【宇宙世紀】ジオン残党だけど火星で第二帝国を作る羽目になった件【スターウォーズ概念クロス】 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
遠い昔、はるか彼方の銀河系で――
中央政府は、長く続いた反乱の終結を宣言した。
旗は降ろされた。
国名は消された。
かつて人々を熱狂させた理念は、博物館と歴史書の中へ封じ込められた。
政府は、それを平和と呼んだ。
だが、国家の名前を消すことと、その名のもとで戦った者たちの記憶を消すことは同じではない。
中央で旗が降ろされるほど、旗を捨てられない者たちは辺境へ集まる。
歴史から追い出された神話は、そこで新たな信仰へ生まれ変わる。
この銀河でも、同じ幕引きが、白々しい拍手とともに始まろうとしていた。
宇宙世紀0100年。
一年戦争の終結から、二十一年。
地球連邦政府は、ようやく一つの政治的目標へたどり着こうとしていた。
ジオン共和国の自治権返還。
サイド3に残されていた「ジオン」の名を持つ国家が、地球連邦の行政体制へ完全に組み込まれる。
ジオン公国。
デラーズ・フリート。
アクシズ。
ネオ・ジオン。
シャアの新生ネオ・ジオン。
二十年以上にわたり、地球圏へ戦争を持ち込んできた名前が、国家としては正式に消える。
地球連邦の広報局は、これを「宇宙世紀における戦後体制の完成」と呼んだ。
新聞は「真の平和元年」と書いた。
テレビでは、笑顔の評論家が言った。
『これで、ジオンの時代は完全に終わりました』
完全に。
政府が好んで使う言葉である。
完全な勝利。
完全な安全。
完全な解決。
実際には何も完全でなくても、式典の横断幕にはよく映える。
サイド3、ズム・シティ。
ジオン共和国政府庁舎の特別事務室で、地球連邦政府から派遣された主席補佐官アルベルト・ハインリヒは、一冊の報告書を読んでいた。
正確には、報告書の内容に耐えていた。
表紙には、こう書かれている。
ジオン共和国軍保有兵器・最終処分報告書。
アルベルトは一枚目をめくった。
ザクII、二十四機。
ドム系機体、十二機。
ゲルググ系機体、八機。
その他、訓練用モビルスーツ、作業用機動兵器、艦艇および予備部品。
すべての熱核反応炉を停止。
武装を撤去。
コックピットを破壊。
民間業者へスクラップとして引き渡し。
これをもって、ジオン共和国が保有する軍事力は完全に消滅したものとする。
アルベルトは報告書を閉じた。
そして、向かいに座る共和国側の担当官を見た。
「一つ、質問していいか」
「もちろんでございます」
担当官は、愛想よく頭を下げた。
一年戦争当時は学徒動員兵としてア・バオア・クーへ送られ、戦後は軍服を脱いで官僚になった男である。
退役して二十年近く経つが、連邦軍の白いモビルスーツを見ると今でも胃が痛くなるらしい。
「この報告書によると」
アルベルトは言った。
「共和国軍のモビルスーツは、すべて解体された」
「はい」
「一機残らず」
「そのとおりです」
「兵器として再利用できる部品も存在しない」
「完全に処分いたしました」
「では、先週、第十四バンチの地下ドックから運び出されたザクの頭部三十個は何だ」
担当官の笑顔が少し固まった。
「記念品ではないでしょうか」
「三十個も?」
「ザクは人気がありますから」
「頭部だけを三十個並べて、何を記念する」
「戦争の愚かさを後世へ伝える、平和教育用展示物かと」
「その展示物の内部に、現行型の火器管制装置が組み込まれていた」
「展示が能動的ですね」
「さらに、その頭部は民間貨物船へ積まれた」
「巡回展示でしょう」
「航路は火星だ」
担当官は黙った。
アルベルトは、机の上へ別の資料を置いた。
アナハイム系の下請け企業が発行した納品書。
高出力ジェネレーター。
リニアシート。
