白騎士事件
結果から言うと無事に何事もなく終わった。
「
だがしかし変なのに懐かれた。
「それとも『おにいちゃん』かな?もしかして『ご主人様』とかですかわあぁぁ!?」
目の前で一人で喋り捲っている女の子がいきなり横へと吹っ飛ぶ。
そして女の子が立っていた所に立ったのは俺の妹の
「てめぇ人様の兄になに色目使ってんだぁ!!ぶち殺すぞ!?」
いやぁね好意を寄せてくれるのは嬉しいんだけど……その言葉遣いはちょっとなぁ可愛い容姿が台無しですよ?
いやまあ、そんなことは置いとくとして。
「いや、何やってんの?」
いや明らかに可笑しいでしょ?初対面の人間に飛び膝蹴りって……大怪我所じゃすまされないよ?
「く、やはり霞ちゃんは認めてくれないか……ならば
怪我してたらどうしようとか思っていた矢先に女の子は素早く霞の前に立った。そしてこの女の子、飛び膝蹴りを喰らったのに傷ひとつない。ついでに服装にも汚れ一つない。
これは……新手の束か!?
「いいわけねぇだろが!!」
「ごふぅぅ!?」
そして今度は殴り飛ばされてた。
い、いやね?これどうゆう状況?少しくらい説明してくれてもいいじゃないの?
「あのさ、霞?」
あまりにも酷い状況なので霞に声かける。すると声をかけられた霞はこっちを振り向いた。
「なに?兄さん。」
明らかに不機嫌顔。これは確実に怒ってますねぇ。だけど説明くらいは欲しい……
「その子、誰?」
その瞬間空気が凍りついたのがわかった。霞が驚いた表情で固まってしまった。
あれ?俺もしかして言っちゃいけないこと言ってしまった?
「よくぞ聞いてくれました!!」
そしたら今度はさっきの女の子が待ってましたと言わんばかりの勢いで俺の横に来た。そして俺の手を握ってきた。
「私は
そう言って石蕗櫟と名乗った女の子はかなり問題発言をしながら俺を熱っぽい視線を向けてきた。
「……えっと」
正直に言おう。俺はどうすればいい?というか俺はこの子の事、全然知らないぞ?一体なんなんだ?
「あぁ!!もう!
「ぎゃふん!!」
妹の霞は硬直から解けていたが石蕗櫟を見るなり再度飛び膝蹴りをかましていた。
「霞?その子と知り合い?」
何処かというか思いっきり下の名前で呼んでいたので知り合いなのだろうが、これは知り合いで済ませていいのだろうか?
「知り合いも何もコイツ、転生者よ。しかも治癒能力持ちのね」
え?それなんてチート?今時治癒能力選ぶ転生者なんて……
「変わり者だね」
「でしょ?」
治癒能力って使いずらそうだな。でもなんでそんな能力を?
「厄介な事に本人曰く死ねないらしい。」
えっ?なにそれ?なんて生地獄ですか?
「洒落にならんな」
「全くよ」
そして二人して溜め息をついた。霞はやれやれといった感じだ。勿論、俺も内心呆れてた。
まさかこんな所で転生者と会うとはね。しかもチートとは言い難い能力。と言っても治癒出来るだ幅によるが。
「なになにー?兄妹で私の話しですかぁ?」
当の本人は苦痛の表情すら見えない。あんだけ殴られて蹴られてされたのに傷ひとつ所か表情が笑みを受けベたままだ。
「成る程。どMか……」
「あぁ成る程……」
「ちょ!?違いますよぉー」
俺の呟きが聞こえたのか霞は納得していたが当の本人が何やら不服そうな顔をした。
「兄妹して酷いですねぇ。この能力は神様とか名乗る奴に勝手に与えられただけですよ。」
「……へぇ」
「反応うすっ!?何ですか?私に対する当て付けですか?」
成る程。この子、弄ると面白い。
しかしながらこの子は何で俺に好意を寄せてるんだろう。
「っで?なんでここに?」
気をとりなおす様に俺が言うと二人も気持ちを切り替えたのか少し雰囲気が変わった。
「えっとですねぇ。私の事、覚えてません?」
そう言いながら期待込めた視線で俺を見つめてくる。
うーん……黒髪黒目は何処にでもいるし?服装もその辺の人達と変わりないし……ハイテンションで言ってる事がよくわからない事以外は……
「なんだろう?今さりげなく貶された気がする。」
………うーん…
「うん、わからん」
と言って瞬間、石蕗櫟がズコーと凄い勢いで滑って行った。
あれ?なんだろう?この光景を何処かで見たことあるような?まぁいいか。ところでなんで霞はこの子の事を知ってたんだろう?
