機動戦士ガンダム ギレン、ハマーン、シャアの次なる答え――ジオンの最高頭脳、サナリィの最新ガンダムで宇宙世紀を総決算する   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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第二次ネオ・ジオン抗争【U.C.0093】

宇宙世紀0093年3月。地球圏の善良な市民たちが「何か小惑星5thルナがチベットのラサに落ちて偉いことになったらしいぞ!」とか「今度はアクシズ本体が落ちてくるってさ! 冗談じゃない、引っ越しだ引っ越し!」と大パニックに陥っている頃――。

我が火星独立ジオン軍こと「チェスター艦隊」の司令官、チェスターJr.は、宇宙要塞アクシズの近傍を航行する重巡洋艦チベのブリッジで、人生最大の全能感と、それに伴う極限の脳内麻薬の分泌を体験していた。

 

「素晴らしい……見ろ、これぞジオンのあるべき真の姿だ! ハマーンの小娘が政治闘争に明け暮れていた第1次ネオ・ジオン抗争とは何もかもが違う! 全宇宙のスペース・ノイドの悲願を乗せて、この巨大な岩塊が地球へと落下していく……。これこそが宇宙世紀の、いや、ジオン公国軍の正統なるグランドフィナーレにふさわしい光景ではないか!」

 

チェスターJr.は、先座のド派手な金モール付き特注軍服の襟を正しながら、狂喜の声を上げた。

彼の脳内は、スウィート・ウォーターでシャア・アズナブル総帥から直々に「よくぞ地球圏へ戻ってきてくれた、火星の義士たちよ。君たちの熱きジオン魂に、私は深く感謝する」という、耳から脳みそがとろけ出そうな極上の甘言を浴びせられた瞬間から、完全に「シャア総帥サイコー!」の狂信モードで固定されていた。

 

シャア総帥は本当に理解のあるお方だった。何しろ、我々が火星の地下プラントで血と汗と芋の汁を流しながら執念で開発した最新鋭機『RFゲルググ』や『RFザク』を見るなり、『ほう……外見はファースト・ジェネレーションのレプリカでありながら、内装はアナハイム・エレクトロニクス社製の最新鋭コンポーネントか。そのノスタルジーを機能美に昇華させる執念、実に見事だ』と、それはもう滑舌の良い美声で褒めちぎってくれたのだ。

その際、総帥が背を向けた瞬間に「……何だねあの悪趣味なゲテモノは。ガンダムTR-6の技術を旧式機の皮で包むなど、正気の沙汰ではない。ナナイ、あれらは私の視界に入らない一番外側の防衛ラインに配置してくれ」とボソッと呟いていたような気がしなくもないが、きっとダイクンの血統特有の、高尚すぎて凡人には聞き取れない照れ隠しのジョークに違いない。そうに決まっている。

 

「チェスターJr.閣下! 地球連邦軍のロンド・ベル隊、防衛線を突破してきました! モビルスーツ部隊が本艦隊の正面セクターに急接近中! 敵の先頭、極めて高出力のサイコ・フレーム反応を感知! あれは……間違いありません、連邦の白い悪魔、アムロ・レイの『νガンダム』です!」

 

ブリッジの若いオペレーター(かつて火星でレジオンのウサギ耳憲兵に追い回され、精神的パニックで自軍の物資集積所にRFドムで突っ込んだ過去を持つ男)が、椅子から転げ落ちんばかりの勢いで叫んだ。

 

「何だと!? アムロ・レイだと!? 一年戦争で我が公国軍のエースたちを絶望のズンドコに叩き落とし、あのシャア総帥とララァ・スンの感動のすれ違いにデリカシーなく割り込んできた、あの忌々しい天パの男か!」

 

チェスターJr.の網膜に、メインスクリーンに映し出された一機のモビルスーツの姿が焼き付く。

背中に左右非対称の奇妙な板状の武装――フィン・ファンネルをマントのように背負い、白と紺色のあまりにも洗練されたカラーリングで宇宙を駆ける最新鋭MS、νガンダム。その洗練され尽くしたシルエットは、火星の過酷な環境で「泥臭さこそジオン!」「パイプは太ければ太いほど偉い!」という謎の昭和頑固親父理論を叩き込まれて育ったチェスターJr.にとって、生理的な嫌悪感を通り越して、もはや一種のジェラシーすら覚えさせる美しさだった。

 

