機動戦士ガンダム ギレン、ハマーン、シャアの次なる答え――ジオンの最高頭脳、サナリィの最新ガンダムで宇宙世紀を総決算する   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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オールズモビル結成【U.C.0115】

宇宙世紀0115年。地球圏の軟弱者どもが「やったぜ宇宙世紀が始まって100年以上経ったけど超平和! 戦争なんて過去の遺物だし、モビルスーツも維持費がかかるからちっちゃく(小型化)しようぜ!」などと、ぬるま湯に浸かりきった脳みそで平和ボケの極致を謳歌している頃――。

 

不毛の極寒地獄、赤い惑星・火星の地下深くに建造された、もはや執念と妄執だけで維持されている火星独立ジオン軍秘密基地『オリンポス影の第3ドック』。その凍える指令室の特等席で、筋金入りの頑固親父であり、かつて一年戦争で輝かしい(と本人は信じている)戦果を挙げた老将シャルル・ロチェスターは、自らの血圧が『ア・バオア・クー』の最終防衛ライン並みに沸騰していくのを感じていた。

 

「ええい! 誰だ! 我が誇り高き『RFザク』のコックピットに、火星特産の発酵芋で作った自家製密造酒の樽を隠したのは! 精神がたるんどる! これではまるで、第1次ネオ・ジオン抗争の時にマシュマー・セロの小僧が乗っていたガザAの格納庫ではないか!」

 

シャルルのダミ声が、油と鉄サビの臭いが立ち込めるドック全体に響き渡った。

彼の脳内を支配しているのは、地球圏への激烈な復讐心と、それ以上に深い「一年戦争時代のジオン公国軍に対する歪んだノスタルジー」であった。

 

周りを見渡せば、火星の地下で30年近くも引きこもり生活を続けた結果、脳のネジが完全に消滅した残党たちのなれの果てが揃っている。

チェスターJr.の坊ちゃんがシャア・アズナブルとかいうサングラスの詐欺師に騙されて地球圏で全滅したあの悲劇から20有余年。

火星に取り残された哀れな残留兵とその子孫たちは、地球連邦軍から「戦う価値もない粗大ゴミ」として完全無視され、忘却され続けた。その結果、彼らの精神は極限までこじれにこじれ、「地球圏のジオンが全員裏切ったのなら、俺たちが世界で唯一の『本物のジオン』になってやる!」という、もはや宗教の領域に達した過激派組織、通称『オールズモビル』として再結成するに至ったのである。

 

「シャルル閣下、落ち着いてください。芋酒の樽を隠したのは、第2整備班のハンス(現在30代後半、相変わらず本物のガンダムを見たことがない男)です。それより、アナハイム・エレクトロニクス社の闇ルートから『ジャンクパーツ』名目で買い叩いた、最新の超高出力ジェネレーターと新素材装甲の組み込みが完了しました。ご覧ください、これぞ我が軍の最高傑作『RFゲルググ』です!」

 

副官の若い士官(火星生まれ火星育ち、ジオン公国をただのファンタジーだと思っている世代)が、誇らしげに巨大なモビルスーツを指差した。

 

そこにあったのは、今から36年も前にジオン公国軍が開発した名機『ゲルググ』の、これでもかと再現されたマッシブなシルエットであった。豚のような特徴的な鼻、美しい曲線の頭部、そして無駄に太い剥き出しの動力パイプ。

 

「おお……素晴らしい! これだ、これぞモビルスーツだ! 最近の連邦軍がサナリィ(海軍戦略研究所)とかいう新参者と組んで作っている、あの全高15メートル前後の『ガンダムF90』だか何だか知らんが、あのひょろひょろした小型モビルスーツとは格が違う! あんなものは、モビルスーツではなくただのデカいプラモデルだ!」

 

シャルルは、特注のジオン公国軍仕様の軍服(ウエストが加齢で30センチほどきつくなっている)の襟を正しながら、狂喜の声を上げた。

 

この『RFシリーズ(リファイン・ジオン・シリーズ)』こそ、オールズモビルの妄執の結晶であった。

中身はアナハイム社から密輸した最新の超小型・高出力ジェネレーター、駆動系には宇宙世紀0110年代の最新コンポーネント、そして装甲にはガンダリウム合金を惜しげもなく使用している。つまり、スペックだけ見れば、そこらの連邦軍の現役量産機である『ジェガン』をゴミのように一ひねりにできる超高性能機なのだ。

だが、彼らの最大の狂気は、その最新技術を1ミリも外見に出さず、わざわざ「30年以上前の、重くて空気抵抗の大きいザクやゲルググの形」に成形して包み込んでいる点にあった。

 

「閣下! アナハイム社の裏ルートの担当者から通信が入っています。『毎度お買い上げありがとうございます。いやー、外見をわざわざ旧式にするなんて、素晴らしいカモ……ゲフンゲフン、粋なこだわりですね! おかげで連邦軍の会計監査には「ただの旧式スクラップの鉄クズを火星に捨てた」と報告できるので、こちらも大助かりです。今後も最新ビーム・ライフルの内装パーツ、いくらでも横流ししますよ!』とのことです!」

 

通信兵が、呆れたような顔でホログラム端末を叩いた。

 

「ふん、アナハイムの死の商人どもめ。我々を単なる『こだわりが強いレトロマニアの太客』としか思っていまい。だが、それでいい。奴らが目先の金に目が眩んでいる間に、我が火星独立ジオン軍は、連邦の鼻持ちならない『フォーミュラ計画』の鼻裏をかく力を蓄えたのだ!」