全天周囲モニター。
新型アクチュエーター。
ビーム兵器用収束器。
名目上は、いずれも産業機械用の中古部品だった。
「これらの物資が、共和国解体予定機の部品とともに火星へ送られている」
「火星の生活環境改善支援では?」
「ビーム・ライフルの収束器で、何を改善する」
「害獣駆除でしょうか」
「火星には、モビルスーツ用ビーム兵器でなければ駆除できない害獣がいるのか!」
アルベルトの怒声が事務室へ響いた。
共和国側の担当官は、首元の汗を拭く。
「主席補佐官。すべては何かの誤解です」
「便利な言葉だな」
「我が共和国は、長年にわたり平和と中立を守ってまいりました。シャア・アズナブルの反乱にも、公式には一切関与しておりません」
「非公式には?」
「それを共和国政府へお尋ねになるのは、あまりにも無粋ではないでしょうか」
「無粋なのは、自治権返還当日に違法兵器を火星へ逃がす側だ!」
担当官は困ったように笑った。
「旧ジオン系の民間人には、さまざまな思想を持つ者がおります。共和国政府が、国民一人ひとりの商取引まで完全に把握することは困難でして」
「その言い訳、もう少し真剣に考えなかったのか」
「長年使われているので、実績があります」
「実績のある言い訳を出すな!」
アルベルトは椅子へ深く腰を下ろした。
胃が痛い。
机の引き出しには、胃薬が三種類入っている。
効き目が穏やかなもの。
即効性のあるもの。
そして、共和国との交渉日にだけ飲む強力なもの。
今日はもちろん、三番目だった。
アルベルトは、共和国側が何をしているのか理解していた。
自治権返還は避けられない。
共和国軍も解体される。
だが、そのまま兵器を連邦へ引き渡せば、旧公国軍由来の技術、部品、記録、人脈まで連邦の管理下へ入る。
それを嫌がる者たちがいた。
ザビ家への忠誠ではない。
シャアへの共感でもない。
ただ、ジオンの兵器を連邦へ渡したくない。
連邦政府の倉庫で番号を付けられ、演習標的やスクラップにされるくらいなら、火星の残党へ渡したほうがましだ。
そう考える元軍人、技術者、商人、官僚が、サイド3にはまだ大勢残っていた。
彼らは共和国の最後の日に、使えるものを地球圏の外へ逃がそうとしている。
送り先は火星。
シャアの反乱を生き延び、地球圏のすべてを信用しなくなった者たち。
自らを最後のジオンだと考え始めた、オールズモビルの前身組織だった。
「この件を、上層部へ報告されますか」
共和国側の担当官が、おそるおそる尋ねた。
「当然だ」
アルベルトは答えた。
だが、声には力がなかった。
報告すれば、何が起きるか。
地球連邦政府は本日、「ジオンの完全消滅」を全地球圏へ宣言する。
大統領も。
議会も。
軍上層部も。
すでに祝賀式典の準備を終えている。
記念演説。
紙吹雪。
平和の象徴として放たれる人工の白い鳥。
自治権返還を記念した硬貨まで製造されていた。
その当日に、
ジオン残党が軍事資産を火星へ移送中。
共和国政府内部に協力者多数。
火星では新たなジオン系軍事勢力が形成されつつある。
そんな報告を持ち込めば、式典そのものが政治的な茶番になる。
大統領の演説も。
軍の勝利宣言も。
二十一年かけて作り上げた「戦後の完成」も。
すべてが崩れる。
そして、崩した人間の名前は永遠に記録される。
英雄としてではない。
空気を読めなかった官僚として。
「……正式な証拠は、あるのか」
アルベルトは尋ねた。
担当官が目を瞬かせる。
「何のことでしょう」
「火星への軍事供与だ」
「繰り返しになりますが、輸送されているのは民生用の中古機械です」
「そうだったな」
「はい」
「ザクの頭部も」
「平和教育用の展示物です」
「高出力ジェネレーターは」
「地下農場の暖房設備」
「ビーム収束器は」
「害獣駆除」
