ミノタウロスの♀でダンジョンの中ボスを務めているメイちゃんはそろそろ番が欲しい   作:ムラムリ

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メイちゃんは鑑定士

「おはよーございまーす!」

「おやっさん、今日のオススメはなんだい?」

「東の海が豊漁でね、色々魚が届いてるよ! 魔術で鮮度を保ったものから、塩漬けにしたものまで色々ね!」

 

「…………賑やかだなぁ」

 

 日が暮れても、各所で明かりが焚かれて、街の通りを行き交う人々の活気溢れる声は暫く止まる事はなかった。

 それどころか真夜中になっても、外からは雑然とした人の気配があり続けていたし、日が明ける前から外からはまた雑然とした声が響き始める。

 

「上手く眠れなかった?」

「うん……今日は、ここからずっと外を眺めているだけでも良いかも」

「まー、1日早く着いたから、そうやって慣らしてもいいかもねぇ。

 ただ10日間なんてすぐに過ぎちゃうからね、明日からは外に出た方がいいよぉ」

「うん。流石に今日ずっとこの部屋にいるのも飽きちゃうだろうし、少しは外に出ると思う。

 でも、迷子になりそうかなぁ。外からここに来た道もちょっと覚えられてないし」

「そりゃあ、初めてこんな場所に来たら仕方ないねぇ。

 私はちょっと用があってこれから出掛けてくるけど、午後になったら戻ってくるから、そうしたら一緒に少しだけ出てみましょぉ?」

「うん、ありがとう」

 

 そう言って、ジュアンはいつも通り深くにマントを羽織って外へと出ていった。

 窓の外から、ジュアンが雑踏の中へと消えていくのを見届けて。

 

「なんか……本当に凄いところに来ちゃったなぁ」

 

 色んな種族の、色んな服装をした人が行き交っている。

 同じ人間でも、ごつい体つきをした、如何にも頑丈そうな、ごわごわとした服を着た人から、ひょろくて小さく、眼鏡を掛けた人まで。

 背の低いドワーフが一人で丸太を一本引きずっていく。精悍な体つきをした、自分より若そうなワータイガーがダンジョンの方へと意気揚々に歩いていく。

 それから、生まれてそんな経っていないような、まだ人間と比べても小さいミノタウロスの女の子がぱたぱたと走ってきた。

 その子は、窓の外を眺めているメイを見つけると、無垢な笑顔をして手を振ってきた。

 メイも軽く手を振り返す。

 獣人は多種多様で、ミノタウロスはその中では稀有という程でもないが、この街においては数は少ないようだ。

 

「……かわいいな」

 

 もし、私がこういう場所で生まれ育っていたら。

 でもまあ、先祖返りが起きていたら結局あそこで働いているんだろうな。

 それに……疎まれていたなら性格はもっと酷くなっていたかも。

 先祖返りを起こした事は、別に嫌ってる事でもないんだけど。

 

 そのミノタウロスの女の子は長々と手を振ってから、道の先へとまた走っていった。

 帰ってくる時に、きっとまた私に手を振ってくるのが少し楽しみだった。

 

*

 

「ただいまぁ。……もしかして、ずっと外見てた?」

「うん。全く飽きなかったなぁ」

「お腹は減ってない?」

「うーん。あんまり」

「外出る?」

「うん」

 

 メイは窓際から離れると、背伸びをする。ごき、ごきと凄い音が体から鳴った。

 

「私、昨日からだけで、もう今まで見てきた人の数が倍以上になった気がする」

「そんなメイちゃんに、凄い事を教えてあげよう」

「?」

「ここの何倍も人がいる街が、この世界には数えきれない程あるわぁ」

「えっ…………」

 

 本当に唖然とした顔をして固まってしまったのに、ジュアンは思わず笑ってしまった。

 

「メイちゃんも、その内そういう場所訪れてみたらどぉ?」

「えー……面白くなさそう」

「んー……まあ、外、出てみましょ?

 あ、斧槍は置いていってね。宿の中にも衛兵達が居てね。私達の荷物はきちんと守ってくれるわ」

「んー……」

 

 ちょっと不安にしながらも、メイは財布だけを持って外に出た。

 

 

 

 ジュアンに連れられて来た先は、数々の装飾品が立ち並ぶ露天商の通り。

 

「ここ好きなのよ。時々掘り出し物もあって、本当に良い加護が付いているものもあったりするわ」

「へぇ……」

 

 ちゃらちゃらとした如何にもなネックレスから、腕輪や指輪からイヤリング、長い髪の毛を纏める為の簪だったり、角や尻尾のある獣人用の装飾品までとにかく色々と。

 

「……本当だ、呪われてるものの雰囲気がある」

「メイちゃんも分かるのね」

「うーん、感覚だけど」

 

 そう言って、人混みをかき分けて、変哲のない店の一つの、変哲のないただの指輪を手に取る。

 

「これだね」

「どういう呪いか分かるの?」

「うーん……やっぱり感覚でしかないんだけど、転んだ時とかに打ちどころが悪くなるとか、相手の攻撃が急所に吸い込まれやすくなる、みたいな?」

「地味に酷い道具ねぇ……」

 

 そう喋っていると、ハーフリングの店主が身を乗り出してきた。

 若い身なりをしているが、年はかなり取っているような風貌がある。

 

「そこのミノタウロスのお姉さん、鑑定出来るのかい?」

「えっ……多分悪いものだけだと思うけど。これ、知ってて売ってるの?」

 

 そう聞くと、店主は無垢な若者を諭すようにして。

 

「世の中にはね、こういうものを求める人も居るんだよ」

「ええと、なんでそんな回りくどい事を?」

 

 気に食わないのが居るなら直接殴れば良いのに。

 

「なんでって、そりゃあ……まあ、分かるだろ?」

「……?」

「ま、まあ、その、なんだ、黙っててくれるなら、少しサービスしてやるよ。何か欲しいものはあるかい?」

「えっ、う、うーん…………。

 うーん? うー、あ、うん、うーん…………」

「あー……。えっとな、すぐに思いつかないなら、また思い出した時にでも来てくれば良いよ。

 暫くは俺はここに店を出してるからさ」

「う、うん……分かった」

 

 一度店を外れてから、メイはジュアンに小さく話し始めた。

 

「私、飾った事とかあんまりないんだけど、一つだけ思い出した事があって。

 小さい頃に、お母さんにお花で冠を作って貰った事があって。

 ああいうのが良いなあって思ったけれど、今の私には似合わないよね…………」

「あらぁ。少し違う形になるけれど、用意出来るわよぉ?」

「えっ?」




鑑定出来るというか、僧侶の素質として呪いを嗅ぎ取る事が出来るみたいな。
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