「おのれ……相変わらず連邦のガンダムは、アナハイム・エレクトロニクス社の湯水のような予算にモノを言わせて、あんな鼻持ちならないスタイリッシュな機体を作りおって! 伝統の緑色や小豆色に塗るという審美眼が、あの天パの男には無いのか!? 野郎ども、火星仕込みの『ジオンの気骨』をあのエリート野郎に見せてやれ! RFゲルググ部隊、出撃だ!」

 

チェスターJr.の号令とともに、チベの格納庫から、ジオンマーズの意地と妄執が詰まった『RFゲルググ』の群れが宇宙へと飛び出していった。

その光景は、一年戦争のソロモンやア・バオア・クーの戦いを髣髴とさせる、実に見事な「ジオン公国軍の再現」であった。

 

――だが、悲しいかな。ここは宇宙世紀0093年。モビルスーツの技術パラダイムは、すでに第2世代や第3世代を超え、サイコ・フレームによる脳波誘導兵器の全盛期に突入していた。

 

『うおおお! ジーク・ジオン! 死ね、連邦の白豚めー!!』

 

気合だけはシャア総帥直属の「ヤクト・ドーガ」に乗る強化人間並みに高いジオンマーズのベテランパイロット(火星で10年間ウサギの着ぐるみを着せられて強制労働させられていた怨念の塊)が、ビーム・ナギナタを振り回しながらνガンダムに突撃する。

中身はアナハイム社製の最新駆動系だ。機動性だけなら、そこらのジェガンなど一ひねりにできるスペックを持っていた。

 

しかし、相手が悪すぎた。

 

『何だ……あのザクやゲルググは!? 旧式機のレプリカか? だが、動きが妙に鋭い……!』

 

νガンダムのコックピットでアムロ・レイがほんの少しだけ天才特有の不気味な直感を働かせ、サイコ・フレームに脳波を走らせた瞬間、νガンダムの背中から放たれたフィン・ファンネルが、物理法則を完全に無視した軌道でRFゲルググの死角へと回り込んだ。

 

『な、何だこの板切れは!? ビームを曲げて撃ってきやがっ――』

 

ドガァァァン!!

ジオンマーズの誇る最新型(見た目は骨董品)のRFゲルググは、自慢の極太装甲の合わせ目を正確に撃ち抜かれ、ビーム・ナギナタを一度もアムロに届かせることなく、一瞬で宇宙の塵へと変わった。

 

『ヒャッハー! 兄貴の仇だ! 火星の重力に魂を引かれた俺たちのパワーを見ろー!』

 

続いて突撃したRFザクの部隊が、これまた火星の地下プラントで「ザクといえばこれだよな!」というノリだけで無理やり増設された3連装ミサイル・ポッドを一斉射した。

だが、νガンダムが手をかざすと、フィン・ファンネルが周囲にピラミッド型の光の壁――ファンネル・バリアを展開。無数のミサイルはその光の壁に激突し、爆煙を上げるだけで、ガンダムの装甲に傷一つ付けることができない。

 

『バ、バカな……! ミサイルが防がれただと!? あんな正三角形のバリアなんて、教科書に載っていなーー』

 

アムロがビーム・ライフルをトリガーハッピー気味に連射すると、RFザクの群れが、まるでボーリングのピンのように次々と爆発していく。

それはもはや戦闘ではなく、最新のゲーム機(νガンダム)を使って、レトロゲームのキャラクター(RFシリーズ)を一方的に駆除するような、あまりにも残酷なテクノロジーの暴力であった。

 

「な、何ということだ……! 我がチェスター艦隊の精鋭たちが、あの天パの男がちょっと目をギョロつかせただけで、虫ケラのように落とされていく……! これが、地球圏の『ニュータイプ』の本物だというのか!?」

 

チベのブリッジでスクリーンを見ていたチェスターJr.は、全身から冷や汗を流し、あまりの格差に歯ぎしりをした。

彼らが火星の地下で「アリシアのウサギ耳フードの精神的屈痛」や「インレのAIが暴走して味方を全滅させた大惨事」と戦っていた間に、地球圏の化け物どもは、脳波でビームのバリアを張るというとんでもない領域にまで達していたのである。

 

「ええい、シャア総帥は何をしておられる! 総帥のサザビーが来てくだされば、あんなアムロなど、一撃でマザコンの奈落に叩き落としてくださるはずだ! 総帥に救援を要請しろ! 『チェスター艦隊、これよりアクシズの盾となりて玉砕寸前! 総帥の美しいお姿で、我らの魂を救済されたし!』とな!」