「火星の芋は、ずいぶん武装しているらしい」
「厳しい環境ですから」
アルベルトは額を押さえた。
「わかった」
「ご理解いただけましたか」
「理解はしていない。だが、今日だけは見なかったことにする」
担当官の表情から、緊張が少し消えた。
「賢明なご判断です」
「勘違いするな。火星で問題が起きれば、この件は必ず掘り返す」
「その時には、私は退職しております」
「逃げ切る気か!」
「共和国官僚、最後の特権でございます」
アルベルトは、本気で机をひっくり返したくなった。
庁舎の大型モニターが、自治権返還式典の開始を告げた。
ズム・シティの中央広場。
特設ステージ。
地球連邦とジオン共和国の旗が並んでいる。
共和国旗のほうは、式典の終了とともに降ろされる予定だった。
ステージには、共和国首相と連邦政府代表が立っている。
周囲には、大勢の市民が集まっていた。
年老いた元公国軍人。
戦後に生まれた若者。
ジオンという名前へ誇りを持つ者。
嫌悪する者。
どうでもいいと思っている者。
自治権返還後の税制だけを心配している者。
誰もが同じ場所に立ち、同じ演説を聞こうとしていた。
共和国首相が演壇へ立つ。
『サイド3に暮らす市民諸君』
広場が静まった。
『本日、宇宙世紀0100年をもって、ジオン共和国は自治権を地球連邦政府へ返還いたします』
拍手が起きる。
一部は心から。
一部は義務として。
一部は周囲に合わせて。
『宇宙世紀0058年、ジオン・ズム・ダイクンによる共和国宣言から始まった我々の歴史は、多くの理想と、多くの過ちを生みました』
モニターの前で、アルベルトは黙って聞いていた。
『ザビ家による独裁。一年戦争。戦後に続いた数々の武力闘争。我々は、ジオンという名のもとで流された血を忘れてはなりません』
広場の元公国軍人たちは、表情を変えなかった。
『同時に、宇宙に生きる人々が尊厳と自治を求めた歴史まで、過ちとして消し去ってはなりません』
連邦政府の代表者が、わずかに眉を動かした。
事前に提出された原稿には、もう少し穏当な表現が使われていたはずである。
共和国首相は続けた。
『我々は今日、国としてのジオンに幕を下ろします。しかし、サイド3で生きてきた人々の歴史まで終わるわけではありません』
拍手が大きくなった。
『旗は降ろされます。政府も解体されます。共和国軍も、その任務を終えます』
広場の一角。
共和国軍の兵士たちが、最後の敬礼を行う。
制服は整っている。
だが、その多くは翌日から連邦軍へ編入されるか、退役する。
『本日をもって、ジオンの名を掲げる国家は、宇宙世紀の公的な舞台から姿を消します』
首相は一度、背後の共和国旗を見た。
『どうか、これが次の戦争の始まりではなく、長すぎた戦後の終わりとなることを願います』
共和国旗が、ゆっくりと降ろされ始めた。
広場に音楽が流れる。
市民が拍手する。
泣いている者もいた。
安堵する者もいた。
小さく「ジーク・ジオン」とつぶやいた老人もいた。
すぐ隣の家族が、その腕をつかんで黙らせた。
アルベルトはモニターを見ながら言った。
「これが、神話の幕引きか」
共和国側の担当官が答える。
「お気に召しませんか」
「幕が下りたようには見えない」
「旗は下りました」
「旗だけだ」
「歴史とは、たいていそういうものでしょう」
担当官は、空になった旗竿を見た。
「国がなくなっても、国を信じた者は残ります」
「だから火星へ兵器を送ったのか」
「私は何も存じません」
「その返答だけは一貫しているな」
式典の歓声に紛れ、一隻の貨物船がサイド3を離れた。
船籍は民間。
積み荷は産業廃棄物。
航路は火星。
貨物区画には、解体されたザクの外装。
ドム用の脚部パーツ。
ゲルググ系の駆動部品。
共和国軍の戦闘データ。
旧公国軍の技術資料。
