ミノタウロスの♀でダンジョンの中ボスを務めているメイちゃんはそろそろ番が欲しい   作:ムラムリ

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メイは不穏を感じる

「あ、マスターだ」

 

 出立する前日。旅の物資の調達とマイマへの挨拶を兼ねて、都市の中央のダンジョン近くまでやってきたメイ達。

 各地のダンジョンマスターなどを集めての会議も、そのダンジョンの最上層でやっているようで、ドラゴンやらもここ最近上空を飛び交っている中、メイがそう声を上げた。

 

「え? どれなんだ?」

「飛び交ってる中のどれか、とだけ言っておこうかな」

 

 中には翼もないのに魔法を使って飛んでいる人やらも多いが、遠くから見るだけでは魂の質(レベル)がとんでもなく高いであろう事しか分からない。

 メイは軽く手を振る。するとその西のダンジョンマスターは何かしらのアクションを返してくれたようで、メイはそれだけで満足気にしていた。

 

「どういう人なのか聞いても良かったりするのか?」

「んー……とても人見知りで、とんでもなく凄い人。私の武器や防具を作ったのもマスター。

 ただまあ、本当に私より人見知りだから、こんな集まりに呼ばれて、色々話する必要があるだけで、かなり疲れちゃってるんじゃないかな」

「ふぅん……?」

「ワタシも野良の時にユーリと空を飛んで行ったりしていたのは見た事がある、はずだ。

 見てはいけないものだと直感してすぐに目を逸らしたから、それが何の種族かも分かっていないが」

「大きさは?」

「メイより小さい人族だって事だけは」

「もしかして、私と同じガラドンって可能性もあるのかな?」

「まあ……マスターは目立つのも私より嫌いだから、これ以上は黙っておこうかな」

 

*

 

 教会では、マイマは相変わらず雑用ばかりしているようだった。

 けれど、ダンジョンが開いていないからか暇なようで、こちらに気付くとすぐにやって来た。

 

「明日、都市からまた別の場所に行こうと思うから、挨拶しに」

「その……着いて行けなくてすみません」

「うん、ちょっと残念だけど。都市の暮らしを捨てられないなら、それは仕方ない」

「まあ、そうですね……。ユーリさんにも少しだけ鍛錬を試して貰ったのですが、あれは……僕には無理でした」

「うん……あれも、誰でも耐えられるものでもないだろうから」

「ただ、僕はきっといつまでもここに居ますので。また戻って来た時は声掛けてください。その時はご飯奢りますので、お話し聞かせて頂けると」

「……ええっと? 本当に奢って貰って良いの?」

 

 それはしてはいけない約束じゃないのか? と後ろでもウトとエロクーが。

 

「……これでも、一緒にダンジョンに入って登っていく時間は楽しかったんですよ。とても、とても。

 とんでもない出来事もありましたけれど、無事で出て来られたならもう良い思い出です。

 一生忘れる事もない。

 でも……僕は、そんな程度の経験でやっぱり満足出来てしまうんですよ。それ以上望まないくらいに。

 なので、僕はその約束もしちゃいます」

「……うん、分かった。じゃあ、楽しみにしておくね」

 

 そうして去ろうとしたところで、ウトが聞いた。

 

「あ、後、一つだけ聞きたいんだけどさ」

「何でしょう?」

「マイマの両親って今どうしてるのか聞いて良いのか? いや、ちょっと気になってて」

「あ、ああ……。普通に賞金首ですよ、どっちも。倫理観なんてものもあんまり無いみたいで……。

 この国に居るかも怪しいですし、僕としても大して親に対して感情は抱いていないので、もし万一遭う事があっても殺して賞金を貰って構いません。

 ただ……その場合は僕に直接討伐した事を言うのは控えて貰えると有難いです」

「……分かった。因みにその賞金首の似顔絵か何かってあったりするのか?」

「治安管理の場所に行って、この番号を渡せば貰えると思います。もう古いので、出すのに時間が掛かるかもですが」

 

 そう言って、暗記しているような長ったらしい番号を紙に書いて貰った。

 

*

 

 夜。

 家の方にユーリとガラドンの2人が来た。

 ガラドンの2人は、もうユーリに絞られているのか、相当にげっそりとしていた。

 昼の内に大量に買い込んだ夜ご飯を一緒に食べながら、ユーリは西のダンジョンの雇用条件に関して、ディッツェに説明していた。

 

「……まあ、僧侶の素質もないデゼンも体感的には生き返りやすい気がしているけど、それでもメイちゃんとかきちんと僧侶の素質のあるデケムには及ばないと思うから、1回死んだらその後10日……大事を取るなら30日くらいはフロアボスにはなれない、っていう制約はきちんと付けます。

 だとしても、死に易いんじゃ流石に昇天を防ぐ為にもクビにしますので、悪しからず。

 それで、お賃金は、挑戦者が来なくてもフロアボスとして働ける日なら出す形で、デゼンとデケムで一年換算だとこのくらいになります」

 

 数字に桁をポンポンという勢いで紙に書き連ねたものを、ユーリは提示した。

 

「うわっ、こっちより何倍も高い!

