この世界に神と呼ばれる奴はいない   作:黄泉路

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第7話

『         』

 

 それは何の前触れもなく現れた。俺にとっては全くの予想外の出来事だ。

 目の前に突然現れる空白のメッセージ。一体これは何だろうか何を伝えたいのだろうか。

 解らない……これの意味する、示すモノが理解出来ない。正直なところ無視してもいいのだが、そうする訳にもいかない。何故ならこのISはあの織斑千冬(おりむらちふゆ)が乗る暮桜(くれざくら)だからだ。

 では何故俺がこんなことをしているかと問われると理由としたら千冬本人に頼まれたからだ。

 『最終チェックはしてくれ』と俺じゃないとダメと言われた時はちょっとびっくりしたけども……

 まぁそんなことはどうでもいい。今は目の前に出てきた空白のメッセージの方が重要だ。

 だが、空白というのは少しおかしい。何かの意味合いを込めているのかそれとも何の意味もないのか。

 ……とにかく自分で考えても深みに嵌まっていくだけだ。

 俺はそう思い一旦思考を切り千冬がいる方を向くが、彼女は瞑想しておりとてもじゃないが話しかけれる雰囲気ではない。話しかけたら何か飛んで来そうだ。

 俺は諦めて溜め息をつきながら暮桜に視線を戻すとそこには

 

『貴方に問う』

 

 そんな文字出たと思ったらすぐに消え次の文字が出てくる。

 

『貴方にとって私達は?』

 

 しばらくその文字が出ていたが気がつくと文字は消えていた。

 俺にとってISは…………技術の結晶?いや違う。(たばね)が言うように娘?それも違うな……

 しばらくうんうんと悩み続けたが答えは出なかった。正直なんとも言いにくい。ISは俺が作り出したモノではないし武器と言い切るのも違和感を感じてしまう。

 ふと千冬が近くで俺を呼んでいるのに気づく。

 

「大丈夫か?」

 

 そんな事を投げ掛けられ思わず俺は苦笑い。

 

「ちょっと思考に浸っていただけだよ。気にしないで」

 

 俺がそう言うと千冬はホッとした表情をする。

 

「そうか。……ところで問題はないか?」

「大丈夫だよ。異常はない。整備がよく行き届いているよ。」

 

 そこまで言って俺は立ち上がり伸びをする。正直ISがメッセージを送ってくるっていう問題はあったけどね。でもこれは操縦者には関係ないだろう。俺へのメッセージだったし………もしかして千冬はこれのために?……いやないな。

 

「すまないな態々こっちに来てもらってまで見てもらって。」

「いやいや気にしないで俺も好きでやってる事だから」

 

 罰が悪そうにする千冬に対し少しばかり微笑んであげる。

 

「じゃあ俺はこれで。試合頑張ってね」

「あぁありがとう」

 

 あまり長くこの場所にいる訳にもいかないので俺はさっさとこの場から去る。因みに俺がいる場所はピットの中。そして今行われているのは第二回のモンド・グロッソ。そう、とうとう来てしまったのだ一夏誘拐事件の日が………

 俺はピットから外へと出る。そして歩きながらさっきのメッセージの意味を考える。

 しかしながら何故暮桜が俺にこんなことを……暮桜と俺は今日が初めて会ったし話したことも無かった筈だ。考えられる事象は1つ『杜若(かきつばた)』からの………いやいや例えそれが可能だとしても何故暮桜はあんなことを?

 思考がグルグルと回る。別の道を通ったと思ったら同じ一ヵ所の場所へ戻ってしまう。これではいくら考えても同じだ。

 俺は考えるのが怠くなり溜め息をつき周りを見た。

 サングラスに黒服を来た明らかに場違いな連中が俺を中心に囲んでいる。正直バレバレだが俺はあえて人気が少ない路地裏へ歩きだした。

 そして路地裏につくとはかったように黒服が俺の目の前へと来た。

 

九雨叢雲(ここのめそうふ)だな。」

「違うと言ったら?」

 

 黒服は内ポケットから1枚の写真を取り出した。そこには(かすみ)(いちい)の姿が写っていた。

 成る程人質はいるわけね………用意周到だな。

 

「はいはい、降参ですよーと」

「理解が速くて助かる」

 

 俺はそのまま両手を上げ降参のポーズ。黒服はそのまま歩き出す。それに俺はついていく。

 俺もホントついてないな。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 やがて連れて行かれたのは何処かの研究施設。そしてその一室につく。部屋の中には女性が一人だけ。女性は俺達に気付きこちらへ寄ってくる。