 

シャルルは鼻息を荒くした。

地球連邦軍は今、オリンポス・ベースという火星の拠点を勝手に建造し、そこでサナリィの最新鋭小型モビルスーツ『ガンダムF90』のテストを行おうとしている。連邦の言い分としては「火星は重力も環境も過酷だから、新型のテストベッドに最適だよね!」という軽いノリらしいが、地下にひきこもっているオールズモビルからすれば、それは自分たちのプライベートな庭(隠れ家)の真上で、最新のスタイリッシュな高級車を見せびらかされるような、最大級の精神的屈辱であった。

 

「おのれ連邦め……。サイド3のジオン共和国が自治権を返還したからといって、ジオンの魂が完全に消えたと思うなよ。あの天パの怪物(アムロ)も、サングラスのマザコン(シャア)も、歴史の闇に消え去ったこの時代、真にジオンの伝統を受け継ぐのは、この火星の地下で芋を喰らいながら耐え抜いた我らオールズモビルだけだ! 伝統の緑色と小豆色に塗られた我が軍の威光、あのひょろひょろの最新鋭機(ガンダム)の脳天に叩き込んでやる!」

 

その時、ドックの警報ブザーがけたたましく鳴り響いた。

 

ビーーー! ビーーー!

 

「閣下! 地上モニターに映像が入りました! オリンポス・ベースの連邦軍滑走路に、地球圏から到着した大型輸送艦から、例の『フォーミュラ計画』の本命……白いモビルスーツが搬入されました! あれが……サナリィの開発した、次世代小型MS『ガンダムF90』の1号機、および2号機です!」

 

メインスクリーンに映し出されたのは、これまでの宇宙世紀の常識を覆すほどコンパクトで、無駄な肉を削ぎ落とした洗練極まる白いガンダムの姿だった。全高はわずか14.8メートル。シャルルの乗る予定のRFゲルググ(全高約17.5メートル)の胸の高さほどしかない。

 

「な……なんだあの小ささは!? あんなものはモビルスーツではない! 幼児の玩具だ! 連邦軍はついに資金が底を突いて、材料費をケチるために機体を縮小したのか!? それとも、パイロットの居住性を完全に無視したアナハイム社への嫌がらせか!?」

 

シャルルはあまりの「技術パラダイムの変化」に絶叫した。

彼らが火星の地下で「ザクのスパイクは尖っていれば尖っているほど偉い!」「ゲルググのシールドはデカければデカいほどジオン魂が宿る!」という、完全に一年戦争時の価値観でアップデートを重ねていた間に、地球圏の化け物どもは「性能を維持したまま、機体を限界まで小さくして運動性を跳ね上げる」という、全く別の次元へ突入していたのである。

 

「閣下、しかしバカにはできません。我が軍の分析AIによると、あのF90のジェネレーター出力は、我が軍のRFザクの約2倍。さらに、全身に配置されたハードポイントにより、あらゆる戦局に対応するミッションパックを換装できるとのことです。……正直、めちゃくちゃ強そうです」

 

「ええい、黙れ! ギレン・ザビ総帥がお仰ったはずだ! 『戦いは数だよ兄貴!』と! いや、今回は『戦いはデカさとロマンだよ兄貴!』だ! 見ろ、我が方のRFドムのこの極太の脚部を! このホバー推進の質量こそが、宇宙世紀の正統なる美学ではないか! あんな、修学旅行のリュックサックみたいに武装をペタペタ貼り付けるガンダムなど、ジオンの審美眼が断じて許さん!」

 

シャルルは拳を振り上げ、ドックの技術者たちに向かって怒号を飛ばした。

 

「野郎ども! 結成の時は来た! 我ら『火星独立ジオン軍(オールズモビル)』の最初の作戦を発表する! 目標は、あのオリンポス・ベースに配備された、連邦の鼻持ちならないスタイリッシュな高級玩具『ガンダムF90』だ! 奴らが火星の環境に慣れず、のんびりとテスト飛行を行っている隙を狙い、伝統の一年戦争スタイルで急襲をかける! そして、あのガンダムを強奪し、我が軍の悪趣味な……いや、素晴らしい伝統のジオンカラーに塗り替えてやるのだ!」

 

『おおおおおーーー!! ジーク・ジオン!!』

 

ドックに集まった、平均年齢が宇宙世紀の歴史並みに高いベテランパイロットたち(大半がギックリ腰と火星の芋の食べ過ぎによる痛風を患っている)が、一斉に錆びついた拳を突き上げた。彼らの瞳には、かつてソロモンやア・バオア・クーで散っていった戦友たちの幻影と、地球圏の流行(小型化)に対する強烈なアンチテーゼの炎が燃え盛っていた。

 

宇宙世紀0115年。地球圏が戦後の安泰に浸り、サナリィの技術者たちが「これからの時代は小型化だよねー」とスマートなオフィスでコーヒーを飲んでいたその裏で。

火星の凍てつく地下都市では、歴史の闇に葬られたはずの「ジオン」の名を掲げる最後の軍事組織が、完全に時代錯誤なレトロルックの超高性能MS(RFシリーズ)の軍勢を揃え、牙を剥いて立ち上がっていた。

最高指揮官シャルル・ロチェスターの歪んだ情熱と、地球圏への果てしない逆恨みを燃料にして結成された『オールズモビル』。彼らが引き起こす、宇宙世紀の神話の本当の終焉に向けた最初の鐘の音(ガンダム強奪作戦)が、火星の赤い大地の下で、今、不気味に鳴り響こうとしていたのである。

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