ミノタウロスの♀でダンジョンの中ボスを務めているメイちゃんはそろそろ番が欲しい   作:ムラムリ

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メイは慰める

 風を受けて帆船はゆったりと海原を進んでいく。

 メイは気持ち悪さも多少は覚えたものの、そこまで酷くなる事もなく、ひとまず甲板で海風を浴びながら、憂鬱にしているエロクーの胴に凭れていた。

 エロクーも一人にしてくれと言っていたものの、メイも無言でいるままなので、暫くはじっとそうしていた。

 そうして、暑い日差しも少しずつ和らいでいく頃。

 

「クラーケンだっ!!」

 

 檣楼に立っている見張りが叫んだ。船内に待機していたリザードマン達が飛び出してきて、水平線の近くに見えたクラーケンを視認すると、笛を吹く。

 

 ピィーーーーッ!!

 

 笛を吹き終えると、迷う事なく海へと飛び込んでいった。

 帆船はそのまま進んでいく。

 体を起こしたメイは斜め後方へと見えていくリザードマンを眺めて呟く。

 

「誰か呼んだのかな?」

「だろうな」

 

 流石に数を揃えているとは言え、リザードマンだけでは力不足のようだった。

 程なくして、水飛沫を上げながらやってきたのはシーサーペントが数体。それに乗って、リザードマン達は一気に加速してクラーケンへと向かっていった。

 

「護衛代が高くなる訳だな」

「うん……」

「……? 何か気になる事でもあるのか?」

「うーん。慣れてるとしてもさ、あのリザードマン達がこれからするのって、死んだら本当に蘇生が出来るかどうかも怪しい戦いなんでしょ? ダンジョンで戦うのよりもっとシビアな。

 なんか、それにしてはいつも通り頑張るかあ、って感じだったから」

「緊張感がなかった、と」

「ちらっと見た程度で断言出来る事じゃないと思うけどね。何度も戦って慣れているだけかもしれないし」

「いや……もしかすると、もしかするとかもしれない」

 

 ウトがやってきて、周りに聞こえないような小さい声で言う。

 

「漁獲もかなり減ってるんだけどさ、どうにも悲壮感も薄くて俺もちょっとそこはかとなく漁師をやってる親父とかに聞いてみたんだよ。

 したら、給料とかはきちんと補填されてるって聞いてさ。魚は獲れてないのに、もう暫くずっと。そんな余裕、港町全体であったかなあって疑問に思ってたし、親父も上辺だけ大変そうだなあって言いつつも、そこまで悲観的に思ってなさそうだったし」

「ワタシが氷の魔法が上手くなった理由を言うんだが、塩漬けするより氷漬けにする魚の数が増えていたからなんだ。

 なら、そういう高値で売り捌く数が増えただけじゃないか?」

「そういうのって、エロクーのような空を飛ぶ魔獣だとか、それかもしくは馬より長く速く駆けられる魔獣だとか、遠くまで一気に運べる誰かが一緒になって高い価値を出せるものでさ。

 だから、そういう手間賃まで含めたら、意外と懐に入ってくる金はそんな変わらないんだ」

「ふぅん」

「だから儲けが増えたとしたら、やっぱりこの船なんだよな。運賃も倍以上になってるって言うなら、貨物に掛かる金も倍以上になっているだろうし。

 それで賄えているのかもしれない」

 

 メイは辺りを見回して、一応誰かに聞かれていない事を確認する。

 視線くらいはあるが、別にそれはクラーケンが見える前から変わらない。

 

「えっと、そうなると?」

「リザードマン達は、クラーケンと知り合いの関係性なのかもしれない。

 楽に美味い汁を吸う為に自分達を噛ませて、要するに……マッチポンプを仕組んでいるのかも。

 何にせよ、それで今は上手く回ってるんだろうが……」

 

 そこまで言っても、別にメイは感情を表に出したりしていなかった。

 