 

「ご苦労様」

 

 そう言って女性は懐から拳銃を取り出してなんの躊躇いもなくその引き金を引いた。

 拳銃の渇いた音が響き次の瞬間には隣にいた黒服が倒れた。

 

「さぁ時間が惜しいわ。こっちへ来て頂戴」

 

 俺は急かしてくる女性を無視し顔をよく見る。そして確証へと至る。

 

「……久しぶり、母さん。」

 

 その言葉にピクッと少しだけ女性が反応した。

 

「………えぇ。本当にね。」

 

 女性はそれだけ言うとコンピューターを扱いだし目線でこっちに来るように俺に指示する。

 

「今の貴方に拒否権はないわ。だからこれから行う事について何も言わない。それだけは理解しておいて」

 

 やれやれ、俺はとことん神様とやらに嫌われているらしい。まさか自らの母親からこんなことを言われるとはね……

 

「今までの事を少しくらい話してもだめ?」

 

 俺の言った言葉でコンピューターを扱う手が止まる。

 

「……そうね。いい機会だから話そうかしらね」

 

 そう言った母さんは少しだけ悲しそうにした。

 

「あの日、旅行中、貴方のお父さんはね……女尊男卑を掲げる連中に殺された。貴方と霞を残して去る1日前の出来事だった」

 

 俺はその言葉に思わず目を見開いた。

 そうか父さんは……もう…

 

「あの出来事が無ければ貴方逹を残して去る事は無かったわ。でも過去は変えられない。」

 

 母さんは目を伏せまるであの時の事を思い出しているようだった。少しだけ肩が震えてる。

 

「残った私はこの世の女尊男卑を呪ったわ……そして同時に叢雲……貴方の事が心配になったわ。この世の中で男が生きるには辛すぎる。だから私は外国へ渡りある研究をしたの……それを今から行うわ。そしてこれは非人道的よ。これから行う事は私のエゴによって出来たモノ………」

 

 母さんはそこで言い終わると何処からか液体の入った注射器を取り出した。そしてそれを持って俺に近づいてくる。

 

「こんな酷い母さんでごめんなさい」

「………」

 

 そして俺へ注射器を打たれる。俺は何も言わずそれを受けていた。そんな俺に母さんは訝しげに見ていた。

 そうか……俺と霞は捨てられた訳じゃなかったんだな………

 突然激しい胸焼けと頭痛が走り酷い脱力感に見回れる。

 やがて立っていることが出来なくなり俺は母さんの方に倒れてしまった。それを母さんは優しく受け止めた。

 

「………ありが……とう…」

 

 薄れている意識の中で俺は母さんが泣いている姿を見ていた。

 

 

 

◇◆◇◇◆◇

 

 

 

 

 

 目が覚めるとそこは見たことがない天井。俺は今だ頭痛がする頭を働かせ、ここが研究施設だと思い出す。そして気怠い身体を起こし辺りを見渡す。

 そこには静かに眠る母さんの姿。俺はそこに近づき母さんの胸ポケットに手紙がある事に気付く。思わずその手紙を取り目を通す。

 

『叢雲。この手紙を読んでいる時にはもう私はお父さんの元へ行ったと思います。私は決していい母親ではなかった……寧ろ最低な事をしたと思ってます。これまで一度も貴方と霞に愛してるって言えませんでした。正直遅すぎるかもしれませんが、お母さんとお父さんは九雨叢雲と九雨霞を心から愛していました。

追伸…織斑一夏と霞が閉じ込められている部屋のカードキーを同封しておきます。……どうか強く生きて』

 

 読み終え俺は手紙をグシャっと握り潰した。

 

「………ふざけるなよ」

 

 自分の感情が高ぶってるのが解る。頬に熱いモノが流れているのが解る。怒りや悲しみや憎しみなどが自分の中でごちゃ混ぜになるのが解る。

 

「ざっけんなよ………せっかく会えたのにこれかよ……………くそっ!…なんだよ、なんなんだよ……これはよぉ………!……なんで…なんで行ってしまうんだよ……最後にこんなもの残して行くなんて……マジでざけんなよ……………………」

 

 それから俺は一頻り泣いた。やがて落ち着いてくると、追伸に書かれていたカードキーを思い出す。手紙があった場所を見るとそこに1枚のカードキーがあった。

 

「これか……」

 

