ミノタウロスの♀でダンジョンの中ボスを務めているメイちゃんはそろそろ番が欲しい   作:ムラムリ

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メイは次にワタシを殴れる時を待ち望んでいる

 3日目の朝に、東の大陸に着いた。

 地平線の近くに、その50階建ての東のダンジョンが見え、そこまでずっと街並みが広がっている。

 街のダンジョンとは比べ物にならない、この国最大の都市。

 

「すごいな……」

 

 潮風を浴び続けてすっかりベタベタになった毛皮をさっさと洗いたい気持ちも、久々に揺れてない地面に足をつけて浮き袋を外せる心地良さも、新鮮な野菜や穀物を食べたい気持ちも、どれも目の前の光景に圧倒されてしまった。

 

「ワタシも、人には敵わないなって改めて認識するよ。

 魔獣が人一人より基本的に強いと言っても、こんな……こんなものはどれだけ結束したとしても、作り上げられない」

「俺だって想像つかないよ」

「……私達、田舎者だったんだね」

 

 呆然としていると、後ろからオットーが大声で話しかけてくる。

 

「別に良いだろう! 俺達だって元々田舎者だ!

 ほら、さっさと行った、ダンジョンに挑むならさっさと予約しておいた方がいいぞ。あんたらなら20階くらいからのスタートになるだろうが、それでも待つ時は3日から10日くらい普通に待つからな!」

「色々ありがとう。じゃあ、また……近いうちに」

「おう、待ってるぞ!」

 

 そう言って、続くリザードマン達もぞろぞろとこちらを見て、時に軽く挑発しながらさっさと歩いて行ってしまった。

 

「……ちょっとムカついた」

「そうですか」

 

 もう慣れたウトは軽く流しながら、そのオットーに紹介された宿の地図を見てメイとエロクーを先導し始めた。

 地図を読むのも、ウトが一番慣れていた。

 

*

 

*

 

 今は、皆、お金に余裕がある。

 メイは宿代がなくなり、その上で僧侶としての仕事に励んだから。

 ウトは道場での師範代として、メイスィニチとの戦いを見て新しく入門した人達も増えたことにより。

 エロクーは漁港で稼いだ金を、振られる原因にもなった賭け試合で増やして。

 

 魔獣も泊まれるそこそこ良い宿に泊まって、お腹いっぱい食べて、昼過ぎからぐっすり寝て。

 夜に目が覚めてしまった。

 

 

 

 それでも、夜空に星があんまり見えなくなるくらいに明るい。

 都市の外れの夜でも人の騒めきは多くて、どれだけ人が居るかを想像するだけでもぞっとしてしまいそうな程。

 でも、外に出てみる事にした。

 眠れるにしても、もうすっかり疲れは取れていたのと、昼の人の賑わいは今の比ではない事は分かりきっていたから、夜の内に軽くでも探索して慣れておこうという気持ちもあった。

 

 ……それに、港町でもメイさんを襲おうなんて人は結局1人も居なかったからな。

 

 メイの敏感な気配察知の前では、スリも近付くより前に悉くを察知されていた。

 

 涼しい潮風。ざっくばらんな人通り。人々を眺めると、港町や田舎に住んでいる人達よりどうにも細い人が多い。

 頭だけを動かして生計を立てている人が多いからだろうけれど、メイにはどうにも想像が付きにくかった。

 

「部屋の中に閉じこもって毎日紙と睨めっことか、草や木の皮をごりごりし続けるとか、私には無理だなあ」

 

 港町では付けていなかったマスクを身につけて、くぐもった声でエロクーが聞く。

 

「メイはそもそも大金が欲しいのか? いや、街での散財っぷりはワタシもウトも知っているんだが、そもそも頓着してないだろう」

「そう言われると、うーん……あるだけあった方が良いとは思ってるけど。まあ、いつでもお腹いっぱい食べられる余裕があれば良いかな」

「……相当必要そうだな」

 

 特に目的もなくぶらぶらと。飯処では人々が酒を飲んでいる。魔獣も居るには居るが、やはり多くはない。

 魔獣の腹を料理で満たすとなると、メイの比ではない金が掛かる事は明らかだったし、実際飯処に居る魔獣が嗜んでいるのは酒が主だった。

 ついでに、万一暴れた時用にか、確実に麻酔か何かを塗られている弓矢やらが常備されている。

 

「メイさんは酒は飲むのか?」

「お酒、美味しくない」

「俺も」

「……」

 

 馬鹿にしようとしてやめたような素振りをエロクーから感じた。

 ……次に何かやらかしたら、欠損も治せるようになったんだから思いっきり殴れるのに。

 

「……5年後くらいにまた嗜んでみると良い」

「無難な事言っちゃって」

「…………」

 

 エロクーは、今度は嫌な顔を隠さなかった。

 

 

 

 都市の中央に聳え立つ50階建てのダンジョンはどこからでも目立つ。

 相変わらず最低限の布くらいしか纏っていないメイも目立ってはいるものの、同じミノタウロスの男すら手玉に取れるに違いない雰囲気を持つメイには、酔っ払いでも手を出すような人は居なかった。

 

「一応聞くけど、ウトもエロクーも一緒に挑む、で良いんだよね?」

「そりゃあな」

「そうだな」

「……だけど、問題があるんだよね」

「盗賊か」

「うん」

 

 僧侶はメイが出来る。魔術師はエロクーが出来る。ウトもその疾さを生かして下手な盗賊より索敵に関しては役立つだろう。ただ、宝箱だけは全員どうしようもない。

 ウトも街のダンジョンでは、雑に開けて爆発とかしないものしか獲得していなかったという。

 

「そもそも俺さ、宝箱にどういうものが入ってるのか知らないんだけど、メイさんは色々知っていたりするのか?」

「んー……言って良いのか分からないから、かなりぼやかすんだけど、きちんと良いものは用意してるよ。それこそ、とりわけ西のダンジョンでは、命を賭けるに相応しいようなものをちゃんと揃えてたよ」

「言えないなら言えないで良いんだけど、メイさんの持つ斧槍やグローブにみたいなのも?」

「んー……まあ」

「その質でウトやワタシが身につけられるものがあるなら、それは流石に唆られるな」

「明日、ダンジョンに申請する時、色々聞いてみようか」

「そうだな」

 

 それからもう少しだけ歩いていると、閉店間際の雑貨屋があるのを見かけて入ってみた。

 船の中で遊んだカードが売られていて、それと小腹を満たすようなものを買って帰る事にした。

 

「そう言えば、結局あのオットー達は多分何も変な事してないよね」

「だとは思うが、同時にシーサーペントとクラーケンが組んでたら嫌だなー、とも思った」

「まあ何にせよ、あからさまに何かやった瞬間、もっと上の人達が懲らしめに行くでしょ」

「ワタシみたいにか」

「エロクーみたいにね」

 

 宿に戻ってのカード遊びは、何ともまあ低レベルな争いになった。




港町では結局スィニチに一回腹パン(内臓破裂)しただけですからね。

メイちゃんの見たいところ

  • 容姿の克明な描写
  • 戦っているところ(圧倒、虐殺)
  • 戦っているところ(苦戦、敗北)
  • 食べているところ
  • のんびりしているところ
  • ブチギレているところ
  • 年頃なところ
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