この世界に神と呼ばれる奴はいない   作:黄泉路

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第6話

 

「……この世界、楽しい?」

 

 霞は終止目を逸らしなんだか気まずそうにそんな事を聞いてきた。本来なら俺は適当に答えるがどうにも霞の様子が普通じゃない。何か心情の変化でもあったのだろうか?

 

「……つまらない世の中だよ。前世も今世も。」

 

 昔も今も前世も今世も何も変わらない。お偉いさん方は自分の保身ばかり。目下のことなんざ何も考えちゃいない。なんともつまらない世の中だ。

 

「でもね。世の中はつまらないけど自分の周りは楽しいと思うよ。」

 

 俺がそう答えると霞は1つになってしまった目でこっちを見てきた。どうやら予想とはちょっと違ったようだ。少しだけ驚いた表情をしている。

 

「そ、そうなんだ」

「………」

 

 『この世界は楽しい?』か……なんとも微妙な質問だ。楽しくなければ自分で楽しくすればいいのに。ま、それが簡単に出来れば苦悩はしないね。現実は難しい。

 

「………何も聞かないの?」

 

 ちょっと考えていたら霞がなんか不安そうな表情で俺を見ていた。

 

「……霞、俺にとって……お前はたった一人の家族だ。無事ならそれでいい」

 

 そう言って霞の頭を撫でてやる。

 

「最も、霞が聞いて欲しいのなら別だけどね」

 

 そして少しだけ微笑む。だが、霞は複雑な表情で俯いていた。

 

「……どうして…どうして!?」

 

 霞は急に顔を上げ俺を睨んできた。うっすらと目尻に涙を受けべてる。

 

「兄さんは!なんで私に優しくするの!?私は他の子とは違ってこんな容姿で体も強くない!!それに頭だって良くない!……兄さんには迷惑をかけてるって思ってる。私がいなければこんなことにはならなかった。私がいなければ兄さんは自分の好きなことに集中できた!私がいなければ兄さんは両親に捨てられることはなかった……私が!……私がいたせいで………私なんかが…いたから…………」

 

 そしてしまいには泣き出してしまった。

 霞の言いたい事はわかる。でも両親に捨てられたのは霞のせいじゃない。

 

「言いたいことはそれだけ?」

 

 俺は泣いている霞を見ながら問い掛ける。それに反応した霞は『えっ?』という顔をしていた。そんな霞を俺は優しく抱き締める。

 

「……馬鹿だな霞は。お前の事を優しくするのは家族だからに決まっているだろ?」

 

 優しく霞の頭を撫でながら呟く。

 

「でもっ!……でもっ!!」

 

 だが霞は俺を押し返そうとする。

 

「霞。俺達は前世では他人だったかもしれない。だけど今は血の繋がったたった一人の俺の妹だ。代わりなんていない!この世界で唯一の家族なんだよ……」

 

 押し返そうとする霞に負けないように俺は強くそれでいて壊れ物を扱うかのように優しく霞を抱き締める。

 今ここで離してはいけない。もう大事なモノを失うのは御免だ。

 

「……ズルい………ズルいよ…!……うぅっ………」

 

 やっと霞が俺の体を抱き締め返してくれた。そして声を上げて泣き出してしまった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◇◆◇

 

 

 

 

 

 あの後、霞は泣き疲れたのか眠ってしまった。

 まぁ何て言うか寝顔は可愛かった……こんなことを言ってる時点で俺はシスコンなんだろうな。でもま、霞の事を考えるとそれでもいいかな………

 そんな事を考えながら俺は病院を見上げる。

 

「この世界は楽しくないのかい?霞………」

 

 俺の呟いた言葉はそのまま闇の中へと静かに消えていった。誰にも聞かれることなく。

 

叢雲(そうふ)様……」

 

 突然闇の中から(いちい)が現れて俺の隣へと立つ。それを見た俺は病院を見るのをやめ歩きだす。勿論、櫟もついてくる。

 来たか……

 