 

チェスターJr.が必死に叫ぶと、通信士が泣きそうな顔でホログラム端末を叩いた。

 

「閣下! 総帥からの返信データが届きました! ……えーっと、読み上げます! 『チェスターJr.、君たちの奮戦には心から敬意を表する。しかし私は今、アムロとの個人的な決着をつけるためにサイコ・フレームの機密データをわざわざアナハイム社経由でリークするという、非常にデリケートかつ忙しい政治的・個人的エンターテインメントの真っ最中なのだ。君たちのそのRFゲルググの無駄に分厚い装甲があれば、あと15分はロンド・ベルのミサイルを防げるはずだ。ジオンの栄光のために、そのまま肉壁となって耐えたまえ。ジーク・ジオン』……以上です!」

 

「……え?」

 

チェスターJr.の思考が、一瞬完全に停止した。

今、何て言った? サイコ・フレームのデータを敵にリークした? 個人的なエンターテインメント? 肉壁となって耐えろ?

 

(待て、待ってくれ。シャア総帥……? あなたはスペース・ノイドの悲願のために、冷徹なる絶対の神として立ち上がったのではなかったのか? なぜ敵のガンダムの性能をわざわざ上げるような真似をしているんだ? それに、我々の最新鋭(見た目は骨董品)のRFシリーズを、ただのミサイル避けの『肉壁』呼ばわりしたのか……!?)

 

彼の脳内で、スウィート・ウォーターで浴びせられた総帥の甘い言葉が、バラバラに砕け散っていく。

そう、シャア・アズナブルという男は、ザビ家への復讐を終えた後、その全情熱を「アムロ・レイと同じ条件で殴り合って勝つ」という、極めて個人的かつ壮大すぎる嫌がらせ(私怨)に費やしている男だったのである。火星からやってきた純情なオッサンたちのジオン魂など、彼の華麗なる決戦の舞台を彩るための「ちょっとした賑やかし」に過ぎなかったのだ。

 

「だ、騙された……! あの男、サングラスの奥で、俺たちのことを『火星から来た都合のいい使い捨ての盾』としか思っていなかったんだ!!」

 

チェスターJr.が絶望の叫びを上げた瞬間、チベの艦体に激しい衝撃が走った。

νガンダムのビーム・ライフルが、チベの第2連装メガ粒子砲座を容赦なくブチ抜いたのだ。ブリッジの火災警報が狂ったように鳴り響き、視界が真っ赤な警告灯で染まる。

 

「閣下! 第1防衛ライン、完全に瓦解! 生き残ったRFシリーズのパイロットたちからも『総帥が助けてくれない!』『やっぱり百式に乗ってた頃からあの人は信用できなかったんだ!』と精神崩壊の通信が相次いでいます! 敵のジェガン部隊も艦隊中央に突入してきました!」

 

「おのれ……おのれシャア・アズナブル! よくも俺たちの純粋なジオンへの信仰を弄んでくれたな! だが、ここでタダで死んでたまるか! 全艦、アクシズの軌道から離脱――いや、もう無理か!」

 

スクリーンに映し出されるのは、フィン・ファンネルを縦横無尽に操り、チェスター艦隊の残存艦艇を次々とハッキングするかのような正確さで沈めていくアムロ・レイの、あまりにも慈悲のない「作業効率の良さ」であった。

 

宇宙世紀0093年3月12日。シャアの反乱における最終局面において、火星独立ジオン軍チェスター艦隊は、彼らが「真の救世主」と信じた総帥に最も都合よく見捨てられ、地球圏の宇宙でほぼ全滅、文字通りの壊滅を迎えた。

チェスターJr.は、激しく炎上するチベのブリッジで、激しい爆発の光に包まれながら、自らの歪んだジオン愛の結末を呪うのだった。だが、この地球圏の宇宙で流された彼らの血と、シャアへの強い裏切りの怨念は、完全に途絶えたわけではなかった。火星に残留したわずかな同胞たちの心の中に、「地球圏のジオンなど、すべて偽物だ」という、さらに過激で、さらに引き籠った、最悪の『最後のジオン(オールズモビル)』の思想を育む決定的な種子として、火星の氷土へと持ち帰られることになるのである。

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