機動戦士ガンダム ギレン、ハマーン、シャアの次なる答え――ジオンの最高頭脳、サナリィの最新ガンダムで宇宙世紀を総決算する   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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共倒れの果てに【U.C.0091】

宇宙世紀0091年。地球圏の善良な市民たちが「ねえ、そろそろあの赤い彗星の人がアクシズを丸ごと地球に落とす準備を裏で完璧に整えつつあるらしいよ?」という超ド級の終末予報に怯え、夜も眠れない日々を過ごしている頃――。

地球圏から遥か何千万キロメートルも離れた火星圏では、地球の危機など1ミリメートルも知ったことではない二つのジオン残党勢力が、歴史の教科書に1行も載らないようなおマヌケかつ凄惨極まりない理由で、見事なまでの「パーフェクト共倒れ」を完遂しようとしていた。

 

「おい、冗談だろ……? なんだあの地獄絵図は。俺は確かに『ジオンマーズとレジオンを適当に戦わせてデータを回収しろ』と言われたが、ここまで徹底的にお互いの存在意義を消滅させるレベルで殴り合えとは指示していないぞ」

 

火星の荒涼とした衛星軌道上に潜伏する極秘偽装貨物船のブリッジ。

そのメインスクリーンに映し出される火星地表のライブ映像を睨みつけながら、元ティターンズの切れ者にして、現在はジオンマーズの参謀という、あまりにややこしい二重スパイ生活を送っていた男、ドナルド・レザードは、人生で最高値の偏頭痛に襲われていた。

 

画面の向こう、火星の首都周辺は、まさに宇宙世紀の黒歴史を煮凝りにしたような凄惨な大惨事(自業自得)を迎えていた。

先ほどまで、ジオンマーズの残党どもが地下の怨念と執念を詰め込んで強奪し、ご丁寧にジオン公国軍の濃緑色で全塗装した上に頭部にザクのモノアイを無理やり溶接した戦略ド級決戦兵器ガンダムTR-6[インレ](ジオンマーズ仕様)が、サイコミュの深刻な言語バグを起こして大暴走。

「当機はウサギでありザクではない」という機体AIの断固たるプライドと、「ジーク・ジオンと三回唱えろ!」というハンス隊長の脳筋な脳波が奇跡の拒絶反応を起こした結果、インレは敵味方の区別を完全に喪失。超大型コンポジット・シールド・ブースターから放たれた無慈悲な拡散メガ粒子砲が、レジオンの最新鋭可変モビルスーツ『キハールII』の部隊を消し飛ばすと同時に、自分たちの味方であるはずの『RFザク』や『RFドム』の群れをも「ちょっと緑色っぽくて形が気に入らないから」というだけの理由で、まとめてチェレンコフ光の彼方へと蒸発させていた。

 

「参謀! 地表の戦闘データ、計測不能な領域に突入しています! アリシア・ザビ総帥の直属部隊である『グロリアス・ウサギ親衛隊』の『ハイザックII』が、インレの暴走に巻き込まれて全滅! さらに、インレ自体も出力のオーバートップによってジェネレーターが自爆寸前です!」

 

隣で狂ったようにキーボードを叩いている元ティターンズのオペレーター(地球圏ではコンペイトウの倉庫番だった男)が、涙目で叫ぶ。

 

「アリシア総帥はどうなった!? あのワガママなウサギ女王様は、自分の愛した最高のおもちゃが緑色のモノアイの化け物に改造されたショックで、ショック死でもしたか!?」

 

「いえ! 通信傍受によりますと、アリシア総帥は『私の可愛いインレをあんな芋虫みたいな緑色に塗るなんて、万死に値するどころか宇宙世紀の審美眼に対するテロ行為ですわ!』と激昂。自ら『クィンリィ』っぽい何かに乗り込んでインレのコックピットに突撃し、ハンス隊長とリアルに取っ組み合いの殴り合いを展開した模様です! そして……先ほど、両者もろともインレのメインジェネレーターの誘爆に巻き込まれ、光の塵となりました!」

 

「……死んだのか。ザビ家の正統を名乗ったサイコお嬢様も、ウサギ耳の帽子にキレた脳筋ジオン兵も、全員まとめて消滅したというわけか」

 

ドナルドは深いため息をつき、自らの前髪をかき上げた。

(地球圏のみんな、聞いてくれ。君たちがエゥーゴだティターンズだと血を流して戦っていた裏で、火星の支配者たちは『兵器のカラーリング』と『ウサギ耳の精神的苦痛』を巡って核爆発を起こして全滅した。これが宇宙ノイドの本質だ。シャア・アズナブルが地球に絶望する気持ちが、今なら痛いほどよく分かるぞ)

 

だが、ドナルドは単なる傍観者ではない。彼は敗戦のプロフェッショナルである元ティターンズだ。グリプス戦役でジャミトフ・ハイマン総帥を失い、バスク・オム大佐の乗るドゴス・ギアが轟沈し、コロニーレーザーの光に焼かれていく地球圏の終わりを特等席で見てきた男である。

彼にとって「組織の完全な瓦解」など、もはや予定調和、むしろここからが本番のビジネスチャンスであった。

 

「よし、予定通り『お片付け作戦』を開始する。泣いている暇はないぞ。レジオンの統治体制は首魁のアリシアが消えたことで完全に機能停止した。地下のジオンマーズ派も、主要戦力だったオヤジ連中がインレの暴走で全滅してただの抜け殻だ。今こそ、この火星に残された『宇宙世紀の宝の山』を回収する!」