「状況は?」

「以前として変わりません。やはり力が無ければ一般人と変わらない転生者を探すのは難しいかと」

 

 だろうな。転生者を探すのは数百匹いる雄の魚の群れから一匹の雌の魚を探しだすのと一緒だ。それほどまでに転生者は一般人と変わらない。最も転生者の殆んどが自分が選ばれた人間だと思っているから大抵高慢で一回話せば分かるし怒らせれば勝手に能力の事を暴露してくれるので分かりやすいと言えば分かりやすい。とは言っても力を持っていない転生者は一般人と変わらない。害など与えられない。

 

「そうか……」

「……霞さん…様子、どうでした?」

 

 そんな事を言われ俺は櫟を見る。すると少しだけだが櫟の表情が悲しげだった。

 やはり彼女からしたら霞は親友の位置に入るから心配なんだろう。その気持ちを是非とも大切にして欲しい。霞のために……

 

「精神的に弱ってたよ」

 

 俺がそう言うと櫟は悔しそうな表情になった。それから俺が見ていることに気付いたのか顔を逸らした。

 

「……櫟」

 

 そんな櫟の頭に手を置く。すると櫟は一瞬体ビクッと動き不思議そうな表情で俺を見てきた。

 

「…霞は……恐らく俺達より精神が若い。それはわかるな?」

 

 俺の言葉に櫟は不思議そうな表情をしながらも頷く。

 

「アイツの近くに一番いるのはお前だ櫟。そして今の不安定な霞を支えられるのはお前だ……櫟…」

 

 俺の言葉に櫟は驚きを示した。恐らく理解が出来てないのだろう。だが今はそれでいい。

 

「霞の事を頼むぞ」

 

 俺はそう言い残し固まっている櫟を置いてその場を去った。

 

「…叢雲……様…?」

 

 

 

 

 

◇◆◇◇◆◇

 

 

 

 

 

「女尊男卑ってバカだよねぇ」

 

 そんな事を俺はISのコアに向かって語りかける。

 

「昔は男尊女卑なんて言う言葉もあった。」

 

 そしてコアから目を逸らし窓の外に見える空と雲に目を移す。

 

「だがそんなモノも時代と共に薄れて行った。」

 

 そして再びコアへと視線を戻す。

 

「人ってのはどうしてこうも繰り返してしまうのかねぇ?」

 

 そんな疑問をコアに問うが当然帰って来るわけがない。そんなこと分かっていても、なんだか言いたくなってしまった。なんとも不思議だ。何故こんな無駄な事を俺はしているのか。

 

「世の中には分からないことだらけ……」

 

 そう言って俺は溜め息をついた。

 

「いや、知らない方がいい事もあるのかな?」

 

 なーんて。俺は何を言っているんだか……

 

「まぁ。ISには否はない。寧ろ評価されるべきだったんだ。君達はね……」

 

 なのに今の世の中にはISを否定する者と支持する者で大きく別れている。

 

「腐っている。この世界の人間はどこまで腐っているんだか………いやどこも一緒か。」

 

 戦争は終わらない。差別は消えない。いつもどこかで意見が食い違う。どこへ行っても同じか……

 

「神が腐っているのか……それとも人間が腐っているのか……神が人間なのか、人間が神なのか……」

 

 それとも神も人間も同じなのか。

 

「この世界に……神はいない。」

 

 誰も助けてくれやしない。

 

「現実は理不尽。そう思わないか『杜若(かきつばた)』?」

 

 その時、コアが一瞬光ったような気がした。もしかしたら俺に返事したのかもしれない。

 そこまで考えあり得ないと否定した。そして俺はまた溜め息をついた。

 っとタイミングを見計らったように携帯の電話がなった。余りにタイミングが良かったため俺はふぅと息をつき電話にでた。

 

「はいはい。九雨(ここのめ)ですよーと」

 

 適当に声をだし俺は相手が何を言ってくるか待つ。そして次に聞こえて来たのは以外な人物であった。

 

 

 

 

 

 

 






人間ってのはホント不思議ですよねぇ


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