「なんで忘れてるんですかぁ!!あの時助けてくれたじゃないですか!!」
何やら凄い形相で迫って来たが俺の記憶にはない。
「兄さん。こんな奴を一体何処で助けたの?」
霞よ。言ってる事が酷いが俺もわからんのだよ。正直見た目はスッゴイ何処にでも居そうなタイプだし。俺って人を覚えるのって苦手なんだよなぁ。
「ほら、ミサイルとか戦闘機とかの破片が降ってきたときの事ですよ!!」
ミサイル?戦闘機?もしかしてあれか?白騎士を世界に見せつけている時にいた女の子か?
「あの上から破片が降ってくるのをじっと見てた子?」
すると俺の言った事が正解だったのか、石蕗櫟はとたんに嬉しそうな表情になった。
「そうですそうです!!それですよそれ!!いやぁあの時は『死んだかな?』って思ったんですけど、助けられちゃいました。そしてそして!その時にこう、ビビ!っと来たんですねぇ」
なんだか盛り上がってきてるけどこの子のテンションは落ちないのだろうか?さっきから喋ってるけど疲れないのだろうか?
「こう何て言うんですかね?心が暖かくなるような、今まで世界に色がなかったのにいきなり色がついたというか―――――」
「櫟?あんた、こんな時間までいていいの?」
何時まで喋るのだろうかと思っていたら、霞の一言で石蕗櫟は急にあたふたしだした。
「わ、わわっ!?もうこんな時間!?すみません。私の両親って門限が厳しくてもう帰らないと間に合わなくなっちゃう!!あぁ……本当すみません!!さようなら!」
そして言うだけ言って帰ってった。
なんだ親はいるんだ。てっきり気持ち悪がられて捨てられるのかと思った。世界って広いね。
「なぁ霞。」
俺が呼ぶと霞は不思議そうな顔してこっちを向いた。
「あの子と何処で知り合ったの?」
純粋な疑問。霞はまだ小学校に入ったばかりだ。あのような子と触れ合い、千冬と束みたいな関係になるのは何かの因果関係でなければ普通に無理だ。例え仲良くなれたとしても期間が短すぎる。
「まぁなんというかね。去年の事だけど―――」
去年、つまりは五歳の時。まだ小学校に通ってない霞はいつも通り散歩をしていたらしい。そしていつも通る道で公園を訪れた所、彼女と出会ったらしい。
当初、霞は興味がなかったみたいだが。1週間も同じ所にいたのでさすがに気になったらしく話しかけてみた。
すると彼女は最初『死ぬ方法を探してる』と言ったらしい。それに対し霞は怒って一発はたいてやったらしい。
『痛い?なら結構。痛いのは生きてる証。あんたが何を思って死ぬ方法を探してるのか知らないけどね。死んだらそれまでじゃない。これから先良いことあるかもしれない。辛い事もあるかもしれない。でも進むことを止めたら何も得なくなるわよ。そんなのいやでしょ?案外、可能性を信じるのも悪くないわよ。』
そして、この言葉。本人は説明する時顔を赤くしてた。まぁ恥ずかしいよね。
それで石蕗に通じたかは本人も微妙だったらしい。
で、次の日公園に来てみたら。石蕗に話しかけられた。
『私、どうかしてた。この前はありがとね?それと私の話し……聞いてくれる?』
そして能力を話すと。そんなこんなで二人が仲良くなったと。
まぁ正直霞と仲良くなってくれたのはいいがこれからがなんか不安だなぁ
「霞はどう思う?」
「なにが?」
「石蕗櫟の事」
彼女はいい子だとは思う。けれどなんか違うんだよなぁ。
「転生して好き勝手してると言うより能力のせいで苦悩してたから……」
あぁそうか彼女は転生者らしくないんだ。現実がしっかり見えて尚且つこの世界を物語だと思ってない。
「不幸な女の子としか言いようがない」
お、おう。不幸って言うなら俺達もあんまし変わらないと思うが……
「まぁでも好き勝手してる奴等より断然いいかな」
このまま良い関係を作ってくれれば俺は心配はしないんだけど。そう簡単に上手く行ってくれないのがこの世界の常識。
「霞も人脈を広げておいてね。」
と言うと霞は少し難しい表情して俺を見た。
「何故ゆえ?」
いや、言いたい事は解るけども。
「この世界はそう簡単じゃない。それにこれから女尊男卑が広まるんだ。その中で生きる
そう言って俺は肩を竦めた。対する霞も苦い表情をしていた。
さてとこれから暫くはISモドキの開発に没頭出来るから頑張らないとねぇ。
そう思いニッコリと微笑んで霞の頭を撫でてあげた。
『人間は困難に立ち向かうからこそ成長する。しかし立ち向かう事を止めたら成長も止まる。』
誰がが言ってた言葉。でも誰が言ってたか思い出せない。