ミノタウロスの♀でダンジョンの中ボスを務めているメイちゃんはそろそろ番が欲しい   作:ムラムリ

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メイは計算が苦手

 互いにカードの背中と、顔を見る。

 異種族の、しかも特殊なリザードマンの顔から感情を読み取るなんぞ大して出来ないが、そこは格闘家として体全体から感情を……読み取れない。

 

「……」

 

 心無し気に頭の中で稚拙な論理を組み立てて出したカードは、案の定と言うべきか、目の前のリザードマンに笑みを浮かばせた。

 

「当たりだ」

「あーくそっ」

 

 あれからクラーケンが再び見える事もなく、翌日は退屈な航海が続いている。

 そんな中、主にメイに興味があるのだろう、リザードマン達が簡単なカードゲームに誘ってきた。

 小銭を賭けての、別に何度負けたってそう大した金額にはならないものの、ひとまずウトがそれに乗って。

 ウトは負けが込んでいた。

 

「ワタシにもやらせてみろ」

 

 プレイルームに体を捩じ込んできた、ウトの背後に居たエロクーが続いて。

 

「確率の計算とか出来るのか?」

「算学が出来なかったから、ワタシのフロアボスとしての給与がいつの間にか3割引かれていたのでね。

 必死に勉強したよ」

 

 ただ、感情を隠すのが下手だったので相変わらず負けた。

 

「メイは?」

「えー……計算はあんまり得意じゃないんだけど」

「感情を隠すのは得意だろう?」

 

 リザードマンが言ってくる。

 

「何でそう思うの?」

「そりゃあ、スィニチとの戦いを俺達も見ていたからさ」

「……まあ、やってみるけど。ウトとエロクーは私の手札見ないでね」

 

 感情は隠せていたけれど、カードの出し方が余りにも素人過ぎたので負けた。

 

*

 

 シーサーペントを呼び寄せた笛を首から提げている、オットーと言うそのリザードマンがリーダーのようだった。

 その、とりわけデカい顎は、メイの頑丈な骨すらも簡単に食い千切りそうな迫力がある。

 そんな顔とは裏腹に、得た小銭をちゃらちゃらと手の平で遊ばせながら、自然と雑談となった。

 

「ま、オレ達は東のダンジョンに勤めている身でもあってね。

 単純に西のダンジョンから来たメイってミノタウロスの事が気になったんだ」

「何か聞きたい事でも?」

「東のダンジョンに挑みに来たんだろう?」

「まあ、そうなるのかな、多分」

「? ……とにかく、そうなったら久々に本業をする事になるかなって思ってな」

「因みに、何階担当なんです?」

 

 ウトが口を挟む。

 メイは、東のダンジョンでは30階相当らしい。

 

「俺達全員で、35階担当だ」

 

 ……10人以上居るのに?

 

 メイが続いて聞く。

 

「地形は?」

「俺達に最も適した環境を用意して貰っている」

「……ズルい。私なんて石造りの薄暗くてジメジメした場所なのに」

「はっはっは。まあ別に色々あって良いだろう! 本来の目的からしたら俺達みたいなのも、メイみたいなのもあって然るべきだからな!」

「本来の目的、かぁ。本当に災厄ってまた来るのかな?」

「1年後だろうと10年後だろうと100年後だろうと1000年後だろうと備えない理由にはならない、って事らしいぞ。戦争をしない国でも軍隊は持っているようなもんだ。

 それとも何だ、災厄が来て欲しいのか? 想像の埒外の事柄ばっかり起きるような、そんな不安定な時代を待ち望んでいたり?」

「いや、ただ聞いてみただけだけ。話を聞いても、そのどれもがあんまり信じられないから」

「それは、だよなあ。リザードマンなんて、元々ゴブリンみたいなどうしようもない害獣だったらしいなんて、俺達も信じたくねえからな」

「そうなんだ?」

「聞かせたい話でもないから、気になったら勝手に調べてくれ」

「……うん」

 

 周りで他のゲームに興じているリザードマン達も聞き耳だけは立てているのか、それだけであんまり良い雰囲気ではなくなっていたから、本当に聞かれたくないのだろう。

 ちょっとばかり居心地が悪くなってカードを弄っていると、オットーは少し怪訝そうに続けた。

 

「それで、他に聞きたい事はなかったりするのか? クラーケンの事とかさ」

「とりわけ私は海に入ったら沈んじゃうし、グリフォンだってワータイガーだって水の中で戦えるような種族じゃないから」

「ああ、それもそうか」

 

 メイ自身は平静を保って答えたが、後ろの二人の表情が正直気になって仕方がなかった。カード遊びでの下手さも伴って。

 だからひとまずメイが会話を続ける事にした。

 

「でも、一つだけ気になって」

「なんだ?」

「あのクラーケンと、本当に武器を使って戦ったの? それとも、近付かせないように威嚇したりで留めた?」

「そりゃあ、もちろん威嚇だけさ。あんなのと本当に戦ったらこっちにも確実に死人が出る。

 だから、もし襲いかかってきたら、お前の脚も頭もただじゃおかねえぞってひたすらにアピールするのさ。

 あいつの知っている毒をちょろっと海に流して……もちろんシーサーペントには効き辛い、効かないような毒でな、それで俺達は毒を持っているぞ、食えないぞ、その毒をお前の体に流し込むぞって宣言したり、他にも色々な」

「でも、その為には近付かないといけない?」

「そうだな。それが疲れるところだ」

「それで、もしクラーケンがこっちまでやってきたら、クラーケンはこの船をぐちゃぐちゃにする?」

「さあな。アレだって一応魔獣だ。アレだけでかけりゃ考える頭も俺達以上に持っていてもおかしくねえし、そうじゃねえかもしれない。

 確かめるにせよ、お相手さんはちょっとじゃれるだけでこっちを殺せると来た。

 だから、俺達程度じゃこうやって威嚇し続けるしか無えんだよ」

「まあ、そうだね」

「更に言っちゃあなんだが、クラーケンってあれでいて貴重というか、数の少ない魔獣らしくてな、明確な被害が出ない限りは駆除には踏み切れねえんだとよ。

 要するに、クラーケンが駆除される時は、俺達がやらかして死んで、この船もぶっ壊された時って事だ」

「クラーケンの命って、私達の命より重いんだ……」

「そういうもんさ」

 

 オットーは大袈裟に溜息を吐いた。その大きな口が小さく見えるくらいに。

 メイからすれば、クラーケンの事柄の全てが計算づくで、儲けようとする為にマッチポンプを仕組んでいる、とは思えなかった。




オットー(10月)

要するにワニ型のリザードマンです。
ニホントカゲベースだってカメレオンベースだってコモドオオトカゲベースだってワニベースだってリザードマン。

確かファンタジーの原典的にはリザードマンって雄しか居ないとかなんとか。
なので、もしそうなると手頃な雌を攫ってリザードマンを産ませて繁殖していたんかねえ、とかそういう事を思ったりしていた時期がありました。

メイちゃんの見たいところ

  • 容姿の克明な描写
  • 戦っているところ(圧倒、虐殺)
  • 戦っているところ(苦戦、敗北)
  • 食べているところ
  • のんびりしているところ
  • ブチギレているところ
  • 年頃なところ
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