そして、地球圏の技術市場から買い集められた現行型の電子機器が積まれている。
表向きには、どれも軍事利用できない中古品だった。
一つずつ見れば。
だが、火星の技術者たちが組み合わせれば話は違う。
古い外装。
新しい内部骨格。
現行型ジェネレーター。
過去の亡霊を、現代の戦場へ戻すための材料だった。
「貨物船の出航を確認」
アルベルトの部下が報告した。
「臨検を要請しますか」
アルベルトは答えなかった。
モニターには、降ろされた共和国旗。
窓の外には、次第に遠ざかる貨物船。
今日の公式記録へ何を書くべきか。
彼にはわかっていた。
真実ではない。
政治的に必要な文章を書く。
それが彼の仕事だった。
「記録しろ」
アルベルトは言った。
「宇宙世紀0100年。ジオン共和国は自治権を返還。共和国軍は解体され、地球圏におけるジオン系国家および正規軍事組織は消滅した」
部下が入力する。
「貨物船については」
アルベルトは少し黙った。
「民間廃棄物輸送船。異常なし」
「よろしいのですか」
「よくはない」
「では」
「今日、政府が必要としているのは、事実ではなく終戦だ」
アルベルトは、机の上の承認印を見た。
小さな印。
一枚の書類へ押すだけで、兵器が解体されたことになる。
一つの軍隊が消えたことになる。
一つの国の歴史へ、終止符が打たれたことになる。
現実が追いついていなくても。
「押しますか」
部下が尋ねた。
アルベルトは承認印を手に取った。
「押すしかないだろう」
印が、共和国軍解体証明書へ置かれた。
鈍い音がした。
それが、地球圏におけるジオンという国家の最後の音だった。
同じ時刻。
火星、第28地下プラント。
カールとグランは、地球圏から送られてきた自治権返還式典の映像を見ていた。
共和国旗が降りていく。
首相が深く頭を下げる。
連邦政府の代表者が握手を求める。
拍手。
紙吹雪。
笑顔。
完璧に演出された終戦だった。
「終わったな」
カールが言った。
グランは答えない。
「ジオン共和国は、もうない」
「共和国はな」
「国家としてのジオンは消えた」
「地球圏のジオンが消えただけだ」
カールはグランを見る。
「何が言いたい」
グランは、机の上に古い公国軍の徽章を置いた。
「サイド3は旗を降ろした」
「そうだ」
「ハマーンのアクシズは滅びた」
「ああ」
「シャアのネオ・ジオンも消えた」
「だから、ジオンの時代は終わった」
「逆だ」
グランは静かに立ち上がった。
「偽物が全部消えた」
カールの表情が険しくなる。
「彼らを偽物と呼ぶのか」
「俺たちを置き去りにした連中だ」
「シャアだけではない。サイド3の人々まで憎むつもりか」
「憎んではいない」
「では、何だ」
「見限った」
グランは、壁の向こうにある地下ドックを見た。
そこでは、新たなRFザクの組み立てが進んでいる。
「これからは、誰の許可もいらない」
「何を始める」
「始めるのではない。残すんだ」
「何を」
「最後のジオンを」
カールは目を閉じた。
チェスターJr.の最後の言葉を思い出す。
誰かの神話に、自分たちの未来を預けるな。
カールは、それを自分たちの生活を自分たちで守れという意味に受け取った。
グランは、自分たち以外のすべてを信用するなという意味に変えようとしている。
「また神話を作るつもりか」
カールが尋ねた。
「違う」
グランは答えた。
「今度は、英雄を待たない」
「それでもジオンの名を使う」
「名前ではない。形だ」
「形?」
「ザク。ドム。ゲルググ。俺たちが何者かを忘れないための鎧だ」
「過去へ閉じこもるだけだ」
「地球圏が捨てた過去なら、俺たちが拾う」
二人は向かい合った。
カールが守ろうとしているのは、火星で生きる人々だった。
グランが守ろうとしているのは、見捨てられた者たちの誇りだった。
どちらも間違いではない。
