ミノタウロスの♀でダンジョンの中ボスを務めているメイちゃんはそろそろ番が欲しい 作:ムラムリ
考えなきゃいけない事がたくさんあった。
西のダンジョンでは、硬い地面、そう広くない通路。味方は居ない。殺すにも殺されるにも自分だけが責任を負う。
今は、天井と壁、柱こそあれど、どこまでも広い空間。その中で足場はとても狭く、柔らかくて湿っている。味方だって居る。殺すにも殺されるのも自分だけの話じゃない。
覚醒しているからか、とても思考ははっきりとしている。それでも考えるべき事の量には追いついていない。
……パーティで戦うって、想像以上に大変なんだな。
そして、ここで私がやらかしたら、誰も蘇生出来なくなるまで食われてもおかしくない。
本当にあの戦士。仲間が壊滅したからって言って、その後全員蘇生はされるのに、私は殺した後にぐちゃぐちゃにしたりしないのに、あんなに絶望してそのまま昇天しちゃって。
ああにはならない。絶対に。
リザードマン達の殺意は、水の中に閉じ込められたまま感じられていない。
濁った水面を幾ら見つめても、エロクーが凍らせた範囲外では揺らぎすらない。
あの形のリザードマンは水中で長時間呼吸を止めていられるとは知っているが、それがどこまでかは知らない。
けれど、後少し。
目の先には曲がりくねった、細い道。
メイは斧槍に属性付与をした。
「私が二度、斧槍を振ったら、一気に走って」
「分かった」
「ああ」
「マイマもしっかりしがみついててね」
「は、はい!」
メイは白く光る斧槍を掲げ、リザードマンが潜んでいそうな先の水面に斬撃を飛ばした。
ずおっ!!
地面を抉り、水面を深く切り裂き、赤い色が見えたのが二発目を振るう前に見えた。
同時に氷を破る音が、両脇から。
メイは身を捩らせて、右の方に斧槍を振った。それを見てエロクーは左に強く冷気を放ち。
「走って!!」
*
駆ける、駆ける。一歩一歩の度に階段が近付いてくる。
後ろで水飛沫が上がる音、振り向くとウトが投擲された槍を腕で弾いていた。
改めて斧槍に属性付与を、している余裕がない。いつ足を掴まれたり噛まれたりするか分からなかった。
「い゛ギぁっ」
エロクーの悲鳴。後ろ足に手が伸び、噛みつかれていた。ウトがその頭に爪を突き刺した。
それでも引き剥がすのに時間が掛かりそうで、メイが助けるか警戒を続けるか逡巡してしまったその時。
「舐め、るな!」
エロクーが吼えるように叫びながら、魔力をより強く放出した。足に纏わりつく冷気と共に水面が一気に広く凍りつき、それを避けるように前後からリザードマンがそれぞれ2体ずつ水中から飛び出して来た。
「Grrrrrrrr......」
「Hisssssss......」
まるで元来の獣そのものの唸り声を上げながら、リザードマン達は槍を構えてくる。
そしてその中にオットーは居なかった。メイやウトが殺した中に居たのか、同士討ちで死んだのか、それとも……まだ潜んでいるのか。
「前の2人は私がやるから、後ろはお願い」
そこまで言って、メイは気付いた。私より先にエロクーが狙われた。
加えて、メイを見るリザードマン達は攻め気が薄い。倒すというより時間稼ぎをするような印象。
要するに、弱い者から先に削ろうとしている。
警戒するべきは……私が片付けるべきは……前より後ろ。
でも、後ろからはもう風切り音が、ウトが2人のリザードマン相手に戦っている音がした。
だからせめて。
「そっちにまだ潜んでるかもしれない!」
「んっ!」
そう言って、メイは目の前の攻め気の薄いリザードマン2体に対して、改めて属性付与をした。
……多分、本当に殺す事になる。
でも、どうしてだろう、躊躇うような気持ちは浮かんでこなかった。メイ自身も驚く程に。
メイは横に斧槍を薙いだ。
跳ぶか、低く伏せるかを強制的に選ばせる高さの、飛ぶ斬撃。二人とも低く身を伏せて備えた。備えられるくらいの遅さ。
再び、メイは再び低く斧槍を横に薙いだ。
今度は1回目より速く。二つの斬撃が丁度、リザードマンの位置で届くように。
慌てて跳ぼうとした1人は真っ二つになった。間をどうにか潜り抜けたもう1人もその太く長い尻尾や指の数本が切り飛ばされ。転びながら着地したところにはもう、メイは斧槍を振りかぶっていた。
横に、縦にリザードマンを真っ二つにしたメイはすぐに後ろを振り向く。
時間にすれば僅か、けれどウトの方には、もしかしたらもっと多くのリザードマンが。
振り返れば、ウトは必死に避けながら、来た道を戻らされていた。それを2人のリザードマンが追っている。1人はウトが仕留めたようで倒れていた。
エロクーの噛まれた後ろ足に手を当てて治した。
「魔力回復したら先に行って、私は後から」
「いや、鉄球も持って来ていただろう」
「あ、うん。そっか、それなら」
追いかけるよりもよっぽど早い。
「えっと、これですか?」
マイマがエロクーの背嚢から、鉄球の入った、ずっしりとした袋を渡す。
「うん」
受け取り、1つを手に取る。ウトがそれをリザードマン2体の背中越しに見た。
エロクーの鋭い目は、ウトの顔が少し怯えたのを見た。
足を高く持ち上げる。
持ち上げた足と逆側の腕を後ろから高くに掲げ。
ぶん! と、腕を振るだけで風が強く届いてくる錯覚がする程に強く投げられた鉄球は。
壁にまでほぼ一直線の軌道を描きながら、リザードマン1体の上半身を吹き飛ばしていた。
「……おわあ」
「いやいやいやいや……」
また、狂っているとしても、隣に居た同族が弾けてその血肉を浴びてしまったならば、最後のリザードマンが思わず唖然とするのは避けられなかっただろう。
そして、それはその隙にウトに首を抉られた。
メイはすぐにウトに大声で呼び掛ける。
「ウト! 早く! この階層からさっさと出るよ!」
「分かった! あ……死体は持っていかないのか?」
「ん、ええと、ええと……。ウトが殺したの、その2つが一番綺麗だから、それだけ!
後は……ごめん、本当にここに留まっているのもマズいかもしれないから! 急いで!!」
「わ、分かった!」
そして、ウトが追い着いて、綺麗な死体をエロクーの背中に乗せて、後は階段へと走るだけ。
幸いにも新手は居らず、階段まで辿り着き。
一気に登り切って、36階。
35階で感じたぞわぞわとする感覚はもう、無かった。
すぐに帰還スクロールを使って帰った後に分かったのは。
外から見たメイ達は、34階からいきなり36階に現れたという事だった。
オットー達も全員無事で、持ち帰って来たリザードマンの頭や死体は、オットー達リザードマンの誰の特徴にも厳密には当てはまらず。
一つに蘇生を試みてみるも、それは失敗するどころか、灰にすらならず塵と化して消えてしまった。
そして……もちろん、そんな前例は今までなかった。少なくとも、この多様な人種や魔獣が生きているこの国の、訓練施設としてのダンジョン全てにおいては。
MVPは水中からリザードマン達を引きずりだして、水中へ戻れなくしたエロクーです。
メイちゃんの見たいところ
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容姿の克明な描写
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戦っているところ(圧倒、虐殺)
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戦っているところ(苦戦、敗北)
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食べているところ
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のんびりしているところ
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ブチギレているところ
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年頃なところ