ミノタウロスの♀でダンジョンの中ボスを務めているメイちゃんはそろそろ番が欲しい 作:ムラムリ
41階。
石造りの迷路の外観に戻って、相変わらず災厄の真っ只中。
そして。
「あー……ウト。手を出して」
「うん? あ、ああ、そういう事」
ウトが素直に従うと、メイは出された手に属性付与を。
ヴァンパイアか何か、不死に属する気配を感じたようだった。
「ディッツェも短剣と、鏃に」
「ここの索敵はメイさんがした方が良いだろうから、私は罠の探知だけに徹底するよ。
だから短剣だけお願い。魔力も温存しておいた方が良いでしょ」
「ああ、うん、分かった」
言われた通りにして、最後に斧槍にも属性付与をして進み始める。
ディッツェが先頭を歩き、罠を慎重に見極めながら、すぐ後ろにメイが続く。
「不死系の種族にはさ、普通の魔法もより効くけれど、やっぱり僧侶の魔法が一番効くからね」
「ワタシは、この階層でハ、やル事あルか?」
「不死系の種族はそこに居るだけで魔力が揺らいだりもするから。身に覚えあるでしょ」
「……あア」
メイに罰として脚を一度折られた記憶。
……今でも機会があればワタシの脚をまた折りたいと思ってたりするのだろう。
斧槍を振るうメイは、やはりと言うべきか、輝いていたというか、楽しげだったから。
「だから、探知は頑張って」
「……分かッた」
探索する。宝箱があって開けた。……何も入ってなかった。
「そんな事有り得ないんだけどなあ? これももしかして災厄に操作されてる?」
無駄骨になったディッツェが少し苛立たしく呟いていた。
「まあ、どうせ今、私達が欲しいものなんて大してないんだから」
エロクーが居るから荷物は十二分に持ち込めていた。食料だって、メイが空腹になったとて満足出来る量がたっぷりと。
「だとしても、腹が立つ」
そう言いながらも、ディッツェはまた意識を落ち着かせて、罠の探知に集中し始めた。
不死の何かは一向に襲ってこない。近くに寄ってきているのを少しばかり感じるが、機を待ちかねているというよりは、攻める手段が見当たらないような消極的な殺意。
攻めて来るならば、きっと属性付与が切れるタイミングを狙ってくるだろうが、それより前に次の階段が見つかる。
走ればすぐの距離。
ただ、罠があるかもしれない。ディッツェは遠目から罠の在処が分かる程でもない。
「結局、楽はしない方が良いって事ですかぁ」
「仕方ないね」
流石に襲ってくるだろう。
「エロクー。前から敵が来たらディッツェを投げるから。優しく受け止めてあげてね」
「分かっタ」
「……ディッツェ。集中してね」
「ええっと、ちょっとだけ待って貰って良いですか? 意識を落ち着けるので」
「……全くもう……」
進んでいくと不死の何か……ヴァンパイアの分身が、ウトの方に何体も襲ってきた。そしてメイの方にも襲い掛かっては来ないものの、すぐ近くに潜んだまま。
メイはディッツェを掴んでエロクーに渡しつつ……けれどウトはメイの目にも止まらない速さで既に半数をその爪で切り裂いていた。
障壁を展開されようとも、全方位でもなければ潜り抜けてくる。壁を、天井すらをも蹴って三次元的に動き回り、幾つものヴァンパイアの分身すらも手玉に取る疾さの元、一体一体を属性付与した腕の一振りで霧散させていく。
……頼もしい、けど。
それがウトが鍛錬して伸ばした実力そのものかと言われると、やっぱりそこまでに成っているとはメイには思えない。
後ろからもやってくるヴァンパイアの分身。
「どいてっ」
その一言で、応戦しようとしていたディッツェとエロクーがすぐに壁に寄る。
斧槍を突き出すメイ、けれど愚直な一撃は避けられた。分身は更に分裂してメイへと襲いかかってくる。
「もうっ!」
面倒臭げに言うと、ずんっ!! と、その一片を踏み潰して霧散させていた。
属性付与させてないのにも関わらず……それか、自分の体には手で触れる事もせずに属性付与出来るのか。
剣を握って腕だけが突っ込んでくるのに、障壁で受けた後に斧槍でその剣ごと叩き折り。
後ろへとすり抜けようとする部分を逃さず掴んで握り潰す。
まるで……五感全てで敵を感じられているというような、武芸の達人さながらの動き。
その動きも見ているディッツェやエロクーからしたら、どうにも出来過ぎているようだったが、それは単純に不死に対する感知能力が長けているからという、災厄とは関係ない理由があるのも知っていた。
……見ている分には、まだメイの方が恐ろしいな。
その感想は口には出さなかった。
*
42階。
変わらない石造りの迷路。
不死系の敵は居ないようだった。その代わりに異質な殺意を感じる。
感じられる殺意そのものはとても薄いものの、研ぎ澄まされた……殺すのに必要最低限な刃物で、切先を急所に突きつけられているような。
多分、忍者のような、闇に乗じて命を刈り取る事が得意な敵が居る。
ディッツェが目指す先のような。
「ここは魔法が必要かな……。ディッツェも、罠の探知と敵の探知、両方とも出来る訳じゃないでしょ?」
「いや、やるよ」
「えっ?」
「どうせ私は、46階以後はあんまり出来る事はないんだから。だから、そこまではきっちり働きますよ」
そう言って、臆せず前に出ていく。
この殺意をディッツェも感じているだろうに。
「後、側にはウトさんで。後ろの方にメイさんが居る方が多分バランスが取れてるから」
「じゃあ……お願いする」
メイは不安なところもあったけれど、素直に言葉に従う事にした。
それでも、メイは不安を抑え切れなかった。
もし、ここで誰かが死んだらと思うと気が気でない。多分誰が死んだとしても、この先を踏破出来なくなる。
とりわけ、ここに潜む敵が最短最速で殺しに来る事に特化した相手だろうからか、その不安はどうしても募る。
「メイ、集中が切れテるぞ」
後ろを警戒してても、頻度高く前を向いてしまうメイの事をエロクーが嗜める始末。
「うん……」
「改めて言うがナ、ワタシ達は全員自らの意思でコの災厄に足を踏ミ入れタ。
全員、メイの強サに……感化さレてな。
だかラ、メイが堂々としテいてクれたなラば、ワタシ達も堂々として居られル」
「……頑張る」
そうしてメイが改めて後ろの警戒に戻ると闇に乗じて1人、ワータイガーが。
ボロい道着に身を包んでいるウトとは異なり、闇に潜める色合いの服に身を包んで、音もなく忍び寄ってきていた。
苦無などを投擲しつつ、その爪を開いて直接切り裂こうと。
けれど、メイは焦る事もなく、障壁を展開する事もなく斧槍で弾き落とし。
肉薄したワータイガーがメイの体に爪を立てるよりも前に、メイの前蹴りが身を伏せていたその頭にぶつかった。
べぎっ。
首が折れた音を立てて、慣性のままメイの体にぶつかって崩れ落ちる。
「君、ウトと比べると随分遅かったね」
そう言いつつ、蹴って仰向けにしてその顔を見ると。
「……君っていう歳でもなかった」
……いや、ワタシ達が心配されるのも、やはり妥当なのかもしれない。
## エロクー
魂☆☆☆☆☆
力☆☆☆☆☆☆☆☆
速☆☆☆☆
技☆☆☆ + ☆
魔☆☆☆☆☆☆ + ☆
神☆
一部の属性の魔法の技量、威力を向上。