 

ドナルドの指示を受け、偽装貨物船が火星の低軌道へと降下を開始する。

彼らの狙いは、レジオンが地球圏から持ち込み、地下プラントで極秘裏に量産・ストックしていたガンダムTR-6シリーズの残存パーツ。そして、ジオンマーズがアナハイム・エレクトロニクス社から裏ルートで購入していた、旧公国軍MSの外見を模した最新型の高性能駆動系コンポーネントである。

 

「レジオンの残党……いや、生き残った『ウサギ耳を付けさせられていた元ティターンズの同胞たち』に通信を繋げ。彼らも、もうあんなロイヤルティーンエイジャーのワガママに付き合うのはゴメンなはずだ」

 

ドナルドがマイクを取ると、地表のレジオン基地から、精神的に疲れ果てた元ティターンズのベテランパイロットたちの声が返ってきた。

 

『……こちら第2防衛大隊。参謀、本当にアリシア総帥は死んだのか? 俺たち、明日からあのピンクのウサギの盾を持たなくていいんだな? 朝の点呼の時に『ぴょんぴょんジーク・ジオン』って言わなくていいんだな……?』

 

「ああ、いいんだ。お前たちは解放された。今日からお前たちは、ただの『行き場のない武装難民』に戻るんだ。どうだ、俺と一緒に、この火星の軍事資産を次の『買い手』に売り飛ばして、地球圏で一発逆転のセカンドライフを送る計画に乗らないか?」

 

『乗る! 今すぐ乗る! 頼むからその貨物船に収容してくれ! ジオンのモノアイも、ティターンズのガンダムも、ウサギの耳も、もう全部見たくないんだ!』

 

通信の向こうで、かつて地球圏を震撼させた精鋭部隊の生き残りが、まるでブラック企業の社畜が解放された瞬間のような嗚咽を漏らしていた。

 

「話が早くて助かる。オペレーター、地表の各ドックから、回収可能な『TR-6の素体(ウーンドウォート)』および、ジオンマーズが隠匿していた『RFシリーズ』の設計データをすべてデータ基盤に吸い上げろ。アリシアの遺品整理だ」

 

「了解! ……しかし参謀、この大量のMSパーツと超ハイテクな換装データの山、一体どこに売り飛ばすつもりですか? 地球連邦軍の主流派に持ち込んでも、ティターンズの遺物なんて今更お咎めを受けるだけですよ?」

 

オペレーターの当然の疑問に、ドナルドは不敵な笑みを浮かべた。

 

「バカ言え。地球圏には今、どれだけ素性が怪しいモビルスーツであっても、動いて弾が出れば大金を出して買い取る『最高の大富豪』がいるじゃないか」

 

「あ……! 新生ネオ・ジオンの、シャア・アズナブル総帥ですか!?」

 

「その通り。あの男は今、地球寒冷化作戦のために、猫の手も借りたい、ギラ・ドーガの数も足りないと、スウィート・ウォーターで頭を抱えているはずだ。そこに、この火星の内戦で鍛え上げられた高性能なTR系の技術や、ジオンマーズの生き残りの過激派どもを『チェスター艦隊』としてパッケージにして送り届けてみろ。あの男のことだ、喜んで金塊の山と、新生ネオ・ジオンの正規軍人としての籍を用意してくれるさ」

 

ドナルドの頭脳は、冷徹に次の宇宙世紀のトレンドを計算していた。

火星独立を謳った二つのジオンの戦いは、結局のところ、地球圏の代理戦争の、そのまた成れの果ての自滅劇に過ぎなかった。勝者なき不毛の惑星。残されたのは、凍りついた氷土と、破壊されたインレの巨大な残骸、そして「二度とウサギの耳は見たくない」と誓った男たちの虚無感だけである。

 

「チェスター主席の息子、チェスタージュニアの動向は?」

 

「はっ、彼は父親とジオンマーズの主力部隊を失った怒りで、地球連邦への復讐の炎を燃やしています。『シャア総帥の呼び声に応じ、宇宙へ帰還する!』と、残った巡洋艦の整備を急いでいるようです。完全に踊らされていますね」

 

「それでいい。哀れな復讐鬼ほど、シャア・アズナブルにとって使い勝手のいい『盾』はないからな。彼らには、宇宙世紀0093年の最前線で、ガンダムという名の本物の悪魔(ロンド・ベル隊の白い奴)と戦ってもらうさ。俺たちは、その裏でアナハイム・エレクトロニクス社とのコネクションを再構築し、次の時代を生き抜くまでのこと」

 

貨物船のコンソールが、データの転送完了を告げる電子音を鳴らした。

画面の向こうでは、火星の赤い砂嵐が、戦いのすべてを覆い隠すように静かに吹き荒れている。

 

宇宙世紀0091年。ガンダムTR-6[インレ]という、時代を先取りしすぎた怪物兵器の爆発とともに、火星の独立国家体制は内部から完全に瓦解した。アリシア・ザビが夢見た「女の楽園」も、ジオンマーズが夢見た「公国軍の正統なる復興」も、すべては極寒の氷土の露と消えたのである。

しかし、その混沌の裏で、生き残ったドナルドらによって回収された軍事資産と怨念の種子は、次なる戦場――宇宙世紀0093年の「シャアの反乱」へと、確実に、そして最悪の形で引き継がれようとしていた。

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