対し俺は思わず睨むが彼女はどこ吹く風で美味しそうに蕎麦を啜る。

 

「ほっとけ……」

 

 そう言うも彼女は全く気にした様子を見せない、その上何故かため息をつかれた。

 あー厄介なのが来た……。

 

「っで?何の用だ更識弓美(さらしきゆみ)……。」

 

 更識弓美。彼女はこのIS学園の現生徒会長の妹にして更識簪(さらしきかんざし)の双子の姉である。そして転生者でもある。

 では何故俺がこんな奴と関わりがあるかと言うと彼女の元護衛だからだ。と言っても1ヶ月ぐらいの付き合いだったが………。

 元々俺の家は護衛の家系であったのだけれど、とある襲撃に遭い、家は崩壊し家族は死にただ1人残った俺は遠い親戚の家に引き取られ更識家から離れ今は只の一般人。

 まあ、その崩壊した原因も転生者なのだが。その時に俺も甚大な被害を受けたが……。

 

「……さっきのは?」

「質問を質問で返すな。」

 

 自分の蕎麦を見ながらそう呟く弓美に俺は思わず言ってしまうが彼女は顔を上げる様子はなく、むしろ蕎麦を食べるのを再開しだした。そんな様子に思わずため息が漏れる。彼女は俺の質問には何も答えてくれない、会った当初はそうでもなかったのだが、時が経つにつれて彼女の相手が非常に面倒臭くなってきている。俺が一体何したって言うんだ……。

 

「はぁ………さっきのは4組の石蕗櫟だよ。ただの知り合いだ。つか、そんぐらい調べられるだろ?」

「………そう」

 

 質問してきたのはお前だろ!?と言いたくなる俺は悪くない筈だ。というか更識との関係はもう終わっている筈なんだが、更識の上2人は今だに俺を引き入れようとしている。俺としては止めて欲しいのだが。それより妹を見なくていいのだろうか……。

 弓美は喋らないので俺も喋りはしない。何か聞いても無視されるのが目に見えている。なので俺も食事を開始する。因みにメニューはカレーとハンバーグ、和風サラダだ。

 

「……体…大丈夫……?…」

 

 暫くするとそんな呟きが聞こえ俺は食事の手を止めため息をついた。

 

「お前さ……もう忘れろよ………たった1ヶ月の付き合いの奴をいつまでも引き摺ってんじゃねぇよ。」

「……たった、1ヶ月なんかじゃない…………。」

「もう昔と違うんだよ……変わっちまったんだよ。だからさっさとッ??」

「ヒロム~」

 

 喋っている途中いきなり背中が重くなり油断していた俺は噎せそうになったが何とか耐え振り返って見れば満面の笑みを浮かべほんわかした雰囲気を出している女生徒。言わずもかな布仏本音(のほとけほんね)である。こんなんでも元仕事仲間である。尤もそれほど深い関係ではなかったのだが……。

 

「食事中に抱き付いてくるんじゃない。危ないだろ?」

「えぇ~?でもでも、ユッチーと楽しそうにお喋りしてたじゃん。私もヒロムーとお喋りしたーいー」

「お前な……さっきのを見てなんで楽しそうなんて言えるんだ?」

「私からは楽しそうに見えたもん。」

「……そうかい。」

 

 どうしてこう、俺の周りには話しを聞かない奴が多いのだろうか……。

 そんな事を思いながら俺はため息をついた。ふと気づけば俺の向かい側の席に弓美は居らず食器すら無くなっており最初からいなかったと思わせるような程綺麗さっぱり無くなっていた。

 突然現れて突然消える。それが俺の知っている更識弓美である。正直、存在が怪しい彼女である。此方から会いたいと思っても会えない程彼女は神出鬼没である。尤も俺は面倒なので会いたくないが。

 

「ヒロムーもあっちで騒ごうよ~。楽しいよ~?」

「悪いが俺はこれから用事があるから忙しいんだ。そもそも関係のない俺はいなくていいだろうに……。」

「え~?ヒロムー本気で言ってるのー?」

「本気も本気だ……。」

「……そっか~」

 

 今だに抱き付いている本音の残念そうな声を聞きながら食事を再開する。勿論用事というのは嘘である。

 しかしこの後どこで時間を潰すかな……やっぱ屋上かな。

 などと考えながら俺は今だに離れない本音に思わずため息が漏れる。

 因みにこの後、屋上にいた俺を本音が見つけて怒られたのはまた別の話しである。

 

 

 

 

 

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