「メイさんはそれが事実として、別に何か思ったりは?」

「……めんどくさい。運賃が10倍とかになってたらもっとムカついていたと思うけど、まあ倍くらいなら、めんどくさいで見なかった事にする」

「ああ、そう……」

「ウトは?」

「いや……俺もだからと言って首突っ込んだり確かめたりはしないな……。そもそも漁師やってねえ俺が探る事じゃねえし」

「……エロクー?」

「な、なんだ?」

「探ろうとしないでね?」

「分かりました、分かりました」

 

 ……釘を刺しておかないと、探るまで行かなくとも変な事を言いそうだったな。

 

 水平線の近くでは、水飛沫が大きく上がっていた。

 本当に戦っているのか、戦っているように見せかけているだけなのかは、分からなかった。

 

*

 

 リザードマン達は、その後シーサーペントに乗って誰も欠けずに帰ってきた。僧侶が居るからなのか、単純に傷を負わなかったのか、誰も怪我らしい怪我もしておらず。

 ただ、疲れたのは確かなようで、猫背になりながら船内へと帰っていった。

 そしてそのまま夜になっても、エロクーは大して物も食べずに甲板でぼうっとしていた。

 夜飯を食べたメイが歩いてまたエロクーに寄りかかる。

 ウトも少し遅れてやってきて、同じようにした。

 

「……一緒に厩舎で寝てたの、もう結構前みたいに思える」

「だな」

 

 実際、もう旅立ってから100日は経っている。

 メイは角がエロクーの胴にめり込まないくらいに、少しだけ首をエロクーの方に向けて聞いた。

 

「……お腹、減ってない?」

「……ワタシの事、心配するんだな」

「まあ、うん。エロクーの事は性格悪いって今でも思ってるけど、どうでも良いとまでは思ってないから」

「……。これから、ワタシはどうなるんだろうな?」

「何? いきなり」

「いや、ワタシがメイに付いて行く理由はダンジョンで働くのにも飽きたからという理由だけだったのだが、そうやってワタシがワタシのままだったら結局振られるのも変わらないのだろうなと思ってな」

「…………私もこれから、好きになった人に振られたりするのかなあ?」

「……」

「……」

 

 エロクーもウトも有り得そうだと思ってしまうが、やはり口にはしない。

 

「ウトは何かないの?」

「えっ、俺? ……いや、俺は、そうだな。

 ダンジョンに挑むようになって、悪い話ばっかり聞くようになってしまったんだよな」

「悪い話?」

「街のダンジョンの中で、色恋沙汰が発展して派手に仲間割れして、先に死んだ奴が蘇生場所で待機して、後から死んだ奴を改めて殺しただとか」

「うわぁ」

「ああ、ワタシも聞いた。強制的にパーティ解散で、三又していた男はこうして船に乗せられたとか。

 そんな泥沼、実際見ていられたら楽しかっただろうなあ!」

 

 若干空元気なものの、少し元気を取り戻していた。

 

「まあ、私が振られたら話聞いてもらおうかな」

「そう言えば……いや、何でもない」

 

 ウトの事かな。

 まあ、言わないよりは言っておいた方が良いのかな。

 

「ウトは、壊れちゃいそうだから」

「あ、ああ。俺もそう思う」

「それなら、壊れない体だったら?」

「えー……んー……? いや、ムキムキなウトなんてウトじゃないと思う」

「まあ…………そうだな。

 とにかく、エロクー。干し魚とか持ってきてあるから少しは食え。体調崩されたら俺もメイさんも困るんだから」

「分かった分かった」




檣楼:
しょうろう
艦船の帆柱の上部に設けた物見やぐら。
漢検一級相当ですって。

こういうだらだらした感じを長く書きたい感じもあるんだけど、そればっかりしてても間延びするだけだからなーってフクザツな気持ち。
それに振り切ったのでアレとかアレとか思い当たる作品もあるけど、まあ実際そうするにはメイちゃんはキャラとして濃過ぎるというか、周りが放っておかないので。

メイちゃんの見たいところ

  • 容姿の克明な描写
  • 戦っているところ(圧倒、虐殺)
  • 戦っているところ(苦戦、敗北)
  • 食べているところ
  • のんびりしているところ
  • ブチギレているところ
  • 年頃なところ
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