 そのカードキーを持ち立ち上がるとコンピューターの画面が点滅していることに気付きそれを見ると。この施設の見取図がそこの一部が点滅していた。

 ここに一夏と霞がいるのか……全く、最後の最後まで用意周到っなこったい。

 そして俺はその部屋から出た。

 父さんと母さんの事はもう終わった。振り返る必要も無くなった。後はここから脱出するだけだ。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 暫く走り続け漸く目的の部屋へとつく。そして素早くカードキーを通す。開かれる扉を抜け中入るとそこに手錠で繋がれた一夏と霞がいた霞は気絶しているのか眠ってるみたいだ。こちらに気づいた一夏は何故かポカンとして間抜けな顔をしていた。

 一先ず俺はそれを無視し2人が繋がれてる手錠を外しにかかる。

 

「た、助けてくれるのか?」

 

 そんな事を言う一夏を訝しげに見ながらも俺は素早く手錠を外していく。

 

「脱出するぞ」

「お、おう」

 

 時間が惜しいので俺は霞を担ぎ上げ廊下へと向かう。チラッと後ろを見るとちゃんと一夏もついてきていた。

 

 暫く歩き漸く出口が見えてきた。どうやらここは一本道となっている見たいで出口から俺達がいるところまで扉がいくつもある。

 

「で、出口だ」

 

 さすがに歩き続けた一夏は疲れていたようだが出口が見えて少しばかり元気になったように見えた。

 

「いたぞ!!あそこだ!」

 

 声に反応し後ろを見ると白衣を来た連中が銃を持ちこっちに走って来てる。

 

「足を撃て!!絶対に殺すなよ!!」

 

 男の激が飛び今度は鉄の玉が飛んでくる。

 ホントに撃って来やがった!?つかなんでこいつら武装してんだよ!

 俺は二人を守りながら走るがここでも天は味方をしてくれないわけで、1発の銃弾が俺の足を貫いたを理解した時には俺はその場に倒れた。

 

「くそ……まじかよ………」

「お、おい!大丈夫か!?」 

 

 霞は前に投げ出されるがまだ目が覚める様子はない。一夏が近づいてくるが手で制す。それを見た一夏が止まる。

 霞が目覚めてないのがせめてものの救いだな……

 

「いけ!霞を連れて走れ!!」

「で、でもよ!!」

 

 不安そうな目でこっちを見るが今、この状態で悩んではいけない。

 

「行くんだ!!後で必ず合流する!」

 

 未だ迷ってる一夏に叱咤をかける。そして俺の気持ちが伝わったのか一夏は霞を担ぎ、出口へ走っていった。

 

「これじゃあ霞に申し訳が立たないな。兄として失格だ。妹に心配ばっかりかけてしまって………」

 

 そうして俺は気持ちを切り替える。日常の俺から狂った俺へと変化させる。頭をクリアに、全てを入れ替えるんだ。

 

「どうにも久しぶりだからな。恨むなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 俺は壁を背に寄りかかり一息をつく。だがたったそれだけで身体から激痛が走る。

 

「………く…くく……ついてないな、ホント……」

 

 掠れた声で思わず苦笑い。俺の足元に転がる色んなモノを適当に見渡し。やがて目を閉じる。

 俺はここで終わるのだろうか?まぁそれもいいかもしれない。もう少しだけあいつらと居たかったが……

 

「……にしても………予想が…当たる…………なんてね………」

 

 一番最悪な予想がこうも当たってしまうとは本当に俺の予感は洒落にならん。

 

「やあやぁ!皆のアイドル束さんだよぉー」

 

 丁度意識が無くなりかけた瞬間に現実に引き戻された。

 

「あれ、もしかして一足遅かったかな?」

 

 相変わらずなハイテンションな声を聞きながら俺はゆっくりと目を開ける。

 

「……久しぶりだ………………」

「そうだねー約4年ってところかな?」

 

 もうそんなになるのか、以外だな。白騎士事件が起きてから会う回数が減り、ここ数年会ってないと思ったらもう4年か………面白いもんだな。

 

「…そーくん……私は貴方を死なせはしないよ…………」

 

 だんだんと薄れていく意識の中、俺は確かにそう聞こえた。

 

 

 

 

 

 




今回の話しはまぁうん。
第一回モンド・グロッソをどうしようと悩んだ挙げ句
結局全捨て。
そして間を開けすぎました。
悩んだ期間は約半月。
この話しを書いたのは約4時間
かかりすぎぃぃ
はいスミマセン
取り敢えず一章はこれで終わりです。
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