ミノタウロスの♀でダンジョンの中ボスを務めているメイちゃんはそろそろ番が欲しい   作:ムラムリ

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メイさんは腹を殴って跪かせてゲロ吐いているところを見下したい 4

 30日が経った、その日の夕方。

 賭け試合を観戦する為に港町からやや離れた場所へと向かう人達の中に、メイとウト、それからエロクーも居た。

 

「賭け試合のルール、というか取り決めに関して改めて説明しておこうか。

 基本武器はナシ。あっても攻撃力を減らす為のグローブとかだけ。防具はアリだけど。

 それから参加する人は全員、一時金を出す必要があって、まあ……誤って殺してしまった場合の蘇生代だな。最初と、灰になってしまった時の2回分。

 とりわけミノタウロスとかのデカい獣人や、魔獣達は手加減したつもりでも殺してしまう事が多いから。

 そして、殺してしまった場合は勝っても負け扱い。1回で蘇生が成功しても一時金は戻ってこないし、おひねりも貰えない」

「ふぅん。因みに、魔法とかは?」

「使って良いけれど、観客に飛び火したら同じく負け扱い」

「分かった」

 

 エロクーは、物静かに説明を聞くメイをじっと見ていた。

 胸をサラシで留めた以外は、いつも通りの最低限の布で秘部を隠したくらいの格好。貰った腕輪もしていなかった。

 この30日、宿に帰って来ればすぐ泥のように寝ていたメイの体は、意外にも以前と比べて変わっていない。どちらかと言えば組み手をしていたウトの方がより精悍になったというか、疾さにより磨きが掛かったように見えた。

 ただ、見た目は変わっていないにせよ、内実が変わっていないとは微塵も思えない。体の筋肉が肥大化しないまま、より濃くなったというべきか、更なる破壊力と機動力をその体に持ち合わせる事に成功したような。

 

 ……毎日ワタシの稼いだ金以上に飯も食っていたし、確実に体はより重くなっているはずだろう。

 

「それぞれの同意があれば、武器アリでの本当の殺し合いだってやったりもするが、メイさんが交渉しようとも、スィニチさんは十中八九受けないだろうな」

「別に殺したい訳じゃない」

「ああ、そう……?」

「いや、確かに私、何度も何度も殺すところを想像して鍛えていたけどね。

 そうすると集中出来るってだけで本当に殺すつもりじゃないよ。

 ただ……殺すつもりじゃない戦いなんて、ウトとが初めてだったから、間違えちゃう可能性はかなりありそうだけど……」

 

 ああ、要するに、メイさんは絶対に勝てないユーリさんや、後はヴァンパイアの分身とかと戦いまくって強くなったのか。

 ユーリさんの全力を見た事がない、とかメイさんは言ってたし、上手く手加減しつつ実力を引き上げていったのか。

 

「そもそも頑張ってきたけど、スィニチに勝てるかも分からないし、それに…………いや、なんでもない」

 

 おひねりが貰えなくなってまで殺す価値はない、とか続けそうだった。

 

*

 

 丘を登り、そこにあったすり鉢状の窪地を軽く整備したところが賭け試合の場所だった。

 メイは既に話題になっているらしく、道中からチラチラと見られる事が多かったまま、戦う側の人として参加登録をする。

 その受付の目敏い顔をしたヒューマンがこちらを見てきて。

 

「何?」

「ああ、いや、本物だなあって思いましてね」

「ふぅん」

 

 別に嬉しくないんだけど。

 

「ただ、すみません、そのままじゃ大半の方とは賭けにならなさそうなので、特殊なルールで戦う事になると思いますけど、よろしいですか?」

「スィニチと戦わせてくれるなら何でも」

「ああ、それは約束します」

 

 それからメイは振り返って。

 

「ウトは参加しないの?」

「……金がない」

「ワタシも余り持ってきてはないぞ?」

「そっか、残念」

 

 エロクーはウトの顔を見た。

 メイとも戦わされるかもしれない事に恐怖して敢えて金を持ってきていないのではなく、単純に金がなさそうだった。

 メイが参加者達の集まる場所へと連れられて行ってから、聞いた。

 

「メイと組み手をしまくって慣れたのか?」

「……軽く100回は骨を折ったし、グローブなしのパンチだったり防具をつけてなかったら死んでたなって事も大量にあったけど。

 俺もメイさんの首筋だったり、脇や太ももの、太い血管の通っている場所に触れる事は何度も出来たから。それもメイさんが俺に攻撃を当てた回数以上に。

 今の俺にもメイさんを倒せる可能性がある、っていうのが自信になったかもなー、って」

「……羨ましいな」

「エロクーは働いてて何か出来るようになった事とかあるのか?」

「魚を少ない魔力で冷凍出来るようになった」

「……結構、金もあったり?」

 

 エロクーは先程までどこに隠していたのか、大量の金の入った別の袋を取り出してじゃらじゃらと鳴らした。

 

「今日は楽しむ。

 だが、ウトとメイの船代までは出さないぞ」

「まあ、それで良いよ」

 

 

 

 そして、仰々しい開幕と共にまずメイはサハギン10人と戦わされる事になった。

 エロクーは早速全額をメイに賭けていた。

 

「1.1倍にもならなさそうだな」

「この儲けだけはウトに渡してやろう。ウトも楽しめ」

「……どうも」

 

 サハギン達は10人居ようともメイを前にして怖気付いていて。

 メイは少し迷う……どうやって殺さず倒すか考える素振りをしてから何故か屈んで、敷き詰められている砂利を両方の手に握り締めた。

 

「あ」

「あぁ……」

 

 2人は、鉄球を投げつけられたヒューマンの頭が弾け飛んだところを同時に思い出していた。

 

 そんなメイにサハギン達が連なって襲いかかるも、最初の1人の飛び蹴りを避けつつ、メイが砂利を投げつける。

 1つで3人以上がのけぞって地面に倒れるのを、2回。砂利がぶつぶつと体に食い込んだ場所から血が滲み出していき、のたうち回る。

 最初に飛び蹴りを仕掛けたサハギンが振り返ってそれを目にした時には、同じく振り返ったメイが軽く足払いをしたところで。

 それでも転ぶどころか、足が変な方向に折れ曲がった。

 残り僅かになったサハギン達は、思わず足を後ろに下がらせるも、メイがそれ以上何かをする前に、試合終了を告げる鐘が鳴った。

 

「鍛錬の成果を見れるのはまだまだ先になりそうだな?」

「だって元々、こんな港町にメイさんより強い人が居る事自体まずない事なんだからさあ……」

 

 おひねりも、メイよりも、そのメイの試し台にされた哀れなサハギン達に多く出ていた。

 

 

 

「……サハギンってあんな脆いんだ。危なかった……」




人間だけ人間って書くの違和感があったのでヒューマンと書く事にしました。
獣人より体は弱いけど、獣人より何にでもなれる可能性が高い。
サハギンはゴブリン寄りな、繁殖力が高くて個々は弱い形だけれど、まあ他の種族全体から敵として見られる程でもなかった、というイメージ。
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