 それとこれ……もしかして、メイさん1人分と一緒です?」

「鋭いね。デゼンとデケムでフロアボスになるから、そういう事。

 それに使う場所も正直あんまり無いからね。頼んだりすれば、ある程度の物は揃えられるけど」

「それじゃあ、ええっと。簡単に負けないように、みっちりよろしくお願いします」

「任せられました!」

 

 話が終わると、覇気のない体でもご飯だけは食べていたデゼンとデケムもまた、体を起こして。

 顔を見合わせて、何と切り出せば良いのか少し迷うような素振りをしてから。

 普通の角を持つ弟のデケムがおずおずと言うように切り出した。

 

「ええっと、メイさん。ウトさん。エロクーさん。妹とはその……聞きましたか?」

「ああ、まあ、はい」

 

 随分と個性的な、その……それを。

 ガラドンとしても異様な程に立派な角を持つ兄のデゼンが続けた。

 

「こんな妹だから、迷惑を掛ける事もあるかもしれない。せめて生かして帰ってくれとも言わない。

 ただまあ、才能は俺達とは別の方向にたっぷりとある。俺達が死んだ後に、コイツが茂みに隠れつつ残りの数人を殺して勝った事だってあるくらいに。だから多分忍者とかそういう珍しいものにも適正があるとも思ってる。

 だから、まあ……その方向で役立って、楽しめる範疇で楽しんでくれたら、それだけで幸いだ」

「……別に本当に昇天したいとまでは思ってないのに」

「じゃあ聞くが、あのお婿さんに食べられたいとはもう思ってないのか?」

「いや、それは話が別」

「だから信用出来ねえんだよ、お前さぁ……」

「ええとまあ、私達もダンジョンに挑む以外はそんな危険な事に自ら首を突っ込むつもりもあんまりありませんので」

「それならそれで、ええと……こんな妹ですがよろしくお願いします」

 

 デゼンとデケムが等しく頭を下げた。

 

「よろしくお願いしますー!」

 

 ディッツェが溌剌と続けた。

 

 

 

 ……それから。

 大量に買い込んできたご飯もほぼほぼ食べ終えて、寝る前に少し何か遊びでもしようかと思ってた時。

 

 ヴヴヴッ。

 

 ユーリの体から、何か変な音が鳴った。

 

「うん? ……うわ」

 

 ユーリは腰に携えていた何らかの魔導具を取り出すと、あからさまに変な顔をした。

 遠隔でも情報を伝えられる道具。かなり高価で、持つ人は相当位の高い人とか、後は重要な施設に置いておかれるもの。

 

「ごめん、僕はもう行かなきゃ。デゼンとデケムは明日の船に乗って、取り敢えず港町まで行ってて。

 メイちゃん達も元気でね。また会える時を楽しみに待ってる」

「ええと……何があったのか聞いても?」

「……まあ、どうせすぐに知れ渡るから良いか。

 そろそろダンジョンも再開するって事で、低層ばっかり挑戦しているような平凡な挑戦者も入れて試験的な運用を戻していたんだけれど。

 ……また起きたみたい」

「……また。私達は行っちゃって大丈夫なの?」

「うん。それは大丈夫。

 でも……本当に気を付けてね。何か、災厄とまでは言わずとも、誰もが解明出来ない摩訶不思議が起こりつつあるのかもしれない」

「……うん。サブマスターも気を付けて」

「ありがとう。それじゃっ」

 

 そう言ってユーリは家から出て、背中の翼を広げて飛んで行った音を僅かに聞かせながら去っていった。

 

 不穏。

 ただそれだけが、夜の闇に残されている。

 なんとはなしにメイ達は外に出て、ユーリの向かう方向を眺めた。

 明るい夜空。それに僅かに見えるドラゴニュートとしての輪郭。

 けれど見送っても、出来る事はなく。

 

「……今日はもう、寝ようか」

「……そうだな」




これにて3章おしまい。
このまま4章も突っ走るかなー。

メイちゃんの見たいところ

  • 容姿の克明な描写
  • 戦っているところ(圧倒、虐殺)
  • 戦っているところ(苦戦、敗北)
  • 食べているところ
  • のんびりしているところ
  • ブチギレているところ
  • 年頃なところ
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