だが、同じでもなかった。
その時、地下プラントに警報が鳴った。
火星軌道へ接近する貨物船。
サイド3発。
積み荷は産業用中古部品。
カールとグランは管制室へ向かった。
モニターに、貨物目録が表示される。
旧共和国軍のモビルスーツ部品。
ジェネレーター。
電子装置。
技術資料。
解体されたザクの頭部。
グランの口元に、ゆっくりと笑みが浮かんだ。
「見ろ」
カールは何も言わない。
「地球圏で旗を降ろした連中も、全部を捨てたわけではなかった」
「共和国政府の正式な支援ではない」
「関係ない」
「密輸品だぞ」
「それも関係ない」
グランは貨物船へ入港許可を出した。
「これで作れる」
「何を」
「地球圏の最新鋭機を倒せる、本当のRFシリーズを」
「何のために」
グランは即答しなかった。
火星を守るため。
二度と見捨てられないため。
連邦軍へ対抗するため。
そう答えることもできた。
だが、その胸の奥には、もっと暗い願いがあった。
自分たちを過去だと笑った者へ、過去の姿で勝ちたい。
ザクを骨董品と呼んだ連邦兵を、そのザクの形をした最新兵器で撃ち落としたい。
チェスター艦隊を一つの駒として消費した地球圏へ、自分たちはまだ生きていると知らしめたい。
「証明するためだ」
グランは言った。
「何を」
「ジオンは、まだ終わっていない」
貨物船が火星の地下ドックへ入ってくる。
隔壁が閉じる。
地球圏から運ばれてきた部品が、次々と降ろされていく。
古い外装と、新しい技術。
過去の神話と、未来の兵器。
その組み合わせが、火星の地下で一つになろうとしていた。
宇宙世紀0100年。
地球圏では、ジオンの名を持つ国家が消滅した。
市民は平和を祝った。
政治家は戦後の完成を宣言した。
官僚は解体証明書へ承認印を押した。
共和国旗は降ろされ、博物館の収蔵庫へ運ばれた。
歴史書には、ジオンの時代が終わったと記された。
しかし、火星では違った。
地球圏のジオンが消えた日を、グランたちは敗北の日とは考えなかった。
自分たち以外のすべてのジオンが消えた日。
火星の残党が、唯一の継承者になった日。
彼らにとっては、終わりではない。
誕生だった。
地下ドックの中央。
新たに組み上げられたRFザクが立っている。
外見は、一年戦争のザクII。
だが、その内部には現行型のジェネレーターと駆動装置が搭載されていた。
整備員が電源を入れる。
頭部のモノアイが、ゆっくりと中央へ動く。
赤い光が、暗いドックを横切った。
カールは、その光を見上げた。
そこに希望を見ることはできなかった。
だが、完全な悪とも言い切れなかった。
火星の人々が、自分たちを守るために求めた力。
同時に、いつか地球圏へ向けられるかもしれない刃。
「グラン」
カールが言った。
「この力を、火星を守ることだけに使え」
グランはRFザクを見上げたまま答える。
「地球圏が、俺たちを放っておくならな」
それは約束ではなかった。
警告だった。
遠い昔、はるか彼方の銀河系で、銀河帝国の旗が降ろされたあとも、その兵器と思想を抱えた者たちは辺境へ逃れた。
中央は勝利を宣言した。
だが、辺境の残党は敗北を認めず、失われた帝国を自分たちの手で作り直そうとした。
この宇宙でも、同じことが始まっていた。
フォースは存在しない。
だが、終わったはずの神話を、捨てられた者たちが拾い上げることなら何度でも起こる。
地球圏では、ジオンの幕が下りた。
火星では、その幕の裏側から新たな亡霊が立ち上がった。
国家を持たないジオン。
正統な血統を必要としないジオン。
過去のモビルスーツの姿そのものを、旗と鎧に変えた軍勢。
彼らはまだ、正式な組織名を持っていない。
だが、やがて自らをこう名乗ることになる。
オールズモビル。
宇宙世紀の歴史から捨てられた、最後のジオンである。